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九州大学 院試 過去問 解答例

九大 理学府 物理学専攻 物理学 2023年度 院試 解答例・解説

九州大学 理学府 物理学専攻 物理学 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 物理学[I

方針

[I-A] は撃力直後の初期条件(並進・回転)を作り、滑り区間で動摩擦の方程式 v˙=μg\dot v=\mu gω˙=5μg/(2a)\dot\omega=-5\mu g/(2a) を解いて v=aωv=a\omega になる時刻を求める。v0=aω0v_0=a\omega_0 となる「ぴったり転がる高さ」は h0=7a/5h_0=7a/5 で、これより上で打つと初期に滑りがあり、最終的に純粋転がりに移行して v1=5Ph/(7Ma)v_1=5Ph/(7Ma) で収束する。 [I-B] は円筒座標 (r,θ,z)(r,\theta,z) で拘束 z=r2/(2a)z=r^2/(2a) を用い、z˙=rr˙/a\dot z=r\dot r/a を入れた LL から循環座標 θ\theta の保存則と rr の方程式を導出。安定円軌道のまわりの微小振動は ωr2=4ga/(a2+r02)\omega_r^2=4ga/(a^2+r_0^2)

典型ミス

撃力時の角運動量変化で「中心と作用点の距離」を hh ではなく hah-a にする(中心高さは aa)。摩擦力の向きを取り違え v˙\dot vω˙\dot\omega の符号を間違える。ω\omega を時計回り正にとるか反時計回り正にとるかを最初に固定する。rr の運動方程式で r˙2/a2\dot r^2/a^2 の項を落とすと係数が変わる。微小振動で 1+r02/a21+r_0^2/a^2 の有効質量因子を忘れると ωr2=4g/a\omega_r^2=4g/a になってしまう。

試験で書くべきポイント

慣性モーメントの導出は (x2+y2)(x^2+y^2) を球座標で積分する流れを明示し、ヒントの sinn\sin^n 公式を使うことを明記する。撃力の問題では「直後の運動量・角運動量を求める→純粋転がり条件 v=aωv=a\omega を立てる→運動方程式を積分」という構造を最初に書く。回転放物面の問題では Noether 保存則として mr2θ˙mr^2\dot\theta の物理意味を述べ、円軌道の安定性は1次の有効ポテンシャル展開で締めくくる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 物理学[II

方針

[II-A] は静磁場の Poisson 型方程式に帰着し、zz 方向のみのベクトルポテンシャルなら B\boldsymbol B は2次元的な (yf,xf)(\partial_y f,-\partial_x f) となる。電流の無い領域では ff は調和関数で、複素関数論(CR と Taylor 展開)で解析。ln(ζawk)\ln(\zeta-aw^k) の和は8回対称の双極子配列を作るが、原点付近の主要項は ζ2\zeta^2 で4極子的に振る舞う。 [II-B] は導波管のスタンダード問題。Helmholtz 型方程式に分離した上で TM の境界条件 Ez=0E_z=0 から sinsin\sin\sin モードを取り、分散関係 ω2=c2[kz2+κ2]\omega^2=c^2[k_z^2+\kappa^2] から vgvp=c2v_g v_p=c^2 という重要関係を導く。

典型ミス

B=×A\boldsymbol B=\nabla\times\boldsymbol A の符号で By=xfB_y=-\partial_x f の負号を落とす。ln(awk)=lna+i(π+kπ/4)\ln(-aw^k)=\ln a+i(\pi+k\pi/4) の枝の処理を間違えて c0c_0 を実数にしてしまう(実部 uu には影響しないが、ff の値域は虚軸上)。Taylor 展開で ζ=awk\zeta=aw^k を「中心」にしたつもりで 1/ζ1/\zeta ではなく ζ/(awk)\zeta/(aw^k) で展開することを意識する。導波管で TM と TE の境界条件を取り違える(TM は EzE_z が境界で 0、TE は HzH_z の法線微分が 0)。

試験で書くべきポイント

ベクトル解析の公式を引用してから A=0\nabla\cdot\boldsymbol A=0 で帰着、という流れを最初に書く。ベクトル場の図の選択は原点近傍の主要項 c2ζ2c_2\zeta^2 から B=(4x/a2,4y/a2)\boldsymbol B=(-4x/a^2,4y/a^2) を計算し、双極子ではなく鞍点パターンに対応する [c] と答える論理を明示する。導波管の最後では「位相速度は光速を超えるが、群速度は光速を超えない、両者の積が c2c^2」という相対論的整合性をひと言添える。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 物理学[III

方針

[III-A] は不確定性関係の標準的な導出。ΔA^ΔB^\Delta\hat A\Delta\hat B をエルミート部と反エルミート部に分け、後者の係数 D^=[A^,B^]/i\hat D=[\hat A,\hat B]/i がエルミートであることを使い、Schwarz の不等式 ααββαβ2\langle\alpha|\alpha\rangle\langle\beta|\beta\rangle\ge|\langle\alpha|\beta\rangle|^2α=ΔA^ψ|\alpha\rangle=\Delta\hat A|\psi\rangle を入れて結ぶ。ガウス状態は等号を達成するので (Δp^)2\langle(\Delta\hat p)^2\rangle2/(2d2)\hbar^2/(2d^2) と直ちに決まる。 [III-B] は時間依存摂動論の典型。相互作用描像の係数 Cm(t)C_m(t) の方程式を λ\lambda で展開、振動 cosine 摂動から共鳴項(ωm±ω0\omega_{m\ell}\pm\omega\to 0)を読む。

典型ミス

ΔA^ΔB^\Delta\hat A\Delta\hat B のエルミート部・反エルミート部の取り出しで C^,D^\hat C,\hat D の規約(1/21/21/i1/i)を間違える。E^+iF^2|\langle\hat E+i\hat F\rangle|^2 の計算で E^,F^\hat E,\hat F がエルミートなら期待値が実数だから単純に二乗の和になる、という事実を使い忘れる。ガウス波束で x^=pψ\langle\hat x\rangle=p_\psi と勘違いしない(pψp_\psi は運動量期待値、x^\hat x の期待値は 00)。摂動論で空欄 あ を ei(EnEm)t/e^{i(E_n-E_m)t/\hbar} と符号反対に書かないように。

試験で書くべきポイント

不確定性関係の導出は (1)(2)(3)(4) の流れに沿い、最後に Schwarz と (2)(3) の組合せで結論を結ぶ構造を見せる。ガウス状態の運動量分散は等号成立から逆算できると一行添える。摂動論では ωm=(EmE)/\omega_{m\ell}=(E_m-E_\ell)/\hbar を定義してから cosine を二つの指数に分解し「吸収・誘導放出」の解釈を最後に書く。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 物理学[IV

方針

[IV-A] は熱力学の標準的な穴埋めから始め、Helmholtz の自由エネルギーの自然変数 (T,V)(T,V) から Maxwell 関係式 (S/V)T=(p/T)V(\partial S/\partial V)_T=(\partial p/\partial T)_V を導く流れ。VdW では (U/V)T=a/V2(\partial U/\partial V)_T=a/V^2TT に依らないので CVC_VVV に依らない。断熱準静は CVdT+aV2dV+pdV=0C_V dT+\tfrac{a}{V^2}dV+pdV=0 から a/V2a/V^2 が消えて T(Vb)R/CV=T(V-b)^{R/C_V}= const。 [IV-B] は半楕円状態密度の Sommerfeld 展開。D(ε)=D(ε)D(\varepsilon)=D(-\varepsilon)μ=0\mu=0 から T=0T=0 の内部エネルギーが解析的に書け、低温比熱は T\propto T。磁化率は1次展開で Pauli 常磁性 μB2D0\mu_B^2 D_0、温度補正は D(0)D''(0) から 1-1 次の係数を持つ。

典型ミス

Helmholtz と Gibbs の混同:FF の自然変数は (T,V)(T,V) で、dF=SdTpdVdF=-SdT-pdV。Maxwell の符号を逆に書かない。VdW で「内部エネルギーは温度のみの関数」と仮定してしまうと a/V2a/V^2 の補正で間違える。Sommerfeld 展開で1次の温度補正は D(μ)D'(\mu)、磁化率の温度補正は D(0)D''(0) という階数の違いに注意。半楕円なので D(0)=0D'(0)=0(偶関数の極大)、χ\chiTT 依存性は D(0)<0D''(0)<0 から「下に凸の減少」になる。

試験で書くべきポイント

熱力学関係式は「自然変数を明示→自由エネルギーから Maxwell→ (U/V)T(\partial U/\partial V)_T の表式」という流れを書く。VdW の断熱準静で a/V2a/V^2 の項が消える経緯(pdVpdV の中の a/V2-a/V^2(U/V)T=a/V2(\partial U/\partial V)_T=a/V^2 と打ち消し合う)を明示する。Sommerfeld 展開を「温度0次+T2T^2 補正」として体系的に使い、χ(T)\chi(T) の係数で D0/E02D_0/E_0^2 の出所が D(0)D''(0) である点を強調する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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