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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 情報理工学院 情報工学系 専門科目(情報工学) 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。制御工学1問・線形代数1問・電磁気学・回路1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・伝達関数・ラプラス変換)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・伝達関数・フィードバック制御。

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収録5年度分の解答PDF:東京科学大学 情報理工学院 情報工学系 専門科目(情報工学)(¥2,880・紙面見本あり)

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東京科学大 専門科目(情報工学) 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は制御工学1問・線形代数1問・電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数漸化式と歪対称行列漸化式は行列の極限に落とす / 歪対称行列の固有値あり
第2問—論理式・自然演繹・文法否定された含意 / 自然数の表現と全称除去あり
第3問—スタックと動的計画法スタックは右端が上 / substring と subsequence の違いあり
第4問制御工学ラプラス変換とフィードバック制御時間スケーリングと遅れ / Bode 線図あり
第5問電磁気学・回路論理回路とパイプライン組合せ回路と順序回路 / マルチプレクサ木あり

この年度の解説には採点の置き所5件・検算3件・典型ミス2件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に5テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5問
2023年度で新しく出たテーマ
ラプラス変換・動的計画法
2022年度のページを見る

第1問 — 漸化式と歪対称行列

漸化式は行列の極限に落とす

2 項漸化式では (ak+1,ak)T(a_{k+1},a_k)^T を状態ベクトルにするのが定石である。 絶対値が 1 未満の固有値に対応する成分は消え,固有値 1 の成分だけが極限に残る。

歪対称行列の固有値

実歪対称行列は,実数上では回転成分を表す行列であり,非零固有値は実軸上には現れない。 行列式の非負性は,固有値が ±iμ\pm i\mu の対で現れることから積を見れば分かる。

採点の置き所

漸化式では状態ベクトルの取り方,遷移行列,固有値分解,初期値への適用までが採点対象になる。 歪対称行列の小問では,実ベクトルに対する xTAx=0x^TAx=0 と,複素固有値の議論を分けて書く。 行列式の非負性は固有値対の積まで示すと,結論だけよりも答案として強い。

検算

lim⁡Bn\lim B^n の各行が同じになるのは,漸化式の極限で ak+2=ak+1=aka_{k+2}=a_{k+1}=a_k となることと整合する。 lim⁡ak=2/3\lim a_k=2/3 は,初期ベクトル (1,0)T(1,0)^T に極限行列を掛けた第2成分でも確認できる。

解答

  1. 漸化式は (ak+2ak+1)=(1/21/210)(ak+1ak) \begin{pmatrix}a_{k+2}\\a_{k+1}\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}1/2&1/2\\1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}a_{k+1}\\a_k\end{pmatrix} と書ける。行列を BB とおくと det⁡(λI−B)=λ2−12λ−12=(λ−1)(λ+12). \det(\lambda I-B) =\lambda^2-\frac12\lambda-\frac12 =(\lambda-1)\left(\lambda+\frac12\right). よって固有値は 1,−1/21,-1/2 である。対応する固有ベクトルの一例は λ=1:(11),λ=−12:(1−2). \lambda=1:\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}, \qquad \lambda=-\frac12:\begin{pmatrix}1\\-2\end{pmatrix}. したがって B=(111−2)(100−1/2)(2/31/31/3−1/3), B= \begin{pmatrix}1&1\\1&-2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}1&0\\0&-1/2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}2/3&1/3\\1/3&-1/3\end{pmatrix}, なので lim⁡n→∞Bn=(111−2)(1000)(2/31/31/3−1/3)=(2/31/32/31/3). \lim_{n\to\infty}B^n = \begin{pmatrix}1&1\\1&-2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}2/3&1/3\\1/3&-1/3\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}2/3&1/3\\2/3&1/3\end{pmatrix}. 初期値から (ak+1ak)=Bk(10) \begin{pmatrix}a_{k+1}\\a_k\end{pmatrix} =B^k\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix} であるため, lim⁡k→∞ak=23. \lim_{k\to\infty}a_k=\frac23.
  2. AT=−AA^T=-A とする。 固有多項式 p(t)=det⁡(tI−A)p(t)=\det(tI-A) について p(t)=det⁡((tI−A)T)=det⁡(tI+A)=(−1)np(−t) p(t)=\det((tI-A)^T)=\det(tI+A)=(-1)^n p(-t) が成り立つ。したがって λ\lambda が固有値なら −λ-\lambda も固有値である。 実ベクトル xx に対して,xTAxx^TAx は 1 次元のスカラーなので xTAx=(xTAx)T=xTATx=−xTAx. x^TAx=(x^TAx)^T=x^TA^Tx=-x^TAx. よって xTAx=0x^TAx=0 である。 複素固有ベクトル v≠0v\ne0 に対して Av=λvAv=\lambda v とする。 AA は実歪対称なので A∗=−AA^*=-A であり, v∗Av‾=v∗A∗v=−v∗Av. \overline{v^*Av}=v^*A^*v=-v^*Av. 一方 v∗Av=λv∗vv^*Av=\lambda v^*v で v∗v>0v^*v>0 だから,λ\lambda はゼロでない限り純虚数である。 固有値は 00 と純虚数の対 ±iμ\pm i\mu からなる。 各対の積は μ2≥0\mu^2\ge0 であり,零固有値があれば行列式は 0 である。 よって det⁡A≥0\det A\ge0 である。

最終答

BB の固有値は 1,−1/21,-1/2,固有ベクトルは例えば (1,1)T,(1,−2)T(1,1)^T,(1,-2)^T。lim⁡n→∞Bn=(2/31/32/31/3)\lim_{n\to\infty}B^n=\begin{pmatrix}2/3&1/3\\2/3&1/3\end{pmatrix},lim⁡ak=2/3\lim a_k=2/3。歪対称行列では λ\lambda が固有値なら −λ-\lambda も固有値,実 xx について xTAx=0x^TAx=0,非零固有値は純虚数,det⁡A≥0\det A\ge0。

第2問 — 論理式・自然演繹・文法

否定された含意

¬(A→B)\neg(A\to B) は A∧¬BA\land\neg B と同値である。 この変形を先に行うと,真理値表も選言標準形もほぼ同時に求まる。

自然数の表現と全称除去

後者関数 ss を用いる表現では,1=s(0)1=s(0),2=s(s(0))2=s(s(0)) である。 証明図では,全称命題から必要な具体項を代入した式を取り出し,最後に含意除去を使う。

あいまい性の見抜き方

元の規則 S→SaSS\to SaS と S→SbS\to Sb は,末尾の bb を大きな部分木の外側に付けるか, 右側の SS の内側に付けるかで導出が分かれる。 非あいまい化では,生成語を c(b∣ac)∗c(b\mid ac)^* と見て,末尾から一意に規則を決められる形にする。

採点の置き所

真理値表は行順を明示し,最少リテラルの形は同値変形から導く。 自然演繹の空欄は番号だけでなく,どの公理または全称除去で出た式かを追えるようにする。 文法のあいまい性は,二つの異なる導出を具体的に示して初めて十分な説明になる。

典型ミス

¬(p→(q∧r))\neg(p\to(q\land r)) を ¬p∨(q∧r)\neg p\lor(q\land r) としてしまうと,全ての後続答案が崩れる。 非あいまい文法では同じ言語を生成していることが必要なので,単に導出を一つに制限して語を減らさないようにする。

論理式・自然演繹・文法の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — スタックと動的計画法

スタックは右端が上

この記法では最後に追加されたデータが右端にある。 POP は右端を取り除く操作なので,途中状態を書き出すと選択肢の取り違えを防げる。

substring と subsequence の違い

最長共通部分文字列は連続性が必要なので,不一致なら長さは 0 に戻る。 最長共通部分列では連続性が不要なため,不一致でも「一方の末尾を使わない」場合の最大値を引き継ぐ。

編集距離の三つの遷移

置換は左上,削除は上,挿入は左から来る。 境界条件は空文字列との変換コストであり,挿入・削除のコストが 2 なので 2i2i になる。

採点の置き所

スタック問題では,PUSH/POP の途中状態を列で書くと選択肢の根拠が明確になる。 動的計画法では,表の意味,初期条件,遷移式をそれぞれ示すと空欄以外でも部分点が入る。 編集距離は操作コストが通常と異なるため,境界値と三つの遷移のコストを明記する。

検算

最長共通部分文字列では,不一致セルが 0 になるため,表に長い値が連続して現れないかを見ると確認できる。 編集距離の最終値は,削除・挿入だけで変換する上界より小さいこと,かつ負にならないことを確認しておく。

スタックと動的計画法の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ラプラス変換とフィードバック制御

時間スケーリングと遅れ

f(at−b)f(at-b) は 1/a1/a の時間スケーリングと b/ab/a の遅れを同時に含む。 変数変換を直接行うと,係数 1/a1/a と指数因子 e−bs/ae^{-bs/a} の両方が自然に出る。

Bode 線図

(1+s/2)−1(1+s/2)^{-1} と (1+s/10)−1(1+s/10)^{-1} の 2 つの一次遅れを足し合わせて考える。 ゲイン線図では各極で −20-20 dB/dec ずつ傾きが増え,位相線図では各極が約 −90∘-90^\circ を寄与する。

Routh 条件と根軌跡

3 次多項式 s3+a2s2+a1s+a0s^3+a_2s^2+a_1s+a_0 では,係数正と a2a1>a0a_2a_1>a_0 が安定条件になる。 根軌跡では,ゲインを上げると応答速度だけでなく振動性も変わるため,定常偏差だけを見て K0K_0 を大きくしすぎるのは危険である。

採点の置き所

時間遅れのラプラス変換では,積分下限が変わる理由を f(τ)=0f(\tau)=0 と結びつけて書く。 Bode 線図は折点,傾き,位相の三点がそろえば十分に採点される。 根軌跡では実軸上の存在区間,分岐点,漸近線重心,角度をセットで整理する。

検算

ステップ応答 y(t)y(t) は y(0)=0y(0)=0,lim⁡t→∞y(t)=1\lim_{t\to\infty}y(t)=1 を満たす。 定常偏差 5/(5+K0)5/(5+K_0) は K0=45K_0=45 で 0.10.1 になり,安定上限 6363 より小さいので条件範囲と整合する。

ラプラス変換とフィードバック制御の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 論理回路とパイプライン

組合せ回路と順序回路

組合せ回路は現在の入力だけで出力が決まり,順序回路はフリップフロップなどの状態を持つ。 記憶素子がある時点で,クロックごとの状態遷移として読むのが基本である。

マルチプレクサ木

8 個から 1 個を選ぶ構成では,下位ビットが最初の 2 択,中位ビットが 4 個のまとまりの選択, 上位ビットが左右半分の選択を担当する。PC の各ビットをこの階層に対応させればよい。

データハザード

パイプラインでは,命令の結果が RF に書き戻される前に次の命令が読み出しを行うことがある。 このため,直前命令の生成値を直接後段へ送るフォワーディングが必要になる。 判定には「どのレジスタへ書くか」と「どのレジスタを読むか」の番号比較が本質である。

採点の置き所

回路の空欄は,選択肢番号だけでなく,対象が組合せ回路か順序回路かを説明するとよい。 パイプライン小問では,同じ時刻に各命令がどの段にいるかを表にしてから信号値を読む。 フォワーディングの説明は,比較するレジスタ番号と置き換えるデータ経路を両方書く。

典型ミス

RF への書き込み完了前に次命令が値を読む点を見落とすと,T4T4 の xtvxtv を 3 としてしまう。 マルチプレクサ木では,上位ビットと下位ビットの担当段を逆に読むと選択信号が全てずれる。

論理回路とパイプラインの途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 専門科目(情報工学) 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全3問)

    微分・線形独立・二変量正規分布 / 正規文法・有限オートマトン・言語族 / 格子経路と再帰・動的計画法

  • 2024年度(全3問)

    行列式・二次形式・変数変換 / 文法・オートマトン・論理 / 計算量と二分探索木

  • 2023年度(このページ・全5問)

    漸化式と歪対称行列 / 論理式・自然演繹・文法 / スタックと動的計画法

  • 2022年度(全5問)

    対称行列の固有値分解 / 形式言語と論理 / ヒープ配列とヒープソート

  • 2020年度(全5問)

    極限・行列式・確率 / 命題論理と一階述語論理 / 整列アルゴリズムと反転数