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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 化学システム工学専攻 化学システム工学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。化学3問。テーマタグは2件(境界層・X線回折)。2025年度と共通のテーマは境界層。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東大 化学システム工学 2026年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は化学3問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学物理化学1圧力導出で平均すべき量 / 断熱指数の出し方あり
第2問化学物理化学2ボーア模型で消去する変数 / 第二イオン化エネルギーの見方あり
第3問化学無機化学無機化学の小問集合の処理 / 沈殿量問題の定石あり
第4問—化学工学1半分のサーバーと半分の流路をとる理由 / 最大温度を決める支配項あり
第5問—化学工学2図読みに幅がある問題 / フラッシュと連続蒸留の違いあり

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 5問 → 2026年度 5問
両年度に出たテーマ
境界層
2026年度で新しく出たテーマ
X線回折
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第1問 — 物理化学1

圧力導出で平均すべき量

壁への到達頻度だけを見ると ⟨∣vx∣⟩\langle |v_x|\rangle が出てくるが、圧力では衝突ごとの運動量移行量も vxv_x に比例する。 そのため最終的には ⟨vx2⟩\langle v_x^2\rangle が現れる。 ここを取り違えると、気体分子運動論の標準結果 PV=(2/3)EPV=(2/3)E に到達できない。

断熱指数の出し方

単原子理想気体の内部エネルギーが E=(3/2)nRT=(3/2)PVE=(3/2)nRT=(3/2)PV であることを使う。 熱の出入りがないので dE=−P dVdE=-P\,dV であり、これだけで PV5/3=const.PV^{5/3}=\mathrm{const.} が出る。 壁の速度を用いる小問は、この微分形を時間変化として読ませるための設定である。

ビリアル係数の符号

第2ビリアル係数が正なら排除体積効果が優勢、負なら引力が優勢である。 今回の近似では、硬い芯の寄与が正、長距離引力の寄与が負である。 Xe は ε/kB\varepsilon/k_{\mathrm B} と σ\sigma がどちらも大きいため、Ar より強く負になり、凝縮に近い挙動を示しやすい。

物理化学1の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 物理化学2

ボーア模型で消去する変数

角運動量量子化から vv を rr と nn で表し、力のつり合いに代入するのが最短である。 エネルギーは、力のつり合いから運動エネルギーがクーロン位置エネルギーの半分の大きさになることを使うと、符号を間違えにくい。

第二イオン化エネルギーの見方

第二イオン化エネルギーは中性原子からではなく、一価陽イオンからさらに電子を取る過程である。 Na が最大になるのは、Na+\mathrm{Na^+} が閉殻であるためで、単に周期表で右にあるからではない。

回転スペクトルの間隔

剛体回転子ではピーク位置そのものは J+1J+1 に比例し、隣接ピークの間隔が一定になる。 問題で「間隔」が与えられているときは、直接 h/(4π2I)h/(4\pi^2I) と等置すればよい。

解答

I. ボーア模型と水素原子

クーロン力と円運動のつり合いは e24πε0r2=mev2r \frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0 r^2}=\frac{m_{\mathrm e}v^2}{r} である。角運動量量子化 mevr=nh2π m_{\mathrm e}vr=\frac{nh}{2\pi} を用いると rn=ε0h2πmee2n2=a0n2. r_n=\frac{\varepsilon_0h^2}{\pi m_{\mathrm e}e^2}n^2 =a_0n^2. 全エネルギーは En=12mev2−e24πε0rn=−e28πε0rn=−mee48ε02h21n2. E_n=\frac{1}{2}m_{\mathrm e}v^2-\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0r_n} =-\frac{e^2}{8\pi\varepsilon_0r_n} =-\frac{m_{\mathrm e}e^4}{8\varepsilon_0^2h^2}\frac{1}{n^2}.

与えられた定数でボーア半径を計算すると a0=ε0h2πmee2≃(8.85×10−12)(6.63×10−34)2(3.14)(9.11×10−31)(1.60×10−19)2≃5.3×10−11 m. a_0=\frac{\varepsilon_0h^2}{\pi m_{\mathrm e}e^2} \simeq \frac{(8.85\times10^{-12})(6.63\times10^{-34})^2} {(3.14)(9.11\times10^{-31})(1.60\times10^{-19})^2} \simeq 5.3\times10^{-11}\,\mathrm m .

量子数 (n,l)=(2,1)(n,l)=(2,1) は 2p2p 軌道、(3,2)(3,2) は 3d3d 軌道である。 水素原子の 1s1s 軌道を ψ1s(r)=1πa03exp⁡(−r/a0) \psi_{1s}(r)=\frac{1}{\sqrt{\pi a_0^3}}\exp(-r/a_0) と書けば、動径分布関数は P(r)=4πr2∣ψ1s(r)∣2=4r2a03exp⁡(−2r/a0). P(r)=4\pi r^2|\psi_{1s}(r)|^2 =\frac{4r^2}{a_0^3}\exp(-2r/a_0). 極大条件は ddrlog⁡P(r)=2r−2a0=0 \frac{d}{dr}\log P(r)=\frac{2}{r}-\frac{2}{a_0}=0 より r=a0. r=a_0. 主量子数が大きい状態では、エネルギーは 00 に近づき、典型的な軌道半径は n2n^2 に比例して大きくなる。 したがって高い nn の電子ほど遠くまで広がり、束縛は弱い。

II. 多電子原子と分子軌道

構成原理は、電子がエネルギーの低い軌道から入り、各軌道にはスピンの異なる2電子までしか入れないというパウリの排他原理に従い、縮退軌道ではまず同じ向きのスピンで一つずつ入るというフント則に従う、という三つを合わせた規則である。 同じ主量子数だけでなく、遮蔽・貫入・交換安定化により s,p,ds,p,d 軌道の相対エネルギーが変わる点も重要である。

第二イオン化エネルギーの大きい順は Na>Ar>S>P \mathrm{Na}>\mathrm{Ar}>\mathrm{S}>\mathrm{P} である。Na は 1 個目を失うと Ne 型閉殻の Na+\mathrm{Na^+} となるため、2 個目を取り去るには内殻電子を外す必要があり非常に大きい。 Ar は高い有効核電荷をもち、S と P では S の方が核電荷が大きく、かつ S+\mathrm{S^+} の 3p33p^3 半充填安定化が効く。

分子軌道表示の一例は F2: (1σg)2(1σu)2(2σg)2(2σu)2(3σg)2(1πu)4(1πg)4,N2: (1σg)2(1σu)2(2σg)2(2σu)2(1πu)4(3σg)2. \begin{aligned} \mathrm{F_2}:&\ (1\sigma_g)^2(1\sigma_u)^2(2\sigma_g)^2(2\sigma_u)^2 (3\sigma_g)^2(1\pi_u)^4(1\pi_g)^4,\\ \mathrm{N_2}:&\ (1\sigma_g)^2(1\sigma_u)^2(2\sigma_g)^2(2\sigma_u)^2 (1\pi_u)^4(3\sigma_g)^2. \end{aligned} 貴ガスの等核二原子分子が安定に存在しにくいのは、結合性軌道と反結合性軌道が同数だけ満たされ、結合次数が 0 になるためである。

III. 回転スペクトル

剛体回転子のエネルギーを EJ=ℏ22IJ(J+1) E_J=\frac{\hbar^2}{2I}J(J+1) とする。選択則 ΔJ=+1\Delta J=+1 に対して ΔE=EJ+1−EJ=ℏ2I(J+1) \Delta E=E_{J+1}-E_J =\frac{\hbar^2}{I}(J+1) なので、吸収に必要な振動数は νJ=ΔEh=h4π2I(J+1). \nu_J=\frac{\Delta E}{h} =\frac{h}{4\pi^2I}(J+1). 隣り合うピーク間隔は Δν=h4π2I. \Delta \nu=\frac{h}{4\pi^2I}. HCl のピーク間隔が 6.26×1011 Hz6.26\times 10^{11}\,\mathrm{Hz} であるから、 I=h4π2Δν≃6.63×10−344(3.14)2(6.26×1011)≃2.7×10−47 kg m2. I=\frac{h}{4\pi^2\Delta\nu} \simeq \frac{6.63\times10^{-34}} {4(3.14)^2(6.26\times10^{11})} \simeq 2.7\times10^{-47}\,\mathrm{kg\,m^2}. 換算質量 μ=1.61×10−27 kg\mu=1.61\times 10^{-27}\,\mathrm{kg} と I=μd2I=\mu d^2 から d=Iμ≃2.7×10−471.61×10−27≃1.3×10−10 m. d=\sqrt{\frac{I}{\mu}} \simeq \sqrt{\frac{2.7\times10^{-47}}{1.61\times10^{-27}}} \simeq 1.3\times10^{-10}\,\mathrm m. エネルギーの大きさは、回転、振動、結合解離の順に大きくなる。 したがって 0.0026 eV:回転,0.36 eV:振動,4.5 eV:解離 0.0026\,\mathrm{eV}:\text{回転},\qquad 0.36\,\mathrm{eV}:\text{振動},\qquad 4.5\,\mathrm{eV}:\text{解離} である。

最終答

rn=a0n2,En=−mee48ε02h21n2,a0≃5.3×10−11 m. r_n=a_0n^2,\qquad E_n=-\frac{m_{\mathrm e}e^4}{8\varepsilon_0^2h^2}\frac{1}{n^2},\qquad a_0\simeq5.3\times10^{-11}\,\mathrm m. (2,1)(2,1) は 2p2p、(3,2)(3,2) は 3d3d。 第二イオン化エネルギーは Na>Ar>S>P\mathrm{Na}>\mathrm{Ar}>\mathrm{S}>\mathrm{P}。 HCl は I≃2.7×10−47 kg m2I\simeq2.7\times10^{-47}\,\mathrm{kg\,m^2}、d≃1.3×10−10 md\simeq1.3\times10^{-10}\,\mathrm m。

第3問 — 無機化学

無機化学の小問集合の処理

このタイプの問題は、数値計算よりも「根拠を短く正確に出す」ことが重要である。 イオン半径なら周期表上の位置、格子エンタルピーなら Born--Haber サイクル、錯体なら内圏・外圏と配位子場、Ellingham 図なら線の上下関係、というように判断軸を先に固定すると答案がぶれにくい。

沈殿量問題の定石

硝酸銀で沈殿するのは外圏の Cl−\mathrm{Cl^-} であり、配位して内圏に入っている塩化物はすぐには AgCl として沈殿しない。 Werner 型錯体の古典的な判別問題なので、組成式を配位式に直してから数える。

Ellingham 図

還元反応の自発性は、酸素を奪う金属がより安定な酸化物を作るかどうかで決まる。 図の読み取り問題では、反応式そのものを覚えるより、酸化物生成線の上下差が反応自由エネルギーになることを明示する方が採点上強い。

無機化学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 化学工学1

半分のサーバーと半分の流路をとる理由

図の1つの油流路は、両側のサーバー面から熱を受ける。 片側だけを切り出すと、サーバーは幅 Ws/2W_s/2、流路は幅 WL/2W_L/2 の対応になる。 この切り方をすると、熱流束 qq を片面あたりで扱えるので、式の係数 1/21/2 がそろう。

最大温度を決める支配項

今回の数値では冷却油のバルク温度上昇は約 0.38 K0.38\,\mathrm K と小さい。 一方で q/hq/h は約 37 K37\,\mathrm K である。 したがって最大温度は、槽全体の熱収支よりもサーバー表面の境膜熱抵抗に強く支配されている。 答案ではこの大小関係を確認しておくと、流速を上げたときの温度低下の説明が明確になる。

相関式を使うときの注意

Nu=0.023Re0.8Pr0.4Nu=0.023Re^{0.8}Pr^{0.4} は強制対流の経験式であり、ここでは問題文が使用を指定している。 ただし実機設計では、流路入口効果、乱流遷移、サーバー配置、油の温度依存性、電気絶縁油の安全余裕を別途確認する必要がある。 入試答案では、まず無次元数を正しく作り、そこから h=Nu κL/Dhh=Nu\,\kappa_L/D_h に戻す流れを外さないことが重要である。

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第5問 — 化学工学2

図読みに幅がある問題

この種の問題では、数字そのものよりも、液相線と気相線を同じ温度で水平に結び、てこの規則を正しく使えるかが採点の中心である。 読み取り値が少しずれても、物質収支式と平衡関係が整合していれば大きな減点にはなりにくい。

フラッシュと連続蒸留の違い

フラッシュ蒸留は1回の平衡分離なので、到達できる組成は平衡線上の1点で決まる。 一方、連続多段蒸留は平衡段を重ねるため、操作線と平衡線の階段作図で段数を読む。 ただし共沸点では x=yx=y となり、単純な二成分蒸留では組成をそれ以上押し上げられない。

第三成分の役割

抽出蒸留と共沸蒸留は、どちらも第三成分で見かけの気液平衡を変える方法である。 高沸点溶媒を使う抽出蒸留では、溶媒が塔内に残って相対揮発度を変える。 共沸剤を使う共沸蒸留では、低沸点の新しい共沸混合物を作り、水を塔頂側へ運び出す。 塔底に残る主成分が両者で逆になる点は、記述問題で差がつく。

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東大 化学システム工学 院試 過去問の収録4年度