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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 情報理工学系研究科 数理情報学専攻 数理情報学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。線形代数1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・正定値行列・動的計画法)。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東大 数理情報学 2025年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数半正定値行列の真偽判定逆行列は順序を反転するあり
第2問—相分離モデルとエネルギーエネルギー勾配流 / Neumann 条件の役割あり
第3問—密度の平均と中央値分位関数で見る / 減少密度の直感あり
第4問—ポアソン近似の結合結合で分布距離を測る / 不一致が起こる範囲あり
第5問—max-plus次数と閉路条件max-plus への変換 / 収束と正閉路あり

この年度の解説には典型ミス1件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
2024年度のページを見る

第1問 — 半正定値行列の真偽判定

方針

半正定値行列では、トレース内積 tr⁡(AB)\operatorname{tr}(AB) を B1/2AB1/2B^{1/2}AB^{1/2} のトレースとして読むのが基本である。 また、半正定値性の双対性は C=xx⊤C=xx^\top を代入すれば一行で確認できる。

典型ミス

A⪰B⪰OA\succeq B\succeq O から A2⪰B2A^2\succeq B^2 としてしまう誤りが多い。 実数なら単調性があるが、行列では積の順序が交換できないため同じ議論は使えない。

逆行列は順序を反転する

正定値行列の逆行列については順序が反転する。直接 B−1−A−1=B−1(A−B)A−1B^{-1}-A^{-1}=B^{-1}(A-B)A^{-1} とだけ書くと右辺が対称に見えないので、合同変換で 0≺C⪯I0\prec C\preceq I に落としてから固有値で判断するのが安全である。

解答

(1)

これは真である。B⪰OB\succeq O なので対称平方根 B1/2B^{1/2} が存在する。 tr⁡(AB)=tr⁡(B1/2AB1/2). \operatorname{tr}(AB) =\operatorname{tr}(B^{1/2}AB^{1/2}). A⪰OA\succeq O であるから B1/2AB1/2⪰OB^{1/2}AB^{1/2}\succeq O であり、半正定値行列の固有値はすべて非負である。従ってそのトレースも非負で、 tr⁡(AB)≥0 \operatorname{tr}(AB)\ge0 である。

(2)

これは偽である。d≥2d\ge2 とし、 A=(1000)⊕Od−2,B=(0001)⊕Od−2 A= \begin{pmatrix} 1&0\\ 0&0 \end{pmatrix} \oplus O_{d-2},\qquad B= \begin{pmatrix} 0&0\\ 0&1 \end{pmatrix} \oplus O_{d-2} とおく。両者は半正定値で、どちらも零行列ではない。一方で AB=O,tr⁡(AB)=0 AB=O,\qquad \operatorname{tr}(AB)=0 であるから反例になる。

(3)

これは真である。任意の x∈Rdx\in\mathbb{R}^d に対して C=xx⊤C=xx^\top とおけば、 C⪰OC\succeq O である。仮定より 0≤tr⁡(Axx⊤)=x⊤Ax. 0\le\operatorname{tr}(Axx^\top)=x^\top Ax. これはすべての xx で成り立つので、対称行列 AA は半正定値である。

(4)

これは偽である。d=2d=2 で B=(1000),A=(2111) B= \begin{pmatrix} 1&0\\ 0&0 \end{pmatrix},\qquad A= \begin{pmatrix} 2&1\\ 1&1 \end{pmatrix} とおく。このとき A−B=(1111)⪰O A-B= \begin{pmatrix} 1&1\\ 1&1 \end{pmatrix}\succeq O であり、B⪰OB\succeq O だから A⪰B⪰OA\succeq B\succeq O である。しかし A2−B2=(4332) A^2-B^2 = \begin{pmatrix} 4&3\\ 3&2 \end{pmatrix} の行列式は 8−9=−18-9=-1 である。よって A2−B2A^2-B^2 は半正定値ではなく、 A2⪰B2A^2\succeq B^2 は成り立たない。

(5)

これは真である。A⪰B≻OA\succeq B\succ O とする。 C=A−1/2BA−1/2 C=A^{-1/2}BA^{-1/2} とおくと、C≻OC\succ O かつ C⪯IC\preceq I である。従って CC の固有値は (0,1](0,1] に入り、C−1⪰IC^{-1}\succeq I である。両辺を A−1/2A^{-1/2} で合同変換して B−1=A−1/2C−1A−1/2⪰A−1/2IA−1/2=A−1 B^{-1}=A^{-1/2}C^{-1}A^{-1/2} \succeq A^{-1/2}IA^{-1/2}=A^{-1} を得る。

最終答

(1) 真、(2) 偽、(3) 真、(4) 偽、(5) 真。特に (4) は Loewner 順序が非可換な二乗で一般には保存されないことに注意する。

第2問 — 相分離モデルとエネルギー

エネルギー勾配流

この方程式は L2L^2 勾配流 ut=−δHδu u_t=-\frac{\delta H}{\delta u} になっている。したがってエネルギーが減ることは、式を暗記するよりも変分微分を計算すると自然に出る。

Neumann 条件の役割

境界で ux=0u_x=0 なので、余弦級数が固有関数になる。正弦では境界微分が消えないため、この条件に合わない。

相分離の読み方

拡散だけなら混ざった平均状態へ進む。反応だけなら各点が ±1\pm1 へ分かれる。元の方程式はその中間で、界面をできるだけ少なくしながら二つの安定相へ近づく、という説明を書くとモデルの意味が伝わる。

相分離モデルとエネルギーの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 密度の平均と中央値

分位関数で見る

平均と中央値を同時に扱うには、密度そのものより分位関数 QQ が便利である。中央値は Q(1/2)Q(1/2) であり、平均は QQ の積分になる。

減少密度の直感

密度が左で高く右で低いと、同じ確率質量を確保するために右側の区間の方が長くなる。その結果、中央値から見た右側の距離が大きくなり、平均が中央値より右へずれる。

局所展開の意味

最後の逆向きの主張では、小区間上で密度を一次関数で近似する。傾きが正なら中央値の方が平均より強く右へ動くので、仮定と逆になる。この局所検査が、全区間での単調性を引き出す要点である。

密度の平均と中央値の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ポアソン近似の結合

結合で分布距離を測る

二つの分布を同じ確率空間上に作り、違う値を取る確率で分布関数の差を抑えるのがこの問題の中心である。独立性は (1) と最後の和の分布に使い、(2) 自体には不要である。

不一致が起こる範囲

e−p≥1−pe^{-p}\ge1-p の位置関係を見れば、不一致は「Bernoulli は 1 だが Poisson は 0」と「Poisson が 2 以上」の二種類だけである。これを長さで足すと p(1−e−p)p(1-e^{-p}) になり、指定された不等式で p2p^2 に落ちる。

ポアソン近似の意味

p=μ/np=\mu/n として nn が大きいと、上界 μ2/n\mu^2/n は小さくなる。これは「多数のまれな成功」の二項分布がポアソン分布に近づくという標準的な近似の定量版である。

ポアソン近似の結合の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — max-plus次数と閉路条件

max-plus への変換

行列積では指数が足され、和では最大次数が残る。従って通常の線形代数ではなく、 「和が最大、積が加算」という max-plus 代数として読むと構造が見える。

収束と正閉路

正の重みを持つ閉路があれば、それを何度でも回って次数を増やせる。逆に正閉路がなければ、閉路を取り除いて単純経路だけを見ればよい。この二分法が (2) と (3) の中心である。

パラメータ付きの場合

λ\lambda が入っても、各閉路が与える条件は一次不等式である。閉路を全列挙しない代わりに、候補値で正閉路を探す判定器を分離オラクルとして使う、という発想が多項式時間性を支えている。

max-plus次数と閉路条件の途中式・最終答をPDFで見る

東大 数理情報学 院試 過去問の収録5年度

  • 2026年度(全5問)

    半正定値錐への射影 / ガウス行列の集中 / 平面力学系の不変領域と爆発

  • 2025年度(このページ・全5問)

    半正定値行列の真偽判定 / 相分離モデルとエネルギー / 密度の平均と中央値

  • 2024年度(全5問)

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  • 2023年度(全5問)

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  • 2021年度(全3問)

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