北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 工学院 応用量子科学系研究室群 応用量子科学系 専門科目 2025年度 院試 解答例・解説
北海道大学 工学院 応用量子科学系研究室群 応用量子科学系 専門科目 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 微分方程式
方針
この問題は、型の判定で大半が決まる。1階線形では積分因子、完全微分では 、高階線形では特性方程式、既知解つき2階方程式では 階数低下を使う。
検算
は まで戻してから微分すると符号ミスを発見しやすい。 の最終結果は が同次解であり、 を代入すると右辺 が出ることを確認できる。
典型ミス
では、右辺の が同次解と重なるため、単に や を仮定すると 定数項が同次解へ吸収される。演算子を でずらすか、未定係数法で共鳴次数を確認してから進める。
試験で書くべきポイント
直交曲線では、もとの傾きと直交曲線の傾きの積が になることを明記する。任意定数の消去だけを書いて終わると、 直交条件を使ったことが答案から読み取れない。
第2問 — ベクトル解析
方針
接線は速度ベクトル、方向微分は勾配、保存場は回転、曲面積はパラメータ表示、閉曲面の流束はガウスの定理で処理する。 各小問は公式を当てはめるだけでなく、どの量がベクトルでどの量がスカラーかを最初に分けると計算が崩れにくい。
検算
方向微分の最大値は勾配の長さになるため、点 での勾配の長さが になるかを確認する。 円すい面の面積は、底面半径1、母線長 の側面積 と一致する。
典型ミス
スカラー線積分では を掛け忘れやすい。保存場の判定では、1成分でも回転が0でないことを示せば十分であり、 全成分を最後まで計算する必要はない。
試験で書くべきポイント
ガウスの定理を使う場合は、閉曲面であることと外向き法線を使うことを明記する。半球面だけでなく底面も含む である点を落とさない。
第3問 — 複素関数
方針
反転写像は と戻して実部・虚部を代入するのが最短である。調和関数ではまず ラプラス方程式を確認し、正則関数は Cauchy--Riemann 方程式から虚部を復元する。
検算
は の実部であるため、最終的に が得られるはずである。 実積分の答え は正の値で、被積分関数が偶関数であることとも整合する。
典型ミス
2位の極では関数値ではなく微分値を使う。テイラー展開では、極 が収束円の境界にあるため、 収束半径は1であり と書く。
試験で書くべきポイント
留数定理を実積分へ使うときは、上半平面のどの極を拾ったか、円弧積分が0になる理由を最低限書く。 計算だけを並べるより、閉曲線の選択が明確な答案の方が減点されにくい。
第4問 — フーリエ級数・ラプラス変換・波動方程式
方針
フーリエ級数は奇偶性を使って係数計算を半分にする。ラプラス変換は部分積分とパラメータ微分だけで示せる。 波動方程式は、時間依存が境界から と分かるため、同じ時間因子を仮定するのが自然である。
検算
の級数は偶関数なので、正弦項が出てこない。定数項は平均値 と一致する。波動方程式の解は の境界値を直接代入して確認できる。
典型ミス
ラプラス変換の では符号が負になる。波動方程式では、 が波数であり、 そのものではない点に注意する。
試験で書くべきポイント
フーリエ級数では収束区間を明記し、端点では周期延長の意味で値が決まることを意識する。波動方程式では、 共振条件を避ける仮定が分母を0にしないために必要であることを書く。
第5問 — 結晶構造とX線回折
方針
結晶構造の問題では、まず「どの原子が単位格子内に何個分入るか」を数える。bcc では体対角線上で接触するため が基本式になる。X線回折は、ピーク位置の を半分にしてから Bragg 条件へ代入する。
検算
求めた から となり、Bragg 条件から求めた値と整合する。
典型ミス
密度計算では を に直す必要がある。 であり、体積では3乗で効く。ここを落とすと密度が 倍ずれる。
試験で書くべきポイント
ミラー指数の作図は文章答案だけでは伝わりにくい。答案用紙では、方向なら矢印、面なら切片を明示し、 負の指数は単位胞を平行移動して見やすい位置に描くとよい。
第6問 — 半導体バンドと水素拡散
方針
前半は「状態密度」と「占有確率」を別々に計算し、最後に掛け合わせる。状態密度は伝導帯下端で初めて立ち上がるので、 未満を誤って平方根に代入しないことが重要である。フェルミ分布では、 を のまま使わず、電子ボルトに換算してから を無次元にする。
グラフで示すべき特徴
は にしきい値を持つ平方根曲線である。 は が低いほど階段関数に近く、 では の近傍でほぼ垂直に落ちる。 では落ち方が緩くなる。 は の増加と の減少の積なので、伝導帯下端より少し上に山を持つ形になる。
検算
では であるため、 が 0 でなくても になる。これは「伝導帯下端そのものでは、ここで与えられた平方根型の状態密度が 0 である」ことによる。 では は最大だが、 が 程度まで小さくなるため は小さい。
拡散問題の書き方
定常拡散では、まず濃度分布を直線で描き、その傾きから流束を出す。答案では「高濃度側から低濃度側へ流れる」向きを明示し、 の負号と濃度勾配の符号を対応させる。試料長さを 3 倍にしたとき、断面積と境界濃度差が同じなら、変わるのは勾配だけなので移行量も 3 分の 1 になる。
典型ミス
フェルミ分布で を 、 を のまま混ぜると指数部が桁違いになる。また拡散量を求める際、断面積 を掛け忘れると流束 のままで止まってしまう。温度上昇時の急低下は単なる Arrhenius 則では説明しにくいので、相変態のような材料組織・結晶構造の不連続な変化を述べるのが答案として強い。
第7問 — 二元系状態図
状態図を読む順序
二元系状態図では、まず全体組成の縦線を引き、液相線、固相線、共晶水平線、ソルバス線との交点を読む。相の種類は、その縦線がどの相領域に入っているかで決まる。模式図では、粒の形を細かく描くことよりも、どの相が初晶で、どの相が共晶または析出物としてできたかを区別することが重要である。
てこの法則の使いどころ
の 350\, 直前では、タイラインの両端が 側約 20 at\% B、液相側約 50 at\% B である。よって液相割合は となる。この液相が 350\, に達した直後に共晶組織へ変わるため、共晶組織の量を説明できる。
典型ミス
共晶点の自由度を としてしまう誤りが多い。圧力一定の凝縮系状態図では を使う。また、析出強化では「ゆっくり冷やす」と書くと粗大析出になりやすく、強化の説明として弱い。固溶化、急冷、時効の 3 段階を書くのが試験答案として必要である。
試験で書くべきポイント
組織模式図を言葉で補足する場合は、相名だけでなく濃度も添えると採点されやすい。例えば「350\, 直後は 初晶と共晶 」だけでなく、「共晶中の は約 20 at\% B、 は約 80 at\% B」と書くと、状態図を読めていることが明確になる。
第8問 — 原子炉動特性と炉心諸量
点炉動特性の見方
反応度 が より小さいと、即発中性子だけでは臨界にならない。したがって長時間の増加は遅発中性子先行核の崩壊速度に支配される。これが というゆっくりした正の固有値に現れている。一方、 は即発中性子寿命に対応する非常に速い減衰モードである。
即発跳躍を導くときの注意
反応度印加直後に変わらないのは であって、 ではない。先行核は半減期を持つため瞬時には変化できないが、中性子密度は即発中性子の時間尺度でジャンプする。この問題ではさらに という近似を置くので、 を代入して新しい を求める。
行列式の検算
特性方程式を展開したとき、定数項は になる。ここが正になってしまうと、正の反応度に対して正の固有値が得られない。符号確認として、 なら二つの根の積は であり、一方が正、一方が負になる。
炉心計算の単位
出力密度では が で与えられているので、体積はそのまま になる。流速では が 、密度が で混在するため、 を掛けて に直す必要がある。ここを落とすと流速が 1000 分の 1 になる。
第9問 — 黒体ふく射伝熱
形態係数の考え方
形態係数は「ある面から出た放射が、別の面へ直接到達する割合」である。黒体面では、到達した放射はすべて吸収されるため、吸収率を別に掛ける必要がない。2 面間の正味交換では、必ず相反則 を使って片方の面積にそろえる。
積分の検算
プランク分布の積分では、置換後に が残ることが重要である。 から が出るが、 から が出るので、全体として になる。これがステファン・ボルツマン則の温度 4 乗依存の由来である。
正六面体で が消える理由
面 3 以外のすべての面が同じ温度 であるため、面 3 から見た放射の行き先の内訳は結果に影響しない。隣接面へ行っても向かい合う面へ行っても、受け手の温度は同じである。したがって総和則により全形態係数が 1 になることだけが効く。
典型ミス
面 3 から隣接 4 面への形態係数の合計を と読んでしまうと、向かい合う面への係数を としてしまう。この設問では「隣接する四面の形態係数が 」なので、それぞれが 、合計が である。
第10問 — 核反応とボーア模型
核反応のエネルギー配分
2 体反応で初期運動エネルギーを無視できる場合、生成物は重心系で反対向きに同じ運動量を持つ。したがって軽い粒子ほど大きな運動エネルギーを受け取る。D--T 反応で中性子が約 14 MeV、 粒子が約 3.5 MeV になるのはこのためである。
遮蔽計算の単位
微視的断面積 は 、原子数密度 は なので、巨視的断面積 は になる。減衰式は であり、1/10 にする厚さは平均自由行程 ではなく である。
しきいエネルギーの注意
の反応では、単に だけの入射エネルギーでは足りない。反応後も運動量保存のために重心運動のエネルギーが残るからである。標的静止のしきい値では を使う。ここでは D--T 由来の が を持ち、しきい値 を上回る。
放射平衡
親核の半減期が娘核より十分長く、鉱石中で長時間経過している場合、親核の崩壊で娘核が作られる速度と娘核が崩壊する速度が等しくなる。この条件は であり、原子数比から半減期比を求められる。
核融合反応の比較で書くべき観点
利点と欠点は、燃料資源、反応温度、生成粒子、放射化、エネルギー取り出しの 5 点で整理すると書きやすい。D--D は燃料の入手性が強い一方、中性子分岐が工学的負担になる。p-- は aneutronic に近い点が魅力だが、断面積を十分大きくするプラズマ条件が厳しい。