北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2024年度夏期募集 院試 解答例・解説
北海道大学 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2024年度夏期募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全14問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1 線形代数
方針
前半は「対称部分」と「交代部分」の標準分解を使う。後半は、3次の実交代行列を外積行列と見ると固有値の構造が一気に見える。
途中式の要点
分解は で成分ごとに計算する。対角成分は必ず になるため、対角に非零成分が出たら計算ミスである。
検算
3次元の外積行列 は固有値 をもつ。ここでは なので、 が出るのは自然である。また 、 も固有値 と一致する。
典型ミス
固有ベクトルの規格化では、複素ベクトルの長さを で測る。成分の二乗和ではなく、絶対値の二乗和を使う点に注意する。
試験で書くべきポイント
交代行列の一般論は、固有方程式だけでなく が純虚数であることを示すと、任意次元に通用する答案になる。
第2問 — I-2 常微分方程式
方針
定係数線形方程式は特性方程式、非同次の多項式右辺は多項式特解、連立系は行列指数、最後の非線形方程式は変数分離で処理する。
連立方程式の見方
係数行列の固有値は重根 で、対角化できない。ここで無理に固有ベクトルを二つ探すと詰まる。 と分ければ、指数行列が とすぐに出る。
検算
非同次方程式の特解 を代入すると、二階微分項・一階微分項・零階項の定数部分が打ち消し合い、残るのは だけである。最後の方程式では、 が右辺 をゼロにすることを確認しておく。
典型ミス
ロジスティック型の式で や で割った場合、割った値がゼロになる定数解を落としやすい。最後に定数解を別途確認する。
試験で書くべきポイント
一般解では任意定数の個数が階数・未知関数数に合うことを示す。二階線形方程式なら2個、2変数の一階連立なら2個である。
第3問 — I-3 複素関数
方針
複素三角関数では実部・虚部に分ける。実積分は上半平面の半円閉曲線を使い、弧上の積分が消えることを評価してから留数定理を適用する。
途中式の意味
は上半平面で という減衰因子を持つ。したがって を扱いたいときも、直接 ではなく を積分して最後に実部を取るのが安定である。
検算
は正負に振動するが、分母で減衰するため有限である。答え は正で、既知公式 の とも一致する。
典型ミス
半円の向きを取り違えると閉曲線積分の符号が逆になる。図の直線部分は から 、半円弧は から なので反時計回りである。
試験で書くべきポイント
留数を出すだけでなく、弧上積分が消える評価を必ず書く。ここを書かないと実積分への極限移行が正当化されない。
第4問 — I-4 積分とフーリエ変換
方針
領域積分は角度範囲を正しく読むことが最重要である。フーリエ変換は、偶関数なら実部だけにして余弦変換に落とすと計算が短くなる。
途中式の確認
は第一象限のうち直線 より上側なので、角度範囲は である。ヤコビアンの を忘れると積分値が変わる。
パーシバルの規格化
この問題のフーリエ変換は係数 を前に置く約束である。そのためパーシバルの左辺・右辺の係数も、よく使う対称規格化とは異なる。答えが になるのは、この規格化を反映した結果である。
典型ミス
の式は で見かけ上 になる。極限を取れば有限値 になるので、答案では を別記する。
試験で書くべきポイント
フーリエ変換の定義に含まれる の位置を書き、最後まで同じ規格化で通すこと。ここがずれるとパーシバルの係数も連鎖的にずれる。
第5問 — II-1 振り子とラグランジアン
方針
座標を角度で表し、運動エネルギーとポテンシャルを作ってからオイラー・ラグランジュ方程式に代入する。二重振り子では、微小振動にしてから行列の固有値問題にする。
途中式の要点
二重振り子の運動エネルギーには交差項 が入る。この項を落とすと固有振動数が全く変わってしまう。
検算
であり、二つの棒が逆向きに動く高周波モードの方が復元力が大きい。これは直感と一致する。
典型ミス
ポテンシャルの基準を原点に取ると である。下端を基準にした を使っても運動方程式は同じだが、問題の空欄には原点基準の形を入れる必要がある。
試験で書くべきポイント
微小振動近似はラグランジアンを作った後に入れる。最初から として位置を雑に扱うと、速度の交差項や復元項を見落としやすい。
第6問 — II-2 熱力学サイクル
方針
1周する熱機関では である。したがって正味の吸熱は正味の仕事に等しい。効率は正味仕事を「外部から吸収した熱量」で割る。
途中式の要点
長方形の - サイクルでは、仕事は面積で読める。一方、吸熱量は面積だけではなく内部エネルギー変化も含むため、定圧過程と定積過程を分けて計算する。
検算
カルノー効率 は作動物質によらない。ここで理想気体の詳細を使わずに だけで出るのは、可逆等温・可逆断熱で構成されたサイクルだからである。
典型ミス
放出熱量は、熱力学第一法則の符号付き では負になる。しかし効率の分母・分子で使う「放出熱量」は正の大きさとして扱う。ここを混同しない。
試験で書くべきポイント
断熱式の指数 は単原子分子理想気体の に対応する。導出では を明記すると説得力が出る。
第7問 — II-3 真空中の電磁場
方針
円環電荷は対称性で軸方向成分だけを残す。直線電流はビオ・サバール積分を1変数に落とす。電磁波はマクスウェル方程式に回転を作用させると波動方程式が出る。
途中式の要点
円環の電場で距離因子は になる。クーロン場の に、軸方向への射影 がもう一つ掛かるためである。
検算
円環電場は でゼロになる。十分遠方では となり、点電荷 の電場に近づく。
典型ミス
平面波の横波性は , から出る。ファラデーの法則だけで横波性を言うと、論理が不足しやすい。
試験で書くべきポイント
波動方程式の導出では、ベクトル恒等式のどの項がゼロになるかを明記する。真空かつ電荷なしだから である。
第8問 — II-4 音波の反射と透過
方針
境界条件は粒子速度の連続と圧力の連続である。粒子速度を振幅に選んでいるため、右向き波と左向き波で圧力振幅の符号が逆になる点が核心である。
途中式の意味
右向き波 では 、左向き波では となる。これは運動方程式の 微分の符号が反対になるためである。
検算
水の音響インピーダンスは空気より非常に大きいので、速度振幅はほぼ完全に反射され、透過する粒子速度は非常に小さい。得られた はこの直感と一致する。
典型ミス
音圧の反射係数と粒子速度の反射係数は符号が逆になる場合がある。本問は粒子速度の振幅比を聞いているので、圧力振幅の公式をそのまま使わない。
試験で書くべきポイント
周波数が一致する理由は、境界条件が任意の時刻で成り立つことにある。単に「保存される」と書くより、指数関数の独立性を述べると明確である。
第9問 — IV-1 地球史・古気候
方針
時間軸の読解では、既知の境界年代を基準にする。約66 Maから252 Maまでが中生代で、上から白亜紀、ジュラ紀、三畳紀である。古生代ではペルム紀の下が石炭紀、さらに下がデボン紀である。
寒冷化の因果
石炭紀の寒冷化は、単に「気温が下がった」と覚えるより、炭素循環と大陸配置を分けると説明しやすい。有機炭素の埋没は温室効果を弱め、南極域の大陸は氷床を長期に維持しやすくする。
OAEの流れ
OAEは「温暖化したから無酸素」だけでは不十分である。温暖化、海洋成層、酸素供給低下、栄養塩供給と高生産、有機物分解による酸素消費、黒色頁岩の堆積という順序で書く。
典型ミス
五大絶滅の星番号を時代名だけで答えると、図の番号とずれることがある。白亜紀末は最上位のピーク、ペルム紀末は最大規模のピークとして対応させる。
試験で書くべきポイント
短字数の説明問題では、原因を二つ挙げるだけでなく、それぞれが寒冷化や無酸素化にどう効くかを一文で結ぶ。
第10問 — IV-2 堆積相と中新世古環境
方針
この問題は、年代をもつ凝灰岩層で広域対比し、堆積構造で上下判定を行い、最後に古環境と中新世の動植物群へつなげる。
堆積相の読み方
Lenticular bedding と flaser bedding は潮汐の影響を受ける砂泥互層に典型的で、静穏時の泥と流速のある時の砂が交互に堆積したことを示す。石炭層は植物遺骸が集積する湿地・沼沢環境を示す。
検算
露頭 C--D で外洋性化石を選ぶと、潮汐性堆積構造や石炭層と環境が合わない。汽水から浅海の貝類を選ぶと、堆積相と化石相が同じ環境を指す。
典型ミス
凝灰岩層の年代だけで断定し、上下判定を使わない答案は弱い。堆積構造から「見かけの上が実際の上か」を判断するのがこの問題の狙いである。
試験で書くべきポイント
記号選択だけでなく、環境の対応を一文添える。特にシジミガイ・カキは汽水域、サンゴは暖かく浅い外洋的な透明海水、アンモノイドは外洋性という対比を書くと失点しにくい。
第11問 — IV-3 活断層と断層変位
方針
トレンチ図では、断層で切られている層と切られていない層の境界を活動層準として読む。平面図の問題では、地表で見える隔離と断層面内の実変位を区別する。
活動時期の挟み方
活動時期は「その活動で切られた最も若い層」と「その活動を覆って切られていない最も古い層」の間に入る。木片年代はこの境界の上下に近いものほど制約が強い。最新活動では、下位側の木片6と上位側の木片7が組になりやすい。中間・最古の活動では、同じ考え方で累積変位が一段変わる境界の近くにある木片4、木片3を選ぶ。
途中式の要点
岩脈の実変位は、地表面で見える をそのまま答えにしてはいけない。断層面内で、条線方向の変位を岩脈交線と地表線に投影して補正する。
検算
条線は と急傾斜なので、実変位の大部分は上下成分である。見かけの水平隔離 より実変位が大きい約 になるのは妥当である。
典型ミス
条線のプランジを断層面の傾斜と混同しない。断層面は鉛直、条線はその面上に刻まれた運動方向である。 トレンチ図では、単に断層に近い木片を全部選ぶのも誤りである。活動層準を挟むか、累積変位の段差を直接制約するかを基準に選ぶ。
試験で書くべきポイント
高速すべりの判定では「摩擦熱に伴う溶融・急冷組織」を理由とセットで書く。単に断層岩を観察するとだけ書くと、何を見ればよいかが不明確になる。
第12問 — V-1 火山噴出物とマグマ過程
方針
柱状図は、土壌層を休止期の目印として読む。計算問題では、保存される成分を使って質量収支を立てる。相図は「in」の線の低温側に鉱物が存在することを押さえる。
途中式の要点
分別結晶作用の計算では、「その他」成分がかんらん石に入らないことが強い制約になる。これにより残液量が決まり、SiO2・FeO・MgO の差分からかんらん石組成を求められる。
相図の読み方
問6の温度範囲は、点 S の温度をそのまま読む問題ではない。まず含水量から圧力を求め、その圧力の水平線を相図に引く。次に、軽石に含まれる鉱物が「晶出している側」に入るよう温度を絞る。特に は角閃石の出現境界であり、角閃石が記載されていないことは下限側を決める手がかりになる。一方で は斜長石の存在から上限側を与える。
検算
分別したかんらん石の酸化物差分は で、求めた除去質量 と一致する。さらに がおおむね に近く、かんらん石の化学式と整合する。 圧力の桁も確認できる。地殻密度を とすれば で、浅部から中部地殻のマグマ溜まりとして不自然ではない。
典型ミス
を としてしまうと圧力が100倍ずれる。 である。 また、「in」の線を高温側に晶出すると読むと温度範囲が逆になる。図注の意味を先に確認してから鉱物組み合わせを使う。
試験で書くべきポイント
火山灰の給源同定では、化学組成だけでなく層厚・粒径分布などの野外情報も書けると強い。テフラ対比は「物質情報」と「分布情報」の両方を使う。
第13問 — V-2 鉱物化学と地質温度計
方針
鉱物名の同定は、酸化物組成の特徴から行う。K2O が多く、FeO と MgO も多く、合計が低い鉱物は含水層状珪酸塩の黒雲母と考えるのが自然である。
途中式の要点
から を出すには を使う。 そのものを に入れない。
分配係数の読み方
ざくろ石--黒雲母温度計は、Fe--Mg 交換反応 の平衡を利用している。したがって、表の酸化物質量\%から直接温度へ飛ぶのではなく、まず各鉱物中の Mg と Fe の比を同じ定義で作る必要がある。順序を逆にすると の符号が反転し、温度が大きくずれる。
検算
であることは、ざくろ石が黒雲母より Fe に富むことを意味する。表でもざくろ石は FeO が高く MgO が低いため、計算結果と整合する。 また、得られた は中温変成条件として不自然ではない。もし を摂氏のまま式に代入したり、最後のケルビンから摂氏への変換を忘れたりすると、地質温度計としてあり得ない値になりやすい。
典型ミス
温度計の式の はケルビンである。最後に を引いて に直す。 もう一つのミスは、FeO と MgO の質量\%をそのままモル比として使うことである。問題で が与えられている場合は、その値を使う方が安全である。
試験で書くべきポイント
合計が低い理由として「分析ミス」と書くのは弱い。黒雲母の という化学的特徴を挙げ、EPMA で水素が通常定量されないことまで述べる。
第14問 — V-3 岩塩型構造と固溶体
方針
X線回折はブラッグの式で面間隔を出し、立方晶の面間隔式で格子定数に直す。密度は、単位格子の中に式量単位が何個あるかを数えてから質量を体積で割る。
岩塩型構造の数え方
岩塩型構造は、陽イオンと陰イオンが互いにずれた面心立方格子を作る構造として数えると間違えにくい。どちらか一方のイオンだけを角と面心で数えて4個、もう一方も八面体位置で4個となる。配位数6と単位格子中の個数4は別の概念なので、混同しない。
途中式の要点
回折角として与えられるのは である。ブラッグの式に入れるのは なので、ここでは を使う。
検算
の方が より大きな陽イオンを含むため、 含有量が増えるほど は小さくなる。求めた は中間よりやや 側で、約60\%という読み取りと合う。 密度計算でも、平均式量は と の間に入り、格子定数も中間的な大きさになる。答えが や になった場合は、 または から cm への換算を疑う。
典型ミス
密度計算で単位格子中の式量単位数 を忘れると、答えが4分の1になる。また から への換算 も必要である。
試験で書くべきポイント
相図の二相分離では、全体組成ではなく、その温度でのソルバス両端の組成を読む。二相の量比を聞かれていないため、てこの規則までは不要である。