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九州大学 院試 過去問 解答例

九大 数理学府 数理学コース 基礎科目 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問。テーマタグは2件(重積分と極座標・正定値行列)。2025年度と共通のテーマは正定値行列。

最終更新:

収録3年度分の解答PDF:九州大学 数理学府 数理学コース 基礎科目(¥2,880・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

九大 基礎科目 2026年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—連立一次方程式—あり
第2問微分積分・解析二変数関数の極値—あり
第3問—線形写像の安定像分解—あり
第4問微分積分・解析広義二重積分変数変換の確認あり

この年度の解説には採点の置き所4件・典型ミス4件・検算3件・試験で書くべきポイント1件が付いています。

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 4問 → 2026年度 4問
両年度に出たテーマ
正定値行列
2026年度で新しく出たテーマ
重積分と極座標
2025年度のページを見る

第1問 — 連立一次方程式

方針

一意性は係数行列の正則性だけで決まる。正則でない場合は,係数行の線形従属関係と右辺の線形従属関係が一致するかを確認する。

採点の置き所

(1) は det⁡A=a−10\det A=a-10 を正しく計算し,a≠10a\ne10 と結論する。(2) は a=10a=10 に限って,第三行が第一行と第二行の 1,21,2 倍和であることを使い,右辺にも同じ関係 b=3+2(−7)=−11b=3+2(-7)=-11 が必要であると示す。(3) は自由変数を1つ置き,すべての解を媒介変数表示するところまで書く。

検算

(x,y,z)=(2,−1−2t,t)(x,y,z)=(2,-1-2t,t) を代入すると,第1式は 2−(−1−2t)−2t=32-(-1-2t)-2t=3,第2式は −4+3(−1−2t)+6t=−7-4+3(-1-2t)+6t=-7 となる。a=10,b=−11a=10,b=-11 の第3式も −6+5(−1−2t)+10t=−11-6+5(-1-2t)+10t=-11 で成り立つ。

典型ミス

a=10a=10 で行列式が消えることだけを述べて終えると不十分である。解なしの場合と無数解の場合を分けるため,右辺の条件 b=−11b=-11 まで書く必要がある。

解答

係数行列を A=(1−1−2−236−35a) A=\begin{pmatrix} 1&-1&-2\\ -2&3&6\\ -3&5&a \end{pmatrix} とおく。行基本変形または直接計算により det⁡A=3a−30−2a+18+2=a−10 \det A =3a-30-2a+18+2 =a-10 である。したがって解が一意に存在するのは a≠10a\ne 10 のときである。

以下 a=10a=10 とする。このとき第3行の係数は第1行と第2行の 1,21,2 倍和であり, 右辺にも同じ関係が必要である。すなわち b=3+2(−7)=−11 b=3+2(-7)=-11 が可解条件である。

a=10, b=−11a=10,\ b=-11 のとき,第1式と第2式から x−y−2z=3,−2x+3y+6z=−7 x-y-2z=3,\qquad -2x+3y+6z=-7 を解けばよい。第1式の2倍と第2式を加えると y+2z=−1 y+2z=-1 であり,z=tz=t とおくと y=−1−2t,x=3+y+2t=2 y=-1-2t,\qquad x=3+y+2t=2 となる。よって解全体は (x,y,z)=(2,−1−2t,t)(t∈R) (x,y,z)=(2,-1-2t,t)\qquad (t\in\mathbb R) である。

最終答

a≠10a\ne 10 で一意解をもつ。a=10a=10 では可解条件は b=−11b=-11,そのとき解は (2,−1−2t,t) (t∈R)(2,-1-2t,t)\ (t\in\mathbb R)。

第2問 — 二変数関数の極値

方針

停留点を求め,ヘッセ行列で判定する標準問題である。ただし原点は a≠0a\ne0 のとき鞍点になり,a=0a=0 のときも三次関数の符号変化により極値を持たない。

採点の置き所

まず fx=fy=0f_x=f_y=0 から停留点を漏れなく求める。a=0a=0 と a≠0a\ne0 で場合分けするのが安全である。次にヘッセ行列 (6x−3a−3a6y) \begin{pmatrix}6x&-3a\\-3a&6y\end{pmatrix} を各停留点で評価し,原点は行列式が負で鞍点,(a,a)(a,a) は aa の符号に応じて正定値または負定値と判定する。最後に極値の値 −a3-a^3 を代入で出す。

検算

(a,a)(a,a) での値が −a3-a^3 になるため,a>0a>0 の極小値は負,a<0a<0 の極大値は正である。三次式は全体として上下に非有界なので,ここで言う極値は局所的な極値である。

典型ミス

(0,0)(0,0) を停留点として見つけても,極値と判定してはいけない。a≠0a\ne0 ではヘッセ行列の行列式が負で鞍点であり,a=0a=0 では f(x,0)=x3f(x,0)=x^3 が正負に変わるため極値を持たない。

二変数関数の極値の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 線形写像の安定像分解

方針

有限次元性により像の降鎖が停止することを使う。これは一般化固有空間分解やFitting分解の最も基本的な形である。

採点の置き所

(1) は fn=fn−1∘ff^n=f^{n-1}\circ f と書けることから像の包含を示す。(2) は部分空間列 V⊃f(V)⊃f2(V)⊃⋯ V\supset f(V)\supset f^2(V)\supset\cdots の次元が非負整数の単調減少列であることを使う。有限次元性はここで必要になる。(3)(i) は任意の v∈Vv\in V を fN(V)f^N(V) の元と ker⁡fN\ker f^N の元の和に分ける構成を示す。(3)(ii) は制限写像 fN ⁣:fN(V)→fN(V)f^N\colon f^N(V)\to f^N(V) が全射,したがって単射であることを使う。

試験で書くべきポイント

和が全体を張ることだけでなく,共通部分が 00 であることを示して直和であると結論する。最後の単射性は「有限次元で全射なら単射」と書けば十分である。

典型ミス

fN(V)=f2N(V)f^N(V)=f^{2N}(V) からただちに V=fN(V)⊕ker⁡fNV=f^N(V)\oplus\ker f^N と書くと論証が飛ぶ。特に和が全体になることと,共通部分が 00 であることは別々の主張である。また fNf^N が VV 全体で全射になるわけではなく,安定像 fN(V)f^N(V) 上で全射になる点に注意する。

線形写像の安定像分解の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 広義二重積分

方針

二重積分の収束性は,原点側と境界側の端点特異性に分解して判定する。極座標にした後,u=r2u=r^2 と置くとベータ積分型になり,条件が読みやすい。

変数変換の確認

極座標では dxdy=r dr dθdxdy=r\,dr\,d\theta であり,θ\theta 積分から 2π2\pi が出る。さらに u=r2u=r^2 とおくと r dr=du/2r\,dr=du/2 なので,係数は 2π⋅12=π2\pi\cdot\frac12=\pi になる。この係数を落とすと (1) の値が半分ずれる。

採点の置き所

(1) はベータ積分 ∫01u−1/2(1−u)−1/2 du=B(1/2,1/2)=π \int_0^1 u^{-1/2}(1-u)^{-1/2}\,du=B(1/2,1/2)=\pi を使い,前の係数 π\pi と合わせて π2\pi^2 とする。(2) は u=0u=0 と u=1u=1 の2つの端点を別々に判定する。u=0u=0 では cos⁡(πau)→1\cos(\pi a u)\to1 なので b<1b<1。u=1u=1 では cos⁡(πa)≠0\cos(\pi a)\ne0 なら c<1c<1,cos⁡(πa)=0\cos(\pi a)=0 なら一次零点により c<2c<2 まで許される。

典型ミス

cos⁡(πau)\cos(\pi a u) は原点では常に 11 に近いので,原点側の条件は aa に依存しない。境界側だけが cos⁡(πa)=0\cos(\pi a)=0 の場合に緩くなる。

検算

a=0,b=c=1/2a=0,b=c=1/2 は通常のベータ積分で収束し,答えは正の値 π2\pi^2 になる。一般条件でも b=1b=1 は原点で u−1u^{-1} 型,cos⁡(πa)≠0,c=1\cos(\pi a)\ne0,c=1 は境界で (1−u)−1(1-u)^{-1} 型になり,どちらも発散する。

広義二重積分の途中式・最終答をPDFで見る

九大 基礎科目 院試 過去問の収録3年度

  • 2026年度(このページ・全4問)

    連立一次方程式 / 二変数関数の極値 / 線形写像の安定像分解

  • 2025年度(全4問)

    行列空間上の線形写像 / Dirichlet積分の収束 / スペクトル半径

  • 2024年度(全4問)

    対称行列の直交対角化 / 偏微分可能性と二階微分 / トーラス上の周期点