東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 化学システム工学専攻 化学システム工学 2024年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 化学システム工学専攻 化学システム工学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 物理化学1
経路関数と状態量の区別
第 I 部の要点は,熱と仕事は経路依存だが,内部エネルギーは状態だけで決まるという区別である。経路 と で と は異なるが,理想気体では始点と終点の温度が同じなので で一致する。この点を式で示せば,単なる暗記ではなく第一法則の答案になる。
実在気体で内部エネルギーが変わる理由
理想気体では分子間相互作用を無視するため である。ファンデルワールス気体では引力項があるため,等温膨張でも分子間距離を広げる仕事が内部エネルギーに反映される。符号は重要で,膨張では なので となる。
最大仕事の符号
燃焼のように の反応では,取り出せる最大仕事は である。効率を計算するときは発熱量の大きさ で割る。符号つきのまま割ると負の効率になり,物理的意味を失う。
第2問 — 物理化学2
赤外活性の判定
永久双極子をもつかどうかだけでなく,振動中に双極子モーメントが変化するかを見る。たとえば二酸化炭素は全体として無極性だが,非対称伸縮や曲げ振動では双極子が変化するため赤外活性である。メタンも高い対称性をもつが,縮退した非対称振動は赤外活性である。
級数解で落としやすい点
漸化式を書くだけでは量子化条件にならない。遠方で正規化不能な解を排除するため,級数が有限項で止まる必要がある,という論理を添えると答案として強い。そこから が出て,エネルギー準位が離散化される。
非調和性の物理的意味
実在分子では結合を伸ばし続けると解離するため,調和ポテンシャルのように無限に大きな復元力を仮定できない。モース振動子の準位間隔が上に行くほど狭くなることは,赤外スペクトルの倍音やホットバンドを理解する基礎になる。
第3問 — 無機化学
構造因子は位相で考える
面心立方格子の消滅則は丸暗記でも答えられるが,位相因子を一度書けば符号の判定ミスを避けられる。岩塩型の KCl と KBr の違いも,同じ面心立方の消滅則に加えて,基底内の二原子の散乱能差を見る問題である。
磁鉄鉱の価数配置
は形式的に と見られるが,単純に位置を割り振るだけではなく,逆スピネルであることが重要である。四面体位置と八面体位置の が反平行に近く打ち消す,という説明まで書くとフェリ磁性の理解が伝わる。
半導体の比較で必要な軸
金属・半導体・絶縁体の比較では「禁制帯の有無」と「フェルミ準位近傍のキャリア」の二つを同時に述べるとよい。単に電気を通すかどうかだけでは,温度依存性やドーピングの説明につながらない。
第4問 — 化学工学1
律速段階の切替
臭素濃度を変えるだけで速度式の濃度依存性が変わるのは,反応機構が変わったからではなく,どの素過程が遅く見えるかが変わるからである。高臭素濃度では が低濃度に保たれ,エノール化の供給速度が全体を支配する。低臭素濃度では臭素付加の頻度が下がり,臭素濃度が速度式に現れる。
自触媒反応の設計
自触媒反応では,入口直後の速度が必ずしも最大ではない。PFR は入口から順にその低速度領域を通過するため,最初の区間で空間時間を消費する。CSTR を先に使うと,反応器内を出口組成に保てるため,速度最大付近へまとめて到達させられる。この特徴が通常の単調減少速度反応との違いである。
第5問 — 化学工学2
相対速度と断面積
液滴が洗浄する体積は,捕集断面積と相対速度の積である。ここで は直径として与えられているため,断面積は になる。半径と読み違えると 4 倍の誤差が出る。
指数形の意味
粒子濃度の微分方程式は一次の減衰式であり,透過率は指数関数になる。したがって液滴数を増やした効果は線形ではなく,指数の係数を増やす形で効く。 が へ下がるのは,捕集の独立試行が濃くなるためである。
装置設計の視点
ベンチュリスクラバーは,単に管を細くする装置ではない。高速化による相対速度増大,液滴微細化による有効接触面積増大,乱流混合による接触頻度増大を同時に使う装置である。一方で圧力損失が増えるため,実設計では捕集効率と動力のバランスが評価点になる。