九州大学 院試 過去問 解答例
九大 数理学府 数理学コース 基礎科目 2025年度 院試 解答例・解説
九州大学 数理学府 数理学コース 基礎科目 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 行列空間上の線形写像
方針
左からの積と右からの積を別々に見るより, の固有ベクトルで作るランク1行列を使うと一気に対角化できる。固有値は「左の固有値 + 右の固有値」になる。
採点の置き所
(1) はスカラー倍と和を保つことを式で示すだけで十分である。(2) は を4次元線形空間として扱い,固有値 それぞれの固有空間を行列の形で書くことが主点である。固有値 は重複度2なので,2次元分の基底を出さないと固有空間の記述として不足する。
検算
は4次元であり,上の固有空間の次元は で合っている。
別解の見方
標準基底 に対する の表現行列を作って固有値を計算してもよい。ただし4次行列の計算になるため,本解のように を先に対角化してランク1行列 を使う方が計算ミスが少ない。
第2問 — Dirichlet積分の収束
方針
原点と無限遠を分ける。原点では の一次近似,無限遠では振動積分のDirichlet判定法を使う。
採点の置き所
この問題は「原点での特異性」と「無限遠での振動」を分けて書けているかで点が決まる。原点側は から を出し, では発散する理由も比較で示す。無限遠側は の仮定のもとで が単調に へ下がること, の原始関数が有界であることを確認してDirichlet判定法を適用する。
典型ミス
絶対収束と条件収束を混同すると と答えてしまう。無限遠では でも条件収束する点が重要である。
検算
では有名なDirichlet積分 型で収束する。一方 では原点近くで 型になり発散する。境界値 と の役割が異なることを確認すると,答え が自然に見える。
第3問 — スペクトル半径
方針
非正規行列では と の振る舞いが大きく異なる。前半は冪零行列でその差を示し,後半は固有ベクトルと半正定値行列のRayleigh商で評価する。
採点の置き所
(1) は だけでなく, を実際に計算して正の固有値を持つことを示す。(2) は任意の固有値 と固有ベクトル を取り, を のRayleigh商に結びつけるのが中心である。最後に が任意だったので最大を取れる,と書く。
試験で書くべきポイント
がエルミート半正定値であることを明記する。これにより最大固有値がRayleigh商を支配する,という標準事実を使える。
典型ミス
と無条件に書かない。これは正規行列では成り立つが,一般の行列では特異値と固有値が一致しない。(1) の冪零行列は,その誤解を打ち消すための反例である。
第4問 — 積分で定まる関数の極限
方針
被積分関数は大きな で と同じ主要項を持つ。上界は直接比較,極限は主要項との比較を任意の で挟む。
採点の置き所
(1) は を見つけ,外側の まで含めて評価することが主点である。(2) は単に としただけでは極限値は出ない。十分大きい で被積分関数が に任意に近いことを下からも評価し, の寄与が により消えることを書く。
検算
なので,外側の と打ち消し合って極限が になる。
典型ミス
被積分関数を と等号で置き換えない。これは無限遠での漸近であり,厳密な答案では上界と下界,または比が に近づくことを用いた挟み込みが必要である。