東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 精密工学専攻 専門学術(小論文) 2025年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 精密工学専攻 専門学術(小論文) 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全14問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A日程 計測工学
この2語を並べる意義
小論文では、用語の説明だけで終えるより、計測の信頼性(標準)と材料評価の具体例(回折)をセットで語ると答案が強くなる。回折のピーク位置を議論するにも、角度、波長、温度、試料位置のずれなどの系統誤差を管理する必要があり、計測標準の話へ自然につながる。
よくある落とし穴
計測標準を「基準値」程度に矮小化して、トレーサビリティや不確かさを外すと、精密工学としての要点を落とす。X線回折では、相同定だけでなく「何を保証したいのか」(応力、配向、膜質など)を先に宣言し、測定幾何と深さ感度の話を一言でも入れると説得力が増す。
第2問 — A日程 精密加工学
採点者が見たい「精密工学」
加工法の羅列より、誤差要因(熱、機械誤差、工具形状、外乱)と計測に基づく補正まで書けると「精密工学らしさ」が出る。非球面も鏡面も、最終性能は形状・表面の測れる量で規定される。
よくある不足
非球面で「研磨する」とだけ書き、測定(干渉計等)と座標合わせ、収束の考え方を欠くと弱い。鏡面仕上げで だけに言及し、うねり、欠陥、変質層(サブサーフェス)を無視すると、実装経験のない答案に見える。
第3問 — A日程 マイクロシステム材料学
精密工学での「材料学」
材料学は物性の説明だけでなく、加工・計測・設計へどう効くかが採点軸になる。レジストはパターン精度、単結晶は方位と欠陥を通じて、最終デバイスの性能分布へつながる。
よくある落とし穴
レジストで「ポジ/ネガ」だけを書き、工程(塗布・ベーク・露光・現像・エッチング)と誤差要因を欠くと浅い。単結晶で「粒界がない」とだけ述べて、欠陥・不純物・方位依存性に触れないと、マイクロシステム材料としての要点が外れる。
第4問 — A日程 メカトロニクス・ロボティクス
書くべき観点
誘導モータは「構造」よりも、すべりが必要、等価回路で特性評価、インバータで高性能制御の3点が骨格になる。ZMPは定義に加えて、支持多角形制約と歩行計画への使い方が書けると完成度が上がる。
よくある誤り
誘導モータを「同期速度で回る」と書いてしまうと、すべりと誘導の本質を落とす。ZMPは「重心位置」ではないので、COMと混同せず、加速度(慣性)でZMPが動くことを示すと誤解が避けられる。
第5問 — A日程 生産システム工学
「工学的内容」を厚くするコツ
プル/プッシュは概念説明で止めず、WIP・リードタイム・欠品のメカニズムに触れると工学的になる。TSPは定義だけでなく、なぜ難しいか(組合せ爆発)と現場での近似解の位置付けまで書けるとよい。
典型ミス
プル=在庫ゼロと短絡すると危険で、現実には仕掛上限を設計変数として扱う。TSPは「最短経路問題(単一始点終点)」と混同しやすいので、全点を一度ずつ巡回という条件を明記すると誤解を避けられる。
第6問 — A日程 設計システム工学
対として書くポイント
最適化は「決める」技術、リバースは「読み解く」技術で、どちらも設計をデータとモデルで扱う点が共通する。これを押さえると、設計システム工学としての統一感が出る。
採点上の注意
最適化は数式を一つ入れて枠組みを示すと強い。一方で、現実の設計はモデル誤差と制約だらけなので、製造制約や検証に触れると実務的な答案になる。リバースは「コピーする」ではなく、品質解析と再設計まで書くと安全で説得力が高い。
第7問 — A日程 バイオ・メディカル
精密工学らしい書き方
生体語を説明するだけでなく、測る/動かすための等価回路と制約へ落とすと答案が強くなる。ネルンスト電位は式を一つ出し、どの変数が効くか(温度、価数、濃度比)を言うとよい。
典型ミス
ネルンスト電位を「静止膜電位そのもの」と断定すると不正確になりやすい(実際は多イオン透過性で決まる)。神経インタフェースは「高密度電極を作る」で終えるのではなく、長期安定性と安全性(電荷注入・炎症)を必ず一言入れると評価が上がる。
第8問 — B日程 計測工学
つなげ方
SPMはナノスケール信号を扱うため、雑音とドリフトが支配的になる。よって、1/f雑音を「回路の話」で閉じず、計測システム全体の低周波限界として語ると、2語が自然に接続する。
典型ミス
1/f雑音を白色雑音と混同して「平均すれば消える」と書くのは危険で、低周波成分が残る点を明確にする。SPMでは「分解能が高い」とだけ書かず、探針畳み込み誤差や走査系の非線形に一言触れると実装理解が伝わる。
第9問 — B日程 精密加工学
対比で答案を厚くする
ラッピングは「削る」、溶射は「盛る」。この対比を冒頭で宣言し、どちらも最終機能と寸法精度へどうつながるかを書くと、精密加工学としての一貫性が出る。
よくある不足
ラッピングで「鏡面になる」とだけ書き、平面度・加圧分布・砥粒条件を欠くと弱い。溶射は材料名の列挙ではなく、気孔・酸化・残留応力が性能を左右する点と、後加工を含めた寸法保証に触れるとよい。
第10問 — B日程 マイクロシステム材料学
2語の接続
実装は「機械位置決め」だけではなく、はんだ・樹脂の濡れと固化、界面反応が支配的になる。接触角の議論を入れると、フリップチップの工程(リフロー、アンダーフィル)を物理で説明できる。
典型ミス
接触角を「親水/撥水」の言い換えで終え、式とヒステリシスに触れないと浅い。フリップチップでは、配線が短い利点だけでなく、熱疲労と応力緩和(アンダーフィル)を必ず書くと工学的になる。
第11問 — B日程 メカトロニクス・ロボティクス
答案の骨格
減速機は「構造の説明」より、利点と副作用(弾性・摩擦)を挙げ、制御と結びつけると工学的になる。可操作性は式を1つ示し、特異姿勢との関係を書ければ十分に強い。
典型ミス
ハーモニックドライブを「バックラッシがゼロ」と言い切ると誤りで、実際は小さいが弾性変形や摩擦がある。可操作性は「動きやすい」だけで終えるのではなく、方向性(楕円体)と特異姿勢での劣化を明確にする。
第12問 — B日程 生産システム工学
「生産システム」としての書き方
CPSをIoTの言い換えで終えず、計測→解析→フィードバックの閉ループとして説明すると工学的になる。ERPも単なる在庫管理ではなく、計画と資源制約の整合が主題であることを明確にする。
典型ミス
現場の実時間制御をERPでやるように書くと現実味がなくなる。ERPとCPSの間にMES等があり、粒度・周期が違うことを一言入れると説得力が増す。
第13問 — B日程 設計システム工学
設計システムとしての接続
狩野モデルは「何を良くするか」を決める枠組み、ボクセルモデルは「それをどう表現し、検証するか」の基盤になる。設計システム工学では、価値の定義と形状・データ表現が切り離せないことを示すと答案が強くなる。
よくある不足
狩野モデルは分類名の暗記で終わりがちなので、満足の非線形と意思決定(重点配分)を書き、精密機器の例を1つ添えるとよい。ボクセルは「3Dピクセル」だけで終えず、用途(CT/AM/品質解析)と解像度問題に触れると工学的になる。
第14問 — B日程 バイオ・メディカル
医工学の「統合」
どちらも原理は教科書的だが、実装では誤差要因が支配的になる。パルスオキシメトリは体動・装着、電気泳動は温度・表面・気泡といった実験条件の制御まで書くと工学的になる。
典型ミス
パルスオキシメトリを「透過光から直接酸素濃度が分かる」と単純化しすぎると危険で、AC/DC分離と較正の存在を示すとよい。電気泳動は「電荷が大きいほど速い」だけで終えず、ゲルのふるい効果やEOF、ジュール熱に触れると説得力が増す。