東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 化学システム工学専攻 化学システム工学 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)
全7問。化学4問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・分配関数・結晶構造)。
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収録4年度分の解答PDF:東京大学 工学系研究科 化学システム工学専攻 化学システム工学(¥2,880・紙面見本あり)
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- 解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
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- 途中式と最終答(最終答つき7問)
- 問題本文
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東大 化学システム工学 2022年度 院試 過去問の出題内容(全7問)
この7問の分野は化学4問です。
2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第7問 | 25大学・544問 | |
| 分配関数 | 第2問 | 16大学・88問 | |
| 結晶構造 | 第3問 | 9大学・44問 | |
| 境界層 | 第5問 | 8大学・30問 | |
| カルノーサイクル | 第1問 | 9大学・22問 |
第1問 — 物理化学1
符号を固定してから計算する
この問題では「環境が気体にする仕事」が問われているため,膨張で気体が外へ仕事をする部分は負の仕事になる。熱機関の出力としては を用いる。ここを混同すると効率の式の符号が崩れる。
カルノー効率の本質
等温過程の体積比は高温側と低温側で同じ である。断熱式がそれを保証しているため,効率では が消え,温度だけの式 が残る。可逆機関の効率が作動物質によらない理由もこの点にある。
自由膨張の見方
理想気体の自由膨張で温度が変わらないのは,内部エネルギーが温度だけで決まるためである。実在気体では分子間引力の位置エネルギーが内部エネルギーに含まれるので,膨張により位置エネルギーが増え,その分だけ運動エネルギーが減少する。
第2問 — 物理化学2
重みの式の意味
は「全分子に番号を付けて並べたあと,同じ準位内の入れ替えを割り引く」式である。統計熱力学では,この巨大な組合せ数の対数がエントロピーになる。
分配関数は状態数の重み付き和
高温ではエネルギー差が に比べて小さくなり,準位の違いが見えにくくなる。そのため占有率は一様分布に近づく。逆に低温では基底状態の指数因子だけが支配的になる。
理論の使い分け
衝突理論は短く計算できるが,反応が起こる向きや溶媒効果を立体因子にまとめてしまう。活性錯合体理論は少し抽象的だが,遷移状態の構造・分配関数・活性化エンタルピーやエントロピーを議論できるため,化学反応の解釈にはこちらの方が拡張性が高い。
解答
配置の重み
,配置が であるとき,分子の入れ替えで区別される配置数は 一般に,準位 の占有数を とすれば である。
等間隔準位の占有率
非縮退で とおけるとき,分子分配関数は である。したがって準位 の占有率は 高温極限 では指数因子がすべて 1 に近づくため となり,全準位がほぼ等しく占有される。
エントロピー
最確配置の重みを と書けば,ボルツマンの式は である。
II. 衝突理論と活性錯合体理論2つの理論の特徴
衝突理論は,反応物が気相中で衝突し,マクスウェル・ボルツマン分布の高エネルギー成分が活性化エネルギーを越え,かつ立体因子を満たすと反応する,という描像である。衝突断面積と相対速度から速度を見積もれるので希薄気相反応に強いが,液相反応や複雑なポテンシャルエネルギー面は経験因子に押し込まれやすい。
活性錯合体理論では,反応物と遷移状態近傍の活性錯合体が平衡状態にあるとみなし,ポテンシャルエネルギー面上の分割面を越える流束から速度定数を求める。分配関数から熱力学関数を扱えるため,気相反応だけでなく液相反応にも標準状態を適切に取れば適用できる。
並進分配関数
1次元の並進分配関数が と書けるので,直方体容器では独立な3方向の積を取ればよい。したがって
標準モル分配関数
標準モル体積を とする。原子 A, B について電子分配関数を 1 とすれば 活性錯合体 について,反応座標方向の振動は通過頻度 として外に出す約束を取ると,
速度定数の対応
活性錯合体理論の式に上の分配関数を代入すると,並進部分から が現れる。さらに を用いると,活性錯合体理論の回転・振動因子は衝突断面積と立体因子に対応し, の形に帰着する。すなわち,衝突理論は活性錯合体理論のうち,希薄気相の二体衝突を幾何学的断面積で近似した場合と見なせる。
包摂化合物中の並進
ゼオライトやシクロデキストリン中の分子は平坦な箱の中の自由粒子ではなく,細孔や空孔のポテンシャルで拘束される。したがって という自由並進の式はそのまま使えない。
最終答
3次元並進分配関数は 。活性錯合体理論は,標準モル分配関数と , を用いると衝突理論の式と対応する。
第3問 — 無機化学
電子親和力の例外は電子配置で説明する
周期表の単純な有効核電荷だけで押すと,Be, Mg, N の例外を説明できない。閉殻・半充填・電子対形成の反発を一言で入れると,グラフの凹凸が化学的に説明できる。
ナノ粒子は表面積と体積のスケーリング
白金微粒子の計算は,正確な格子点の整数計数よりも,面積が ,体積が に比例することを押さえるのが重要である。触媒でナノ粒子が有利になる理由は,表面原子の割合が増えるためである。
色は遷移の種類まで書く
金属錯体の色を問われたときは,単に「配位子場が大きい」と書くだけでは足りない。金属の 電子数,スピン禁制・ラポルテ禁制,電荷移動遷移か - 遷移かを区別すると答案が安定する。
第4問 — 有機化学
縮合式で答えるときの注意
構造式を文字で書く場合は,反応中心と立体化学を必ず言葉で補う。例えば OsO 酸化では「cis」「syn」を書かないと,単なるジオール名だけでは不十分になりやすい。
機構問題の採点点
巻き矢印を完全に図示できない答案でも,求電子剤・求核剤・中間体・芳香族性の回復・脱離の順番を書けば部分点を取りやすい。特にニトロ化では ,ベンザインでは脱離付加,Mannich反応ではイミニウムを明示するのが重要である。
ラセミ体分割の本質
エナンチオマー同士は通常の非キラルな環境では物性が同じなので,そのままでは分離しにくい。光学活性な試薬と反応させるとジアステレオマーになり,沸点・溶解度・保持時間が変わる。この差を利用して分離し,最後に元の官能基へ戻すのが設計の狙いである。
第5問 — 化学工学1
摩擦係数の定義に注意する
本問の は で定義されている。この定義から導くと になる。別の教科書で使う Darcy 摩擦係数とは係数が異なるため,図の軸と問題文の式を優先する。
ポンプ仕事の構造
必要仕事は,高さを上げる位置エネルギー,出口速度を持たせる運動エネルギー,配管で失われる摩擦損失の和である。今回の数値では位置エネルギー が支配的だが,細管や長配管では摩擦損失が支配的になる。
蛇口問題の考え方
水槽から蛇口まではポンプがないので,利用できるエネルギーは水面と蛇口の高さ差だけである。この高さ差が出口運動エネルギーと摩擦損失をまかなえるかで設置高さが決まる。
第6問 — 化学工学2
熱収支は体積と面積を分ける
加熱問題では,蓄熱項に体積 ,伝熱項に側面積 が入る。ここで なので となり,微分方程式の係数が簡単になる。
中間体最大は無次元時間で見る
は とおけば である。この関数は で最大になる。温度が変わると だけが変わるので,中間体を最大にする実時間は に反比例する。
温度選択の落とし穴
温度を高くすると加熱に時間がかかるため,反応だけを見てはいけない。ただし本問の活性化エネルギーは大きく,363 K から 383 K への上昇で反応時間が約4分の1になる。加熱時間の増加より反応時間の短縮が大きいため 383 K が有利である。
第7問 — 化学数学
固有値計算の短縮
行列の第2行・第2列は他成分と結合していない。このような場合, と固有ベクトル を先に取り出すと,残りは2次行列だけで済む。
Arrhenius式は横軸の取り方がすべて
活性化エネルギーは と の直線の傾きから出る。傾きは負であり, と符号を反転して正のエネルギーにする。 をそのまま横軸にすると直線化されないので注意する。
検定の解釈
帰無仮説を棄却できないことは,従来値が正しいと証明したという意味ではない。今回のデータと残差分散の範囲では,推定値と従来値の差が統計的に有意とはいえない,という意味である。
東大 化学システム工学 院試 過去問の収録4年度
物理化学1 / 物理化学2 / 無機化学
物理化学1 / 物理化学2 / 無機化学
物理化学1 / 物理化学2 / 無機化学
2022年度(このページ・全7問)
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