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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 理学系研究科 化学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。化学4問。テーマタグは1件(転位)。2024年度と共通のテーマは転位。

最終更新:

収録3年度分の解答PDF:東京大学 理学系研究科 化学(¥2,180・紙面見本あり)

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

東大 化学 2025年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は化学4問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学物理化学基礎分子軌道の検算 / 速度式の定義あり
第2問化学物理化学標準力の定数の符号 / 擬 Jahn--Teller 的な見方あり
第3問化学有機化学基礎カルボニルの比較 / アセト酢酸エステル合成あり
第4問化学有機化学標準Cope 転位の描き方 / 原子効率あり
第5問—無機・分析化学基礎Latimer 図 / EDTA 滴定あり
第6問—無機・分析化学標準18電子則 / 磁気モーメントあり

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は1問に1テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
転位第4問7大学・42問

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 6問 → 2025年度 6問
両年度に出たテーマ
転位
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第1問 — 物理化学基礎

分子軌道の検算

第2周期二原子分子では,酸素・フッ素側とホウ素・炭素・窒素側で σ2p\sigma_{2p} と π2p\pi_{2p} の順序が入れ替わる。これは単なる暗記ではなく, 2s--2p 混合の強さで決まる。原子番号が小さいほど 2s と 2p が近く,混合による 反発が大きい,と説明できると記述問題で強い。

速度式の定義

総括反応の速度 vv と,反応物 X3X_3 の消費速度 −d[X3]/dt-d[X_3]/dt は係数 2 だけ異なる。 答案ではどちらを速度と呼んだかを一言添えると,量論係数による減点を避けやすい。

圧力効果

ダイヤモンドの方がモル体積が小さいため,高圧で ΔV(P−P∘)\Delta V(P-P^\circ) が負に働く。 この符号を物理的に確認しておくと,必要圧を負にしてしまう典型ミスを防げる。

解答

  1. 酸素分子では 2p 由来の準位を σ2pz<π2px=π2py<π2px∗=π2py∗<σ2pz∗ \sigma_{2p_z}<\pi_{2p_x}=\pi_{2p_y}<\pi^*_{2p_x}=\pi^*_{2p_y}<\sigma^*_{2p_z} の順に詰める。したがって (σ2s)2(σ2s∗)2(σ2pz)2(π2p)4(π2p∗)2 (\sigma_{2s})^2(\sigma^*_{2s})^2(\sigma_{2p_z})^2 (\pi_{2p})^4(\pi^*_{2p})^2 であり,二つの π∗\pi^* 軌道に同じ向きのスピンが一つずつ入る。結合次数は Nbonding−Nantibonding2=8−42=2 \frac{N_{\mathrm{bonding}}-N_{\mathrm{antibonding}}}2 =\frac{8-4}{2}=2 である。
  2. O2+\mathrm O_2^+ は反結合性 π∗\pi^* から電子を一つ失うので結合次数は 2.52.5,O2−\mathrm O_2^- は反結合性 π∗\pi^* に電子を一つ加えるので結合次数は 1.51.5 である。結合次数が小さいほど結合は長く弱くなるため,O2\mathrm O_2 より 結合長が長いのは O2−\mathrm O_2^- である。
  3. 結合次数は結合性電子数と反結合性電子数の差の半分であり, O2−\mathrm O_2^- では反結合性軌道の占有が増えるので結合次数が下がり,結合が伸びる。
  4. B2,C2,N2\mathrm B_2,\mathrm C_2,\mathrm N_2 では 2s と 2p のエネルギー差が小さく, 同じ σ\sigma 対称性を持つ軌道どうしが強く混合する。この相互作用で σ2p\sigma_{2p} が押し上げられ,π2p\pi_{2p} より高くなる。
  5. 反応中間体を XX とし,速度定数を k1,k−1,k2k_1,k_{-1},k_2 とおく。定常状態近似より d[X]dt=k1[X3]−k−1[X][X2]−k2[X][X3]≃0 \frac{d[X]}{dt}=k_1[X_3]-k_{-1}[X][X_2]-k_2[X][X_3]\simeq0 であるから [X]=k1[X3]k−1[X2]+k2[X3]. [X]=\frac{k_1[X_3]}{k_{-1}[X_2]+k_2[X_3]}.
  6. X3X_3 の消費速度として書けば −d[X3]dt=k1[X3]−k−1[X][X2]+k2[X][X3]=2k2[X][X3]. -\frac{d[X_3]}{dt} =k_1[X_3]-k_{-1}[X][X_2]+k_2[X][X_3] =2k_2[X][X_3]. したがって −d[X3]dt=2k1k2[X3]2k−1[X2]+k2[X3]. -\frac{d[X_3]}{dt} =\frac{2k_1k_2[X_3]^2}{k_{-1}[X_2]+k_2[X_3]}. 全反応 2X3→3X22X_3\to3X_2 の反応速度 vv を量論係数で定義するなら v=−12d[X3]/dtv=-\frac12 d[X_3]/dt である。
  7. 第1素過程が前駆平衡なら K=[X][X2][X3]=k1k−1,[X]=k1k−1[X3][X2]. K=\frac{[X][X_2]}{[X_3]}=\frac{k_1}{k_{-1}}, \qquad [X]=\frac{k_1}{k_{-1}}\frac{[X_3]}{[X_2]}. よって −d[X3]dt=2k2k1k−1[X3]2[X2]. -\frac{d[X_3]}{dt} =2k_2\frac{k_1}{k_{-1}}\frac{[X_3]^2}{[X_2]}.
  8. 定常状態式が前駆平衡式へ近づくには k−1[X2]≫k2[X3] k_{-1}[X_2]\gg k_2[X_3] が必要である。すなわち,中間体 XX が X3X_3 と反応する前に,十分速く X2+XX_2+X から X3X_3 へ戻る条件である。
  9. 燃焼エンタルピーから Hess の法則を使うと,グラファイトからダイヤモンドへの エンタルピー変化は ΔH∘=(−393.5)−(−395.4)=1.9 kJ mol−1. \Delta H^\circ =(-393.5)-(-395.4)=1.9\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}. 標準エントロピー変化は ΔS∘=2.377−5.740=−3.363 J K−1 mol−1. \Delta S^\circ=2.377-5.740=-3.363\ \mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}. したがって ΔG∘=1.9−298×(−3.363×10−3)=2.9 kJ mol−1 \Delta G^\circ =1.9-298\times(-3.363\times10^{-3}) =2.9\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} である。正の値なので標準状態では自発的に進まない。
  10. モル体積は Vg=12.012.260=5.31 cm3 mol−1,Vd=12.013.513=3.42 cm3 mol−1. V_{\mathrm g}=\frac{12.01}{2.260}=5.31\ \mathrm{cm^3\,mol^{-1}},\qquad V_{\mathrm d}=\frac{12.01}{3.513}=3.42\ \mathrm{cm^3\,mol^{-1}}. よって ΔV=Vd−Vg=−1.90×10−6 m3 mol−1\Delta V=V_{\mathrm d}-V_{\mathrm g}=-1.90\times10^{-6}\ \mathrm{m^3\,mol^{-1}}。 温度一定で ΔG(P)≃ΔG∘+ΔV(P−P∘)\Delta G(P)\simeq\Delta G^\circ+\Delta V(P-P^\circ) と近似すれば P−P∘=−ΔG∘ΔV≃2.9×1031.90×10−6=1.5×109 Pa. P-P^\circ=\frac{-\Delta G^\circ}{\Delta V} \simeq \frac{2.9\times10^3}{1.90\times10^{-6}} =1.5\times10^9\ \mathrm{Pa}. 標準圧はこの桁では無視できるので,必要圧は約 1.5×109 Pa1.5\times10^9\ \mathrm{Pa} である。

最終答

O2−\mathrm O_2^- の方が O2\mathrm O_2 より長い。反応速度は −d[X3]/dt=2k1k2[X3]2/(k−1[X2]+k2[X3])-d[X_3]/dt=2k_1k_2[X_3]^2/(k_{-1}[X_2]+k_2[X_3]),前駆平衡では 2k1k2[X3]2/(k−1[X2])2k_1k_2[X_3]^2/(k_{-1}[X_2])。グラファイトからダイヤモンドへの ΔG∘\Delta G^\circ は約 2.9 kJ mol−12.9\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}},必要圧は約 1.5×109 Pa1.5\times10^9\ \mathrm{Pa}。

第2問 — 物理化学標準

力の定数の符号

第二次摂動項は通常の基底状態安定化と同じで,分母が負になる。したがって 励起状態が近いほどエネルギー面は柔らかくなる。ここを正にしてしまうと 「混合が強いほど硬くなる」という物理的に逆の結論になる。

擬 Jahn--Teller 的な見方

この問題は,構造変形によって電子基底状態に励起状態が混ざり,ポテンシャル面の曲率が 下がるという擬 Jahn--Teller 効果の最小模型として読める。縮退がなくても,近接準位と 対称性の合う振動があれば結合は弱くなる。

対称性選択則

C2vC_{2v} では全対称表現は A1A_1 である。直積に A1A_1 が含まれるかだけを見ればよい。 軌道図の矢印やエネルギー順序に目を奪われるより,HOMO と LUMO の既約表現を拾い, 必要な Γ(Q)\Gamma(Q) を直積で決めるのが最短である。

物理化学標準の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 有機化学基礎

カルボニルの比較

IR の C=O\mathrm{C=O} 伸縮は「共鳴供与が強いほど低い,電子求引性置換基が強いほど高い」 と整理する。酸塩化物,カルボン酸,アミドを個別暗記するより,結合次数で説明する方が 他の酸誘導体にも応用できる。

アセト酢酸エステル合成

活性メチレンのアルキル化後に,けん化・酸性加熱で脱炭酸する。このとき CO2Et\mathrm{CO_2Et} 部分は最終生成物から消え,残るのはメチルケトンである。 アルキル基がどちら側へ残るかを β\beta-ケト酸の形で一度書くと誤りにくい。

立体化学の採点

Mitsunobu 反応は「反転」,ヒドロホウ素化は「syn 付加かつ anti-Markovnikov」, benzylic racemization は「平面カチオン」を明記する。生成物名だけでは立体化学の点が 落ちやすい。

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第4問 — 有機化学標準

Cope 転位の描き方

Cope 転位は結合の付け替えだけでなく,遷移状態の椅子型・舟型で立体化学が変わる。 置換基を擬エクアトリアルに置いた椅子型を先に描き,そこから生成物の E/ZE/Z を読むと,可能な異性体を機械的に列挙できる。

原子効率

原子効率の議論では,触媒は分母に入れないが,量論酸化剤や脱炭酸で捨てる原子は無視できない。 「短工程だから必ず原子効率が高い」とは限らない点がこの設問の狙いである。

ペリ環状反応の符号規則

熱的電子環状反応では 4n4n 電子が共旋,4n+24n+2 電子が逆旋である。光反応では逆になる。 この問題では熱条件が明示されているので,まず電子数を数え,次に置換基の相対配置を追う。

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第5問 — 無機・分析化学基礎

Latimer 図

隣り合う電位を単純平均してはいけない。移動電子数を掛けた ΔG=−nFE\Delta G=-nFE を足し合わせるので,電子数重み付き平均になる。

EDTA 滴定

EDTA の全濃度と,実際に錯形成へ効く Y4−\mathrm{Y^{4-}} 濃度は違う。 pH が下がると αY\alpha_Y が急減し,見かけの安定度定数も同じ割合で下がる。 酸性で Ca の EDTA 滴定が難しい理由はこの点に集約される。

当量点の近似

当量点では遊離 Ca と遊離 EDTA が同じ量 xx だけ生じるので Kf′≃C/x2K'_f\simeq C/x^2 と置ける。過剰 EDTA 側では,余った EDTA 濃度で割る形に変わる。

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第6問 — 無機・分析化学標準

18電子則

金属--金属結合がある場合は,各金属に 1 電子ずつ寄与すると数える。 Mn2(CO)10\mathrm{Mn_2(CO)_{10}} を単核錯体のように数えると 17 電子で止まるので, Mn--Mn 結合を忘れない。

磁気モーメント

スピンのみの近似では μ≃n(n+2)μB\mu\simeq\sqrt{n(n+2)}\mu_B である。 n=0n=0 なら 0,n=1n=1 なら約 1.7 から 2 程度,n=5n=5 なら約 5.9 であり, 観測値と不対電子数を対応させると錯体の同定が速い。

色の説明

「配位子が変わったから色が変わる」だけでは弱い。NCS 錯体では LMCT が可視域に強く, F 錯体では LMCT が高エネルギーへ移り,残る dd--dd 遷移が弱い,という二段階で説明する。

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東大 化学 院試 過去問の収録3年度

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