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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 理学研究科 物理学専攻 物理学(基礎数学・力学・電磁気学・量子力学・熱統計力学) 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・留数定理)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・調和振動子・留数定理。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:東北大学 理学研究科 物理学専攻 物理学(基礎数学・力学・電磁気学・量子力学・熱統計力学)(¥3,200・紙面見本あり)

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東北大 物理学(基礎数学・力学・電磁気学・量子力学・熱統計力学) 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

大問主題解説の小見出し最終答
第1問問題1 基礎数学—あり
第2問問題2 力学—あり
第3問問題3 電磁気学—あり
第4問問題4 量子力学—あり
第5問問題5 熱・統計力学—あり

この年度の解説には試験で書くべきポイント5件・典型ミス5件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に6テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5問
2023年度で新しく出たテーマ
井戸型ポテンシャル
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第1問 — 問題1 基礎数学

方針

線形代数の固有値分解で x¨=Ax\ddot{\boldsymbol x}=A\boldsymbol x を独立な 1 次元方程式に直す。Fourier 級数は偶関数なので bn=0b_{n}=0 がすぐ言えて計算量が半分になる。∑1/(2n−1)4\sum 1/(2n-1)^{4} は Parseval 一発。熱方程式の Neumann 境界では n=0n=0(定数項)を忘れない。複素積分は扇形を回るとき 1−eiπ/3=e−iπ/31-e^{i\pi/3}=e^{-i\pi/3} という整理を覚えておくと符号で迷わない。

典型ミス

固有値が異符号なので λ2=1\lambda_{2}=1 側は三角関数ではなく双曲線関数で展開する。Parseval で a02/2a_{0}^{2}/2 の係数を間違えやすい。熱方程式の解で sin⁡2=(1−cos⁡2θ)/2\sin^{2}=(1-\cos 2\theta)/2 の倍角公式を使わず誤った Fourier 展開を始めると沼る。

試験で書くべきポイント

留数定理を使う際は「扇形内の極は eiπ/6e^{i\pi/6} のみ」と明言し、円弧の寄与が R−5R^{-5} で消えることに一言触れる。最終結果が実数になることを確認すれば計算ミスをチェックできる。

解答

[1]\,1) 特性方程式は det⁡(A−λI)=(2−λ)(−2−λ)+3=λ2−1=0\det(A-\lambda I)=(2-\lambda)(-2-\lambda)+3=\lambda^{2}-1=0 より λ1=−1,λ2=1. \lambda_{1}=-1,\qquad \lambda_{2}=1. λ1=−1\lambda_{1}=-1 について (A+I)u=0(A+I)\boldsymbol u=0 を解いて u1=(1,−1)⊤\boldsymbol u_{1}=(1,-1)^{\top}。 λ2=1\lambda_{2}=1 について u2=(3,−1)⊤\boldsymbol u_{2}=(3,-1)^{\top}。

[1]\,2) x(0)=(1,3)⊤\boldsymbol x(0)=(1,3)^{\top} を αu1+βu2\alpha\boldsymbol u_{1}+\beta\boldsymbol u_{2} と分解すると α+3β=1,−α−β=3 ⇒ α=−5, β=2. \alpha+3\beta=1,\quad -\alpha-\beta=3\ \Rightarrow\ \alpha=-5,\ \beta=2. x¨=Ax\ddot{\boldsymbol x}=A\boldsymbol x を ui\boldsymbol u_{i} 方向に射影すると c¨i=λici\ddot c_{i}=\lambda_{i}c_{i}。 λ1=−1\lambda_{1}=-1 成分は cos⁡t,sin⁡t\cos t,\sin t、λ2=1\lambda_{2}=1 成分は cosh⁡t,sinh⁡t\cosh t,\sinh t で展開できる。 x˙(0)=0\dot{\boldsymbol x}(0)=0 より sin⁡,sinh⁡\sin,\sinh 成分は消えて x(t)=−5cos⁡t u1+2cosh⁡t u2. \boldsymbol x(t)=-5\cos t\,\boldsymbol u_{1}+2\cosh t\,\boldsymbol u_{2}. よって x1(t)=−5cos⁡t+6cosh⁡t,x2(t)=5cos⁡t−2cosh⁡t. x_{1}(t)=-5\cos t+6\cosh t,\qquad x_{2}(t)=5\cos t-2\cosh t.

[2]\,1) 偶関数なので bn=0b_{n}=0。 a0=1π∫−ππ∣x∣ dx,an=1π∫−ππ∣x∣cos⁡(nx) dx,bn=1π∫−ππ∣x∣sin⁡(nx) dx. a_{0}=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|x|\,dx,\quad a_{n}=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|x|\cos(nx)\,dx,\quad b_{n}=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|x|\sin(nx)\,dx.

[2]\,2) a0=2π∫0πx dx=πa_{0}=\dfrac{2}{\pi}\int_{0}^{\pi}x\,dx=\pi。 an=2π∫0πxcos⁡(nx) dx=2π ⁣[xsin⁡nxn+cos⁡nxn2]0π=2((−1)n−1)πn2. a_{n}=\frac{2}{\pi}\int_{0}^{\pi}x\cos(nx)\,dx =\frac{2}{\pi}\!\left[\frac{x\sin nx}{n}+\frac{\cos nx}{n^{2}}\right]_{0}^{\pi} =\frac{2\bigl((-1)^{n}-1\bigr)}{\pi n^{2}}. すなわち an=−4πn2a_{n}=-\dfrac{4}{\pi n^{2}}(nn 奇数),an=0a_{n}=0(nn 偶数)。

[2]\,3) Parseval の等式 1π∫−ππf(x)2dx=a022+∑n=1∞(an2+bn2)\displaystyle\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)^{2}dx=\frac{a_{0}^{2}}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_{n}^{2}+b_{n}^{2}) に代入する。左辺は 1π⋅2π33=2π23\dfrac{1}{\pi}\cdot\dfrac{2\pi^{3}}{3}=\dfrac{2\pi^{2}}{3}。 2π23=π22+16π2∑n=1∞1(2n−1)4 ⟹ ∑n=1∞1(2n−1)4=π496. \frac{2\pi^{2}}{3}=\frac{\pi^{2}}{2}+\frac{16}{\pi^{2}}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(2n-1)^{4}} \ \Longrightarrow\ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(2n-1)^{4}}=\frac{\pi^{4}}{96}.

[3]\,1) u=X(x)T(t)u=X(x)T(t) より T′/T=X′′/X=−k2T'/T=X''/X=-k^{2}(負分離定数)。 X′(0)=X′(L)=0X'(0)=X'(L)=0 から Xn(x)=cos⁡(nπx/L)X_{n}(x)=\cos(n\pi x/L)(n=0,1,2,…n=0,1,2,\dots)、Tn(t)=exp⁡(−(nπ/L)2t)T_{n}(t)=\exp(-(n\pi/L)^{2}t)。一般解は u(x,t)=∑n=0∞Ancos⁡ ⁣(nπxL)exp⁡ ⁣(−n2π2L2t). u(x,t)=\sum_{n=0}^{\infty}A_{n}\cos\!\left(\frac{n\pi x}{L}\right)\exp\!\left(-\frac{n^{2}\pi^{2}}{L^{2}}t\right).

[3]\,2) sin⁡2(πx/L)=1−cos⁡(2πx/L)2\sin^{2}(\pi x/L)=\dfrac{1-\cos(2\pi x/L)}{2} なので A0=12A_{0}=\tfrac{1}{2}、A2=−12A_{2}=-\tfrac{1}{2}、他はゼロ。 u(x,t)=12−12cos⁡ ⁣(2πxL)exp⁡ ⁣(−4π2L2t). u(x,t)=\tfrac{1}{2}-\tfrac{1}{2}\cos\!\left(\tfrac{2\pi x}{L}\right)\exp\!\left(-\tfrac{4\pi^{2}}{L^{2}}t\right).

[4] 被積分関数 1/(z6+1)1/(z^{6}+1) の極のうち扇形 CC の内部にあるのは z0=eiπ/6z_{0}=e^{i\pi/6} のみ。留数は Res⁡z=z0 ⁣1z6+1=16z05=e−i5π/66. \operatorname{Res}_{z=z_{0}}\!\frac{1}{z^{6}+1}=\frac{1}{6z_{0}^{5}}=\frac{e^{-i5\pi/6}}{6}. R→∞R\to\infty で円弧の寄与は消え、実軸上の積分 II と帰路(z=reiπ/3z=re^{i\pi/3})の寄与 −eiπ/3I-e^{i\pi/3}I を合わせて (1−eiπ/3)I=2πi⋅e−i5π/66=πi e−i5π/63. (1-e^{i\pi/3})I=2\pi i\cdot\frac{e^{-i5\pi/6}}{6}=\frac{\pi i\,e^{-i5\pi/6}}{3}. 1−eiπ/3=e−iπ/3⋅(eiπ/3⋅0+⋯ )1-e^{i\pi/3}=e^{-i\pi/3}\cdot(e^{i\pi/3}\cdot 0 + \cdots) を直接書き下ろすより 1−eiπ/3=12−32i=e−iπ/31-e^{i\pi/3}=\tfrac{1}{2}-\tfrac{\sqrt{3}}{2}i=e^{-i\pi/3} としてから I=πi3⋅e−i5π/6e−iπ/3=πi3 e−iπ/2=π3. I=\frac{\pi i}{3}\cdot\frac{e^{-i5\pi/6}}{e^{-i\pi/3}}=\frac{\pi i}{3}\,e^{-i\pi/2}=\frac{\pi}{3}.

最終答

% [1]\,1) λ1=−1,u1=(1,−1)⊤\lambda_{1}=-1,\boldsymbol u_{1}=(1,-1)^{\top}、λ2=1,u2=(3,−1)⊤\lambda_{2}=1,\boldsymbol u_{2}=(3,-1)^{\top}。 2) x1=−5cos⁡t+6cosh⁡tx_{1}=-5\cos t+6\cosh t、x2=5cos⁡t−2cosh⁡tx_{2}=5\cos t-2\cosh t。 [2] a0=πa_{0}=\pi、an=−4/(πn2)a_{n}=-4/(\pi n^{2})(奇数)他 0、bn=0b_{n}=0。∑1/(2n−1)4=π4/96\sum 1/(2n-1)^{4}=\pi^{4}/96。 [3] u=12−12cos⁡(2πx/L)e−4π2t/L2u=\tfrac12-\tfrac12\cos(2\pi x/L)e^{-4\pi^{2}t/L^{2}}。 [4] I=π/3I=\pi/3.

第2問 — 問題2 力学

方針

[1] サイクロイド単振り子は s=4asin⁡(θ/2)s=4a\sin(\theta/2) を取れば、振幅によらず単振動になる(等時性)。Lagrangian に直接 ss で書き、yy も ss の二次式で表せることを見抜く。[2] 「内側を転がる剛体球」は転がり拘束 (R−r)ϕ˙=∓rχ˙(R-r)\dot\phi=\mp r\dot\chi と慣性モーメント 25mr2\tfrac{2}{5}mr^{2} で支配される標準問題。

典型ミス

[1] 5) 衝突点を θ\theta 平均から推測すると間違える。ss は時間の cos に比例して原点を同時に通過するのが正しい描像。[2] エネルギー保存で並進と回転の両方を入れ忘れて v=2g(R−r)(1−cos⁡ϕ0)v=\sqrt{2g(R-r)(1-\cos\phi_{0})} としてしまうミスが多い。係数 7/107/10 は剛体球の特徴。

試験で書くべきポイント

[2] 4)\,b) は「はなした瞬間は ϕ˙=0\dot\phi=0 なので向心力ゼロ、法線方向は単純な力の釣り合い」と明記。摩擦比の最大値は 27tan⁡ϕ0\tfrac{2}{7}\tan\phi_{0} で求まり、tan⁡α=7μ/2\tan\alpha=7\mu/2 に到達するロジックを書くと点が安定する。

問題2 力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 問題3 電磁気学

方針

[1] 球内部の電場が中心からの距離に比例することを使えば、点電荷 −Q-Q の振る舞いは「ばね定数 Q2/(4πε0R3)Q^{2}/(4\pi\varepsilon_{0}R^{3}) の調和振動子」と同じ。導体球殻問題は「内部の Gauss 面で総電荷ゼロ → 全ての面の総和ゼロ → 外側ゼロ」の三段論法で説明する。[2] 一様磁場中の閉回路は力 0、トルクは m×B\boldsymbol m\times\boldsymbol B。磁気双極子の遠方近似は Φ∝1/d3\Phi\propto 1/d^{3}、相対変位を入れ替えるだけで運動の問題に拡張できる。

典型ミス

[1]\,4) ポテンシャルの双極子展開で帯電球からの 1/r1/r 項を引き忘れる。[1]\,5) は「帯電球と点電荷の電場が外側に出ないか?」と迷うが、Q+(−Q)=0Q+(-Q)=0 なので Gauss 面で必ずゼロになる点を強調すれば十分。[2]\,3)\,b) は Φ\Phi の符号を C1C_{1} の通過後にどう扱うかが分岐点。∣zr∣−3|z_{r}|^{-3} を採用すると t>d/v0t>d/v_{0} でも結果が滑らかになる。

試験で書くべきポイント

導体遮蔽の問題は「導体内部 E=0\boldsymbol E=0 から内側面電荷が定まる、総電荷保存から外側面電荷が定まる」の論理を必ず文章で書く。電磁誘導は「変位 v0tv_{0}t を磁束に代入してから時間微分」の順序を守ると符号誤りが減る。

問題3 電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 問題4 量子力学

方針

[1] 演算子法で進めれば En=ℏω(n+12)E_{n}=\hbar\omega(n+\tfrac12) と ⟨n∣x∣n+1⟩=ℏ(n+1)/(2mω)\langle n|x|n+1\rangle=\sqrt{\hbar(n+1)/(2m\omega)} がただちに使え、⟨x⟩=ℏ/(2mω)cos⁡ωt\langle x\rangle=\sqrt{\hbar/(2m\omega)}\cos\omega t が即座に書ける。CC は ∥a†φ0∥=1\Vert a^{\dagger}\varphi_{0}\Vert=1 から自動的に 1。[2] 動径方程式は標準形へ整理してから解く。(ℓ,m)=(0,0)(\ell,m)=(0,0) は 1 次元無限井戸の境界条件問題と等価。

典型ミス

[1]\,5) で C=ℏ/(2mω)C=\sqrt{\hbar/(2m\omega)} などと答えがちだが、a†∣n⟩=n+1∣n+1⟩a^{\dagger}|n\rangle=\sqrt{n+1}|n+1\rangle の Bose 因子で打ち消されて C=1C=1。[2] 動径方程式で χ=rR\chi=rR と置く際、原点での境界条件 χ(0)=0\chi(0)=0(波動関数の有界性)を忘れずに書く。摂動項は p ⁣⋅ ⁣A+A ⁣⋅ ⁣p\boldsymbol p\!\cdot\!\boldsymbol A+\boldsymbol A\!\cdot\!\boldsymbol p をクーロンゲージ ∇ ⁣⋅ ⁣A=0\nabla\!\cdot\!\boldsymbol A=0 で簡略化できる。

試験で書くべきポイント

Zeeman 分裂の理由は「中心力ポテンシャルでは [H0,Lz]=0[H_{0},L_{z}]=0 なので LzL_{z} 固有状態は良い量子数」と述べ、「縮退が摂動 −eBLz/(2μ)-eBL_{z}/(2\mu) により ℏm\hbar m に比例する一次補正で解ける」と書く。期待値 ⟨x⟩\langle x\rangle は厳密解(時間振動)まで提示すると差がつく。

問題4 量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 問題5 熱・統計力学

方針

[1] Joule--Thomson 過程は「断熱・両端定圧 → 仕事の総和は P1V1−P2V2P_{1}V_{1}-P_{2}V_{2}」が出発点。Maxwell 関係式は G(T,P)G(T,P) の交換可能性で機械的に得られる。van der Waals 気体は近似展開された状態方程式を直接 TT で偏微分するだけ。[2] グランド分配関数が Ξ=exp⁡(zeμ/kBT)\Xi=\exp(ze^{\mu/k_{B}T}) となるのは古典理想気体の特徴。重力中では z→z(y)z\to z(y) の置き換えと「化学ポテンシャル一定」の条件から各高さの圧力・密度が得られる。

典型ミス

μJT\mu_{\text{JT}} の符号で「冷却 = μJT>0\mu_{\text{JT}}>0」を逆にすると 4)\,c) の図が反転する。逆転温度 Ti=2a/(Rb)T_{i}=2a/(Rb) も覚えておくと検算になる。uˉ=kBT\bar u=k_{B}T はエネルギー等分配(自由度 1)と一致する点を確認できる。

試験で書くべきポイント

ΔH=0\Delta H=0 の証明では「左ピストン+右ピストンの仕事と内部エネルギー変化を全部書く」と紛れがない。[2] では「化学ポテンシャル μ\mu が高さによらないため、各 Λ\Lambda を独立な大正準集合と見なせる」を一文書くと採点者に方針が伝わる。

問題5 熱・統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 物理学(基礎数学・力学・電磁気学・量子力学・熱統計力学) 院試 過去問の収録6年度