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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 理学系研究科 化学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。化学4問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・分配関数・角運動量)。

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

東大 化学 2026年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は化学4問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学物理化学基礎分離定数の符号 / 期待値の検算あり
第2問化学物理化学標準符号の扱い / 活性化エントロピーの読み方あり
第3問化学有機化学基礎有機構造答案の書き方 / IR の識別あり
第4問化学有機化学標準標準有機の答案方針 / Step VI の説明あり
第5問—無機・分析化学基礎分析法の記述 / 一次元マーデルング定数あり
第6問—無機・分析化学標準Nernst 式の向き / LFSE とペアリングあり

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に3テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 6問 → 2026年度 6問
2026年度で新しく出たテーマ
固有値・固有ベクトル・分配関数・角運動量
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第1問 — 物理化学基礎

分離定数の符号

動径方程式に現れる分離定数は,角運動量演算子の固有値を正に取ると C=l(l+1)C=l(l+1) になる。途中で角度項を反対側へ移すと一時的に符号が逆に見えるので, 最後に l^2Y=ℏ2l(l+1)Y\hat l^2Y=\hbar^2l(l+1)Y と照合するのが安全である。

期待値の検算

水素原子の一般公式 ⟨r⟩nl=a02{3n2−l(l+1)} \langle r\rangle_{nl}=\frac{a_0}{2}\{3n^2-l(l+1)\} に n=2,l=1n=2,l=1 を代入しても 5a05a_0 になる。積分で計算した値と一致するため,規格化定数や r2drr^2dr の体積要素を落としていないことが確認できる。

項記号の採点ポイント

一電子状態では S=1/2S=1/2 が固定される。S,P,DS,P,D はそれぞれ L=0,1,2L=0,1,2 を表し, 添字 JJ は ∣L−S∣|L-S| から L+SL+S までを取る。p2p^2 配置では microstate を数え上げると 3P,1D,1S{}^3P,{}^1D,{}^1S の三項に分かれる,という対応まで書くと答案が安定する。

物理化学基礎の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 物理化学標準

符号の扱い

速度定数は温度が上がると増えるので,T2>T1T_2>T_1 なら ln⁡(k2/k1)>0\ln(k_2/k_1)>0 になるべきである。この検算を使うと −EaR(1/T2−1/T1)-\frac{E_a}{R}(1/T_2-1/T_1) の符号を誤りにくい。

活性化エントロピーの読み方

二分子反応だから常に負,単分子反応だから常に正,という機械的な判断は危険である。 溶媒和されたイオンの反応では,遷移状態で溶媒の配向が緩むと全体系のエントロピーが増える。 反応物数の変化と溶媒和の変化を分けて説明すると,短い記述でも説得力が出る。

分配関数から Eyring 式へ

弱い反応座標振動の分配関数を高温近似すると νξqξ≃kBT/h\nu_\xi q_\xi\simeq k_BT/h となる。これが遷移状態理論で前因子 kBT/hk_BT/h が現れる理由である。 指数因子の ΔE0\Delta E_0 は活性錯合体と反応物の基底エネルギー差として定義しておくと, 障壁が高いほど速度が小さくなる向きが明確になる。

解答

  1. EaE_a は活性化エネルギーである。
  2. Arrhenius 式を ln⁡k=ln⁡A−EaRT \ln k=\ln A-\frac{E_a}{RT} と書く。温度 T1,T2T_1,T_2 で差を取れば ln⁡k2k1=−EaR(1T2−1T1)=EaR(1T1−1T2). \ln\frac{k_2}{k_1} =-\frac{E_a}{R}\left(\frac1{T_2}-\frac1{T_1}\right) =\frac{E_a}{R}\left(\frac1{T_1}-\frac1{T_2}\right).
  3. Δ‡G∘=Δ‡H∘−TΔ‡S∘\Delta^\ddagger G^\circ=\Delta^\ddagger H^\circ -T\Delta^\ddagger S^\circ より k=kBThexp⁡(Δ‡S∘R)exp⁡(−Δ‡H∘RT). k=\frac{k_BT}{h} \exp\left(\frac{\Delta^\ddagger S^\circ}{R}\right) \exp\left(-\frac{\Delta^\ddagger H^\circ}{RT}\right).
  4. R1 は中性分子二個が会合し,電荷分離した密な遷移状態を作る。並進・回転の自由度が 減り,極性溶媒も強く配向するため Δ‡S∘<0\Delta^\ddagger S^\circ<0 になりやすい。R2 は イオン性反応物の溶媒和が遷移状態で緩み,生成側へ向かうにつれて小分子・溶媒の配列の 拘束が弱くなるため,正の活性化エントロピーを取り得る。

空欄は次の通りである。 ア  [M‡]c∘[A][B],イ  νξKc‡,ウ  E0(M‡)−E0(A)−E0(B),エ  11−exp⁡(−hνξ/kBT),オ  kBThνξ. \begin{aligned} \text{ア}\;&\frac{[\mathrm{M^\ddagger}]c^\circ}{[\mathrm A][\mathrm B]},\\ \text{イ}\;&\nu_\xi K_c^\ddagger,\\ \text{ウ}\;&E_0(\mathrm{M^\ddagger})-E_0(\mathrm A)-E_0(\mathrm B),\\ \text{エ}\;&\frac{1}{1-\exp(-h\nu_\xi/k_BT)},\\ \text{オ}\;&\frac{k_BT}{h\nu_\xi}. \end{aligned} c∘=1 mol L−1c^\circ=1\,\mathrm{mol\,L^{-1}} とおく記法では,アの c∘c^\circ は省略される。

最終答

EaE_a は活性化エネルギー。 k=(kBT/h)exp⁡(Δ‡S∘/R)exp⁡(−Δ‡H∘/RT)k=(k_BT/h)\exp(\Delta^\ddagger S^\circ/R) \exp(-\Delta^\ddagger H^\circ/RT)。 空欄は [M‡]c∘/([A][B])[\mathrm{M^\ddagger}]c^\circ/([\mathrm A][\mathrm B]), νξKc‡\nu_\xi K_c^\ddagger,E0(M‡)−E0(A)−E0(B)E_0(\mathrm{M^\ddagger})-E_0(\mathrm A)-E_0(\mathrm B), (1−e−hνξ/kBT)−1(1-e^{-h\nu_\xi/k_BT})^{-1},kBT/(hνξ)k_BT/(h\nu_\xi)。

第3問 — 有機化学基礎

有機構造答案の書き方

この資料では公式の構造図を写さないため,構造は縮合構造式・反応名・立体化学の言葉で示した。 実際の答案では,1,2-付加体と1,4-付加体の二重結合位置,Friedel--Crafts の para 配向, ラクトン開環後の炭素数を図で明示すると採点者に伝わりやすい。

IR の識別

IR は官能基の有無で大半が決まる。ニトリルの鋭い吸収,カルボン酸の広い O--H, ケトンの強い C=O は優先的に拾う。芳香族炭化水素とフェノールを迷った場合は, 3200--3600 cm−1\mathrm{cm^{-1}} 付近の広い O--H の有無を確認する。

Claisen 縮合の落とし穴

エステルの求核アシル置換では,アルコキシド脱離後に β\beta-ケトエステルの α\alpha 水素がさらに引き抜かれる。この最後の脱プロトン化が平衡を生成物側へ進めるので, 酸処理の役割は単なる中和ではなく,エノラートを最終生成物へ戻す操作として書く。

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第4問 — 有機化学標準

標準有機の答案方針

この型の問題では,構造全体を美しく描くことよりも,どの結合形成・官能基変換が起きたかを 一つずつ外さないことが重要である。Birch 還元,Lewis 酸促進 Diels--Alder,DIBAL 還元, エポキシ化,Mitsunobu 置換,ヒドラジン脱保護を対応させるだけで大部分の得点が決まる。

Step VI の説明

フッ化物による脱シリル化は「保護基を外すだけ」と書くと不足である。ここでは生じた アルコキシドが近接官能基へ分子内反応し,通常の酸性脱保護とは異なる立体経路へ入る。 どの面が立体的に塞がれているかを明記すると,反転生成物が出る理由を説明できる。

Step VIII の機構

ヒドラジンは phthalimide 保護基の切断剤であると同時に,後続のアミン生成を経て分子内 環化を可能にする。脱保護とイミン形成を一つの連続過程として整理し,付加,プロトン移動, 脱水を順に描けば,巻矢印答案として自然につながる。

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第5問 — 無機・分析化学基礎

分析法の記述

定量法は「前処理,分離,検出,検量」の四語を入れると答案としてまとまる。HPLC-UV なら 保持時間で同定し,ピーク面積で定量する,という役割分担まで書く。

一次元マーデルング定数

符号交代級数の途中打ち切りである。中心イオンの両側に同じ距離のイオンがあるため係数 2 が 付く。これを忘れると答えが半分になる。

18電子則

二核 Mn 錯体では金属--金属結合の 1 電子寄与を各金属に数える。Fe と Ni の単核カルボニルは 中性金属の価電子数に CO の 2 電子供与を足すだけでよい。

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第6問 — 無機・分析化学標準

Nernst 式の向き

ここでは標準還元電位が与えられているので,半反応は必ず還元向きで書く。 Cd2++2e−⇌Cd\mathrm{Cd^{2+}+2e^-\rightleftharpoons Cd} では固体 Cd の活量は 1 で,反応商は 1/aCd2+1/a_{\mathrm{Cd^{2+}}} である。これを整理すると E=E∘+(RT/2F)ln⁡aCd2+E=E^\circ+(RT/2F)\ln a_{\mathrm{Cd^{2+}}} になる。

LFSE とペアリング

LFSE だけなら t2gt_{2g} 一個あたり −0.4ΔO-0.4\Delta_O,ege_g 一個あたり +0.6ΔO+0.6\Delta_O を足す。 低スピン d6d^6 では三つの電子対ができるため,ペアリングエネルギーを +3P+3P として併記する。 問題によっては自由イオン基準との差を問う場合があるので,ここでは採点者が追えるように 電子配置を明記した。

スペクトルの理由

長波長は小さな分裂,大きなモル吸光係数は選択則の緩みで判断する。同じ Co(II) でも 配位子場の大きさと対称性が同時に変わるため,二つの問いを別々に説明するのが重要である。

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東大 化学 院試 過去問の収録3年度

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