院試hub

九州大学 院試 過去問 解答例

九大 理学府 物理学専攻 物理学 2025年度 院試 解答例・解説

九州大学 理学府 物理学専攻 物理学 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 物理学[I

方針

[I-A] は剛体の慣性モーメント、エネルギー保存、衝突時の角運動量保存を組み合わせる典型問題。微小傾斜からの転倒は実質的に不安定平衡 θ=π/4\theta=\pi/4 からの落下と等価で、最高点を超えるか否かで「向こう側へ転がる条件」が決まる。[I-B] は循環座標を持つ Lagrange 系。撃力後の初期条件は糸方向の張力のみが撃力的に働くことから決定する。

典型ミス

OO まわりの慣性モーメント IOI_OIG+Ma2I_G+Ma^2 と書きがちだが、OO から重心 GG までの距離は面対角線 2a\sqrt 2\,a である。撃力直後の初期条件で「θ˙(0)=0\dot\theta(0)=0」と早合点しない:糸の長さ拘束 x˙2=x˙1+θ˙=0\dot x_2=\dot x_1+\ell\dot\theta=0 から θ˙(0)=I/(m1)\dot\theta(0)=-I/(m_1\ell) が得られる。

試験で書くべきポイント

角運動量保存(衝突)とエネルギー保存(最高点条件)の使い分けを明示する。Lagrange 系では x1x_1 が循環座標であることに気付き、保存量 (m1+m2)x˙1+m2cosθθ˙=I=const(m_1+m_2)\dot x_1+m_2\ell\cos\theta\,\dot\theta=I=\mathrm{const} から x¨1\ddot x_1θ¨\ddot\theta の関係式を一発で得るのが速い。x1(t)x_1(t) に等速ドリフト項 It/(m1+m2)It/(m_1+m_2)(系全体の重心運動)が現れることに必ず触れる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 物理学[II

方針

[II-A] は Yukawa 型ポテンシャルを題材とした δ\delta 関数の入れ子問題。(r/r3)=4πδ3\nabla\cdot(\boldsymbol r/r^3)=4\pi\delta^3 を発散の積分とガウスの定理から導出する手順は完全に試験標準。続く電荷密度計算では公式 a)(積の発散)と b)(δ\delta 関数の引数性質)を順に適用する。[II-B] は HH 偏光(TM 波と紐づくが、ここでは Hey\boldsymbol H\parallel\boldsymbol e_y)における Fresnel の式の導出。境界条件 HyH_y 連続と ExE_x 連続から Ar/AiA_r/A_i を得て、Brewster 角の条件 Ar=0A_r=0 を Snell の法則と連立する。

典型ミス

(r/r3)=0\nabla\cdot(\boldsymbol r/r^3)=0 と書くと、これは r0r\ne 0 でしか正しくない。原点での寄与 4πδ34\pi\delta^3 を必ず加える。電荷密度の符号:原点の点電荷は +q0+q_0、まわりの遮蔽電荷雲は q0-q_0(合計ゼロ)。Brewster 角の式は屈折率の定義(n=n= 透過側/入射側)の取り方で逆数になりやすいので、本問では「真空=1、絶縁体=nn」なので tanθB=n2/n1=n/1=n\tan\theta_B=n_2/n_1=n/1=n ではなく、磁場が yy 成分(TM 偏光)の場合の境界条件から得られる tanθ0=1/n\tan\theta_0=1/n となる点に注意。

試験で書くべきポイント

δ\delta 関数導出ではガウスの定理を使った球面流束 4π4\pi を明示し、特異点とそれ以外の領域を分けて議論する。Snell の法則の導出は「境界条件が任意の x,tx,t で成立するためには指数(ここでは余弦)の引数の係数が一致しなければならない」という位相整合の論理を必ず一文で述べる。ExE_x の境界条件への変換は ×H=εtE\nabla\times\boldsymbol H=\varepsilon\partial_t\boldsymbol Exx 成分を zz 微分で書き、両側の ε\varepsilon の違い(ε0\varepsilon_0ε1=n2ε0\varepsilon_1=n^2\varepsilon_0)を経て 1/n1/n の係数が現れる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 物理学[III

方針

[III-A] は不確定性関係の本格的な導出。エルミート性/反エルミート性の判定、シュワルツ不等式、交換子と反交換子の分解、最後に座標表示で1階線形 ODE を解くという流れ。等号成立条件から Gauss 波束を「導く」点が見せ場。[III-B] は調和振動子の標準解法。漸近形 ey2/2e^{-y^2/2} の取り出しからエルミート方程式への帰着、規格化までを一気通貫で書ける必要がある。電場印加後はポテンシャルを平方完成し、中心がシフトした振動子として扱って時間発展を固有関数展開で書く。

典型ミス

z=irz=ir の符号を誤って r>0r>0 とすると規格化不能解になる。実際は r<0r<0(または等価に r=2(Δx)2>0|r|\hbar=2(\Delta x)^2>0)が要請される。エルミート方程式の指数 2n=2ϵ/(ω)12n=2\epsilon/(\hbar\omega)-1 から ϵn=ω(n+1/2)\epsilon_n=\hbar\omega(n+1/2) を導く際、係数 1/21/2 を落としやすい。電場下のエネルギーは (eE)2/(2mω2)-(eE)^2/(2m\omega^2) だけ「下がる」点(電場は仕事をする方向)で符号を要確認。

試験で書くべきポイント

不確定性関係の導出では、ABAB を交換子+反交換子に分けたとき「交換子の期待値が純虚数、反交換子の期待値が実数」なので AB2=14[A^,B^]2+14{A,B}2|\langle AB\rangle|^2=\tfrac{1}{4}|\langle[\hat A,\hat B]\rangle|^2+\tfrac{1}{4}\langle\{A,B\}\rangle^2 と分離されることを明記。Gauss 波束の規格化は ex2/(2(Δx)2)dx=2πΔx\int e^{-x^2/(2(\Delta x)^2)}dx=\sqrt{2\pi}\Delta x から係数 (2π(Δx)2)1/4(2\pi(\Delta x)^2)^{-1/4} が出る。電場下の調和振動子は平方完成「xxx0x\to x-x_0」で問題が元に戻るというロジックを明示する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 物理学[IV

方針

[IV-A] は熱力学関数の Maxwell 関係式と内部エネルギーの体積依存。dU=TdSpdVdU=TdS-pdV から導く流儀と Helmholtz から導く流儀を統一して書く。[IV-B] はカノニカル分布の標準操作(エネルギー期待値・分散・熱容量と lnZ\ln Z の微分の関係)と表面吸着のグランドカノニカル。N0N_0 乗の意味と 1+αa(T)1+\alpha a(T) の各項の物理的解釈を3点(空/占有/重み eβμe^{\beta\mu})で説明する。[IV-C] は1次元ランダムウォーク的ポリマー。Stirling 近似で F(L)F(L) を導き、小展開で Gauss 化、張力 f=F/Lf=\partial F/\partial L がエントロピー弾性 T\propto T で得られる。

典型ミス

C=kBβ02σ2C=k_B\beta_0^2\sigma^2 の係数 β02\beta_0^21/T021/T_0^2 の変換から)を落とす。化学ポテンシャル μ\mu の符号:N<N0N<N_0 では μ<0\mu<0 となるのが通常で、μ=β1ln[N/((N0N)a)]\mu=\beta^{-1}\ln[N/((N_0-N)a)] から a(T)1a(T)\sim 1NN0N\ll N_0 なら μkBTln(N/N0)<0\mu\sim k_BT\ln(N/N_0)<0。Stirling 近似後 1-1 の項が NN の保存で消える点を見落とすと余計な定数が残る。エントロピー弾性の符号は「LL を伸ばすほど自由エネルギーが上がる」ので f=F/L>0f=\partial F/\partial L>0L>0L>0 で)。

試験で書くべきポイント

熱容量を σ2\sigma^2 で書く流儀は揺らぎ・散逸関係の典型例として明示する。表面吸着では「グランドカノニカルの定義」「独立性から N0N_0 乗」「11 は空状態、αa(T)\alpha a(T) は占有状態(α=eβμ\alpha=e^{\beta\mu})」の3点を必ず書く。ポリマーでは「エネルギーは無視されるので分配関数は状態数そのもの」「LL について Gauss 化されることがランダムウォークと同じ」「張力 fTf\propto T がエントロピー由来」を強調。L2=Nb2\langle L^2\rangle=Nb^2 は Gauss 分布の分散から直接、または分配関数で 2F/L2\partial^2 F/\partial L^2 から熱力学揺らぎとして得られる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

九州大学 物理学 — 他の年度