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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 理学系研究科 化学 2026年度 院試 解答例・解説

東京大学 理学系研究科 化学 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 物理化学基礎

分離定数の符号

動径方程式に現れる分離定数は,角運動量演算子の固有値を正に取ると C=l(l+1)C=l(l+1) になる。途中で角度項を反対側へ移すと一時的に符号が逆に見えるので, 最後に l^2Y=2l(l+1)Y\hat l^2Y=\hbar^2l(l+1)Y と照合するのが安全である。

期待値の検算

水素原子の一般公式 rnl=a02{3n2l(l+1)} \langle r\rangle_{nl}=\frac{a_0}{2}\{3n^2-l(l+1)\} n=2,l=1n=2,l=1 を代入しても 5a05a_0 になる。積分で計算した値と一致するため,規格化定数や r2drr^2dr の体積要素を落としていないことが確認できる。

項記号の採点ポイント

一電子状態では S=1/2S=1/2 が固定される。S,P,DS,P,D はそれぞれ L=0,1,2L=0,1,2 を表し, 添字 JJLS|L-S| から L+SL+S までを取る。p2p^2 配置では microstate を数え上げると 3P,1D,1S{}^3P,{}^1D,{}^1S の三項に分かれる,という対応まで書くと答案が安定する。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 物理化学標準

符号の扱い

速度定数は温度が上がると増えるので,T2>T1T_2>T_1 なら ln(k2/k1)>0\ln(k_2/k_1)>0 になるべきである。この検算を使うと EaR(1/T21/T1)-\frac{E_a}{R}(1/T_2-1/T_1) の符号を誤りにくい。

活性化エントロピーの読み方

二分子反応だから常に負,単分子反応だから常に正,という機械的な判断は危険である。 溶媒和されたイオンの反応では,遷移状態で溶媒の配向が緩むと全体系のエントロピーが増える。 反応物数の変化と溶媒和の変化を分けて説明すると,短い記述でも説得力が出る。

分配関数から Eyring 式へ

弱い反応座標振動の分配関数を高温近似すると νξqξkBT/h\nu_\xi q_\xi\simeq k_BT/h となる。これが遷移状態理論で前因子 kBT/hk_BT/h が現れる理由である。 指数因子の ΔE0\Delta E_0 は活性錯合体と反応物の基底エネルギー差として定義しておくと, 障壁が高いほど速度が小さくなる向きが明確になる。

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3 — 有機化学基礎

有機構造答案の書き方

この資料では公式の構造図を写さないため,構造は縮合構造式・反応名・立体化学の言葉で示した。 実際の答案では,1,2-付加体と1,4-付加体の二重結合位置,Friedel--Crafts の para 配向, ラクトン開環後の炭素数を図で明示すると採点者に伝わりやすい。

IR の識別

IR は官能基の有無で大半が決まる。ニトリルの鋭い吸収,カルボン酸の広い O--H, ケトンの強い C=O は優先的に拾う。芳香族炭化水素とフェノールを迷った場合は, 3200--3600 cm1\mathrm{cm^{-1}} 付近の広い O--H の有無を確認する。

Claisen 縮合の落とし穴

エステルの求核アシル置換では,アルコキシド脱離後に β\beta-ケトエステルの α\alpha 水素がさらに引き抜かれる。この最後の脱プロトン化が平衡を生成物側へ進めるので, 酸処理の役割は単なる中和ではなく,エノラートを最終生成物へ戻す操作として書く。

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4 — 有機化学標準

標準有機の答案方針

この型の問題では,構造全体を美しく描くことよりも,どの結合形成・官能基変換が起きたかを 一つずつ外さないことが重要である。Birch 還元,Lewis 酸促進 Diels--Alder,DIBAL 還元, エポキシ化,Mitsunobu 置換,ヒドラジン脱保護を対応させるだけで大部分の得点が決まる。

Step VI の説明

フッ化物による脱シリル化は「保護基を外すだけ」と書くと不足である。ここでは生じた アルコキシドが近接官能基へ分子内反応し,通常の酸性脱保護とは異なる立体経路へ入る。 どの面が立体的に塞がれているかを明記すると,反転生成物が出る理由を説明できる。

Step VIII の機構

ヒドラジンは phthalimide 保護基の切断剤であると同時に,後続のアミン生成を経て分子内 環化を可能にする。脱保護とイミン形成を一つの連続過程として整理し,付加,プロトン移動, 脱水を順に描けば,巻矢印答案として自然につながる。

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5 — 無機・分析化学基礎

分析法の記述

定量法は「前処理,分離,検出,検量」の四語を入れると答案としてまとまる。HPLC-UV なら 保持時間で同定し,ピーク面積で定量する,という役割分担まで書く。

一次元マーデルング定数

符号交代級数の途中打ち切りである。中心イオンの両側に同じ距離のイオンがあるため係数 2 が 付く。これを忘れると答えが半分になる。

18電子則

二核 Mn 錯体では金属--金属結合の 1 電子寄与を各金属に数える。Fe と Ni の単核カルボニルは 中性金属の価電子数に CO の 2 電子供与を足すだけでよい。

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6 — 無機・分析化学標準

Nernst 式の向き

ここでは標準還元電位が与えられているので,半反応は必ず還元向きで書く。 Cd2++2eCd\mathrm{Cd^{2+}+2e^-\rightleftharpoons Cd} では固体 Cd の活量は 1 で,反応商は 1/aCd2+1/a_{\mathrm{Cd^{2+}}} である。これを整理すると E=E+(RT/2F)lnaCd2+E=E^\circ+(RT/2F)\ln a_{\mathrm{Cd^{2+}}} になる。

LFSE とペアリング

LFSE だけなら t2gt_{2g} 一個あたり 0.4ΔO-0.4\Delta_Oege_g 一個あたり +0.6ΔO+0.6\Delta_O を足す。 低スピン d6d^6 では三つの電子対ができるため,ペアリングエネルギーを +3P+3P として併記する。 問題によっては自由イオン基準との差を問う場合があるので,ここでは採点者が追えるように 電子配置を明記した。

スペクトルの理由

長波長は小さな分裂,大きなモル吸光係数は選択則の緩みで判断する。同じ Co(II) でも 配位子場の大きさと対称性が同時に変わるため,二つの問いを別々に説明するのが重要である。

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