九州大学 院試 過去問 解答例
九大 理学府 物理学専攻 物理学 2026年度 院試 解答例・解説
九州大学 理学府 物理学専攻 物理学 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 物理学[I
方針
[I-A] はキャベンディッシュ実験の本質。重力トルクとねじりばかりの復元トルクのつり合い、微小振動から を測定し、未知力(万有引力)と比較するのが流儀である。慣性モーメントは棒(一様)と両端の質点を別々に評価する。[I-B] は球面振り子の微小振動を回転座標系で見るとフーコー型の運動方程式 になる。 で対角化し、 の近似で固有振動数 と歳差角速度 を分離する。
典型ミス
重力トルクの符号を誤りやすい。 で のとき は下方なので、重力モーメントは を増す向きに働き となる。慣性モーメントで一様な棒の係数を と書くこと。フーコー振り子で を と区別せず落とすと歳差項 も同時に消える誤りに繋がる。
試験で書くべきポイント
の数値計算では単位をメートル法に揃え、 を秒に直すこと。 を用い、有効数字 2 桁で と結ぶ。回転系では運動エネルギーから自動的に遠心ポテンシャル とコリオリ結合 が現れる点を明示する。
第2問 — 物理学[II
方針
[II-A] は同軸ケーブルの古典的問題でガウス・アンペールの法則とポインティング定理を組み合わせ,伝送電力 、エネルギー伝搬速度 を導く。 は相加相乗 で示せる。[II-B] は六重極磁場(シュテルン-ゲルラッハ的捕獲)。 から となるのが鍵で、ポテンシャルが調和振動子型 になる。
典型ミス
円筒座標での回転 で のみのとき 、。倍角公式で などを誤らないこと。 は の綺麗な形になり ( の代わりに極座標で考えると見やすい)。
試験で書くべきポイント
ポインティング定理の導出では Maxwell 方程式 (A3),(A4) に直接代入することを明示する。 は電子工学的な意味で重要なので強調。シュテルン-ゲルラッハの本問では (高磁場領域から押し出される;low-field-seeker 状態)が中性粒子トラップになることを述べる。(high-field-seeker)は逆に発散軌道。
第3問 — 物理学[III
方針
[III-A] は回転磁場中スピンのラビ振動。回転枠 で時間依存性を消し、 がゼロ(共鳴条件)のとき のみのハミルトニアンに帰着する。指数公式 で対角化なしに解ける。[III-B] はトーラス上の荷電粒子。ベクトルポテンシャルがあると運動量が共変運動量 に変わり、磁場下では が正準共役となりランダウ準位を作る。トーラスの周期性は磁束の量子化条件 を要求する。
典型ミス
回転枠への変換で の項を忘れない。()の符号と の規格化は対応している。基底状態の縮退度( で の 2 つ)は の偶関数性から生じる。 の量子化は閉路 の Aharonov-Bohm 位相が の整数倍であることに対応。
試験で書くべきポイント
ラビ振動では「共鳴条件 」のもとで完全な反転 が起こることに言及する。ランダウ準位の縮退度はこの問題では明示的には問われていないが、磁束量子化条件 ()として解釈を述べると深みが出る。
第4問 — 物理学[IV
方針
[IV-A] は剛体球気体(van der Waals 型)の典型的な導出。配置積分を逐次「除外体積 ずつ削る」と書き、低密度展開で 。状態方程式 から を読む。 個の粒子の除外体積 に対し、 個系の有効体積補正は半分 となる(重複カウント)のが本問の山場。[IV-B] は 1 モルの独立 2 準位スピン系。状態密度の逆ラプラス変換が積分 の極限になり、複素積分技法で 関数になることを示す。
典型ミス
の対数で ()の係数 を落とすと になってしまう。これが van der Waals の (重複除去)の起源。 の符号、 の境界条件 も注意する。 の証明では の上半閉路と の下半閉路を区別し、経路 が を上に避けることに注意。
試験で書くべきポイント
の計算では「すでに 個の粒子に対する排除体積が重ならない低密度極限」を明記する。状態方程式から を導いたあと、 で書けば で van der Waals 補正の半因子が現れることを述べる。複素積分では各経路で Jordan 補題が適用できる条件(被積分関数の半円上での減衰)と、極の位置()が経路 から見てどちら側か、を明示する。