名古屋工業大学 院試 過去問 解答例
名工大 工学研究科 物理工学系 応用物理プログラム 応用物理 2024年度 院試 解答例・解説
名古屋工業大学 工学研究科 物理工学系 応用物理プログラム 応用物理 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 基礎物理数学
方針
前半は、対称行列 を一度作ると固有値問題と連立微分方程式が同じ構造で処理できる。 連立微分方程式では、差 と組合せ を直接作る方法で設問の前半を短く済ませ、 最後に固有ベクトル展開で3成分を復元するのが最も安定である。フーリエ解析では、 周期を先に決めてから直交性で係数を取り出す。
途中式
固有値は特性方程式だけでなく、対応する固有ベクトルの規格化まで書く。微分方程式では の展開が核心である。ここが書けていれば、各成分の三角関数は機械的に読める。
検算
得られた解は を満たし、微分すると も満たす。また は実際に になり、 は になる。 フーリエ係数は で実数になっており、実偶対称な波形に対応している。
典型ミス
行列 を行ベクトルで作ると固有ベクトルの対応がずれる。今回は対称行列なので固有値は同じだが、 微分方程式の展開で混乱しやすい。また の周期を としてしまうと、 基本角周波数を と誤り、係数の添字が全てずれる。
試験で書くべきポイント
固有値は大きい順に番号を付け、固有ベクトルは大きさ1であることを明記する。 連立微分方程式では「固有値 のモードは 」と書くと、 角周波数が になる理由が伝わる。フーリエ変換では収束因子 により の積分が収束することを意識して、指数の実部を正に保って計算する。
第2問 — 電磁気学
方針
前半は鏡像法で「金属板の代わりに鏡像電荷を置く」問題である。実電荷同士の相互作用ではなく、 鏡像電荷が作るポテンシャルに実電荷を置いたときのエネルギーを計算する。後半はファラデーの法則 を使う。ループを傾けたときは、磁場の法線成分と、波の位相に入る 座標の射影を同時に処理する。
途中式
静電エネルギーでは まで整理してから で展開する。この形にすると1次の項が相殺されることが見えやすい。 誘導起電力では、最初に磁束 を書く。起電力だけを直接書くより符号を確認しやすい。
検算
では双極子モーメント が消えるので、近似した も0に近づく。 また で が小さいほど低いことから、力は金属板へ近づく向きである。 ループの式では を代入すると傾ける前の結果に戻る。 では の最大起電力が0になり、波の磁束変化をほとんど拾わない配置になる。
典型ミス
鏡像電荷の符号を逆にすると、ポテンシャルの符号とエネルギーの符号が同時に崩れる。 また、静電エネルギーに実電荷 同士の相互作用を足すと、この設問で求める量とずれる。 誘導起電力では、ループを傾けたときの を二重に掛けないことが重要である。 磁束積分では法線成分の と積分変数変換の が打ち消し合う。
試験で書くべきポイント
ポテンシャルの基準が無限遠であること、正向きの回路に対する面の向きを明記する。 誘導起電力の符号は、磁束の正方向と回路の正方向を結びつけて決まるため、 「反時計回りを正、面法線は 」のような一言があると答案の信頼性が上がる。 最後の近似では による1次近似であることを書き、最大値は絶対値の最大として示す。
第3問 — 統計物理学
方針
前半は相互作用のない2準位系なので、1分子分配関数 を作ってから とする。熱力学量は でまとめて出せる。後半は周期境界条件の自由粒子問題であり、フェルミ粒子だけが フェルミ球を作る点を押さえる。
途中式
2準位系では低い準位のボルツマン因子が になる。 この符号を正しく置けば、内部エネルギー がすぐに得られる。フェルミ波数では の左辺が「フェルミ粒子数」、先頭の2が「スピン縮退」であることを分けて書く。
検算
高温極限では2つの準位が等確率になるため、1分子あたりの平均エネルギーは である。これは と一致する。 またエントロピーは1分子あたり2状態の情報量 になり、 と一致する。 自由粒子系では のフェルミ部分は とも書けるので、 と同じか確認できる。
典型ミス
低い準位のエネルギーが であることを見落とし、ボルツマン因子を とする誤りが多い。 この場合、低温で低い準位の占有確率が小さくなるため物理的に不自然である。 混合系では、ボース粒子にもフェルミ球を作ってしまう、またはフェルミ粒子数を として を出してしまうのが典型的な失点である。
試験で書くべきポイント
圧力の符号判定では を明示し、 だから の符号だけを見ればよいと書く。 周期境界条件では が許されることを必ず書く。固定端条件と混同して 最小波数を にすると、ボース粒子の基底エネルギーまで誤る。
第4問 — 量子物理学
方針
前半は「非負なノルム」を出発点にする。まず内積の正値性を示し、エルミート演算子の期待値が 実数であることを確認する。その上で、実数 を含む状態 のノルムを 2次式にして、判別式から不確定性関係を出す。後半は球対称性により角度部分を球面調和関数で 処理し、最後は縮退部分空間で摂動行列を対角化する。
途中式
不確定性関係では が最重要である。ここで , と書くと、 交換子の定数部分が消えることも明確になる。 縮退摂動論では、摂動行列 を明示してから固有値を求める。
検算
の期待値は純虚数であるため、 は実数になる。したがって を 実数係数の2次式として扱ってよい。位置と運動量では となり、標準的な下限に戻る。摂動行列のトレースは0なので、エネルギーシフト の和も0であり、行列の検算になる。
典型ミス
が実数であることと、 が純虚数であることを混同しやすい。 交換子そのものはエルミートではなく反エルミートである。動径方程式では を単純に としてしまうと、 に対する方程式ではなくなる。 また、縮退している3状態を個別の期待値だけで扱うと、 と の混合を見落とす。
試験で書くべきポイント
不確定性関係の証明では、判別式を使うために が実数であること、また が全ての で成り立つことを書く。 球対称ポテンシャルでは、エネルギーが に依存しないため 重縮退する、 という構造を説明してから摂動に入ると、なぜ3次元行列を対角化するのかが明確になる。