北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 情報科学院 情報科学専攻 情報理工学コース 専門科目 2026年度 院試 解答例・解説
北海道大学 情報科学院 情報科学専攻 情報理工学コース 専門科目 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 基礎数学
同時対角化の見方
対称行列を直交対角化するときは,正規直交固有ベクトルを列に並べる。今回の2つの行列はどちらも と を固有ベクトルにもつので,個別に固有ベクトルを探し直す必要がない。 可換性 は同時対角化の背景にある性質だが,答案では実際の共通固有ベクトルを示すと最も確実である。
2変数2次式の極値判定
2次式ではヘッセ行列が定数行列になるため,停留点を求めた後の判定は二次形式だけで決まる。 は固有値が正負に分かれることを意味し,停留点の近くに値が増える方向と減る方向がともに存在する。 したがって「停留点がある」ことと「極値がある」ことを混同しないことが重要である。
第2問 — 情報数学
含意の真理値
が偽になるのは が真で が偽のときだけである。この1点を押さえると真理値表の誤りが減る。 3変数の式では, が偽なら結論 が真であり, が真なら前提から と が順に強制される。 このため最終列はすべて真になる。
単射・全射の確認
単射は「同じ値をとる異なる入力がない」こと,全射は「任意の出力候補に原像がある」ことを示す。 は と が同じ値になるため単射でないが,任意の に対し を取れば に写るので全射である。
文法の読み取り
生成規則を追うと, の左右に同数の が残る構造が見える。 文脈自由文法に直すときは,中央の を基底として,左右に と を同時に1個ずつ付け加える規則を書けばよい。
第3問 — 確率・統計
負の二項分布の母関数
二項級数を使うと正規化と確率母関数が同時に処理できる。符号の扱いでは と の2つの が打ち消し合う点が重要である。
確率母関数からの平均・分散
確率母関数では , である。 分散を求めるときに をそのまま二乗平均と誤解しないこと。 を挟む必要がある。
検定の答案で書くべき要素
水準,棄却域,検出力は互いに別の概念である。水準は帰無仮説のもとでの誤棄却確率,検出力は各パラメータで実際に棄却できる確率を表す。 正規平均の両側検定では,片側に ずつ割り振るため臨界値が になる。
第4問 — アルゴリズムとデータ構造
ビッグオーの判定
多項式では最高次数の項だけを見ればよい。指数関数 はどの多項式よりも速く増えるため, とはいえない。 三角関数の項は振動するが,絶対値が定数で抑えられるため,係数として掛かっている の次数だけを見ればよい。
最小全域木の確認
Kruskal 法では小さい辺から順に選ぶ。重み の は必ず採用でき,次に で を接続し,最後に で を接続すれば全頂点がつながる。 この時点で頂点数5に対して辺数4なので木である。閉路を作る辺を採用しないことが重要である。
編集距離の動的計画法
は接頭辞どうしの編集距離である。表を埋めるときは左,上,左上の3方向だけを参照する。 左は挿入,上は削除,左上は一致または置換に対応する。境界条件を誤ると表全体がずれるため,最初に と を確定させる。
第5問 — 人工知能
AIガバナンス用語
「安全・公平・透明」はAIシステムの社会実装で頻出の観点である。 安全性では脆弱性やプロンプトインジェクション,公平性ではデータやアルゴリズムのバイアス,透明性ではログや説明可能性が対応する。 RAG とファインチューニングはどちらもLLMの性能を補う方法だが,RAG は外部情報検索,ファインチューニングは追加学習による調整である。
Softmax微分の定石
Softmax は全成分が同じ分母を共有するため, と で場合分けが必要になる。 最終形 まで整理しておくと,交差エントロピーとの合成微分にもそのまま使える。
DQNのターゲットネットワーク
DQN では,更新対象の と,教師信号側の に別のパラメータを使う。 同じネットワークで両方を毎回動かすと目標値も同時に動いて学習が不安定になりやすい。 そのため一定間隔で と同期する。
第6問 — コンピュータシステム
インクリメント回路
では入力をそのまま通し, では を加えるので,実質的には3ビット値に1ビット値 を加える加算器である。 下位桁からキャリーを追うと,カルノー図を描かなくても候補式を検算できる。 は のときだけ立つため, になる。
固定小数点の誤差
小数点の位置が固定されていると,ビット列が同じでも表す値は形式に依存する。 今回の形式では小数部に使える桁数が限られるため, の循環2進展開を完全には表せない。 誤差は「真値 表現値」で計算しておくと符号も含めて説明しやすい。
OSの状態遷移
running と runnable の違いは CPU を実際に持っているかどうかである。 blocked は CPU が空いても実行できない状態であり,I/O 完了や同期イベントによって runnable に戻る。 この区別を書かないと,スケジューラが制御できる待ちと,外部イベント待ちが混同される。
経路表の読み方
宛先IPアドレスに対して最も具体的に一致するネットワークを選ぶのが基本である。 該当する個別経路がなければデフォルト経路を使う。障害時の設問では,削除された経路を使わずに,各ルータの残った表だけで次ホップを追うことが重要である。