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九州大学 院試 過去問 解答例

九大 数理学府 数理学コース 基礎科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・一様収束・群論・環論)。

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収録3年度分の解答PDF:九州大学 数理学府 数理学コース 基礎科目(¥2,880・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

九大 基礎科目 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数対称行列の直交対角化—あり
第2問微分方程式偏微分可能性と二階微分—あり
第3問—トーラス上の周期点行列式で個数が出る理由あり
第4問微分積分・解析一様収束有界性の扱いあり

この年度の解説には採点の置き所4件・典型ミス4件・検算2件・試験で書くべきポイント1件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に5テーマが出ています。

第1問 — 対称行列の直交対角化

方針

行列が対称なので固有値は実数で,異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する。直接特性多項式を展開してもよいが,この行列は成分和が保存される方向 (1,1,1)T(1,1,1)^{\mathsf T} と,成分和が 00 の平面に分けると計算が軽い。答案では「どの部分空間で固有ベクトルを探しているか」を書くと,偶然ベクトルを当てたように見えない。

採点の置き所

(1) では3本の一次独立な固有ベクトルと対応する固有値を対応させることが主点である。(2) では a=−2a=-2 を出すだけでは足りず,固有値 33 の固有ベクトル1本と固有値 −3-3 の固有空間を張る直交2本を正規化し,それらを列に並べた直交行列 QQ を明示するところまで書く。対角行列の対角成分は,列ベクトルの順番と一致していればよい。

典型ミス

固有値の重複だけを見て固有ベクトルを1本しか出さないと,直交行列による対角化にならない。重複固有値 −3-3 に対しても互いに直交する2本を明示する。

検算

a=−2a=-2 のとき,行列全体のトレースは a+1+a=2a+1=−3a+1+a=2a+1=-3 である。一方,対角化後の固有値の和も 3−3−3=−33-3-3=-3 となり一致する。行列式も固有値の積 2727 と一致するので,固有値の符号の取り違えを検出できる。

解答

  1. 与えられた実対称行列を AA とする。まず (1,1,1)T (1,1,1)^{\mathsf T} は固有値 2a+12a+1 の固有ベクトルである。また,和が 00 の平面上で調べると, (1,0,−1)T (1,0,-1)^{\mathsf T} は固有値 a−1a-1 の固有ベクトルであり, (−1,2,−1)T (-1,2,-1)^{\mathsf T} は固有値 1−a1-a の固有ベクトルである。したがって固有値は 2a+1,a−1,1−a 2a+1,\quad a-1,\quad 1-a である。
  2. 固有値が 3,−3,−33,-3,-3 となるには 1−a=31-a=3 かつ 2a+1=−32a+1=-3 が必要で,これは a=−2 a=-2 を与える。このとき正規直交固有ベクトルとして q1=16(−1,2,−1)T,q2=13(1,1,1)T,q3=12(1,0,−1)T q_1=\frac1{\sqrt6}(-1,2,-1)^{\mathsf T},\quad q_2=\frac1{\sqrt3}(1,1,1)^{\mathsf T},\quad q_3=\frac1{\sqrt2}(1,0,-1)^{\mathsf T} を取れる。Q=(q1 q2 q3)Q=(q_1\ q_2\ q_3) とおくと QQ は直交行列であり, QTAQ=(3000−3000−3). Q^{\mathsf T}AQ= \begin{pmatrix} 3&0&0\\ 0&-3&0\\ 0&0&-3 \end{pmatrix}.

最終答

(1) 固有値は 2a+1,a−1,1−a2a+1,a-1,1-a。 (2) 指定の固有値になるのは a=−2a=-2 で,上記の QQ により直交対角化できる。

第2問 — 偏微分可能性と二階微分

方針

一階では偏導関数が原点に向かって O(r)O(r) で消えることを示すのが核心である。二階では,原点に向かう方向によって混合偏微分の値が変わることを,座標軸上の値 fx(0,y)f_x(0,y) と fy(x,0)f_y(x,0) から直接見る。

採点の置き所

(1) は偏微分係数の定義式から差商を書けていれば得点できる。(2) は原点以外の偏導関数の式,原点での偏微分係数,原点での連続性評価の3点が必要である。特に fx,fy=O(r)f_x,f_y=O(r) の評価を書くと,偏導関数の連続性が一行で伝わる。(3) は「二階偏微分が存在しない」と曖昧に書くのではなく,実際に fxy(0,0)f_{xy}(0,0) と fyx(0,0)f_{yx}(0,0) を定義に沿って計算し,値が異なることを示す。

試験で書くべきポイント

C1C^1 の証明では「偏微分が存在する」だけでは足りず,「偏導関数が原点で連続」と書く必要がある。(1) では偏微分係数の差商 {f(h,0)−f(0,0)}/h\{f(h,0)-f(0,0)\}/h を明示しておくと,何を計算しているかが答案上ではっきりする。

典型ミス

f(x,y)=O(r3)f(x,y)=O(r^3) のような関数値の評価だけで C1C^1 と結論しない。微分可能性や C1C^1 級をいうには,偏導関数そのものの連続性を確認する必要がある。また混合偏微分の不一致は原点での話なので,原点以外で商の微分をして得た式をそのまま代入してはいけない。

偏微分可能性と二階微分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — トーラス上の周期点

方針

格子商上の整数行列の核の個数は行列式の絶対値で測れる。あとは2次行列の固有値から漸近を読む。

行列式で個数が出る理由

B=An−EB=A^n-E とおくと,Bx∈Z2Bx\in\mathbb Z^2 となる x∈Tx\in T は,トーラス R2/Z2\mathbb R^2/\mathbb Z^2 上の準同型 BB の核に対応する。BB が正則な整数行列なら,基本平行四辺形 B(T)B(T) の面積倍率が ∣det⁡B∣|\det B| であり,その分だけ格子点の剰余類が生じる。ここを書いておくと,単なる公式暗記ではなく,(1) の証明として成立する。

採点の置き所

(1) は An−EA^n-E が整数正則行列であることと,核の位数が ∣det⁡(An−E)∣|\det(A^n-E)| であることを説明する。(2) は2次行列の恒等式 det⁡(B−E)=det⁡B−tr⁡B+1 \det(B-E)=\det B-\operatorname{tr}B+1 を B=AnB=A^n に適用し,det⁡A=1\det A=1 を使う。(3) は固有値 λ,λ−1\lambda,\lambda^{-1} を明示し,λn\lambda^n が支配項になることを述べればよい。

検算

λ>1\lambda>1 と λ−1<1\lambda^{-1}<1 の組なので,長期的な成長率は大きい方の固有値だけで決まる。これは双曲的トーラス自己写像の周期点成長率と同じ構造である。

典型ミス

det⁡(An−E)=2−tr⁡(An)\det(A^n-E)=2-\operatorname{tr}(A^n) だけを書いて絶対値を落とすと符号が逆になる。実際には tr⁡(An)>2\operatorname{tr}(A^n)>2 なので,∣2−tr⁡(An)∣=tr⁡(An)−2|2-\operatorname{tr}(A^n)|=\operatorname{tr}(A^n)-2 と一段説明する。

トーラス上の周期点の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 一様収束

方針

一様収束しないことは,nn ごとに振幅が最大になる点を選ぶだけでよい。後半は原点近傍では ψ\psi が小さく,それ以外では sin⁡u≤u\sin u\le u により 1/n1/n で抑える。

採点の置き所

(1) は各 nn に対して x=2/(nπ)x=2/(n\pi) のような点を選び,sup⁡x>0∣ϕn(x)∣\sup_{x>0}|\phi_n(x)| が 00 に近づかないことを示す。(2) は領域を 0<x<δ0<x<\delta と x≥δx\ge\delta に分ける理由を書く。前者では ψ\psi の原点での消失,後者では ψ\psi の有界性と ∣sin⁡u∣≤∣u∣|\sin u|\le |u| を使う。最後に両領域の上限を同時に ε\varepsilon 未満にする nn を取る。

有界性の扱い

仮定の lim sup⁡x→∞∣ψ(x)∣<∞\limsup_{x\to\infty}|\psi(x)|<\infty だけでは,すぐに全区間の有界性が出るわけではない。十分大きい区間で有界であり,残りのコンパクト区間では連続性により有界,という二段階で [δ,∞)[\delta,\infty) 上の有界性を確保する。

典型ミス

各点収束と一様収束を混同しない。固定した x>0x>0 では ϕn(x)→0\phi_n(x)\to0 だが,最大点が原点へ動くため一様収束は失敗する。

一様収束の途中式・最終答をPDFで見る

九大 基礎科目 院試 過去問の収録3年度

  • 2026年度(全4問)

    連立一次方程式 / 二変数関数の極値 / 線形写像の安定像分解

  • 2025年度(全4問)

    行列空間上の線形写像 / Dirichlet積分の収束 / スペクトル半径

  • 2024年度(このページ・全4問)

    対称行列の直交対角化 / 偏微分可能性と二階微分 / トーラス上の周期点