名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 多元数理科学研究科 数学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。線形代数3問・微分積分・解析3問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・正定値行列)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・正定値行列。
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名大 数学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は線形代数3問・微分積分・解析3問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | 後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化 | 方針 — 同時対角化と可換性 / 検算 — の正規化 | — |
| 第2問 | 線形代数 | 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底 | 方針 — Grassmann の次元公式と Gram-Schmidt / 背景 — Grassmannian と二平面の交わり | — |
| 第3問 | 微分積分・解析 | 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束 | 方針 — 端点での主要部解析 / 検算 — 数値計算 (1) | — |
| 第4問 | — | 後期 1 日目 第 4 問 比較判定法と Raabe の判定法 | 方針 — Raabe の判定法 / 検算 — 具体例 | — |
| 第5問 | 線形代数 | 後期 2 日目 第 1 問 Gram 行列 | 方針 — Gram 行列の意味 / 検算 — 単純例 | — |
| 第6問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 2 問 近似的 \delta 関数と熱核 | 方針 — 熱核と 関数列 / 検算 — 連続関数の畳み込み | — |
| 第7問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 3 問 Dirichlet 積分 \int_0^\infty\sin x/x\,dx | 方針 — 特異点を除去した整関数の活用 / 別解 — Laplace 変換 | — |
| 第8問 | — | 後期 2 日目 第 4 問 連結集合の保存と和集合 | 方針 — 連結性の標準論法 / 検算 — 例示 | — |
この年度の解説には典型ミス8件が付いています。
2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1・5問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第5問 | 21大学・152問 | |
| 正定値行列 | 第5問 | 17大学・70問 | |
| 一様収束 | 第6問 | 14大学・63問 | |
| ヒルベルト空間 | 第2問 | 12大学・33問 |
前年度(2023年度)との違い
- 大問数
- 2023年度 8問 → 2024年度 8問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・正定値行列・一様収束
- 2024年度で新しく出たテーマ
- ヒルベルト空間
第1問 — 後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化
方針 — 同時対角化と可換性
可換 同時対角化可 (両方が対角化可なら). 一方の固有空間内でもう一方を制限し, さらに対角化することで共通基底を得る.
典型ミス
- (1) で「重複固有値 対角化不可」と短絡. 幾何的重複度を計算する.
- (2) で を確認し忘れ. 可換でないと同時対角化不可.
- 共通固有ベクトル探しで, 一方の重複固有空間内でもう一方を制限することを忘れて全成分を試す.
検算 — の正規化
と をそれぞれ列ごとに確認 ( がそれぞれの固有値の固有ベクトル).
背景 — Lie 環と同時対角化
を満たす可換環 はLie 環の Cartan 部分代数を生成する. すべて対角化可 共通固有空間分解を持つ. 量子力学では「同時固有状態」が交換子 の観測可能量に対応する.
解答
(1) の対角化可能性
: 特性多項式. , , 余因子和 . 固有値 . の幾何的重複度: . 第 3 行 第 1 行 . ランク , = 代数的重複度. 対角化可.
: , , 余因子和 . 固有値 . . 第 2 行 第 1 行, 第 3 行 4倍. ランク , . 対角化可.
(2) 共通の正則行列
がともに対角化可で ならば共通固有ベクトル基底で同時対角化可.
の確認: 直接計算で
共通固有ベクトル.
の固有値 の固有空間 (): ker は 1 次元. 計算で固有ベクトル . . 固有値 . 共通.
の固有値 の固有空間 (2 次元): より基底 . をこの空間に制限: 基底での 制限行列 . 固有値 .
固有値 の固有ベクトル: in basis .
固有値 の固有ベクトル: .
共通基底:
検算: . 正則 ✓.
最終答
% , .%
第2問 — 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底
方針 — Grassmann の次元公式と Gram-Schmidt
(2) は次元公式の応用. 行列式 で の次元が落ちる条件.
(4) は から始める Gram-Schmidt の変形: 共通部分の単位ベクトルから, それぞれ で直交化, 最後に直交補空間の単位ベクトルを取る.
典型ミス
- (2) の行列式計算で列展開のサインを取り違える. cofactor .
- (4) で を 内から取り直さず そのままにすると で直交基底にならない.
- を直交補空間で取るとき連立方程式を慎重に.
背景 — Grassmannian と二平面の交わり
内の 2 平面 の組は Grassmann 多様体 の元 2 つ. 一般 (generic) には (). 特殊条件 (本問では ) で交わりが 1 次元になる. これは 上の Schubert 余次元 部分多様体に相当.
第3問 — 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束
方針 — 端点での主要部解析
広義積分の収束は2 端点で別々に: () と (). それぞれで主要項を取り出して の判定.
典型ミス
- (1) の Taylor で 5 次項 1.0e-6 を無視すると 4 桁目に影響. 含める.
- (1) の四捨五入: 第 5 位の で第 4 位 で繰り上がり. .
- (2) で を で , で と扱い分ける. 中間で (実際 なら 必ず? で 安全, も ).
- の有界性 (上 , 下 ) を使う. 可積分性に効くのは指数因子の への減衰が無いので, 主要項は と .
検算 — 数値計算 (1)
実際 , 4 桁四捨五入で . ✓
背景 — 誤差関数と漸近展開
. 本問は . Taylor で 小では 3 項で十分高精度. 大 では漸近展開 が有効.
第4問 — 後期 1 日目 第 4 問 比較判定法と Raabe の判定法
方針 — Raabe の判定法
通常の比判定法 (d'Alembert) は . で収束, で発散, で不確定.
Raabe の判定法: の場合 (つまり ) で第 2 オーダーを見る. 本問はこの判定法の証明.
(2) で の比較対象を準備し, (3) で間に挟み込む.
典型ミス
- (3) で の選び方: となる を取る. をどう取るかが鍵.
- (1) で の単調性を で表す. 比較定数 .
検算 — 具体例
. . . Raabe で 収束. ✓ ( などで挟むと OK.)
背景 — 比判定法の階層
級数の収束判定は階層的:
- Cauchy 判定 ().
- d'Alembert 比判定 ().
- Raabe 判定 ().
- Bertrand, Gauss 判定など (より細かい).
それぞれ前段が決定打にならない場合に次を使う. Raabe は の境界で活躍.
第5問 — 後期 2 日目 第 1 問 Gram 行列
方針 — Gram 行列の意味
Gram 行列 はベクトル組の依存関係を符号化する. 正則 独立, 階数 = 張る部分空間の次元.
(1) は内積の双線形性. (2) は半正定値性. (3) は (2) の特別ケース. (4) は階数定理 + 核の対応.
典型ミス
- (2) で固有値が「」と「」を混同. 半正定値 () と正定値 () は 固有値の有無で区別.
- (3) で 従属から の核 を直接導く論理が抜ける.
- (4) で の証明を忘れる. これは (3) の結論を一般化したもの.
検算 — 単純例
, . . で従属. ✓. = . ✓
背景 — 線形最小二乗法と Gram 行列
回帰 で は法方程式の係数行列 = の列ベクトルの Gram 行列. 列が独立なら正則, 最小二乗解 . 列が従属なら正則でなく, 一意解なし (Moore-Penrose 擬似逆など必要).
第6問 — 後期 2 日目 第 2 問 近似的 \delta 関数と熱核
方針 — 熱核と 関数列
は熱核 (heat kernel) の一般化. など特定の で標準熱核 になる.
(1) 質量 , (2) 集中性, (3) 連続性, (4) 一様収束 — 近似的 関数の標準性質.
典型ミス
- (3) で の表現式 の変換を見落とす. 元の式 で直接議論すると煩雑.
- (4) の議論で と の選び順 ( 先, それから ) を間違える.
検算 — 連続関数の畳み込み
連続有界, 平滑近似 . 畳み込み は に平滑化された近似. で に戻る. 物理的には「初期分布 を時間 拡散させた結果」が .
背景 — 熱方程式と Gauss 核
標準 Gauss 核 は熱方程式 の基本解 (). 本問の は形式が異なるが「 関数列」として同じ役割を果たす. 偏微分方程式の初期値問題でこの近似は基本.
第7問 — 後期 2 日目 第 3 問 Dirichlet 積分 \int_0^\infty\sin x/x\,dx
方針 — 特異点を除去した整関数の活用
直接 で に極があり工夫が必要だが, は除去可能. 整関数として扱える で Cauchy 定理 を直接適用. を引いた分は他経路で改めて評価する.
(2) Jordan の不等式は四分円・半円の閉曲線で大切な評価.
典型ミス
- (3) で の向き () を と取り違え, 符号反転.
- の実部 も評価する必要があり ( で何かに収束する), 実部の比較で別の積分 (Frullani 型) が出る.
- Jordan 不等式 を逆向きにすると不等号が反転.
別解 — Laplace 変換
(Frullani 型変換) .
背景 — Dirichlet 積分とフーリエ解析
は最も有名な「絶対収束しない (条件収束) 積分」. Fourier 級数の収束理論 (Riemann 局所原理), Plancherel 等式 ( の Fourier 変換 矩形関数) などで頻出. 物理ではアンテナのビームパターンや回折の sinc 関数として現れる.
第8問 — 後期 2 日目 第 4 問 連結集合の保存と和集合
方針 — 連結性の標準論法
連結性の証明は背理法が標準: 「もし非連結なら開集合 で分離できる」. 矛盾を示す.
(1) は連続写像が連結性を保つ. (2) は閉包が連結性を継承. (3) は「連結族の融合」 — 共通点で固定すれば全体も連結.
典型ミス
- (1) で が の開集合, が の開集合になることが連続性の核心. 連続性の定義そのもの.
- (2) で から への移行は を使う.
- (3) で「 or 」を排他的に主張する根拠 ( 連結 + ).
検算 — 例示
の閉区間 は連結 (中間値定理から). の単位円周 も連結. これらは (1) を , などで確認可.
(3) の例: で 2 直線 と は原点で交わる連結集合. その和 (十字形) も連結.
背景 — 連結成分と単連結性
連結性は位相空間の「ひと続き性」. (3) を一般化すると「連結成分」(=その点を含む最大の連結集合) が定義され, の同値類分割を与える. さらに「単連結」(連結 + 任意の閉曲線が縮約可) はホモトピー論の出発点.
名大 数学 院試 過去問の収録6年度
後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形 / 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解 / 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1
後期 1 日目 第 1 問 行列の対角化と冪極限 / 後期 1 日目 第 2 問 反交換子型線形変換 T_A(X)=AX+XA / 後期 1 日目 第 3 問 多変数極限・微分可能性・累次積分
2024年度(このページ・全8問)
後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化 / 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底 / 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束
後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性) / 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形 / 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値
後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分) / 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性) / 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値)
1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性) / 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分) / 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分)