九州大学 院試 過去問 解答例
九大 理学府 物理学専攻 物理学 2020年度 院試 解答例・解説
九州大学 理学府 物理学専攻 物理学 2020年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 物理学[I
方針
[A-I] は変分原理の標準導出。 を消すため部分積分し、端点条件で境界項を落として任意性から E-L 方程式を出す。[A-II] では の構成、 がハミルトニアン(時間並進対称性に対応する保存量)であることを使う。[B] は剛体回転の典型問題。撃力では 、歳差では で水平成分の連立 ODE を で解くと が即出る。
典型ミス
変分の境界項 を残したまま から E-L を導いてしまう( を明示する)。 を と見なすには が時間に陽依存しないことが必要。歳差の角運動量を 軸まわりではなく軸方向に取る点(問題で指定)を見落とすと の表式が変わる。
試験で書くべきポイント
変分計算ではテイラー展開→部分積分→境界項処理→任意性の四段階を明示する。 のように運動方程式を経由して保存則を示す手順を書く。歳差では から複素変数化()で を作ると、初期条件と が同時に求まることを示すと検算が容易。
第2問 — 物理学[II
方針
[A-I] は双極子ポテンシャルの 展開の典型導出。[A-II] は鏡像(双極子像)法:等電位面 で から を決め、(外側のみ)で表面電荷を計算。[B-I] はアンペールの法則を境界をまたぐループに適用する標準証明。[B-II] は ( ハーモニクス)でラプラス方程式を解き、 成分連続から 、 成分のジャンプから表面電流密度。
典型ミス
[A-I] (3) で を一次までに展開する際、 と書くべきところを符号を誤って としやすい。導体球表面電荷 は導体外側の法線電場 のみで決まり、(一様電場 と双極子寄与 の和)になる係数 を間違えやすい。 の境界条件は内部 ( は 軸正向きなので 成分は )。
試験で書くべきポイント
[A-II] では の境界条件を書き下し、 の決定式を明示する。[B-I] は で 方向辺の寄与が消えること、 の右ねじ整合を一言添える。[B-II] (2) は を陽に計算し、無限遠条件で を選ぶことを明記する。
第3問 — 物理学[III
方針
[A] は調和振動子の代数的構成の標準問題。生成消滅演算子の交換関係から のスペクトルが非負整数であることを示し、 を で書き換えて期待値を取る。後半は二次元 Fock 空間における Schwinger ボソン表現で、 が角運動量代数を満たす。 は と置けば の形である。[B] は ハミルトニアンの典型対角化と avoided crossing。
典型ミス
の期待値で と の両方を取り、 を忘れて にしてしまう(正解は )。縮退度の数え上げで に の 状態を見落とす。[B] (4) で 、(添字と縦並びが入れ替わっている)を取り違える。
試験で書くべきポイント
から「 は固有値を 下げる」という階段構造を明示し、非負性と整数性を別々に示す。 を に展開して相殺を使う。 は半角の形 (混合角 )に書くと幾何学的意味が明瞭になる。
第4問 — 物理学[IV
方針
[A] は単原子理想気体の標準的なポアソン式と Carnot サイクルの効率関係。 から を経由するのが要。[B] は 二択の連鎖を二項分布で扱い、エントロピー弾性(ゴム弾性のミクロモデル)を導く問題。 の符号と、近似 がポイント。[C] は重力下の理想気体の典型的なカノニカル計算。 積分が指数分布になる点と、 が に比例する点が熱容量の値を決める。
典型ミス
[A](2) で と の両方が必要なのに、 から直接 を取らず で押し通そうとして詰まる。[B](3) のスターリング近似で 系列の項()が打ち消すことを使わずに残してしまう。[C] の で なのに の積分公式()を使うと係数が 倍ずれる。 の位相空間因子も忘れがち。
試験で書くべきポイント
[A](4) では 定数を断熱過程の両辺に適用して を出し、 を等温過程での仕事の対数表式に代入する。[B](4) では が小さい極限で線形 となり、有効ばね定数が と温度に比例することが「エントロピー弾性」のキーフィーチャー。[C](4) では「並進 3 自由度の 」と「重力ポテンシャルの平均値 から来る 」の足し算と読み解き、5/2 倍の半古典的等分配で説明できることに触れる。