北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2025年度冬期募集 院試 解答例・解説
北海道大学 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2025年度冬期募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1 ベクトル解析と三重積分
方針
問題1は と の区別が最重要である。 はスカラー, はベクトルなので, は勾配, は発散, は回転になる。
途中式
は球対称場 の発散である。球座標で を使うと, からただちに が出る。ただし は問題の条件から除かれている。
検算
三重積分では integrand が で正なので答も正である。領域の高さは最大で , 半径も 程度なので, 体積オーダーは , の平均も であり, は大きさとして自然である。
典型ミス
と は正しいが, ベクトル積は一般に交換できない。三重積分ではヤコビアン を落とすと次元も値も合わない。
試験で書くべきポイント
選択問題は記号だけでよいが, 三重積分は領域を円柱座標で書き直す行を必ず残す。積分範囲が採点上の中心になる。
第2問 — I-2 複素数と積分
方針
複素指数方程式では絶対値と偏角を分ける。 と見れば, 絶対値から , 偏角から が決まる。
途中式
問題4の被積分関数 は正則関数ではない。したがって留数定理や原始関数で一括処理するのではなく, 経路を半円弧と実軸上の線分に分けて直接積分するのが安全である。
検算
半円弧の寄与は の向きに依存するため実数とは限らないように見えるが, この経路では結果が実数になる。戻りの実軸部分が なので, 合計 は向きを反映した符号である。
典型ミス
の解で を落とすと複素対数の多価性を失う。問題4では と置いてはいけない。実軸の負の部分で になるためである。
試験で書くべきポイント
展開問題は収束半径を聞かれていなくても, 指数関数なので全平面で収束することを一言添えると答案が締まる。
第3問 — I-3 ラプラス変換
方針
ラプラス変換の問題は定義, 部分積分, 線形性の三つだけで通せる。微分公式を先に正しく示しておくと, 初期値問題では機械的に代入できる。
途中式
二階微分の変換は と一階微分公式を二度使うのが最短である。部分積分を二回直接行ってもよいが, 符号ミスが増える。
検算
得られた は で であり, を満たす。また も代入で確認できる。
典型ミス
の逆変換は であり, ではない。ここで を落とすと微分方程式に戻したとき右辺が合わない。
試験で書くべきポイント
境界項を とする箇所では「 かつ関数が十分よく振る舞う」と明記すると, 形式計算に見えず説得力が出る。
第4問 — II-1 振り子
方針
この問題は回転運動としてまとめるのが最も簡潔である。接線方向の運動方程式でも解けるが, 球の場合には慣性モーメントの扱いが必要なので最初から支点まわりのトルクを使うと統一的に書ける。
途中式
一様球の中心まわりの慣性モーメントを とすれば, 支点まわりでは である。棒の質量は無視するため寄与しない。
検算
とすると球の式は質点の式に一致する。これは半径が無視できる極限として必ず満たすべき確認である。
典型ミス
球の重心までの距離 と棒の長さの取り方を混同しない。ここでは重力の腕の長さは であり, 球半径 は重力モーメントではなく慣性モーメントにだけ現れる。
試験で書くべきポイント
小角近似に入る前の非線形方程式と, 近似後の単振動方程式を分けて書く。角速度と周期だけを書く答案は導出点を落としやすい。
第5問 — II-2 電磁気
方針
球殻の電場はガウス面を球にとるだけで決まる。電荷が面にしかないため, 内側のガウス面は電荷を包まない。外側では全電荷を一点電荷のように扱える。
途中式
マクスウェル方程式の積分形では, 左辺が循環, 右辺が面を貫く量の時間変化になる。ここで「循環」は閉曲線に沿う線積分であり, 単なる電場の大きさではない。
検算
球殻直外の電場は で, 直内の電場との差は である。面電荷の境界条件と一致する。
典型ミス
直線電流の磁場で を落とす誤りが多い。アンペール経路は円であり, 線積分は ではなく に円周長を掛けたものになる。
試験で書くべきポイント
法則名は「ファラデーの電磁誘導の法則」「アンペールの法則」と正式名称で書く。磁場の向きは文章でもよいが, 右ねじの法則と明記する。
第6問 — II-3 気体分子運動論
方針
圧力は「壁に単位時間・単位面積あたり渡される運動量」である。分子の運動量変化と衝突頻度を別々に求めると, どこに と が入るかが明確になる。
途中式
分子自身の運動量変化は だが, 壁が受ける力を求めるときは反作用として の大きさを使う。符号と大きさを混同しない。
検算
は単原子理想気体の運動論で出る標準結果と同じ形である。ここでは六方向モデルで導いているが, 三次元で速度成分が等分配される本質は同じである。
典型ミス
摂氏温度をそのまま代入してはいけない。分子速度は絶対温度に比例するので, と は必ず K に直す。
試験で書くべきポイント
最後の比較では比だけでも差だけでも説明不足になりやすい。数値速度, 比, どちらが速いかを併記すると読みやすい。
第7問 — III-1 元素存在度
方針
太陽系存在度の図は, 水素・ヘリウムの圧倒的な多さ, リチウムなど軽元素の低さ, 偶奇効果, 鉄ピークを読み取る問題である。値を細かく暗記するより, 物理的な理由と代表元素を結びつける。
途中式
鉄ピークは核結合エネルギーの大きさと関係する。鉄より軽い元素は核融合で, 鉄付近まではエネルギー的に生成されやすく, その後の元素は超新星爆発や中性子捕獲過程などが関わる。
検算
地球で最も多い元素を答えるときは基準を確認する。地殻だけなら酸素が最大だが, 全地球の質量基準では核の寄与が大きいため鉄が最大である。
典型ミス
太陽系存在度と地球表層の存在度を混同しない。太陽系では H と He が支配的だが, 地球では揮発性元素が失われ, 難揮発性の岩石・金属元素が相対的に多い。
試験で書くべきポイント
「スペクトル解析」だけでなく「隕石分析」を併記する。太陽光球で測りにくい元素を隕石で補う, という説明があると地球化学の答案として強い。
第8問 — III-2 炭酸平衡と石灰岩溶解
方針
前半は化学平衡, 後半は連続槽の物質収支である。収支式では「流入」「流出」「反応」を同じ単位 にそろえる。
途中式
は と の積なので である。湖内で消費されるため と定義されており, 収支式に と入る点が符号の要である。
検算
今回 なので, 流出濃度は流入濃度の半分になる。計算結果 は の半分であり, 収支として自然である。
典型ミス
閉鎖系になった後も流入濃度 を使って定常式を続けてはいけない。流入・流出がなくなるので, 濃度変化は反応項だけで決まる。
試験で書くべきポイント
有効数字 2 桁指定の計算では, 最終値を や のように明示する。途中の の単位も書くと次元ミスを防げる。
第9問 — III-3 有機地球化学
方針
バイオディーゼルは「油脂を脂肪酸メチルエステルへ変換する」反応である。油脂の構造を官能基で押さえ, 物性差は飽和・不飽和脂肪酸の形の違いで説明する。
途中式
天然ガスの起源判定では, 熱分解起源は高級炭化水素を比較的多く含み, 微生物起源はメタンに富む。炭素同位体では微生物起源メタンが軽い炭素に富むことが多い。
検算
の異性体は炭素骨格だけを数える。直鎖の 4 炭素骨格と, 3 炭素主鎖にメチル基がついた骨格の 2 通りで尽きる。
典型ミス
カルボキシ基とカルボニル基を混同しない。脂肪酸末端は であり, グリセリン側は である。
試験で書くべきポイント
短字数説明では「分子間力が大きい」「密に詰まる」「不飽和で折れ曲がる」など, 物性と分子構造を直接つなぐ語を入れる。
第10問 — IV-1 大陸移動と海洋生産
方針
前半は大陸移動の古典的証拠を問う問題である。陸上生物化石と氷河堆積物の分布が, 現在離れている大陸の過去の接続を示す。
途中式
Glossopteris はゴンドワナ大陸を特徴づける植物化石であり, Gondwana の分布復元と結びつけて覚えるとよい。Cynognathus や Lystrosaurus は同じ陸生四肢動物でも, 海を越えて広がったのではなく, 大陸が接していたことを示す証拠として使う。
検算
氷河性堆積物が南半球側の複数大陸にまたがることは, 大陸を再配置すると氷床中心から放射状に説明できる。現在の地理だけで考えると不自然になる点が, 大陸移動説の根拠である。
典型ミス
海底堆積物の TOC をそのまま基礎生産量と見なすと危ない。底層の酸化還元状態や陸源有機物の混入が TOC を変えるため, 問題文で除外条件や議論の対象が指定されている。
試験で書くべきポイント
大量絶滅の説明では「年代」「絶滅した生物群」「原因」の三点をそろえる。どれか一つだけでは字数指定の答案として弱い。
第11問 — IV-2 地層断面と堆積場
方針
地質断面の読解では, まず「切るものが若い」「覆うものが若い」「不整合面より上は若い」という相対年代の原則を機械的に適用する。化石と数値年代はその後で年代の幅を絞る。
途中式
地層15は花崗岩であり堆積層ではないが, 断面史では貫入イベントとして扱う。接触変成を与えた相手より若く, その上位不整合に削られていれば不整合より古い。
年代制約のつなぎ方
貫入年代の候補を絞るときは, 数値年代を単独で暗記するのではなく, 「断層より若い」「不整合Aより古い」という上限・下限を同時に満たすかで落とす。片方の制約だけで選ぶと, 若すぎる候補や古すぎる候補が残ってしまう。
検算
選択肢のうち 15 Ma と 5 Ma は不整合Aの 30 Ma より若いため不適切である。125 Ma や 150 Ma は, 断層を切る関係を採用するなら古すぎる。残る 50 Ma と 40 Ma が整合する。
典型ミス
同じ石灰岩でも同じ堆積場とは限らない。化石相と周囲の層序を合わせて, 大陸棚の礁性石灰岩なのか, 海洋プレート上の海山石灰岩なのかを区別する。
試験で書くべきポイント
断面図問題では, 答だけでなく根拠語を添えると減点されにくい。「基底礫岩」「級化層理」「接触変成」「放散虫」など, 採点者が拾いやすい専門語を明確に書く。
第12問 — V-1 相平衡・火山岩石
方針
三成分相図では, 点の読み取り, 共晶・コテクティックの用語, てこの規則を分けて考える。重量パーセント図なので, 計算もモル比ではなく端成分の重量組成に直して足し合わせる。
途中式
てこの規則は, 同一直線上にある全組成・液組成・結晶組成の距離比で相量を出す。Q の場合は Forsterite--Anorthite 辺上で考え, Forsterite 結晶を An 成分 と置くと計算しやすい。
相図の自由度
共晶点とコテクティック線の違いは, 名前の暗記だけでなく相律で説明できる。三成分系を定圧で見ると, 共晶点では温度も液組成も固定され, コテクティック線では温度が変わるにつれて液組成が線上を移動する。
検算
P の は Fo と An が約 43 wt\%, Di が約 56 wt\% なので, Di を 40\% 含む組成として 48 wt\% 程度になるのは自然である。
典型ミス
分別融解と平衡融解を混同しない。分別融解では生じた液を取り去るため, 残留固相はしだいに高融点成分へ偏る。
火山堆積物の識別
流下型堆積物と降下堆積物は, 粒子の支持機構と分布域で区別する。風で運ばれる降下堆積物は広域に薄く連続しやすいが, 密度流・なだれ・泥流は地形的低所に厚く偏って残りやすい。
試験で書くべきポイント
安山岩の成因比較では, 「結晶分化は連続的・平衡的」「混合は非平衡組織や二端成分混合」を対比させる。観察事実と成因を対応させて書くことが重要である。
第13問 — V-2 鉱物分類と光学
方針
鉱物分類は化学組成, 光学分類は結晶対称性で判断する。同じ名前の暗記だけでなく, 「なぜその分類になるか」を組成式や晶系と対応させる。
途中式
あられ石と方解石はいずれも だが, あられ石は直方晶系, 方解石は三方晶系である。X 線回折では結晶面間隔が異なるため, 多形を区別できる。
検算
表の 反射を使うと と直接出る。ほかの反射を無理に使うと や も必要になり, 計算が遠回りになる。
典型ミス
黄鉄鉱は立方晶系なので光学的には等方体に分類されうるが, 透過光観察では不透明である。晶系による分類と観察に適するかどうかは別問題である。
試験で書くべきポイント
偏光顕微鏡の記述では「クロスニコル」「消光」「干渉色」「多色性」など観察条件に対応した語を使う。オープンニコルとクロスニコルを混ぜないこと。