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筑波大学 院試 過去問 解答例

筑波大 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 電子・物理工学サブプログラム 専門科目 2026年度 8月実施 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。数学1問・電磁気学・回路1問・物性物理1問。テーマタグは15件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理)。2025年度 1-2月実施と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理。

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

筑波大 専門科目 2026年度 8月実施 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・物性物理1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—極限の検算 / 変数変換の注意あり
第2問力学—慣性モーメントの確認 / 小振幅周期の検算あり
第3問電磁気学・回路電磁気導体殻の電荷分布 / 電位の連続性あり
第4問量子力学—基底状態の確認 / 確率の次元あり
第5問—光学像距離の符号 / 倍率の符号あり
第6問物性物理半導体物理バンド曲がりと表面電位 / 弱反転で完全空乏近似が使える理由あり

この年度の解説には試験で書くべきポイント2件が付いています。

2026年度 8月実施の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に15テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
固有値・固有ベクトル第1・4問25大学・544問
重積分と極座標第1問23大学・142問
留数定理第1問18大学・126問
剛体の回転運動第2問16大学・103問
静電場第3問16大学・81問
ハミルトン形式第4問15大学・72問
固有振動数と振動系第2問16大学・71問
波動関数第4問15大学・36問
ラグランジュの未定乗数法第1問12大学・33問
直交対角化第1問14大学・23問
PN接合第6問8大学・20問
シュレディンガー方程式第4問10大学・18問
角運動量第4問9大学・15問
回折・干渉第5問6大学・11問
ローラン展開第1問6大学・8問

前年度(2025年度 1-2月実施)との違い

大問数
2025年度 1-2月実施 6問 → 2026年度 8月実施 6問
2025年度 1-2月実施のページを見る

第1問 — 数学

方針

微積分、ラグランジュ未定乗数、複素積分、対称行列の対角化という標準事項の確認である。各小問は計算量よりも、符号と有効範囲を落とさないことが重要である。

極限の検算

分子は x=0x=0 で値も1次項も消える。したがって分母の sin⁡2x\sin^2x と同じ2次から始まる。ここで e−5xe^{-5x} の2次係数を 25/225/2 とせず 2525 としてしまうのが典型的なミスである。

変数変換の注意

y=2rsin⁡θy=2r\sin\theta なのでヤコビアンは rr ではなく 2r2r である。また x≥0, y≤0x\ge0,\ y\le0 は −π/2≤θ≤0-\pi/2\le\theta\le0 に対応する。この符号を間違えると積分値の符号が反転する。

未定乗数法の意味

Gx2+Gy2≠0G_x^2+G_y^2\ne0 は制約曲線上で勾配が消えないことを保証している。今回の制約は半径2の円であり、勾配 (2x,2y)(2x,2y) は円周上でゼロにならない。求めた4点は、円周上の xyxy の極値候補である。

ローラン展開と留数

中心を z=−1z=-1 に移すために w=z+1w=z+1 とおくと、展開は幾何級数そのものになる。積分値は経路の半径には依存せず、経路内の留数だけで決まる。z=0z=0 は円 ∣z+1∣=1/2|z+1|=1/2 の外側なので含めない。

行列計算の見通し

AA は対称行列なので、正規直交固有ベクトルを並べた行列で直交対角化できる。BB は「2つの成分を入れ替えて AA を掛ける」形なので、QQ は和と差の基底に変換している。したがって QBQQBQ が AA と −A-A のブロック対角形になる。

解答

Part (1)
  1. 指数関数と正弦を x=0x=0 のまわりで展開する。 e−5x=1−5x+252x2+O(x3),sin⁡2x=x2+O(x4). e^{-5x}=1-5x+\frac{25}{2}x^2+O(x^3),\qquad \sin^2 x=x^2+O(x^4). したがって e−5x+5x−1sin⁡2x=252x2+O(x3)x2+O(x4)⟶252. \frac{e^{-5x}+5x-1}{\sin^2 x} =\frac{\frac{25}{2}x^2+O(x^3)}{x^2+O(x^4)} \longrightarrow \frac{25}{2}.
  2. 変数変換 x=rcos⁡θ,y=2rsin⁡θ x=r\cos\theta,\qquad y=2r\sin\theta を用いる。ヤコビアンは ∣∂(x,y)∂(r,θ)∣=∣cos⁡θ−rsin⁡θ2sin⁡θ2rcos⁡θ∣=2r. \left|\frac{\partial(x,y)}{\partial(r,\theta)}\right| = \begin{vmatrix} \cos\theta & -r\sin\theta\\ 2\sin\theta & 2r\cos\theta \end{vmatrix} =2r. 領域は楕円の第4象限部分なので 0≤r≤1,−π2≤θ≤0. 0\le r\le 1,\qquad -\frac{\pi}{2}\le \theta\le 0. よって ∬Dy dxdy=∫−π/20∫01(2rsin⁡θ)(2r) drdθ=4(∫01r2 dr)(∫−π/20sin⁡θ dθ)=−43. \iint_D y\,dxdy = \int_{-\pi/2}^{0}\int_0^1 (2r\sin\theta)(2r)\,drd\theta = 4\left(\int_0^1r^2\,dr\right) \left(\int_{-\pi/2}^{0}\sin\theta\,d\theta\right) =-\frac{4}{3}.
  3. Fx=y,Fy=x,Gx=2x,Gy=2y. F_x=y,\qquad F_y=x,\qquad G_x=2x,\qquad G_y=2y. 未定乗数の条件は y−2λx=0,x−2λy=0,x2+y2=4. y-2\lambda x=0,\qquad x-2\lambda y=0,\qquad x^2+y^2=4. x=0x=0 または y=0y=0 とすると最初の2式と円周条件が両立しないので、 x,y≠0x,y\ne0 である。したがって x=2λy=4λ2x x=2\lambda y=4\lambda^2x から λ=±1/2\lambda=\pm 1/2 である。 λ=1/2\lambda=1/2 では y=xy=x、λ=−1/2\lambda=-1/2 では y=−xy=-x となるため、解は (x,y)=(2,2), (−2,−2), (2,−2), (−2,2). (x,y)=(\sqrt2,\sqrt2),\ (-\sqrt2,-\sqrt2),\ (\sqrt2,-\sqrt2),\ (-\sqrt2,\sqrt2).
  4. w=z+1w=z+1 とおくと f(z)=−1z(z+1)=−1(w−1)w=1w(1−w). f(z)=-\frac{1}{z(z+1)} =-\frac{1}{(w-1)w} =\frac{1}{w(1-w)}. 0<∣w∣<10<|w|<1 では f(z)=1w∑n=0∞wn=1z+1+1+(z+1)+(z+1)2+⋯ . f(z) =\frac1w\sum_{n=0}^{\infty}w^n =\frac{1}{z+1}+1+(z+1)+(z+1)^2+\cdots . 円 ∣z+1∣=1/2|z+1|=1/2 は極 z=−1z=-1 のみを囲み、ローラン展開の (z+1)−1(z+1)^{-1} の係数は 11 である。よって留数定理より ∫Cf(z) dz=2πi. \int_C f(z)\,dz=2\pi i.
Part (2)
  1. det⁡(A−λE)=∣−λaa−λ∣=λ2−a2. \det(A-\lambda E) = \begin{vmatrix} -\lambda & a\\ a & -\lambda \end{vmatrix} =\lambda^2-a^2. a>0a>0 なので λ1=a,λ2=−a. \lambda_1=a,\qquad \lambda_2=-a.
  2. λ1=a\lambda_1=a に対して u2=u1u_2=u_1、λ2=−a\lambda_2=-a に対して u2=−u1u_2=-u_1 である。 第1成分を非負にとると u1=12(11),u2=12(1−1). \boldsymbol{u}_1=\frac{1}{\sqrt2} \begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol{u}_2=\frac{1}{\sqrt2} \begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}.
  3. 固有ベクトルを列に並べると P=12(111−1). P= \frac{1}{\sqrt2} \begin{pmatrix} 1&1\\ 1&-1 \end{pmatrix}. PP は直交行列であり、P−1=PT=PP^{-1}=P^T=P である。実際に P−1AP=(a00−a)=(λ100λ2). P^{-1}AP = \begin{pmatrix} a&0\\ 0&-a \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \lambda_1&0\\ 0&\lambda_2 \end{pmatrix}.
  4. ブロック行列として計算する。Q=Q−1=QTQ=Q^{-1}=Q^T であり、 QB=12(EEE−E)(OAAO)=12(AA−AA). QB = \frac1{\sqrt2} \begin{pmatrix} E&E\\ E&-E \end{pmatrix} \begin{pmatrix} O&A\\ A&O \end{pmatrix} = \frac1{\sqrt2} \begin{pmatrix} A&A\\ -A&A \end{pmatrix}. したがって QBQ=(AOO−A)=(0a00a000000−a00−a0). QBQ = \begin{pmatrix} A&O\\ O&-A \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0&a&0&0\\ a&0&0&0\\ 0&0&0&-a\\ 0&0&-a&0 \end{pmatrix}.

最終答

@@MATH0@@ @@MATH0@@

第2問 — 力学

方針

球の自転ではなく、支点まわりの剛体回転として扱う。最初は物理振り子、後半は速度比例抵抗をもつ線形減衰振動に帰着する。

慣性モーメントの確認

球の中心を通る軸まわりの慣性モーメントだけを書くと不足である。実際の回転軸は支点を通るので、平行軸の定理による Mℓ2M\ell^2 が支配的な項になる。次元はいずれも ML2ML^2 でそろっている。

小振幅周期の検算

a→0a\to0 とすれば質点振り子になり、T0→2πℓ/gT_0\to2\pi\sqrt{\ell/g} となる。この極限が出ない場合は、慣性モーメントか重力トルクの腕の長さを取り違えている。

有限振幅で周期が長くなる理由

同じ角度 θ\theta に対して、線形近似の復元トルクは Mgℓ θMg\ell\,\theta だが、実際の復元トルクは Mgℓsin⁡θMg\ell\sin\theta であり、0<θ<π/20<\theta<\pi/2 では sin⁡θ<θ\sin\theta<\theta である。大振幅ほど平均的な復元作用が弱くなり、運動が遅くなるため周期は長くなる。

減衰項の符号

抵抗力の大きさだけを式に入れると符号を誤りやすい。抵抗トルクは常に θ˙\dot{\theta} と逆向きなので −2Mγℓ2θ˙-2M\gamma\ell^2\dot{\theta} である。この符号でなければ振幅が減衰しない。

試験で書くべきポイント

後半では問題文の仮定 ℓ≫a\ell\gg a を使って I≃Mℓ2I\simeq M\ell^2 とすることを明記する。これにより標準形 θ¨+2γθ˙+ω02θ=0\ddot{\theta}+2\gamma\dot{\theta}+\omega_0^2\theta=0 と比較でき、減衰角振動数をすぐに読める。

力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電磁気

方針

中心に電荷があり、殻も同心球なので球対称である。したがってガウス面を球に取れば、場の大きさはすぐ決まる。導体では電場ゼロ、誘電体では自由電荷に対して D\boldsymbol{D} を使うのが最短である。

導体殻の電荷分布

導体内部の電場をゼロにするため、内面には −q-q、外面には +q+q が誘起される。導体殻の正味電荷はゼロだが、外部から見た全電荷は中心電荷を含めて qq である。この点を見落とすと外部電場をゼロとしてしまう。

電位の連続性

電位は面電荷があっても有限に連続であり、電場の法線成分が不連続になる。したがって r=a,br=a,b で電位をつなぐ。導体内部が一定電位であることから、空洞内の電位には定数項 −1/a+1/b-1/a+1/b が必要になる。

誘電体での典型ミス

誘電体内で ε0\varepsilon_0 を使って電場を出すのは誤りである。ガウスの法則で直接決まるのは D=q/(4πr2)D=q/(4\pi r^2) であり、電場は E=D/εE=D/\varepsilon である。

内面の誘起電荷の符号

中心電荷が正なので誘電体内の分極は外向きである。しかし内面の外向き法線は空洞側、すなわち −r^-\hat{\boldsymbol{r}} である。したがって内面の束縛表面電荷は負になる。符号は物理的にも、正電荷に近い内面に負電荷が誘起されることと一致する。

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第4問 — 量子力学

方針

水素原子型ポテンシャルの問題である。前半はシュレディンガー方程式に明示的な微分演算子を代入し、後半は pp 軌道の角度因子が球面調和関数の l=1l=1 に対応することを使う。

基底状態の確認

e−r/a0e^{-r/a_0} を2回微分すると 1/r1/r を含む項が出る。この 1/r1/r 項がクーロンポテンシャルの項とちょうど打ち消し合うため、残りが定数倍になり固有関数であることが示せる。打ち消しを書かずにエネルギーだけを書くと、証明としては不十分である。

確率の次元

A2A^2 の次元は長さ−3^{-3} であり、4πr2dr4\pi r^2dr の次元は長さ3^3 である。したがって確率は無次元になる。積分変数を t=2r/a0t=2r/a_0 とするのは、確率密度が e−2r/a0e^{-2r/a_0} を含むからである。

角運動量の典型ミス

l^z\hat{l}_z の固有値は eimϕe^{im\phi} の指数 mm で決まる。e−iϕe^{-i\phi} を +ℏ+\hbar と読んでしまう符号ミスが多い。l^z=−iℏ∂/∂ϕ\hat{l}_z=-i\hbar\partial/\partial\phi を1行作用させれば符号は確実に決まる。

実軌道と固有関数

px,py,pzp_x,p_y,p_z 型の実関数は見慣れた軌道の形を与えるが、pxp_x と pyp_y は l^z\hat{l}_z の固有関数ではない。l^z\hat{l}_z は pxp_x を pyp_y に混ぜるので、測定される zz 成分の角運動量は単一値に定まらない。

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第5問 — 光学

方針

前半は薄レンズの符号規約を固定し、凹レンズが作る像を第2レンズの物体として扱う。後半は2波の位相差だけを追えばよい。

像距離の符号

凹レンズ単体では b1<0b_1<0 となる。これはレンズ右側に実際の光が集まらず、左側から出ているように見える像であることを意味する。b1b_1 を正にしてしまうと、第2レンズの物体距離 a2=L−b1a_2=L-b_1 も誤る。

倍率の符号

横倍率 m=−b/am=-b/a の符号は倒立・正立を表す。L=fL=f で m=−f/a1m=-f/a_1 となるので、最終像は符号付きでは倒立である。問題が倍率の大きさだけを求める意図なら f/a1f/a_1 と併記するのが安全である。

干渉縞の周期

スリット間隔は 2a2a である。通常の式 Δx=λL/d\Delta x=\lambda L/d に d=2ad=2a、k=2π/λk=2\pi/\lambda を入れると Δx=2πkL2a=πLka \Delta x=\frac{2\pi}{k}\frac{L}{2a}=\frac{\pi L}{ka} となり、導出結果と一致する。

位相差によるシフト

初期位相差 δ\delta は、光路差による位相 2kax/L2kax/L に加算される。明線条件を満たすには xx がその分だけ反対向きに動くため、シフトは −δL/(2ka)-\delta L/(2ka) である。符号まで答える場合は、図の xx 軸の向きに従って説明する。

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第6問 — 半導体物理

方針

理想MOSなので、まず VG=0V_G=0 がフラットバンドであることを使う。p型半導体では正のゲート電圧が空乏化と反転を起こし、負のゲート電圧が蓄積を起こす。

バンド曲がりと表面電位

半導体のバンド端は electrostatic potential が増えるとエネルギーとしては −qϕS-q\phi_S だけ下がる。したがって正の ϕS\phi_S は下向きバンド曲がりであり、p型表面を電子が多い状態へ近づける。

弱反転で完全空乏近似が使える理由

弱反転では電子は現れ始めるが、面電荷としてはまだ空乏層中のイオン化アクセプタが支配的である。そのため ρ=−qNA\rho=-qN_A と置いてポアソン方程式を解ける。強反転に入ると電子シート電荷が無視できなくなり、この近似だけでは不十分になる。

符号と電圧降下

QBQ_B は負である。一方、正のゲート電圧では金属側に正電荷が誘起され、酸化膜電圧 VoxV_{\mathrm{ox}} は正として Vox=−QB/CoxV_{\mathrm{ox}}=-Q_B/C_{\mathrm{ox}} と書ける。ここで符号を落とすと VGV_G が負になってしまう。

強反転での電圧配分

強反転では表面の EiE_i と EFE_F の相対位置がしきい条件付近に保たれる。追加電圧は主に酸化膜電場を増やし、反転電子の面密度を増やす。したがって dVG≃dVoxdV_G\simeq dV_{\mathrm{ox}} と考えられる。

試験で書くべきポイント

バンド図では EFE_F を平衡で水平に描くこと、p型なのでバルクで EiE_i が EFE_F より上にあること、強反転では表面でその関係がほぼ反転することを明示する。計算問題では E(Wp)=0E(W_p)=0 の境界条件を書いてから積分すると、係数 1/21/2 を落としにくい。

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筑波大 専門科目 院試 過去問の収録4年度