北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2025年度夏期募集 院試 解答例・解説
北海道大学 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2025年度夏期募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1 線形代数
方針
前半は対角化、後半は行列計算である。 は直接かけ算を繰り返すのではなく、固有値が異なることを使って対角化するのが最短で安定する。
途中式の残し方
固有値だけを書くと、固有ベクトルの対応と の列順が曖昧になる。試験では となる列の並べ方を明示するとよい。 は最後に の形で検算できるので、掃き出しの途中で符号を誤っても発見しやすい。
検算
を の式に代入すると となる。また、連立方程式の解は第3式で となり、少なくとも一行は即座に確認できる。
典型ミス
の対角成分の順番は、 の列に置いた固有ベクトルの順番で決まる。固有値だけを先に書き、あとから を作ると、 を入れ替えるミスが起こりやすい。
試験で書くべきポイント
固有方程式、各固有空間、対角化の形、 の復元式をこの順に書けば十分である。逆行列と連立方程式では、最終結果だけでなく「逆行列を右辺にかけた」ことが分かる一行を入れると採点者に伝わりやすい。
第2問 — I-2 ベクトル解析
方針
線積分は直接4辺に分けてもよいが、回転の面積分に変えると一行で終わる。表面積分も6面に分けず、発散定理で体積積分にするのが安定である。
検算
の 成分は で一定である。長方形面積が なので線積分 は符号以外すぐ確認できる。図の向きが逆向きなら答は になるため、経路の矢印を必ず確認する。
典型ミス
と を取り違えると符号が反転する。また、 の第1成分は なので、図選択では水平方向が弱いことまで見なければならない。
試験で書くべきポイント
図の選択問題では、文字だけでなく「 で上向き」「 で左向き」のように代表点で向きを確認した根拠を書くと、図を見間違えていないことが伝わる。
第3問 — I-3 フーリエ変換と拡散方程式
方針
この問題は、変換の定義に忠実に変数変換するだけでほぼ解ける。熱方程式では、空間微分が の掛け算に変わるため、時間についての一階常微分方程式になる。
途中式
畳み込み定理では、積分順序の交換後に を新しい変数にする。ここで指数関数から出る を落とすと、最後の が出ない。
検算
熱核 は を満たす。したがって、初期値が定数なら解もその定数のままになり、拡散方程式の物理的性質と合う。
典型ミス
この変換規約では逆変換に が付く。別の規約で覚えた公式をそのまま使うと、熱核の係数を誤る。最後は必ず変換規約に戻して係数を確認する。
試験で書くべきポイント
矩形関数の は式の見かけでは割り算があるが、極限で と書ける。小さい点だが、答案に入れておくと丁寧である。
第4問 — II-1 極座標運動と鉛直円運動
方針
前半は極座標の微分公式、後半はエネルギー保存と半径方向の力のつり合いで解く。円運動では張力が仕事をしないので、速度は重力ポテンシャルだけで決まる。
途中式
張力の式では、半径方向を中心向きに取ることが重要である。外向きを正にして書く場合もよいが、符号を最後まで一貫させなければならない。
検算
最下点 では となり、張力が重力に加えて向心力を受け持つ形になる。上端では であり、張力条件 は単に上端に届く条件 より強い。
典型ミス
「上端に到達できる」ことと「ひもがたるまない」ことを同じ条件にしてしまうミスが多い。上端で速度が残っていても、張力が負になるなら円軌道は維持されない。
試験で書くべきポイント
接線方向、半径方向の正方向を答案内で明示する。特に張力の式は、正方向が分かれば採点者が符号の妥当性を追いやすい。
第5問 — II-2 電磁場中の荷電粒子
方針
磁場だけなら速度の大きさは変わらず、向きだけが回転する。複素数 を使うと、2本の連立微分方程式が1本の指数関数になる。
途中式
の符号が全てを決める。 が 方向なら であり、ここを逆にすると回転方向とドリフトの説明が反転する。
検算
を計算すると で、案内中心の速度 と一致する。
典型ミス
角振動数を と書く場合、 の符号は回転方向を含む。問題が角振動数の大きさを尋ねているときは と書くのが無難である。
試験で書くべきポイント
電場を入れた小問では、単に「ドリフトする」と書くのではなく、 の置換で磁場のみの方程式に戻ることを示すと、導出として十分になる。
第6問 — II-3 理想気体とエントロピー
方針
自由膨張に近い設定だが、途中で左右が熱平衡を保つとされているため、各部分を同じ温度の可逆的な体積変化に置き換えてエントロピーを計算する。エントロピーは状態量なので、この置き換えが使える。
途中式
移動した モルの「移動前の体積」は ではなく である。初めに左容器全体 を モルで共有していたことから、モル数比で体積を割り当てる。
検算
または では片側の項だけが残り、極限として になる。これは「何も移動していない」または「全てが片側へ移っただけで同じ体積を占める」極限と整合する。最大が中央 に来るのも対称性と合う。
典型ミス
不可逆過程だからといって としてはいけない。 は外界との熱の出入りがないという意味であり、断熱不可逆過程ではエントロピーは増加し得る。
試験で書くべきポイント
温度一定の説明では「理想気体の内部エネルギーは温度のみの関数」と明記する。これを書かないと、断熱だから温度一定と誤解しているように見える。
第7問 — III-1 放射壊変とU--Pb年代
方針
U--Pb の2点データは、アイソクロンの傾きと切片として読む。傾きが 、切片が初生鉛同位体比である。
途中式
今回の数値は差がどちらも になるため、傾きがちょうど になる。したがって年代は半減期そのものになる。ここを見抜くと計算がかなり短くなる。
検算
初生比を とすると、データ1は データ2は となり、両方を再現する。
典型ミス
系列と 系列の最終鉛同位体を混同しやすい。 は 、 は である。
試験で書くべきポイント
年代の不一致は「測定誤差」とだけ書くより、元素移動、熱的リセット、閉鎖温度差、初生同位体不均一などの具体的な過程を一つ示す方が評価される。
第8問 — III-2 火山ガスと熱水湖の物質収支
方針
前半は化学平衡、後半は連続槽型の物質収支である。湖内が均質という仮定があるため、流出濃度も湖内濃度 と同じにできる。
途中式
定常状態の式は である。左辺は流入による補給、右辺は岩石反応による消費を表す。単位はどちらも でそろう。
検算
と大きいので、反応によって は約 分の1に減る。pH が から に上がることは、このオーダー計算と一致する。
さらに1年間の収支を見ると で、流入量 と一致する。定常状態では湖内に蓄積しないため、この一致は強い検算になる。
典型ミス
カオリナイト量を流出する 量から割り出すと小さくなりすぎる。カオリナイト溶解量は反応で消費された 量から、係数 を使って求める。 また、 の単位は なので は無次元である。 を年に換算してから を掛けると、秒との混在で 倍ずれる。
試験で書くべきポイント
圧力の小問では、平衡定数の式を書かなくても、気体分子数が から に増える反応であることを示せば理由として十分である。
第9問 — III-3 芳香族化合物とアミノ酸
方針
芳香族性は名前ではなく電子数と共役の連続性で判定する。アミノ酸は、pH と等電点の大小関係から平均電荷を決めればよい。
途中式
アニリンが水層へ移る理由は、塩酸で となるためである。イオン化した化合物は有機層より水層に分配されやすい。
検算
pH が等電点より高いと、アミノ酸はプロトンを失いやすく平均的に負になる。pH が等電点より低いと、プロトン化されやすく平均的に正になる。この規則で3種の移動方向をまとめて確認できる。
典型ミス
ピロールでは窒素の孤立電子対が芳香族 電子系に入る。一方、ピリジンでは窒素の孤立電子対は芳香族電子数に数えない。どちらも芳香族だが、理由が異なる。
試験で書くべきポイント
電気泳動の答案では、移動方向だけでなく「pH と等電点の大小」および「平均電荷」をセットで書く。これで理由説明として完結する。
第10問 — IV-1 海洋化学・原生代環境
方針
炭酸塩溶解は、温度・圧力だけでなく深層水の「年齢」と有機物分解で決まる。2ボックスモデルは式へ数値を代入するだけだが、濃度比の読み替えを間違えないことが重要である。
途中式
「表層水が河川水の25\%、深層水の50\%」という条件から であり、 となる。ここを と誤読しない。
検算
、 なので である。したがって滞留時間は混合時間の11倍となり、 年という値はオーダーとして妥当である。
典型ミス
リソクラインと CCD を同じ定義で書くミスが多い。リソクラインは「溶解が目立ち始める深度」、CCD は「堆積物として残らなくなる深度」である。
試験で書くべきポイント
同位体比の説明では、単に「風化が増えた」と書くだけでなく、 に富む古い大陸地殻由来の Sr が海洋へ入る、と同位体の向きまで書く。
第11問 — IV-2 層序・堆積環境・年代対比
方針
柱状図の問題では、岩相、化石、放射年代を別々に読んでから統合する。特に礫岩中の花崗岩礫の年代は「礫の供給源の年代」であり、堆積年代そのものではない点に注意する。
途中式
地域Aは、枕状溶岩、チャート、珪質泥岩、タービダイトという典型的な海洋プレート層序である。これは一つの場所で水深が単純に変わったというより、プレートが移動しながら堆積場を変えていった記録と読む。
検算
貫入年代は、貫入される地層より若くなければならない。地層20では 50 Ma の制約があるため、候補リストからそれより若い 30 Ma だけが残る。
典型ミス
礫岩中の古い礫の年代を、その礫岩層の堆積年代と同一視してはいけない。礫は母岩から削られて再堆積するため、礫の年代は堆積年代の上限、すなわち「それより若い」と判断する材料である。
試験で書くべきポイント
環境復元では、岩相名だけを並べず、「なぜそう考えるか」を一つ添える。たとえば「サンゴのバウンドストーンがあるから浅海の礁環境」と書けば、根拠と結論が同時に示せる。
第12問 — V-1 アイスランド火山学
方針
火山学の設問は、地図、噴火様式、岩石化学を横断している。地図はプレート境界、堆積物は噴火過程、化学組成は分別鉱物というように、各図が何を判定させたいかを先に決めると迷いにくい。
途中式
DRE 換算では、体積そのものではなく質量保存を使う。 であり、密度比を逆にしないことが重要である。
Pb の分別計算も同じく保存則で考える。Pb を結晶がほとんど取り込まないなら、 初期液中の Pb 量 は残液中の Pb 量 に等しい。したがって であり、これが残液分率 である。
検算
Pb 濃度は から へ約16倍になる。結晶が Pb を含まなければ、残液は約 に減ったことになり、分別率が約94\%という大きな値になるのは整合的である。
典型ミス
水蒸気爆発とマグマ水蒸気爆発を、単に「水が関与したか」で区別しない。重要なのは、マグマが直接破砕されて本質物質を供給したかどうかである。
Pb 濃度では の単位換算を忘れやすい。 単位をそろえずに とすると、残液分率が1を超えて物理的に不可能になる。
試験で書くべきポイント
分別鉱物を答えるときは、鉱物名だけでなく対応する酸化物の増減を書く。たとえば「MgO 減少からかんらん石」「TiO 減少開始から Fe--Ti 酸化物」と根拠を添える。 DRE や結晶分別率の計算問題では、最後の数値だけでなく「何を保存しているか」を一行書くと部分点を取りやすい。
第13問 — V-2 ケイ酸塩鉱物と相平衡
方針
鉱物構造の問題は、化学式だけでなく配位数と四面体の共有様式で分類する。相図問題は、液相線・固相線・タイライン・てこの規則を順番に使う。
途中式
斜長石相図の1450Cでは、水平線の左交点が液、右交点が固相の組成を示す。全体組成60 wt\%はその間にあるため、てこの規則を使う。結晶量は全体組成から反対側の液組成までの距離、メルト量は反対側の固相組成までの距離に比例する。
検算
初晶は全体の60 wt\% Anより An に富む。これは斜長石の平衡結晶化では高温で Ca に富む斜長石が先に晶出するという一般則と一致する。
典型ミス
ブリッジマナイトとエンスタタイトは同じ でも構造が全く違う。下部マントルでは Si が6配位、地殻のエンスタタイトでは Si は四面体で単鎖を作る。
試験で書くべきポイント
-- 図では、交点だけでなく「傾きが体積」であることを書く。高圧側で安定な相は一般に体積が小さく、 の圧力依存性が小さいという説明ができる。