名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 多元数理科学研究科 数学 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理)。
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- 解説6問と大問1問の途中式・最終答(全8問)
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- 途中式と最終答(最終答つき0問)
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名大 数学 2021年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | 1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性) | 方針 — 行列式 vs トレース / 検算 — 具体例 | — |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分) | 方針 — 半収束 vs 絶対収束 / 極座標変換 / 検算 — 体積近似 (3) | — |
| 第3問 | — | 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分) | 方針 — +1) の一般公式 / 別解 — 偶関数 + 1/2 円 | — |
| 第4問 | 線形代数 | 2 日目 第 1 問 線形代数(A^2={}^T\!A なる行列) | 方針 — =TA から =I を導く / 検算 — ユニタリ性 | — |
| 第5問 | 微分積分・解析 | 2 日目 第 2 問 有界変動関数 | 方針 — BV と微分可能性 / 検算 — Jordan の分解 | — |
| 第6問 | 微分積分・解析 | 2 日目 第 3 問 連結性と局所定数関数 | 方針 — 連結性の標準的使い方 / 別解 (1) — の値の連続濃度上限 | — |
| 第7問 | — | — | — | — |
| 第8問 | — | — | — | — |
この年度の解説には典型ミス6件が付いています。
2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に4テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1・4問 | 25大学・544問 | |
| 重積分と極座標 | 第2問 | 23大学・142問 | |
| 留数定理 | 第3問 | 18大学・126問 | |
| 群論・環論 | 第4問 | 13大学・60問 |
第1問 — 1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性)
方針 — 行列式 vs トレース
固有値 3 個の問題は (i) 試行ベクトル で 2 個見つけて (ii) トレースで 3 個目を求める, が最速. 直接特性多項式を展開すると 3 次方程式になり計算が長い.
対角化可能性は 代数的重複度 = 幾何的重複度 で判定. 重複した固有値だけを集中して調べればよい.
典型ミス
- (1) で の特別ケースを見落とすと, 「 をパラメータとして 」が常に有効と誤解する.
- (4) で「固有値が重複したら対角化不可能」と短絡する. 重複しても十分な数の独立な固有ベクトルがあれば対角化できる (例: 単位行列 ).
- のケース ( の例外) を取りこぼしがち. のランクを実際に計算して確認する習慣.
検算 — 具体例
(, ): 対角化不可能のはず. row 1 = row 2 で rank , < 代数的重複度 . 対角化不可能. 整合.
背景 — Jordan 標準形と最小多項式
対角化不可能な行列は Jordan ブロックを持つ. 本問の では固有値 が Jordan ブロックを 1 個持つ. 最小多項式は .
第2問 — 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分)
方針 — 半収束 vs 絶対収束 / 極座標変換
(1) は絶対値が で発散するため絶対収束しない 半収束 例. 部分積分は半収束を扱う標準テク.
(3) 直交座標で は積分困難だが極座標で になり初等的. 「ガウス型 + 円形領域」のキーフレーズで自動的に極座標を選ぶ.
典型ミス
- (1) Dirichlet 判定法 ( の積分が有界 が単調減少 ) でも可だが, 部分積分の方が機械的.
- (2) 「」で「不確定」と書いて終わりにせず, 軸方向の値を見て鞍点と確定.
- (3) 領域図示を怠ると上限の意味を取り違える. 「直線 と円弧で囲まれた扇形」と把握できれば が即出る.
検算 — 体積近似 (3)
小: , 答 = 半径 の円の 1/8 (本領域の面積 , ). 整合.
背景 — 半収束積分と Riemann-Lebesgue
(余弦積分関数). 数値 . これは Riemann-Lebesgue 補題( なら ) の議論にも関連する.
解答
(1) の収束
部分積分: ().
で
- (, ).
- は かつ より絶対収束.
ゆえに有限値に収束.
(2) の極値
臨界点:
第 2 式から , 実数 3 乗根は単射ゆえ , .
第 1 式に代入: . .
臨界点: .
Hesse 行列:
: , . 高階項で判定. 軸上 (近傍で ), 軸上 . 鞍点 (極値でない).
: , . . , . 極大, 値 .
: , . . 同様に極大, 値 .
(3) 累次積分 (極座標変換)
積分領域 .
境界: 下 , 左 (直線, ), 右 (半径 の円).
直線 と円 で囲まれた第 1 象限の扇形 ().
極座標: , .
内側: .
最終答
% は収束する (Dirichlet 型の半収束積分).%
% 極大: で . 極小なし. は鞍点.%
% %
第3問 — 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分)
方針 — の一般公式
: . ✓
留数の計算で「 ゆえ 」のトリックは, を簡略化する標準手法.
典型ミス
- 上半平面の極を 3 個全部拾う. のうち 1 つを忘れて になる事故.
- 留数公式 を と混同 (分母にゼロが入る).
- 大きい円弧での寄与 の評価を省略 (証明問題なら厳密性を要求).
- 偏角の取り方: で から始める. から始めると 1 つずれる.
別解 — 偶関数 + 1/2 円
は偶関数なので . これを Beta 関数で:
ゆえに . ✓
背景 — 留数定理の物理応用
型は信号処理の Butterworth フィルタ ( 次), 量子力学の伝播関数 () などに登場. 留数定理は計算を初等的に閉じる強力な道具.
第4問 — 2 日目 第 1 問 線形代数(A^2={}^T\!A なる行列)
方針 — から を導く
(3) のキーは「 を転置で表現できれば 」. ここから がユニタリ行列だと判明し, スペクトル定理が使える.
(1)(2) は内積の性質と (実行列) を使う典型. 通常の対称行列 () や反対称 () と同様にスペクトルが代数的に決まる.
典型ミス
- (1) から直接 にしてしまう (これは「実固有値」). 本問は を使って 2 乗が出る.
- (3) 「」の根に を含めない (元から 正則).
- (3) になってしまう可能性を厳密に排除する必要 (条件 から).
- (4) 巡回置換以外にも例: 回転行列 など. 実形式 も可.
検算 — ユニタリ性
が「ユニタリ」の定義. 同時に が直交行列 (実ユニタリ).
背景 — 有限次群の表現
で は巡回群 の自明でない表現. 実 3 次元では 3 次巡回置換または「1 軸まわりの 回転」が標準. これは本問が誘導している群論的構造.
第5問 — 2 日目 第 2 問 有界変動関数
方針 — BV と微分可能性
(1) は「 かつ 有界 BV」の定型. 平均値定理が要.
(2) は典型的反例: は が原点で連続でないが BV, は が で発散して非 BV. 「 で抑えると微分可能」「 では微分不可能」が記憶のキー.
典型ミス
- (1) で が「連続」であることを暗黙に使うと, (2)(i) の ( が原点で連続でない) には直接適用できないように見える. しかし平均値定理は微分可能性のみで成立.
- (2)(i) で の値を曖昧にすると証明が穴あき. を明示する.
- (2)(ii) で「 で なので OK」と誤判. BV は変動和の議論であって極限値だけでは決まらない.
検算 — Jordan の分解
BV 関数は単調増加関数の差で書ける (Jordan の分解). なら全変動 . 一方 では .
背景 — Riemann-Stieltjes 積分
BV 関数 に対する (Riemann-Stieltjes 積分) は が BV であることが well-defined の必要条件. で「 を積分関数として使えない」ことが (2)(ii) の意味.
第6問 — 2 日目 第 3 問 連結性と局所定数関数
方針 — 連結性の標準的使い方
(2) は「連結 clopen 集合は または全体」の典型応用. が開かつ閉 を示せば終わり.
(1) は の弧状連結性の特殊版 (弧が ). 一般の連続曲線で弧状連結なら同じ結論を出すには Lebesgue 微分可能性などが必要.
典型ミス
- (1) で連鎖律を「」と書いたら適切. 偏導関数の定義に戻す必要なし.
- (1) の仮定「 級曲線」は重要 ( が連続). 単に「連続曲線で結べる」では弧長が無限のとき の微分可能性が保証されない.
- (2) で「 が開」を示し忘れる. これも局所定数性から従う.
- (2) で「 が連結 の連結部分集合 = 区間」とやってしまい, 区間に値域が制限されるが定数とは限らない. 局所定数性の仮定を直接使う.
別解 (1) — の値の連続濃度上限
弧状連結 連結 (位相). 連結空間上の連続関数の値域は連結 (区間). の値が「特定の点で 0 でない」とすると Mean Value Theorem を一次元で使い矛盾.
背景 — 連結性 vs 弧状連結性
の開集合では「連結 弧状連結」が成立. 一般の位相空間では弧状連結 連結だが逆は偽 (位相空間の例: トポロジストの正弦曲線).
(2) の議論は連結空間で成立する一般原理 = 「 から離散空間 への連続写像は値域が 1 点」. 局所定数性は連続性 + 離散像の言い換え.
第7問
第7問の途中式・最終答をPDFで見る第8問
第8問の途中式・最終答をPDFで見る名大 数学 院試 過去問の収録6年度
後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形 / 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解 / 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1
後期 1 日目 第 1 問 行列の対角化と冪極限 / 後期 1 日目 第 2 問 反交換子型線形変換 T_A(X)=AX+XA / 後期 1 日目 第 3 問 多変数極限・微分可能性・累次積分
後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化 / 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底 / 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束
後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性) / 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形 / 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値
後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分) / 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性) / 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値)
2021年度(このページ・全8問)
1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性) / 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分) / 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分)