九州大学 院試 過去問 解答例
九大 理学府 物理学専攻 物理学 2023年度 院試 解答例・解説
九州大学 理学府 物理学専攻 物理学 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 物理学[I
方針
[I-A] は撃力直後の初期条件(並進・回転)を作り、滑り区間で動摩擦の方程式 、 を解いて になる時刻を求める。 となる「ぴったり転がる高さ」は で、これより上で打つと初期に滑りがあり、最終的に純粋転がりに移行して で収束する。 [I-B] は円筒座標 で拘束 を用い、 を入れた から循環座標 の保存則と の方程式を導出。安定円軌道のまわりの微小振動は 。
典型ミス
撃力時の角運動量変化で「中心と作用点の距離」を ではなく にする(中心高さは )。摩擦力の向きを取り違え と の符号を間違える。 を時計回り正にとるか反時計回り正にとるかを最初に固定する。 の運動方程式で の項を落とすと係数が変わる。微小振動で の有効質量因子を忘れると になってしまう。
試験で書くべきポイント
慣性モーメントの導出は を球座標で積分する流れを明示し、ヒントの 公式を使うことを明記する。撃力の問題では「直後の運動量・角運動量を求める→純粋転がり条件 を立てる→運動方程式を積分」という構造を最初に書く。回転放物面の問題では Noether 保存則として の物理意味を述べ、円軌道の安定性は1次の有効ポテンシャル展開で締めくくる。
第2問 — 物理学[II
方針
[II-A] は静磁場の Poisson 型方程式に帰着し、 方向のみのベクトルポテンシャルなら は2次元的な となる。電流の無い領域では は調和関数で、複素関数論(CR と Taylor 展開)で解析。 の和は8回対称の双極子配列を作るが、原点付近の主要項は で4極子的に振る舞う。 [II-B] は導波管のスタンダード問題。Helmholtz 型方程式に分離した上で TM の境界条件 から モードを取り、分散関係 から という重要関係を導く。
典型ミス
の符号で の負号を落とす。 の枝の処理を間違えて を実数にしてしまう(実部 には影響しないが、 の値域は虚軸上)。Taylor 展開で を「中心」にしたつもりで ではなく で展開することを意識する。導波管で TM と TE の境界条件を取り違える(TM は が境界で 0、TE は の法線微分が 0)。
試験で書くべきポイント
ベクトル解析の公式を引用してから で帰着、という流れを最初に書く。ベクトル場の図の選択は原点近傍の主要項 から を計算し、双極子ではなく鞍点パターンに対応する [c] と答える論理を明示する。導波管の最後では「位相速度は光速を超えるが、群速度は光速を超えない、両者の積が 」という相対論的整合性をひと言添える。
第3問 — 物理学[III
方針
[III-A] は不確定性関係の標準的な導出。 をエルミート部と反エルミート部に分け、後者の係数 がエルミートであることを使い、Schwarz の不等式 に を入れて結ぶ。ガウス状態は等号を達成するので が と直ちに決まる。 [III-B] は時間依存摂動論の典型。相互作用描像の係数 の方程式を で展開、振動 cosine 摂動から共鳴項()を読む。
典型ミス
のエルミート部・反エルミート部の取り出しで の規約( や )を間違える。 の計算で がエルミートなら期待値が実数だから単純に二乗の和になる、という事実を使い忘れる。ガウス波束で と勘違いしない( は運動量期待値、 の期待値は )。摂動論で空欄 あ を と符号反対に書かないように。
試験で書くべきポイント
不確定性関係の導出は (1)(2)(3)(4) の流れに沿い、最後に Schwarz と (2)(3) の組合せで結論を結ぶ構造を見せる。ガウス状態の運動量分散は等号成立から逆算できると一行添える。摂動論では を定義してから cosine を二つの指数に分解し「吸収・誘導放出」の解釈を最後に書く。
第4問 — 物理学[IV
方針
[IV-A] は熱力学の標準的な穴埋めから始め、Helmholtz の自由エネルギーの自然変数 から Maxwell 関係式 を導く流れ。VdW では が に依らないので は に依らない。断熱準静は から が消えて const。 [IV-B] は半楕円状態密度の Sommerfeld 展開。 と から の内部エネルギーが解析的に書け、低温比熱は 。磁化率は1次展開で Pauli 常磁性 、温度補正は から 次の係数を持つ。
典型ミス
Helmholtz と Gibbs の混同: の自然変数は で、。Maxwell の符号を逆に書かない。VdW で「内部エネルギーは温度のみの関数」と仮定してしまうと の補正で間違える。Sommerfeld 展開で1次の温度補正は 、磁化率の温度補正は という階数の違いに注意。半楕円なので (偶関数の極大)、 の 依存性は から「下に凸の減少」になる。
試験で書くべきポイント
熱力学関係式は「自然変数を明示→自由エネルギーから Maxwell→ の表式」という流れを書く。VdW の断熱準静で の項が消える経緯( の中の が と打ち消し合う)を明示する。Sommerfeld 展開を「温度0次+ 補正」として体系的に使い、 の係数で の出所が である点を強調する。