名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 多元数理科学研究科 数学 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。微分積分・解析4問・線形代数2問・位相・幾何1問。テーマタグは5件(線形空間・基底・固有値・固有ベクトル・重積分と極座標)。2021年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標。
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- 解説8問と大問1問の途中式・最終答(全8問)
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名大 数学 2022年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は微分積分・解析4問・線形代数2問・位相・幾何1問・複素解析1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | 後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分) | 方針 — 階段化と次元公式 / 検算 — −1 で V 確認 | — |
| 第2問 | 線形代数 | 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性) | 方針 — ブロック分解 / 検算 — 1/2 での固有値計算 | — |
| 第3問 | 微分積分・解析 | 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値) | 方針 — Taylor 展開と臨界点分類 / 検算 — 値 | — |
| 第4問 | 微分積分・解析 | 後期 1 日目 第 4 問 微積分(広義積分の収束条件と値) | 方針 — 円柱座標と 変換 / 検算 — (1) の特殊値 | — |
| 第5問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 1 問 双対空間と積分による双対 | 方針 — 双対基底と Hilbert 行列 / 検算 — 1 の場合 | — |
| 第6問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 2 問 デルタ関数列と弱収束 | 方針 — 近似的 関数 / 検算 — 有限項の数値 | — |
| 第7問 | 複素解析 | 後期 2 日目 第 3 問 複素関数論(\int_0^\infty\sin(x^2)/x\,dx の評価) | 方針 — 楔形等高線で Fresnel 積分 / 検算 — Fresnel との関係 | — |
| 第8問 | 位相・幾何 | 後期 2 日目 第 4 問 上半連続関数とコンパクト性 | 方針 — 上半連続性の本質 / 検算 — 上半連続な反例 (コンパクトでない) | — |
この年度の解説には典型ミス8件が付いています。
2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 線形空間・基底 | 第1・2問 | 21大学・152問 | |
| 固有値・固有ベクトル | 第2問 | 25大学・544問 | |
| 重積分と極座標 | 第4問 | 23大学・142問 | |
| 正定値行列 | 第5問 | 17大学・70問 | |
| 波動関数 | 第6問 | 15大学・36問 |
前年度(2021年度)との違い
- 大問数
- 2021年度 8問 → 2022年度 8問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・重積分と極座標
第1問 — 後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分)
方針 — 階段化と次元公式
部分空間の次元計算は (i) ベクトルの差で 依存項を消す → (ii) 列ピボット階段化 → (iii) 次元公式で和や共通部分を間接導出, の流れ. 共通部分を直接求めるのは連立方程式が複雑なので, 次元公式を使う方が早い.
典型ミス
- の係数行列を直接行列式に使うと, 次行列式の余因子展開で煩雑. 階段化のほうが確実.
- (3) で「直接 を求める」と 元連立になる. 次元公式で済ませる.
- の特別ケースを見落とし, 全 で と書いてしまう.
検算 — で 確認
: の基底に が含まれる. これを と組み合わせる( の負): .
を の基底で表せば で, には一致しない. 別表現: … 計算は省くが, 階段化結果 の出現で が裏付けられる.
背景 — 次元公式と Grassmann 公式
が の部分空間のとき が成立 (Grassmann の公式). 包含関係 は と等価, あるいは と等価. 本問の ケースは後者を実現.
解答
は , , の生成する の部分空間, は , の生成する の部分空間.
(1)
差を取って 依存を消す.
検算: の各成分: , , , . ✓
をこの 2 つで簡約:
3 ベクトル は第 1, 2, 3 列にピボットを持ち, の値によらず一次独立.
(2)
(1) の 3 つの基底ベクトルに , を追加して階段化:
: で第 1 列ピボットを消去 . さらに の半分を加えて .
も同形になり, さらに の を加えると
具体的には の を で消すと .
(3)
次元定理 .
, .
特に で , すなわち .
最終答
% 任意の について .%
% %
% %
第2問 — 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性)
方針 — ブロック分解
行列が 成分でブロック化されているときは, 行列式 / 固有値計算をブロックごとに分けるのが基本. 本問は (中央) と (外側) のブロック構造. 中央の固有値は対角成分そのもの, 外側は 行列の特性方程式.
典型ミス
- (2) 特性多項式の符号. では となる. なら .
- (3) 「重複固有値があれば対角化不可能」の誤り. 重複しても幾何的重複度が等しければ対角化可能 (例: ).
- (3) 場合分けの抜け. で実は対角化可能 (固有空間が 2 次元) になることを見落とすと, 「 で対角化不可能」と誤答.
検算 — での固有値計算
直接 で (中央が となるので). 残り : . よって は重複度 . ✓
背景 — Jordan 標準形と
で が代数的重複度 かつ幾何的重複度 なので, には Jordan ブロック がある. 全体としては Jordan 標準形 .
第3問 — 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値)
方針 — Taylor 展開と臨界点分類
(1) は 3 次までの Taylor 多項式. を機械的に 3 つに適用すると 1 次は , 3 次が残る. は二項定理で素直に出る恒等式.
(2) は標準的「臨界点 → Hessian 判定」. から対称性を使って を導けば候補が絞れる.
典型ミス
- (1) で を 3 次までしか取らずに 次の評価を忘れる. は 5 次以上であることを明記.
- (2) で原点の Hessian が退化したときに 3 次以上の項を見ないと極値の有無が決まらない. 軸 () で sign が変わるなら鞍点.
- (2) で ケースを忘れる ( の解). 結局 に集約される.
- 定義域 を見落とすと などの境界 (ただし開境界なので極値候補にならない) を考えない.
検算 — 値
✓.
背景 — 一般化
は球面 (sphere) の超過角 (面積) 公式に類似. 点 を辺角 の球面三角形と考えると, 面積 の補正項. 本問の最大値 は 正三角形の面積でも現れる.
第4問 — 後期 1 日目 第 4 問 微積分(広義積分の収束条件と値)
方針 — 円柱座標と 変換
(1) 軸対称領域は円柱座標が標準. 高さ の下限が で曲面, 上限が なので 積分の収束条件 . 加えて で底辺が縮退するので 方向の収束条件 .
(2) 領域 は放物線型境界. で三角形に変換. このとき Jacobian が現れる.
典型ミス
- (1) 「 積分が で収束」だけで止めて, 積分の収束条件を見落とす. 二重・三重積分の収束はすべての方向で確認.
- (2) Jacobian を忘れる. .
- (2) の対称化: を で場合分けすると煩雑. 対称性で半領域に集約.
- (2) 内側積分の代数簡略化を諦めると数値が合わない. 置換は典型テク.
検算 — (1) の特殊値
(中央値): . 数値整合 (有限).
背景 — Beta 関数と球面体積
(1) の 積分は本質的に Beta 関数: 本問では Beta 関数を顕在化せずに直接計算したが, パラメータ依存の収束領域を Beta 関数の定義域 から見ても同じ条件が得られる.
第5問 — 後期 2 日目 第 1 問 双対空間と積分による双対
方針 — 双対基底と Hilbert 行列
(1)(2) は双対基底の標準的構成. (3) は多項式の基底 では という Taylor 係数抽出.
(4) は 内積で生じる Hilbert 行列 が現れる. これは から自然に出る.
典型ミス
- (1) で「張る」「独立」両方を示さず片方で済ませる. 基底の定義に厳密に.
- (3) で の場合の計算 を吟味. (, それ以外の .)
- (4) 「」を経由せず直接計算しようとして混乱.
検算 — の場合
, . . . 一方 (4) の式で : . ✓
背景 — 双対基底と 内積
内積 は 上で半正定値内積 (実は正定値). この内積によって (Riesz 表現). 双対基底 と内積基底 の関係を行列 で表す. これが Hilbert 行列で, 数値計算で条件数最悪の例として有名.
第6問 — 後期 2 日目 第 2 問 デルタ関数列と弱収束
方針 — 近似的 関数
は 上の確率密度で, で原点に集中する「近似的 関数」. 一般には次の 3 条件が満たされれば ():
- .
- ( によらず一定).
- 任意 で .
(1)(2) でこれらを示し, (3) で - で結論. これは Lebesgue 微分定理や Cauchy 主値の議論の原型.
典型ミス
- (3) で を引いて差を作る発想がない. 直接で示そうとすると複雑.
- の有界性を仮定なしで進めると, で爆発する で破綻.
- 一様連続性ではなく における連続性のみ使う. 大域的一様連続は不要.
検算 — 有限項の数値
: 自明に . ✓
: は発散 (有界でない は仮定外). 仮定をつければ収束する.
: 数値計算で 大で .
背景 — Cauchy-Lorentzian と Hilbert 変換
はLorentz 分布 の正の側 . となるのは半直線上で取っているため. Hilbert 変換や Plemelj-Sokhotski 公式と関係.
第7問 — 後期 2 日目 第 3 問 複素関数論(\int_0^\infty\sin(x^2)/x\,dx の評価)
方針 — 楔形等高線で Fresnel 積分
(Fresnel 積分) は標準. 本問の も の楔形を使う典型. 本質は「実軸上の を 方向に回転すると になる」.
典型ミス
- (2) で の Jordan 不等式を機械的に使うが, 本問では 限定なので最小値 から導出.
- (4) 上 の計算で符号ミス. , .
- (5) で がそれぞれ発散することを混同. 虚部だけを取れば収束する.
検算 — Fresnel との関係
. これに対し は で発散だが, 虚部 は有限. これは「 で なので の発散を打ち消す」効果.
背景 — Fresnel 積分の応用
光学回折 (Fresnel 回折) や量子力学の経路積分で が現れる. 本問の は不完全 Fresnel とも呼ばれ, FT 表で .
第8問 — 後期 2 日目 第 4 問 上半連続関数とコンパクト性
方針 — 上半連続性の本質
「上半連続」 「 が開」 「 が閉」 「」.
通常の連続関数の「最大値定理」がそのまま上半連続にも使える(下限の存在は下半連続が必要)というのが本問の要点.
典型ミス
- (1) で が連続関数でないと判定して即「上半連続でない」と短絡する. ジャンプの向きが重要.
- (2) の有限部分被覆を取るのを忘れる. 任意の開被覆に対して有限部分被覆が取れるのがコンパクトの定義.
- (3) で「上限が存在 それが最大値」と短絡. 一般の集合では上限と最大値は異なる. コンパクト + 上半連続が必要.
- (3) の矛盾論法は背理法. 「もし ならば...」の構成的議論.
検算 — 上半連続な反例 (コンパクトでない)
(コンパクトでない), (連続, 上半連続も). で (2) 失敗 (有界でない).
(コンパクトでない), (連続, 上半連続も). で (2) 失敗.
(コンパクト), if , . これは上半連続ではない ( 非開). (3) で最大値の存在条件失敗例.
背景 — 半連続性と Lebesgue 積分
上半連続 / 下半連続関数は測度論で重要. Lebesgue 可測の特徴付けや Vitali-Carathéodory 定理 (測度関数を半連続関数で挟む) で活用. また直接最適化問題で「下半連続関数の最小値の存在」(Weierstrass の定理の一般化) が頻出.
名大 数学 院試 過去問の収録6年度
後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形 / 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解 / 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1
後期 1 日目 第 1 問 行列の対角化と冪極限 / 後期 1 日目 第 2 問 反交換子型線形変換 T_A(X)=AX+XA / 後期 1 日目 第 3 問 多変数極限・微分可能性・累次積分
後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化 / 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底 / 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束
後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性) / 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形 / 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値
2022年度(このページ・全8問)
後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分) / 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性) / 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値)
1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性) / 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分) / 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分)