名古屋工業大学 院試 過去問 解答例
名工大 工学研究科 物理工学系 応用物理プログラム 応用物理 2025年度 院試 解答例・解説
名古屋工業大学 工学研究科 物理工学系 応用物理プログラム 応用物理 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 基礎物理数学
方針
第1問は、計算を力任せに進めるよりも、使う定理を先に選ぶのが重要である。ベクトル場 では回転がゼロかを見て保存力場として扱い、球面積分では直接面積分ではなく発散定理へ移す。微分方程式は変数分離、フーリエ級数は偶奇性を最初に判定する、という順に進めると計算量を抑えられる。
保存力場の確認
線積分を直接パラメータ表示で計算してもよいが、最初に を得ているので、ポテンシャル差で出す方が速く、計算ミスも少ない。ポテンシャルには任意定数が付くが、差を取るため線積分の値には影響しない。
ガウスの定理での検算
球面上で直接計算すると、外向き単位法線は であり となる。球面平均 を使えば となり、発散定理による答と一致する。
ロジスティック方程式の典型ミス
なので の絶対値は最終的に外してよい。初期条件 を入れると積分定数がちょうどゼロになる。 型に直すと、 で 、 で となり、微分方程式の向きとも合う。
フーリエ係数の注意
三角波は偶関数なので と先に判断できる。 は級数中で として現れるため、定数項を と書いてしまうミスが多い。この問題では 、定数項は である。
無限級数の取り出し方
フーリエ級数を に代入するのが最短である。端点や折れ点で級数値を使うときは左右極限の平均になるが、ここでは関数が連続で値は なのでそのまま代入できる。
試験で書くべきポイント
ベクトル解析では、 と発散定理の式を答案に明記してから数値計算へ進む。フーリエ級数では、 が偶関数であるため となること、定数項が であること、最後に を代入して奇数項だけの級数を取り出すことを書くと、採点者に論理の流れが伝わる。
第2問 — 電磁気学
方針
前半は、磁束の時間変化から起電力を出し、オームの法則、ローレンツ力、運動方程式へ順に接続する。後半は円柱対称性を使い、場の向きを先に または に決めてから、ガウスの法則・アンペールの法則で大きさを求める。最後の発散と回転は、与えられた円柱座標公式に代入して確認する。
導体棒で効く磁場成分
起電力は磁束の時間変化で決まるため、レール面に垂直な磁場成分 を使う。ここで や を入れると、 の水平レールで最大、 の鉛直面でゼロという極限と合わない。
エネルギーでの検算
終端速度では 終端条件より なので となる。力のつり合いとエネルギー収支が一致している。
円柱座標の微分
の発散では だけではなく、必ず を使う。 の回転も同様に を微分する。座標系の単位ベクトルが場所で変わることが、この の因子として現れる。
マクスウェル方程式との対応
電荷がある内部で 、外部で となるのはガウスの法則そのものである。また定常電流のある内部で 、外部で となるのはアンペールの法則に対応する。境界 では場そのものは連続だが、設問の微分計算は内部・外部で分けて答える。
典型ミス
導体棒の問題では、力の向きを重力と同じ向きに取ってしまうミスが多い。誘導電流による力はレンツの法則により運動を妨げる向きなので、運動方程式では速度に比例する項に負号が付く。円柱問題では、外部領域の電場・磁場を内部式のまま に比例させる誤答が多い。外部では包む電荷量・電流量が一定になるため、どちらも 型になる。
試験で書くべきポイント
終端速度を求める答案では、 として力のつり合いから を出したことを明記する。円柱座標の小問では、内部と外部の範囲を場合分けし、 で場が連続になることを軽く確認しておくと、式の選択が正しいことを示せる。
第3問 — 統計物理学
方針
前半は、確率分布そのものを変数として自由エネルギーを最小化する問題である。規格化条件はラグランジュ未定乗数で入れ、相互作用がある場合は の中で を含む2項を落とさずに微分する。後半は、スピン縮退度 を含めたフェルミ波数を求め、 の内部エネルギー を各成分に適用する。
自由エネルギー最小化の形
エントロピーの微分で を落とさないことが重要である。 は最終的には規格化定数に吸収されるが、途中式で消してよいわけではない。
相互作用項の微分
を で微分すると、 から 、 から が出る。周期境界条件があるため端点でも同じ形で書ける。ここを片側の だけにすると、引力が左右両隣から働く効果を半分落とす。
引力相互作用の物理的意味
相互作用項は負であり、隣接する確率が同時に大きいほど自由エネルギーが下がる。これは分布を全体に平坦化する効果ではなく、ポテンシャル最小点の周辺に確率の重みを集める効果である。ただし相互作用が同じ位置ではなく隣接位置に働くため、「 だけが単調に増える」と断定するより、最小点近傍の隣接サイトを含む山が強くなる、と表現する方が正確である。
縮退度とフェルミ波数
スピン量子数 の縮退度は である。粒子数だけを見て系1と系2を比較すると誤る。系2では異なるスピン種は別成分なので、粒子数 の気体を2つ足し合わせる。特にスピン 成分は縮退度が大きく、同じ でもフェルミ波数が小さくなる。
熱容量比較の見方
低温で熱励起できるのはフェルミ面近傍だけである。系1と系3はフェルミエネルギーが同じだが、系1は粒子総数が2倍で、フェルミ面上の状態数も2倍になる。したがって低温定積熱容量は系1の方が大きい。
典型ミス
フェルミ気体では、粒子数 だけを見て系1の縮退度を忘れると がずれる。系2は2種類の粒子が混ざった1つのフェルミ海ではなく、スピン 成分とスピン 成分を別々に詰める。自由エネルギー最小化では、規格化定数に吸収される項を途中で勝手に捨てると、停留条件の導出としては不十分になる。
試験で書くべきポイント
相互作用ありの分布は明示解ではなく自己無撞着方程式でよい。答案では の右辺にも が残ることをはっきり書く。フェルミ気体の比較では、、、、 の順に並べると、どの縮退度をどこに使ったかが採点しやすい。
第4問 — 量子物理学
方針
前半は、交換子から期待値の運動方程式を導くエーレンフェストの定理である。自由粒子では とし、 から と の時間変化を求める。後半は、階段ポテンシャルの左右で波数が異なる平面波を接続し、確率流で保存則を確認する。
交換関係の示し方
は暗記でもよいが、試験答案では任意の関数に作用させて示すと符号ミスを防げる。 のマイナスを落とすと、後のエーレンフェストの式も逆符号になる。
期待値の時間微分
演算子が時間に陽に依存する場合は が追加される。この設問では「時間に陽に依存しない」とされているため、交換子の項だけでよい。導出ではハミルトニアンのエルミート性を使って左側に出る を移す点を書くと、式変形が正当化される。
自由粒子の検算
自由粒子では運動量が保存する。従って位置期待値は等速直線運動になる。初期波動関数が原点中心の実ガウス型であるため、平均位置も平均運動量もゼロであり、波束は広がっても中心は動かない。
確率流の係数
透過率は単に ではなく、速度の違いを含めて である。一方、反射側は入射側と同じ領域なので速度因子が同じで、 となる。
階段ポテンシャルの符号
左側が低いポテンシャルなので、同じ全エネルギー に対して左側の波数 は右側の より大きい。反射確率の条件で を得ると、 から となる。
典型ミス
期待値の時間微分では、 と の順序を入れ替えると符号が変わる。散乱問題では、透過確率を とだけ書く誤りが多い。右側と左側で波数、すなわち速度が違うため、透過流には の補正が必要である。
試験で書くべきポイント
ガウス波束の小問では、初期波動関数が実かつ偶関数であることから 、 と書けば十分である。階段ポテンシャルでは、境界で波動関数と微分が連続であること、確率保存を確率流で確認すること、反射確率 から正の根を選ぶことを答案に残す。