院試hub

北海道大学 院試 過去問 解答例

北大 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2025年度夏期募集 院試 解答例・解説

北海道大学 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2025年度夏期募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — I-1 線形代数

方針

前半は対角化、後半は行列計算である。AnA^n は直接かけ算を繰り返すのではなく、固有値が異なることを使って対角化するのが最短で安定する。

途中式の残し方

固有値だけを書くと、固有ベクトルの対応と PP の列順が曖昧になる。試験では AP=P(1002) AP=P\begin{pmatrix}1&0\\0&-2\end{pmatrix} となる列の並べ方を明示するとよい。B1B^{-1} は最後に BB1=IBB^{-1}=I の形で検算できるので、掃き出しの途中で符号を誤っても発見しやすい。

検算

n=1n=1AnA^n の式に代入すると 13(3630)=(1210)=A \frac{1}{3} \begin{pmatrix} -3&6\\3&0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}-1&2\\1&0\end{pmatrix}=A となる。また、連立方程式の解は第3式で 166+10+18=6 -16-6+10+18=6 となり、少なくとも一行は即座に確認できる。

典型ミス

P1APP^{-1}AP の対角成分の順番は、PP の列に置いた固有ベクトルの順番で決まる。固有値だけを先に書き、あとから PP を作ると、r,sr,s を入れ替えるミスが起こりやすい。

試験で書くべきポイント

固有方程式、各固有空間、対角化の形、AnA^n の復元式をこの順に書けば十分である。逆行列と連立方程式では、最終結果だけでなく「逆行列を右辺にかけた」ことが分かる一行を入れると採点者に伝わりやすい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — I-2 ベクトル解析

方針

線積分は直接4辺に分けてもよいが、回転の面積分に変えると一行で終わる。表面積分も6面に分けず、発散定理で体積積分にするのが安定である。

検算

×(A×B)\nabla\times(A\times B)zz 成分は xx(2y)y=3 \frac{\partial x}{\partial x}-\frac{\partial(-2y)}{\partial y}=3 で一定である。長方形面積が 88 なので線積分 2424 は符号以外すぐ確認できる。図の向きが逆向きなら答は 24-24 になるため、経路の矢印を必ず確認する。

典型ミス

A×BA\times BB×AB\times A を取り違えると符号が反転する。また、BB の第1成分は x/2x/2 なので、図選択では水平方向が弱いことまで見なければならない。

試験で書くべきポイント

図の選択問題では、文字だけでなく「(1,0)(1,0) で上向き」「(0,1)(0,1) で左向き」のように代表点で向きを確認した根拠を書くと、図を見間違えていないことが伝わる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — I-3 フーリエ変換と拡散方程式

方針

この問題は、変換の定義に忠実に変数変換するだけでほぼ解ける。熱方程式では、空間微分が k2-k^2 の掛け算に変わるため、時間についての一階常微分方程式になる。

途中式

畳み込み定理では、積分順序の交換後に xyx-y を新しい変数にする。ここで指数関数から出る eikye^{-iky} を落とすと、最後の G(k)G(k) が出ない。

検算

熱核 Gt(x)=14πtex2/(4t) G_t(x)=\frac{1}{\sqrt{4\pi t}}e^{-x^2/(4t)} Gt(x)dx=1 \int_{-\infty}^{\infty}G_t(x)\,dx=1 を満たす。したがって、初期値が定数なら解もその定数のままになり、拡散方程式の物理的性質と合う。

典型ミス

この変換規約では逆変換に 1/(2π)1/(2\pi) が付く。別の規約で覚えた公式をそのまま使うと、熱核の係数を誤る。最後は必ず変換規約に戻して係数を確認する。

試験で書くべきポイント

矩形関数の k=0k=0 は式の見かけでは割り算があるが、極限で 2x02x_0 と書ける。小さい点だが、答案に入れておくと丁寧である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — II-1 極座標運動と鉛直円運動

方針

前半は極座標の微分公式、後半はエネルギー保存と半径方向の力のつり合いで解く。円運動では張力が仕事をしないので、速度は重力ポテンシャルだけで決まる。

途中式

張力の式では、半径方向を中心向きに取ることが重要である。外向きを正にして書く場合もよいが、符号を最後まで一貫させなければならない。

検算

最下点 θ=0\theta=0 では u=u0,T=mu02l+mg u=u_0,\qquad T=\frac{m u_0^2}{l}+mg となり、張力が重力に加えて向心力を受け持つ形になる。上端では u2=u024gl u^2=u_0^2-4gl であり、張力条件 T0T\ge0 は単に上端に届く条件 u024glu_0^2\ge4gl より強い。

典型ミス

「上端に到達できる」ことと「ひもがたるまない」ことを同じ条件にしてしまうミスが多い。上端で速度が残っていても、張力が負になるなら円軌道は維持されない。

試験で書くべきポイント

接線方向、半径方向の正方向を答案内で明示する。特に張力の式は、正方向が分かれば採点者が符号の妥当性を追いやすい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — II-2 電磁場中の荷電粒子

方針

磁場だけなら速度の大きさは変わらず、向きだけが回転する。複素数 vx+ivyv_x+i v_y を使うと、2本の連立微分方程式が1本の指数関数になる。

途中式

v×Bv\times B の符号が全てを決める。BB+z+z 方向なら v×B=(Bvy,Bvx,0) v\times B=(Bv_y,-Bv_x,0) であり、ここを逆にすると回転方向とドリフトの説明が反転する。

検算

E×B/B2E\times B/B^2 を計算すると (0,E,0)×(0,0,B)B2=(EB,0,0) \frac{(0,E,0)\times(0,0,B)}{B^2} =\left(\frac{E}{B},0,0\right) で、案内中心の速度 E/BE/B と一致する。

典型ミス

角振動数を qB/mqB/m と書く場合、qq の符号は回転方向を含む。問題が角振動数の大きさを尋ねているときは qB/m|q|B/m と書くのが無難である。

試験で書くべきポイント

電場を入れた小問では、単に「ドリフトする」と書くのではなく、vx=vxE/Bv_x'=v_x-E/B の置換で磁場のみの方程式に戻ることを示すと、導出として十分になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — II-3 理想気体とエントロピー

方針

自由膨張に近い設定だが、途中で左右が熱平衡を保つとされているため、各部分を同じ温度の可逆的な体積変化に置き換えてエントロピーを計算する。エントロピーは状態量なので、この置き換えが使える。

途中式

移動した NN モルの「移動前の体積」は VV ではなく (N/n)V(N/n)V である。初めに左容器全体 VVnn モルで共有していたことから、モル数比で体積を割り当てる。

検算

N=0N=0 または N=nN=n では片側の項だけが残り、極限として ΔS=0\Delta S=0 になる。これは「何も移動していない」または「全てが片側へ移っただけで同じ体積を占める」極限と整合する。最大が中央 N=n/2N=n/2 に来るのも対称性と合う。

典型ミス

不可逆過程だからといって dS=dQ/T=0dS=dQ/T=0 としてはいけない。dQ=0dQ=0 は外界との熱の出入りがないという意味であり、断熱不可逆過程ではエントロピーは増加し得る。

試験で書くべきポイント

温度一定の説明では「理想気体の内部エネルギーは温度のみの関数」と明記する。これを書かないと、断熱だから温度一定と誤解しているように見える。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — III-1 放射壊変とU--Pb年代

方針

U--Pb の2点データは、アイソクロンの傾きと切片として読む。傾きが eλt1e^{\lambda t}-1、切片が初生鉛同位体比である。

途中式

今回の数値は差がどちらも 151151 になるため、傾きがちょうど 11 になる。したがって年代は半減期そのものになる。ここを見抜くと計算がかなり短くなる。

検算

初生比を 99 とすると、データ1は 9+370=379 9+370=379 データ2は 9+521=530 9+521=530 となり、両方を再現する。

典型ミス

235U{}^{235}\mathrm{U} 系列と 238U{}^{238}\mathrm{U} 系列の最終鉛同位体を混同しやすい。235U{}^{235}\mathrm{U}207Pb{}^{207}\mathrm{Pb}238U{}^{238}\mathrm{U}206Pb{}^{206}\mathrm{Pb} である。

試験で書くべきポイント

年代の不一致は「測定誤差」とだけ書くより、元素移動、熱的リセット、閉鎖温度差、初生同位体不均一などの具体的な過程を一つ示す方が評価される。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — III-2 火山ガスと熱水湖の物質収支

方針

前半は化学平衡、後半は連続槽型の物質収支である。湖内が均質という仮定があるため、流出濃度も湖内濃度 CC と同じにできる。

途中式

定常状態の式は qV(C0C)=kC \frac{q}{V}(C_0-C)=kC である。左辺は流入による補給、右辺は岩石反応による消費を表す。単位はどちらも molL1s1\mathrm{mol\,L^{-1}\,s^{-1}} でそろう。

検算

(V/q)k=999(V/q)k=999 と大きいので、反応によって H+\mathrm{H^+} は約 10001000 分の1に減る。pH が 11 から 44 に上がることは、このオーダー計算と一致する。

さらに1年間の収支を見ると nout+ncons=3.2×106+3.1968×1093.20×109 mol n_{\mathrm{out}}+n_{\mathrm{cons}} =3.2\times10^6+3.1968\times10^9 \simeq3.20\times10^9\ \mathrm{mol} で、流入量 nin=3.2×109 moln_{\mathrm{in}}=3.2\times10^9\ \mathrm{mol} と一致する。定常状態では湖内に蓄積しないため、この一致は強い検算になる。

典型ミス

カオリナイト量を流出する H+\mathrm{H^+} 量から割り出すと小さくなりすぎる。カオリナイト溶解量は反応で消費された H+\mathrm{H^+} 量から、係数 66 を使って求める。 また、kk の単位は s1\mathrm{s^{-1}} なので (V/q)k(V/q)k は無次元である。 V/qV/q を年に換算してから kk を掛けると、秒との混在で 10710^7 倍ずれる。

試験で書くべきポイント

圧力の小問では、平衡定数の式を書かなくても、気体分子数が 33 から 44 に増える反応であることを示せば理由として十分である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — III-3 芳香族化合物とアミノ酸

方針

芳香族性は名前ではなく電子数と共役の連続性で判定する。アミノ酸は、pH と等電点の大小関係から平均電荷を決めればよい。

途中式

アニリンが水層へ移る理由は、塩酸で C6H5NH2+H+C6H5NH3+ \mathrm{C_6H_5NH_2+H^+\rightarrow C_6H_5NH_3^+} となるためである。イオン化した化合物は有機層より水層に分配されやすい。

検算

pH が等電点より高いと、アミノ酸はプロトンを失いやすく平均的に負になる。pH が等電点より低いと、プロトン化されやすく平均的に正になる。この規則で3種の移動方向をまとめて確認できる。

典型ミス

ピロールでは窒素の孤立電子対が芳香族 6π6\pi 電子系に入る。一方、ピリジンでは窒素の孤立電子対は芳香族電子数に数えない。どちらも芳香族だが、理由が異なる。

試験で書くべきポイント

電気泳動の答案では、移動方向だけでなく「pH と等電点の大小」および「平均電荷」をセットで書く。これで理由説明として完結する。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — IV-1 海洋化学・原生代環境

方針

炭酸塩溶解は、温度・圧力だけでなく深層水の「年齢」と有機物分解で決まる。2ボックスモデルは式へ数値を代入するだけだが、濃度比の読み替えを間違えないことが重要である。

途中式

「表層水が河川水の25\%、深層水の50\%」という条件から Csurface=0.25Criver=0.50Cdeep C_{\mathrm{surface}}=0.25C_{\mathrm{river}} =0.50C_{\mathrm{deep}} であり、Cdeep=0.50CriverC_{\mathrm{deep}}=0.50C_{\mathrm{river}} となる。ここを Cdeep=2CriverC_{\mathrm{deep}}=2C_{\mathrm{river}} と誤読しない。

検算

f=1/6f=1/6g=6/11g=6/11 なので fg=1/11fg=1/11 である。したがって滞留時間は混合時間の11倍となり、1.98×1041.98\times10^4 年という値はオーダーとして妥当である。

典型ミス

リソクラインと CCD を同じ定義で書くミスが多い。リソクラインは「溶解が目立ち始める深度」、CCD は「堆積物として残らなくなる深度」である。

試験で書くべきポイント

同位体比の説明では、単に「風化が増えた」と書くだけでなく、87Sr{}^{87}\mathrm{Sr} に富む古い大陸地殻由来の Sr が海洋へ入る、と同位体の向きまで書く。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

11 — IV-2 層序・堆積環境・年代対比

方針

柱状図の問題では、岩相、化石、放射年代を別々に読んでから統合する。特に礫岩中の花崗岩礫の年代は「礫の供給源の年代」であり、堆積年代そのものではない点に注意する。

途中式

地域Aは、枕状溶岩、チャート、珪質泥岩、タービダイトという典型的な海洋プレート層序である。これは一つの場所で水深が単純に変わったというより、プレートが移動しながら堆積場を変えていった記録と読む。

検算

貫入年代は、貫入される地層より若くなければならない。地層20では 50 Ma の制約があるため、候補リストからそれより若い 30 Ma だけが残る。

典型ミス

礫岩中の古い礫の年代を、その礫岩層の堆積年代と同一視してはいけない。礫は母岩から削られて再堆積するため、礫の年代は堆積年代の上限、すなわち「それより若い」と判断する材料である。

試験で書くべきポイント

環境復元では、岩相名だけを並べず、「なぜそう考えるか」を一つ添える。たとえば「サンゴのバウンドストーンがあるから浅海の礁環境」と書けば、根拠と結論が同時に示せる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

12 — V-1 アイスランド火山学

方針

火山学の設問は、地図、噴火様式、岩石化学を横断している。地図はプレート境界、堆積物は噴火過程、化学組成は分別鉱物というように、各図が何を判定させたいかを先に決めると迷いにくい。

途中式

DRE 換算では、体積そのものではなく質量保存を使う。 ρpumiceVpumice=ρdenseVDRE \rho_{\mathrm{pumice}}V_{\mathrm{pumice}} = \rho_{\mathrm{dense}}V_{\mathrm{DRE}} であり、密度比を逆にしないことが重要である。

Pb の分別計算も同じく保存則で考える。Pb を結晶がほとんど取り込まないなら、 初期液中の Pb 量 C0M0C_0M_0 は残液中の Pb 量 CMCM に等しい。したがって M/M0=C0/CM/M_0=C_0/C であり、これが残液分率 FF である。

検算

Pb 濃度は 0.2600.260 から 4.12 μg/g4.12\ \mathrm{\mu g/g} へ約16倍になる。結晶が Pb を含まなければ、残液は約 1/161/16 に減ったことになり、分別率が約94\%という大きな値になるのは整合的である。

典型ミス

水蒸気爆発とマグマ水蒸気爆発を、単に「水が関与したか」で区別しない。重要なのは、マグマが直接破砕されて本質物質を供給したかどうかである。

Pb 濃度では 260 ng/g=0.260 μg/g260\ \mathrm{ng/g}=0.260\ \mathrm{\mu g/g} の単位換算を忘れやすい。 単位をそろえずに 260/4.12260/4.12 とすると、残液分率が1を超えて物理的に不可能になる。

試験で書くべきポイント

分別鉱物を答えるときは、鉱物名だけでなく対応する酸化物の増減を書く。たとえば「MgO 減少からかんらん石」「TiO2_2 減少開始から Fe--Ti 酸化物」と根拠を添える。 DRE や結晶分別率の計算問題では、最後の数値だけでなく「何を保存しているか」を一行書くと部分点を取りやすい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

13 — V-2 ケイ酸塩鉱物と相平衡

方針

鉱物構造の問題は、化学式だけでなく配位数と四面体の共有様式で分類する。相図問題は、液相線・固相線・タイライン・てこの規則を順番に使う。

途中式

斜長石相図の1450^\circCでは、水平線の左交点が液、右交点が固相の組成を示す。全体組成60 wt\%はその間にあるため、てこの規則を使う。結晶量は全体組成から反対側の液組成までの距離、メルト量は反対側の固相組成までの距離に比例する。

検算

初晶は全体の60 wt\% Anより An に富む。これは斜長石の平衡結晶化では高温で Ca に富む斜長石が先に晶出するという一般則と一致する。

典型ミス

ブリッジマナイトとエンスタタイトは同じ MgSiO3\mathrm{MgSiO_3} でも構造が全く違う。下部マントルでは Si が6配位、地殻のエンスタタイトでは Si は四面体で単鎖を作る。

試験で書くべきポイント

GG--PP 図では、交点だけでなく「傾きが体積」であることを書く。高圧側で安定な相は一般に体積が小さく、GG の圧力依存性が小さいという説明ができる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

北海道大学 専門科目(地球惑星科学) — 他の年度