名古屋大学 院試 過去問 解答例
名大 多元数理科学研究科 数学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。微分積分・解析2問・線形代数1問・微分方程式1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・一様収束)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・一様収束。
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名大 数学 2026年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問・微分方程式1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | 後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形 | 方針 — Companion 行列・ベクトル空間操作・Jordan 鎖 / 背景 — Companion 行列と固有値 | — |
| 第2問 | — | 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解 | 方針 — 対合の固有空間分解 / 検算 — 対合の例 | — |
| 第3問 | 微分方程式 | 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1 | 方針 — 連続性・微分可能性・ の段階 / 検算 — 2 反例 | — |
| 第4問 | — | 後期 1 日目 第 4 問 平均値定理の中間点と漸近 | 方針 — MVT 中間点の漸近的位置 / 検算 — Taylor 直接 | — |
| 第5問 | — | 後期 2 日目 第 1 問 アフィン部分集合 V,W の共通部分と直和分解 | 方針 — アフィン vs 線形部分空間, 次元公式 / 背景 — Grassmann 公式 | — |
| 第6問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 2 問 関数列の積分・極限 | 方針 — 近似的 関数 / 背景 — Lebesgue 支配収束定理 vs Fatou | — |
| 第7問 | 微分積分・解析 | 後期 2 日目 第 3 問 楔形等高線で Fresnel 型積分 | 方針 — Gauss 積分の角度パラメータ族 / 背景 — Fresnel 積分への接続 | — |
| 第8問 | — | 後期 2 日目 第 4 問 集合 A を含む開集合系 \mathcal O_X^A | 方針 — 「特殊集合 を含む位相」と連続性 / 背景 — 粗い位相と分離公理 | — |
この年度の解説には典型ミス8件が付いています。
2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に4テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第1・2問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第5問 | 21大学・152問 | |
| 一様収束 | 第6問 | 14大学・63問 | |
| 偏微分可能性と連続性 | 第3問 | 9大学・12問 |
前年度(2025年度)との違い
- 大問数
- 2025年度 8問 → 2026年度 8問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・一様収束
- 2026年度で新しく出たテーマ
- 偏微分可能性と連続性
第1問 — 後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形
方針 — Companion 行列・ベクトル空間操作・Jordan 鎖
(1) はcompanion 行列型. 対角線下 , 第 1 列 . Companion 行列の特性多項式は係数列の多項式. ここでは漸化式で順番に出る.
(2) 共通部分は連立方程式の核. 機械的だが代入順序が重要.
(3) Jordan 鎖: 固有ベクトル から逆方向に を求める.
典型ミス
- (1) で漸化式を立てずに直接展開すると煩雑. パターン認識が鍵.
- (2) で を見落とすと, 自明な共通元の存在に気づかず.
- (3) で の存在性を確認 ( が解ける条件: ).
背景 — Companion 行列と固有値
(1) で は基底変換すると companion 行列の特性多項式. 行列の固有値計算で常用される.
解答
(1) 行列式
帰納的計算: を 同型行列の行列式とする (). 第 行 に沿って展開:
- 余因子: minor は 上三角行列で対角 , det . 符号 . 寄与 . (詳細符号計算で確認.)
- 余因子: minor .
漸化: .
初期 : , , , .
(2) の基底と次元
with , , .
with , , .
自明な共通元: . 両方の集合の元なので .
他の共通元の探索: を成分ごとに比較.
- : .
- : .
- : .
- : .
- : .
順次代入: , , (条件 から).
条件 : . 整理 .
条件 : , 整理 .
. , 自由.
ゆえに共通元 .
(3) の Jordan 標準形と変換行列
.
固有値: , (展開). 特性多項式 . 固有値 .
の幾何的重複度: . . ランク , . 代数 > 幾何 , defective.
Jordan 形: .
変換行列 : 固有ベクトルとジョルダン鎖.
: . , . 固有ベクトル .
固有ベクトル: . and から , ベクトル .
ジョルダン鎖 : を解く. , , . 2 番目から 自由でなく, 1 番目 番目: . つまり . 1 番目: . で .
最終答
% %
% , .%
% %
第2問 — 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解
方針 — 対合の固有空間分解
なる行列 (対合) は反射やパリティ作用素と呼ばれる. 固有空間 で空間が直和分解.
各空間: , . これらは互いに反対の関係.
典型ミス
- (1) で を示すのに と から直接ではなく, 表記を使うと簡潔.
- (2) のキー恒等式 . vs の射影分解.
検算 — 対合の例
, (反射). x 軸, y 軸. , . ✓
背景 — 量子力学のパリティ
量子力学のパリティ作用素 () は対合 . 固有空間 は偶/奇関数の空間に対応. 本問はこの代数構造の有限次元版.
第3問 — 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1
方針 — 連続性・微分可能性・ の段階
が増えるほど は原点付近で滑らかになる. 段階:
- : 連続性すら破れる ( 経路依存).
- : 連続. 偏微分も で . しかし が で連続でない.
- : .
これは「微分可能と は別物」の典型例.
典型ミス
- (3) で のみ計算して「 で OK」と誤判. で が破れる.
- 偏微分の計算で商の微分公式の符号ミス.
検算 — 反例
. . 軸上 (): . 軸上: . での極限が経路依存, 連続でない. 一方 . 不連続.
背景 — vs Fréchet 微分
「」は偏微分が連続を意味し, 「Fréchet 微分可能」より真に強い. なら Fréchet 微分可能だが, 逆は必ずしも成立しない. 本問は段階的な反例集.
第4問 — 後期 1 日目 第 4 問 平均値定理の中間点と漸近
方針 — MVT 中間点の漸近的位置
平均値の定理で得られる中間点 は で 中央付近 () に近づく ( が滑らかなとき).
これを精密化するのが (2) で, さらに (3) で「 なら中間点が距離 以内」を保証.
典型ミス
- (1) のときの符号調整. は に値を取るので, が負のときは .
- (2) で と を区別. で取り直すと (0, 1) 範囲に収まる.
- (3) の 選択は から を保証する の範囲.
検算 — Taylor 直接
. 一方 . これら比較で .
背景 — Cauchy 平均値定理と Taylor 級数
中間点 の挙動は Cauchy の平均値定理で精密化可能. は Lagrange 剰余の対称性に起因. これは数値解析でのエラー評価 (中点法など) や PDE の Taylor 展開で頻出.
第5問 — 後期 2 日目 第 1 問 アフィン部分集合 V,W の共通部分と直和分解
方針 — アフィン vs 線形部分空間, 次元公式
が を含む RHS (同次). アフィン部分空間は線形でない (一般). 共通部分が線形になるには両方が線形.
には: (i) , (ii) . 両方確認.
典型ミス
- (1) で「 がアフィンだから, もアフィン」 → 「線形条件は を含む」と結ぶ論理.
- (2) で 5 行 4 列を階段化する際, 行操作の順序ミス. ランクは順序によらないが計算ミスを誘発.
- (3) で と の両方が必要. どちらか片方では成立しない.
背景 — Grassmann 公式
. 本問: かつ で , .
第6問 — 後期 2 日目 第 2 問 関数列の積分・極限
方針 — 近似的 関数
(1) はFatou の補題の鋭さを示す例: 質量 が原点に集中するが, () には行き先がない. DCT が使えない反例.
(3) は (1) と類似だが連続 で重み付け. も近似的 関数 (原点に集中).
(2) は単調収束 + 指数集中. on で指数で抑え込まれる.
典型ミス
- (1) で「」を計算ミス. 三角形面積 .
- (2) で AM-GM を使わず直接で済ませると, 経路依存性が見えにくい.
- (3) で と の選び方の順序: 先, 後 (大).
背景 — Lebesgue 支配収束定理 vs Fatou
(1) DCT 不適用例. Fatou 補題 は成立 (). (2) DCT 適用例 (優関数 ). (3) 関数列の典型, 「」を で適用.
第7問 — 後期 2 日目 第 3 問 楔形等高線で Fresnel 型積分
方針 — Gauss 積分の角度パラメータ族
重要観察: で . 実部 が指数減衰を与え, 虚部が振動を与える.
で標準 Gauss: . 本問は への一般化で, が小さくなる ( で , 減衰なし) ときに収束ぎりぎり.
典型ミス
- (2) の で (条件 から) を確認する必要. 等号 では収束破綻.
- (3) で の向き (内向き vs 外向き ) を取り違えると符号反転.
- 実部・虚部分離で計算ミス. . 実部 . 虚部 . ( について 2 元連立で .)
背景 — Fresnel 積分への接続
: , . 形式的に
公式 で : . ✓ Fresnel 値.
本問は Fresnel 積分の連続変形. 等高線の取り方で を得る古典的方法.
第8問 — 後期 2 日目 第 4 問 集合 A を含む開集合系 \mathcal O_X^A
方針 — 「特殊集合 を含む位相」と連続性
は を「強制的な共通部分」とする位相. がいわば「ベースライン」となり, 開集合は必ず を含む.
Hausdorff 性: 異なる 2 点を分離する開集合が必要だが, 全ての非空開が を含むので なら分離不能. 結果, が条件.
連続性: as a map . の開逆像が で開 「 または を含む」.
典型ミス
- (3) で「 が連続 も連続」と短絡. の位相は通常のユークリッドより粗い, 連続性は逆になることも. 実際本問は通常連続な に追加条件 ( on ) が必要.
- (4) で「 on なら OK」と誤判. 正しくは「 定数」.
- (2) で のケース (自明 Hausdorff) を見落とすと「never Hausdorff」と書く.
背景 — 粗い位相と分離公理
は で粒度を粗くした位相. 通常のユークリッドより粗いので連続性は強くなる ( がより制限的な開集合になる必要).
応用: 商位相, 終位相 (final topology) などで類似構造. 「強制的な共通部分」を持つ位相は分離公理を満たしにくい.
名大 数学 院試 過去問の収録6年度
2026年度(このページ・全8問)
後期 1 日目 第 1 問 行列式・部分空間共通部分・Jordan 標準形 / 後期 1 日目 第 2 問 対合 P^2=I と固有空間分解 / 後期 1 日目 第 3 問 f_n(x,y)=x^ny/(x^2+y^2) の連続性・偏微分・C^1
後期 1 日目 第 1 問 行列の対角化と冪極限 / 後期 1 日目 第 2 問 反交換子型線形変換 T_A(X)=AX+XA / 後期 1 日目 第 3 問 多変数極限・微分可能性・累次積分
後期 1 日目 第 1 問 行列の同時対角化 / 後期 1 日目 第 2 問 部分空間 V_1,V_2 の交わりと正規直交基底 / 後期 1 日目 第 3 問 数値積分と広義積分の収束
後期 1 日目 第 1 問 連立 1 次方程式(A\mathbf x=\mathbf b の可解性) / 後期 1 日目 第 2 問 行列の固有値とジョルダン標準形 / 後期 1 日目 第 3 問 楕円 g=0 上の f=xy の極値
後期 1 日目 第 1 問 線形代数(部分空間 V,W の和と共通部分) / 後期 1 日目 第 2 問 線形代数(対角化可能性) / 後期 1 日目 第 3 問 微積分(\sin x+\sin y-\sin(x+y) の極値)
1 日目 第 1 問 線形代数(対角化可能性) / 1 日目 第 2 問 微積分(広義積分・極値・累次積分) / 1 日目 第 3 問 複素解析(留数定理による有理関数の広義積分)