東京大学 院試 過去問 解答例
東大 情報理工学系研究科 数理情報学専攻 数理情報学 2021年度 院試 解答例・解説
東京大学 情報理工学系研究科 数理情報学専攻 数理情報学 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全3問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 基礎概念:凸最適化と双対性
方針
この種の基礎概念説明では、定義だけを並べると教科書の要約になり、応用例だけを書くと論理が弱くなる。 上の答案では、凸性、双対性、KKT 条件、アルゴリズム、応用上の解釈を順に結びつけた。
答案で落としやすい点
弱双対性の符号を誤る答案が多い。制約が で乗数が なら、 実行可能点では である。従ってラグランジュ関数は 主目的関数以下になり、双対関数は最適値の下界を与える。 この符号関係を書かないと、双対問題の意味が曖昧になる。
検算
相補性条件を資源配分で考えると、使い切っていない資源の価格は零である。 逆に制約が効いている資源だけ価格が付く。この直観と数式が一致しているかを確認すると、 KKT 条件の符号や添字の誤りに気づきやすい。
第2問 — 研究計画:分布ロバスト学習
方針
研究計画型の答案では、流行語を並べるよりも、何を入力し、何を最適化し、どの指標で検証するかを 明示することが重要である。この答案では、分布シフトという問題設定を、予測、最適化、評価指標の 三つに分解した。
採点上の注意
「ロバストな機械学習を研究する」とだけ書くと、既存研究との差分が見えない。 本答案のように、通常の経験リスク最小化では何が不足するか、分布集合をどう作るか、 双対表現でなぜ計算可能になるか、意思決定損失をどう測るかを書くと、数理情報学の研究計画として 読みやすくなる。
典型ミス
予測精度だけを評価指標にすると、安全な意思決定という目的とずれる。 また、分布集合の半径 を大きくしすぎると過度に保守的になり、小さすぎると分布シフトに 耐えられない。検証環境で半径と損失設計を調整する、という実験計画まで書くと説得力が増す。
第3問 — 社会課題論述:感染症対策
方針
社会課題論述では、一般的な感想ではなく、数理モデル、推定、最適化、検証へ分解すると答案が強くなる。 感染症の場合、SIR 型モデルだけで終わらせず、観測の不完全性、介入の制約、政策効果の識別まで書くと、 数理情報学としての貢献が明確になる。
採点上の注意
再生産数を示すだけでは不十分である。実際の意思決定では、検査数の変化や報告遅れを補正し、 不確実性つきで推定し、さらに限られた資源をどう配分するかまで考える必要がある。 数式は、現象を単純化しすぎるためではなく、仮定と制約を明示するために使う。
典型ミス
「データを集めて機械学習で予測する」とだけ書くと、政策判断への接続が弱い。 どの状態が観測できず、どの介入変数を動かせて、何を最小化し、どの制約を守るのかを明示する。 また、感染症対策では精度だけを追うとプライバシーや公平性を損なう可能性があるため、 モデルの社会的制約まで含めて論じることが重要である。