東北大学 院試 過去問 解答例
東北大 理学研究科 物理学専攻 物理学(基礎数学・力学・電磁気学・量子力学・熱統計力学) 2025年度 院試 解答例・解説
東北大学 理学研究科 物理学専攻 物理学(基礎数学・力学・電磁気学・量子力学・熱統計力学) 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 問題1 基礎数学
方針
[1] は対称行列なので をユニタリにとれ、関数計算は 。 [2] は単位円上の有理関数積分の標準形で、 の極だけ拾う。 [3] は球対称ポテンシャルからの勾配が であることに気付くと面積分は形式的。 [4] はパーセバルの等式の典型例。
典型ミス
[1]3) で を取り違える。 [2] で の極 を含めてしまう。 [3] でガウスの定理を使うとき、点電荷型の 関数寄与を忘れて と答える誤りがあるが、本問は面積分を直接計算する設問である。 [4]3) では の定義(係数 付き)を取り違えると にならない。
試験で書くべきポイント
固有ベクトル規格化条件(第 1 成分が正の実数)の確認、複素積分での被積分関数の極の位置と留数、面積分での法線ベクトルの選び方、フーリエ係数の偶奇性に基づく省略を明示すること。
第2問 — 問題2 力学
方針
2 質点ばね問題は重心と相対座標に分離するのが定石。換算質量は 。 リング上の運動はラグランジアン形式が最短。回転に伴う遠心ポテンシャルが に比例する負の寄与として現れる点が要。
典型ミス
[1]1d) で換算質量を や にすると が誤る。 [1]2) で角運動量を実験室系と重心系で混同しない。原点まわりでも値は同じ () だが、重心系で計算するほうが安全。 [2]4) で の符号を間違えやすい。 の中で運動エネルギー部分の 項を に移すとき符号反転に注意。 [2]6) は単純なエネルギー保存。出発点である が極小であることを確認すること。
試験で書くべきポイント
重心の等速直線運動、相対座標の単振動、初期条件からの と の組合せ。 リング問題では「角速度一定の拘束=回転座標系」と見て遠心ポテンシャルを書き下すこと。 の極大・極小の位置と値を明示し、保存則からの不等式を導くこと。
第3問 — 問題3 電磁気学
方針
[1]1) 円筒対称+ガウスの法則で電場、 で電位(基準は円柱側面)。 [1]2) 接地平面の鏡像は at 。表面電荷密度は 、誘導総電荷は像電荷と一致するのが鏡像法の要諦。 [2]1) ビオ・サバール則は対称軸上で初等。 成分のみが残ることを書く。 [2]2) ソレノイド軸上の積分で が出る。軸外も対称性 アンペール則で同じ値。 [2]3) ファラデー則は円形 Amp\`erean ループで領域別に評価する。
典型ミス
[1]1c) で電位の基準を「無限遠」と取ると、 で発散して定義不能。問題文の「円柱側面」基準を守ること。 [1]2d) で の符号を取り違えると総電荷が になる。鏡像が なら誘導電荷は 。 [2]2) ソレノイド外部の磁場をゼロと言うには「無限遠でゼロ+対称性」の議論が要る。実用上は与件として書く。 [2]3b) 領域別の誘導電場で、 のときの磁束は ではなく 。
試験で書くべきポイント
ガウス則・アンペール則・ファラデー則を適用する閉曲面(閉曲線)の選び方を明示。 鏡像法では「像電荷の位置と符号」「電位の基準」「導体は接地」を冒頭で宣言する。 誘導電場は領域別に解を分ける必要があることを書き分ける。
第4問 — 問題4 量子力学
方針
[1] は調和振動子代数の典型問題。生成消滅演算子の交換関係 と を礎に、 から基底状態を解析的に求める。電場印加は平方完成で平衡シフト と零点定数。 [2] は角運動量合成の典型。 への展開を Clebsch--Gordan 係数なしで で構成する流れ。
典型ミス
[1]4) で規格化定数を と書く誤り(実際は )。 [1]5) で から零点エネルギー を落とす誤り。 [2]4) で を直接展開すると面倒。(または )を使うのが正解。 [2]5) で の規格化を求めずに 固有値だけを問うているので、係数比のみ正確に書けば十分。
試験で書くべきポイント
昇降演算子の作用結果を使って を具体的に書き下し、 から固有値が保たれることを述べる。 軌道のスピン軌道分裂では (, 4 重)と (, 2 重)の縮退度を必ず明示し、エネルギー分裂幅 を結論に含める。
第5問 — 問題5 熱・統計力学
方針
[1] エントロピーは状態量。経路によらず は始終状態だけで決まる。等温なら 、断熱可逆なら 0、定積なら 。 [2] 1 個の振動子の Bose 分布から出発し、状態密度 で重ね合わせるのが Debye 流。低温極限では積分上端を に伸ばす近似が肝。
典型ミス
[1]1d) で過程 B のエントロピー変化を「断熱だから 0」と早合点する誤り。13 は 0 だが 32 は定積過熱で 寄与あり。和を取る必要あり。 [1]2) 自由膨張で「断熱だから 」とする誤り。自由膨張は不可逆過程なので でも 。 [2]3b) 低温極限で指数関数 を残す省略をしないこと。これが Einstein 模型と Debye 模型を区別する。 [2]4a) Debye 関数の積分公式 を使うこと。
試験で書くべきポイント
状態方程式・第一法則・断熱条件 const. の導出、エントロピー保存の経路独立性。 高温極限で熱容量が (1振動子あたり 1 自由度の等分配)に飽和することを古典極限の言明として書く。 Debye 模型の特徴(低温 、高温 、特性温度 )を概形図に注釈すること。