名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 多元数理科学研究科 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。線形代数2問・微分積分・解析2問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・正定値行列。
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収録6年度分の解答PDF:名古屋大学 多元数理科学研究科 数学(¥3,200・紙面見本あり)
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- 解説8問と大問1問の途中式・最終答(全8問)
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- 途中式と最終答(最終答つき0問)
- 問題本文
- 非収録
名大 数学 2023年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は線形代数2問・微分積分・解析2問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性) | 方針 — 階数 + 拡大行列 / 検算 — 1 数値例 | — |
| 第2問 | 線形代数 | 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形 | 方針 — ブロック三角化と階数計算 / 検算 — 最小多項式 | — |
| 第3問 | — | 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値 | 方針 — Lagrange 乗数法 / 別解 — 主軸変換 | — |
| 第4問 | 微分積分・解析 | 後期 1 日目 第 4 問 方向 2 階差分と 3 重広義積分 | 方針 — 球面の特異性と方向積分 / 検算 — 物理的解釈 | — |
| 第5問 | 線形代数 | 後期 2 日目 第 1 問 実交代行列の交換子 | 方針 — 交換子と Frobenius ノルム / 別解 (3) — 固有値分解 | — |
| 第6問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 2 問 熱方程式の Fourier 級数解 | 方針 — 熱方程式の Fourier 級数解 / 検算 — 熱方程式 | — |
| 第7問 | — | 後期 2 日目 第 3 問 留数定理による \int_0^\inftyx^\alpha-1/(1+x^2)\,dx | 方針 — 半円形等高線と分枝点 / 別解 — Beta 関数 | — |
| 第8問 | — | 後期 2 日目 第 4 問 Hausdorff 空間の特徴付け | 方針 — Hausdorff 性の同値定義 / 検算 — 距離空間 (Hausdorff) で が閉 | — |
この年度の解説には典型ミス8件が付いています。
2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は6問に8テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第2・3・5問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第1・2問 | 21大学・152問 | |
| 留数定理 | 第7問 | 18大学・126問 | |
| 正定値行列 | 第5問 | 17大学・70問 | |
| 一様収束 | 第6問 | 14大学・63問 | |
| 二次形式 | 第3問 | 16大学・63問 | |
| ジョルダン標準形 | 第2問 | 14大学・23問 | |
| 微分方程式の級数解法 | 第6問 | 3大学・7問 |
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 8問 → 2023年度 8問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・正定値行列
- 2023年度で新しく出たテーマ
- 留数定理・一様収束・二次形式・ジョルダン標準形・微分方程式の級数解法
第1問 — 後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性)
方針 — 階数 + 拡大行列
連立 1 次の標準: で可解判定. , 未知数 で解空間は 次元. 本問 で パラメータ族.
行依存 を見抜けば への条件 が即出る.
典型ミス
- 階数を直接計算せず を取って判定. で計算量多い.
- ケースで「特定の なら解あり」と検討してしまう. しかし第 1 行が なのに で矛盾.
- 一般解の核ベクトル の係数 を間違える. 検算 で確認.
検算 — 数値例
, , kernel . .
= ✓. ✓.
背景 — Fredholm 交代定理
が解をもつ . 本問の左零空間は の双対で生成され, がこれと直交が条件 .
解答
(1) の階数
行間の依存関係を探す. 直接計算で よって . 階数 .
残り 3 行 の独立性. :
- 列 4: , .
- 列 1: , で .
- 列 2: , で .
で 独立, ランク . で , 残るのは のみ. ランク .
(2) 解の存在条件
: ( の第 1 行が全て ) だが . 矛盾, 解なし.
: 行依存 が にも引き継がれるべし: , つまり .
(3) 一般解
, で . は冗長, で解く.
: . : . にこれらを代入:
, (自由), .
最終答
% %
% 解が存在 かつ .%
% %
第2問 — 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形
方針 — ブロック三角化と階数計算
行と列を同時並べ替え (= 共役 , は置換行列) はゼロ要素を活用してブロックを露出する基本テク. 固有値計算が 特性多項式の展開ではなく 行列 2 個に分解できる.
幾何的重複度は で計算. 行ごとに独立性チェックして階数 → .
典型ミス
- 「重複固有値 対角化不可能」と短絡 ( で は対角化可能なのに見落とす可能性).
- で と が重複し代数的重複度が に増えることを見落とす.
- Jordan ブロックのサイズ判定: 「 がサイズ のブロック数」 = Young 図でのジョルダン分割の双対.
検算 — 最小多項式
- : minimal poly (各因子の指数が最大ジョルダンサイズ). なら .
- : minimal poly .
背景 — Cayley-Hamilton と最小多項式
ブロック三角行列の固有値はブロックごとの固有値の和という事実は, 三角化された行列の特性多項式が になることから. 本問は典型例 ( を ブロック 2 個に分解).
第3問 — 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値
方針 — Lagrange 乗数法
制約 下の 極値点で . Lagrange 乗数 を導入し で連立. 本問は ともに 次形式なので が固有値型に出る.
典型ミス
- 楕円 がコンパクトで 連続なので最大値・最小値の存在は自明. これを保証として確認する.
- (2) の場合分けで または が の極限ケースを忘れる. (本問では結局矛盾するが議論は必要.)
- 「Lagrange の必要条件」で全候補を出してから 値を比較. 候補だけで終わらず最終的に値を計算.
別解 — 主軸変換
で . .
で .
( の範囲). .
最小 at (, つまり ). 最大 at (, ).
背景 — 同時対角化
, で . 2 次形式 を同時対角化 (固有値問題 ) すると, 一般化固有値 がそのまま Lagrange 乗数になる. これは本問の構造的説明.
第4問 — 後期 1 日目 第 4 問 方向 2 階差分と 3 重広義積分
方針 — 球面の特異性と方向積分
(1) は方向 への2 階方向微分. 1 次項が で逆符号なので相殺し, 2 次項が残る. 結果は Hessian の 2 次形式.
(2) は球座標で動径と立体角の分離. 動径 の決定 + 角度 ( 方向で ) での弱い特異性, 両方を吟味.
典型ミス
- (2) で 方向の収束条件 () のみで止め, 角度 近傍の特異性を見落とし「」と誤答.
- 置換を使わず直接 で扱うと, の主成分計算がより面倒.
- Beta 関数の収束領域を直接使うと早いが, 一般式に頼らず微分・積分で確認可能.
検算 — 物理的解釈
は 大で が支配. すなわち 軸負方向には で関数値小, 大. 「 軸負方向に細長い領域」で発散しやすい.
実際, で ( なので), . 円錐内 で から まで積分 が で収束. しかし円錐の角度因子 も寄与し, 全体で に緩和される.
背景 — 球関数とポテンシャル理論
の球面領域積分は球面ポテンシャルやRiesz ポテンシャルと関連. 本問の特殊性は 軸方向の一価非対称性 ( の項) で, これが収束を遅くする.
第5問 — 後期 2 日目 第 1 問 実交代行列の交換子
方針 — 交換子と Frobenius ノルム
(2) のキーは「実対称行列 の trace は Frobenius ノルム ()」. これは実成分なら自明, 一般には で複素エルミートでも成立.
(3) は逆向き: 「ノルム ゼロ行列 元の 」. 実交代行列で から へのジャンプが要点 (一般行列だと でも の例 あり).
典型ミス
- (3) で から直接 と短絡. 実交代の特殊性 () を使う.
- の対称性使用を曖昧にする. だから.
別解 (3) — 固有値分解
実交代 純虚数の固有値 (). の固有値 . の固有値 .
. 等号 全 .
背景 — Lie 環と Frobenius ノルム
実交代行列全体 は Lie 環で交換子で閉じる. Killing 形式 はこの空間で半正定値, スカラー 倍で正定値内積. 本問の は Killing 形式の 反復 (内積の積で正値性が保たれる).
第6問 — 後期 2 日目 第 2 問 熱方程式の Fourier 級数解
方針 — 熱方程式の Fourier 級数解
の周期境界での解. 初期条件 から各成分が で減衰する.
(1) 連続性: 一様収束 . (2) 一様連続性 in : 有限和 + 尾部の評価. (3) 滑らかさ (): が について超指数的に小さくなり, 微分による 因子を吸収.
典型ミス
- (2) で「 ごとに収束 + Weierstrass 一様」と言うが, 実際は (1) で示した一様収束を で使う方が早い場合も. ただし (1) は固定 での話なので, には別議論が必要.
- (3) で を許して が発散する反例 ( など) を見落とす. で離れている必要.
検算 — 熱方程式
, . 一致, ✓ ( で項別微分が正当化されたあと).
背景 — 解の正則性とスペクトルギャップ
という弱い仮定 ( ぎりぎり) でも, 熱方程式の平滑化作用で で になる. これは熱核 の畳み込みで初期値の正則性が瞬時に上がる現象 (parabolic regularity).
第7問 — 後期 2 日目 第 3 問 留数定理による \int_0^\inftyx^\alpha-1/(1+x^2)\,dx
方針 — 半円形等高線と分枝点
は多価関数で原点が分枝点. 上半平面の半円形 は分枝の選び方を一意にして留数定理を適用するための定型. 上半 () のみで留数を取ればよい.
(3) の「実軸正側 負側」での因子 は分枝による位相シフト. 上半に沿って動くと位相が になる.
典型ミス
- 留数を で計算するとき から と書くと早い.
- (4) で大円 の寄与が になる条件 を見落とす.
- 分母の有理化を間違えて符号が逆.
別解 — Beta 関数
で , :
(反射公式 .)
背景 — Mellin 変換
は の Mellin 変換 . で本問の値は . これは Mellin の反射公式の典型例.
第8問 — 後期 2 日目 第 4 問 Hausdorff 空間の特徴付け
方針 — Hausdorff 性の同値定義
Hausdorff 性は数多くの同値定義をもつ:
- (i) 「2 点を分離する開集合対」 (古典的定義)
- (ii) 「閉近傍の交わりが点」 (位相空間の点の特徴付け)
- (iii) 「対角集合 が閉」 (圏論的・代数的)
(iii) は圏論的に「写像 が分離 (separated)」と同値で, スキーム理論などの一般化に進む.
典型ミス
- (1) (ii) で「」と「」(T 条件) を混同. 後者はT で T より弱い.
- (2) 直積位相の開集合の定義 (基底 は , 開集合は基底元の和) を曖昧にすると証明が穴.
- (3) で の連続性を曖昧にする. 各成分が連続なら直積への写像も連続 (普遍性).
検算 — 距離空間 (Hausdorff) で が閉
上の連続関数 で . 例えば . 閉. ✓
距離空間は Hausdorff なので (iii) を満たし, (3) が成立.
背景 — 一般化と圏論
(iii) の同値性はHausdorff 圏の重要性質. 代数幾何でスキーム間の射が「分離的」( で対角射 が閉埋め込み) となる定義の原型. これにより「無限の点の同一視」を防ぐ. 今日の代数幾何は分離的スキーム上で構成される.
名大 数学 院試 過去問の収録6年度
後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形 / 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解 / 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1
後期 1 日目 第 1 問 行列の対角化と冪極限 / 後期 1 日目 第 2 問 反交換子型線形変換 T_A(X)=AX+XA / 後期 1 日目 第 3 問 多変数極限・微分可能性・累次積分
後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化 / 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底 / 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束
2023年度(このページ・全8問)
後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性) / 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形 / 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値
後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分) / 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性) / 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値)
1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性) / 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分) / 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分)