北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2024年度冬期募集 院試 解答例・解説
北海道大学 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学) 2024年度冬期募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — I-1\ 数学:行列の対角化と連立常微分方程式
方針
この問題の核は、行列が実対称であることを見抜く点にある。実対称行列では固有ベクトルを直交規格化できるので、対角化は ではなく として扱える。連立常微分方程式も同じ行列 を係数行列にもつため、対角化の結果をそのまま使える。
途中式の見せ方
固有多項式を因数分解しただけで終えると、固有ベクトルの正規化や の確認が薄くなる。試験答案では、少なくとも固有ベクトル同士の内積が であることと、各ノルムが であることを一行ずつ示すとよい。
検算
たとえば なので、 の固有ベクトルは正しい。同様に と を代入すれば、それぞれ 倍、 倍になる。
典型ミス
の列の順番を変えること自体は誤りではないが、その場合は対角行列の固有値の順番も同じように変える必要がある。また、問5で正規化係数を残してもよいが、任意定数に吸収できることを書かないと式が不要に複雑になる。
試験で書くべきポイント
固有値、正規化固有ベクトル、、 の対角成分、最後に連立方程式の一般解を同じ固有値の順番でそろえて書く。ここがそろっていれば、計算過程の採点で安定して点が取れる。
第2問 — I-2\ 数学:複素積分・ガウス積分・最大化
方針
複素積分では、三角関数を と に直すこと、積分路が単位円になること、単位円内の極だけを採用することが要点である。ガウス積分では二乗して平面全体の積分に変える手順が標準的である。楕円内接長方形は、対称性から第一象限の一点だけを決めればよい。
途中式
問題1では の分母処理で を掛けるため、 の と打ち消し合う。この打ち消しを落とすと、余分な が残って極を誤る。
検算
既知公式 に を代入すると となり、留数計算の結果と一致する。
典型ミス
極 は実軸上にあるが、単位円の外側なので留数に入れない。楕円の問題では、長方形の面積を としてしまうと、最大点は同じでも面積の説明が不足する。接点を問われているため最終結果は点の座標で書く。
試験で書くべきポイント
積分路、極の内外判定、留数、ヤコビアン、楕円の対称性を明記する。特に複素積分の図示は、極の位置関係が伝わる簡単な単位円図で十分である。
第3問 — IV-1\ 地球科学I:地球史・超大陸サイクル
方針
対数軸の年表問題は、厳密な年代をすべて暗記していなくても、桁で並べると解ける。ビッグバン、地球最古岩石、酸素化、カンブリア爆発、古生代陸上植物、中生代末絶滅、新生代の地球環境イベント、人類史イベントという大枠を先に置く。
年代の目安
最古岩石は約40億年前、酸素化は約24億年前、多細胞生物は新原生代、カンブリア大爆発は約5.4億年前である。維管束植物は約4.3億年前、石炭紀末の高酸素は約3億年前、三葉虫絶滅は約2.5億年前、被子植物は約1.3億年前、アンモナイト絶滅は6600万年前である。
検算
直近の地磁気逆転は約78万年前なので 年の桁、最終氷期最盛期は約2万年前なので 年の桁、BPの基準年は1950年なので現在から見ると 年の桁に置かれる。これらの桁が年表上の位置と合っていれば、近過去側の対応は大きく外れていない。 古い側では、酸素化を最古岩石より新しく、カンブリア大爆発を陸上植物進出より古く置くのが大きな制約になる。 三葉虫絶滅、被子植物出現、アンモナイト絶滅はすべて顕生代内の並びなので、ペルム紀末、白亜紀前半、白亜紀末の順に整理するとよい。
記述答案の組み立て
証拠を問われたときは、単語を列挙するだけでは弱い。証拠、そこから分かる環境変化、 地球システムへの影響を順に書くと、短い字数でも答案の因果関係が見える。たとえば酸素化なら、 鉄の酸化記録から海洋・大気の酸化を読み、最後に生物圏や紫外線環境への影響へつなげる。
典型ミス
アンモナイトの絶滅と三葉虫の絶滅を混同しやすい。アンモナイトは白亜紀末、三葉虫はペルム紀末である。また、パンゲア形成の影響を「大陸が集まった」だけで終えると、気候・生物多様性への影響に答えていない。
試験で書くべきポイント
120字程度の説明では、証拠と影響を一文ずつ入れる。たとえば酸素化なら「縞状鉄鉱層」だけでなく、それが海洋・大気の酸化を示し、生物圏やオゾン層形成へつながることまで書く。
第4問 — IV-2\ 地球科学I:地質図・堆積相・花粉化石
方針
地質図の計算では、露頭線上の点は「その層準が地表と交わる点」である。したがって、点の標高差を層準の標高差として使える。走向が南北なら、東西方向の距離は傾斜方向の水平距離として扱える。
途中式
BからCで標高が 上がるのに水平距離も なので、 である。傾斜方向は「低くなる向き」で判断する。東へ行くほど高いなら、西へ行くほど低くなるため西傾斜である。
検算
問4で、DからEへ東に行くと、東傾斜の面は本来低くなる。ところが実際にはE側の露頭標高の方が高い。したがって東側ブロックが上方に変位したという符号判定は自然である。 変位量の概算も、 を使えば、仮想高度が 、 実測高度との差が約 となる。答案では図の読取誤差を考えて、整数メートル単位の細かすぎる値にこだわらない。
層厚計算の安全な手順
地質図の深度計算では、まず鉛直方向で読める量を整理し、最後に真の層厚へ変換する。 傾斜角を とすると である。B--C側で真の層厚を一度求め、D側で再び鉛直深度へ戻す、という二段階に分けると、 同じ層厚を異なる傾斜域へ移す問題として処理できる。
典型ミス
真の層厚と鉛直深度を混同しやすい。鉛直間隔 と真の層厚 の関係は である。傾斜角が大きいほど、同じ真の層厚に対応する鉛直深度は大きくなる。
試験で書くべきポイント
地質図問題では、どの点の標高を図から読んだかを明記する。花粉問題では、アカマツが陽樹であること、遷移が進むと陰樹を含む極相林へ向かうこと、人間活動が攪乱を維持したことの三点を入れる。
第5問 — V-1\ 地球科学II:火成岩・相図・火山・微量元素
方針
V-1は、分類表・相図・記述問題・微量元素計算が混在する。分類表は暗記だけでなく、SiO が増えるほど苦鉄質鉱物が減り、石英・カリ長石が増えるという全体傾向で確認する。相図はてこの規則を横軸の重量百分率で使う。
途中式
I点の計算では、全組成がB成分70、1400度の液組成がB成分60、固相Bが100である。固相Bの割合は J点の1300度では、液組成を図からB成分約35、固相CをB成分60と読み、 よりC相が約60\%残る。
検算
相図のSiO 量は、成分Aが50 wt\%、成分Bが60 wt\%なので、B成分 wt\% のメルトでは で確認できる。B成分60なら56 wt\%、B成分40なら54 wt\%である。 また、てこの規則で得た相量は必ず0から1の範囲に入るはずである。0.25や0.60のような値は、 読んだ全組成が共存相の組成の間にあることと整合する。もし1を超える値が出た場合は、 同じ温度の液相線・固相線ではなく別の境界を読んでいる可能性が高い。
図の読み取り値の扱い
相図・規格化図の数値は、図上の交点や目盛りから読むため、最後の桁に幅がある。重要なのは、 どの線とどの相境界の交点を読んだか、てこの規則の分母・分子をどの組成差にしたかを明示することである。 REE図では縦軸の比をそのまま使い、絶対濃度へ戻す必要はない。
典型ミス
液相線上の点を「岩石全体の組成」と混同しない。IやJの点は全組成、同じ温度で液相線と交わる点はメルト組成である。また、REEの規格化図では縦軸が対数なので、点の読み取りは概数で十分だが、A/Bの比を使うことを明確にする。
試験で書くべきポイント
岩石・鉱物名の空欄は表でまとめる。相図は、どの相が残っているか、どの組成を液相線から読んだか、てこの規則の分子・分母を示す。記述問題は「由来」「物性」「分化傾向」のように対比軸を明示して書く。 微量元素計算では、分配係数が1より小さいこと、部分融解度が小さいほど液相に濃集すること、求めた がその直観と合っていることまで書くと、数値答案の説得力が増す。
第6問 — V-2\ 地球科学II:鉱物の結晶構造・分類・分析
方針
結晶構造問題は、単位格子に含まれる原子数、最近接距離、半径、充填率を順に処理する。鉱物分類は、化学組成による分類とSiO 四面体の連結様式による分類を分けて考える。
途中式
ダイヤモンド構造の充填率で最も多い誤りは、最近接距離 を原子半径として使うことである。接している球の中心間距離が なので、半径は である。また、面心立方格子だけを見て最近接距離を とすると、同じ副格子上の距離を読んでしまう。ダイヤモンドの最近接は2原子基底のずれ で決まる。
検算
ダイヤモンドの充填率は面心立方最密充填の74\%よりかなり小さい。計算結果の34\%は、4配位の開いた共有結合構造であることと整合的である。Miller指数では、 の0を「原点を通る」と読まないことも検算になる。切片は 、 方向には平行である。
典型ミス
テクトケイ酸塩は「架橋酸素が多い」ではなく、すべての酸素を共有する三次元骨格である点が決定的である。また、Fo値の計算では重量\%をそのまま比にせず、必ず分子量で割ってモル比に直す。MgOとFeOはどちらも陽イオン1個を含むため、酸化物モル比がそのままMgとFeのモル比になる。
試験で書くべきポイント
分析法の問題では、観察される現象と鉱物の性質を一対一で結びつける。XRDは結晶性と格子定数、赤外分光はOHなどの結合振動、熱重量分析は脱水や分解による質量変化を見る方法である。石英は結晶質SiOなのでXRDで鋭いピークを示し、オパールは含水・低結晶質シリカなのでOH吸収や加熱時の減量が判定根拠になる。かんらん石のXRDでは、Feに富むほど が増え、ブラッグ条件から低角側へずれるという符号まで書くと説明が完結する。