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九州大学 院試 過去問 解答例

九大 数理学府 数理学コース 基礎科目 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・正定値行列)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

最終更新:

収録3年度分の解答PDF:九州大学 数理学府 数理学コース 基礎科目(¥2,880・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

九大 基礎科目 2025年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数行列空間上の線形写像—あり
第2問微分積分・解析Dirichlet積分の収束—あり
第3問—スペクトル半径—あり
第4問微分積分・解析積分で定まる関数の極限—あり

この年度の解説には採点の置き所4件・検算3件・典型ミス3件・試験で書くべきポイント1件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 4問 → 2025年度 4問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2025年度で新しく出たテーマ
正定値行列
2024年度のページを見る

第1問 — 行列空間上の線形写像

方針

左からの積と右からの積を別々に見るより,AA の固有ベクトルで作るランク1行列を使うと一気に対角化できる。固有値は「左の固有値 + 右の固有値」になる。

採点の置き所

(1) はスカラー倍と和を保つことを式で示すだけで十分である。(2) は M(2,R)M(2,\mathbb R) を4次元線形空間として扱い,固有値 2,0,−22,0,-2 それぞれの固有空間を行列の形で書くことが主点である。固有値 00 は重複度2なので,2次元分の基底を出さないと固有空間の記述として不足する。

検算

M(2,R)M(2,\mathbb R) は4次元であり,上の固有空間の次元は 1+2+1=41+2+1=4 で合っている。

別解の見方

標準基底 E11,E12,E21,E22E_{11},E_{12},E_{21},E_{22} に対する fAf_A の表現行列を作って固有値を計算してもよい。ただし4次行列の計算になるため,本解のように AA を先に対角化してランク1行列 uσuτTu_\sigma u_\tau^{\mathsf T} を使う方が計算ミスが少ない。

解答

(1) 線形性

行列 AA を固定すると, fA(αX+βY)=A(αX+βY)+(αX+βY)A=αfA(X)+βfA(Y) f_A(\alpha X+\beta Y) =A(\alpha X+\beta Y)+(\alpha X+\beta Y)A =\alpha f_A(X)+\beta f_A(Y) であるから,fAf_A は線形写像である。

(2) 固有値と固有空間

以下 A=(0110) A=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} とする。この行列は u+=(11),u−=(1−1) u_+=\binom{1}{1},\qquad u_-=\binom{1}{-1} をそれぞれ固有値 1,−11,-1 の固有ベクトルに持つ。行列単位型の元 uσuτTu_\sigma u_\tau^{\mathsf T} に対して fA(uσuτT)=AuσuτT+uσuτTA=(λσ+λτ)uσuτT f_A(u_\sigma u_\tau^{\mathsf T}) =Au_\sigma u_\tau^{\mathsf T}+u_\sigma u_\tau^{\mathsf T}A =(\lambda_\sigma+\lambda_\tau)u_\sigma u_\tau^{\mathsf T} となる。したがって固有値は 2, 0, 0, −2 2,\ 0,\ 0,\ -2 である。

元の標準基底で書くと,固有空間は E2=R(1111),E−2=R(1−1−11),E0=R(100−1)⊕R(01−10). \begin{aligned} E_2&=\mathbb R\begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix},\\ E_{-2}&=\mathbb R\begin{pmatrix}1&-1\\-1&1\end{pmatrix},\\ E_0&=\mathbb R\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix} \oplus \mathbb R\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}. \end{aligned}

最終答

固有値は 2,0,0,−22,0,0,-2。固有空間は上記の E2,E0,E−2E_2,E_0,E_{-2}。

第2問 — Dirichlet積分の収束

方針

原点と無限遠を分ける。原点では sin⁡x\sin x の一次近似,無限遠では振動積分のDirichlet判定法を使う。

採点の置き所

この問題は「原点での特異性」と「無限遠での振動」を分けて書けているかで点が決まる。原点側は sin⁡x∼x\sin x\sim x から α<2\alpha<2 を出し,α≥2\alpha\ge2 では発散する理由も比較で示す。無限遠側は α>0\alpha>0 の仮定のもとで x−αx^{-\alpha} が単調に 00 へ下がること,∫sin⁡x dx\int\sin x\,dx の原始関数が有界であることを確認してDirichlet判定法を適用する。

典型ミス

絶対収束と条件収束を混同すると α>1\alpha>1 と答えてしまう。無限遠では 0<α≤10<\alpha\le1 でも条件収束する点が重要である。

検算

α=1\alpha=1 では有名なDirichlet積分 ∫0∞sin⁡x/x dx\int_0^\infty \sin x/x\,dx 型で収束する。一方 α=2\alpha=2 では原点近くで 1/x1/x 型になり発散する。境界値 11 と 22 の役割が異なることを確認すると,答え 0<α<20<\alpha<2 が自然に見える。

Dirichlet積分の収束の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — スペクトル半径

方針

非正規行列では r(X)r(X) と X∗XX^*X の振る舞いが大きく異なる。前半は冪零行列でその差を示し,後半は固有ベクトルと半正定値行列のRayleigh商で評価する。

採点の置き所

(1) は r(X)=0r(X)=0 だけでなく,X∗XX^*X を実際に計算して正の固有値を持つことを示す。(2) は任意の固有値 λ\lambda と固有ベクトル vv を取り,∥Xv∥2=∣λ∣2∥v∥2\|Xv\|^2=|\lambda|^2\|v\|^2 を X∗XX^*X のRayleigh商に結びつけるのが中心である。最後に λ\lambda が任意だったので最大を取れる,と書く。

試験で書くべきポイント

X∗XX^*X がエルミート半正定値であることを明記する。これにより最大固有値がRayleigh商を支配する,という標準事実を使える。

典型ミス

r(X∗X)=r(X)2r(X^*X)=r(X)^2 と無条件に書かない。これは正規行列では成り立つが,一般の行列では特異値と固有値が一致しない。(1) の冪零行列は,その誤解を打ち消すための反例である。

スペクトル半径の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 積分で定まる関数の極限

方針

被積分関数は大きな tt で t−1/2t^{-1/2} と同じ主要項を持つ。上界は直接比較,極限は主要項との比較を任意の ε\varepsilon で挟む。

採点の置き所

(1) は t2t5+1≤t−1/2 \frac{t^2}{\sqrt{t^5+1}}\le t^{-1/2} を見つけ,外側の 1/x1/\sqrt{x} まで含めて評価することが主点である。(2) は単に f(x)≤2f(x)\le2 としただけでは極限値は出ない。十分大きい tt で被積分関数が t−1/2t^{-1/2} に任意に近いことを下からも評価し,[1,T][1,T] の寄与が 1/x1/\sqrt{x} により消えることを書く。

検算

∫1xt−1/2dt∼2x\int_1^x t^{-1/2}dt\sim2\sqrt{x} なので,外側の 1/x1/\sqrt{x} と打ち消し合って極限が 22 になる。

典型ミス

被積分関数を t2/t5=t−1/2t^2/\sqrt{t^5}=t^{-1/2} と等号で置き換えない。これは無限遠での漸近であり,厳密な答案では上界と下界,または比が 11 に近づくことを用いた挟み込みが必要である。

積分で定まる関数の極限の途中式・最終答をPDFで見る

九大 基礎科目 院試 過去問の収録3年度

  • 2026年度(全4問)

    連立一次方程式 / 二変数関数の極値 / 線形写像の安定像分解

  • 2025年度(このページ・全4問)

    行列空間上の線形写像 / Dirichlet積分の収束 / スペクトル半径

  • 2024年度(全4問)

    対称行列の直交対角化 / 偏微分可能性と二階微分 / トーラス上の周期点