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筑波大学 院試 過去問 解答例

筑波大 数理物質科学研究群 物理学学位プログラム 物理 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは9件(固有値・固有ベクトル・留数定理・調和振動子)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・留数定理・剛体の回転運動。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

筑波大 物理 2025年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—物理数学—あり
第2問力学—連成振動の見方あり
第3問量子力学—不連続条件の意味あり
第4問電磁気学・回路電磁気学伝搬波の係数 / TEM モードの意味あり
第5問熱・統計力学熱統計力学古典と量子の接続あり

この年度の解説には検算5件・典型ミス4件・試験で書くべきポイント1件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に9テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
2024年度のページを見る

第1問 — 物理数学

方針

小問集合では、短時間で確実に得点できる問題を選ぶのが基本である。行列、定数係数微分方程式、 フーリエ変換、球対称ベクトル場、留数計算は標準手順をそのまま使える。選択式の実戦では、 計算量の少ない問2--問8を先に処理し、複素積分の問9、問10は時間に応じて選ぶとよい。

典型ミス

問1では、回転後の点を回転前へ戻して元の式に代入する。回転行列の向きを逆にすると符号が反対になる。 問2では、三角行列だから対角成分だけでほぼ決まるが、非対角成分が自動的に消えることまで確認する。 問7ではフーリエ変換の規格化 1/2π1/\sqrt{2\pi} を落としやすい。 問8では r=0r=0 を除く条件があるため、デルタ関数的な寄与は考えない。

検算

問4の解 10xe5x10xe^{5x} は x=0x=0 で値が 00、微分が 1010 になる。問7の答は ω=0\omega=0 で F(0)=2/π/aF(0)=\sqrt{2/\pi}/a となり、これは 1/2π1/\sqrt{2\pi} 倍の面積 2/a2/a と一致する。 問9の被積分関数は偶関数で正なので、答が正になることも留数計算の符号確認に使える。

試験で書くべきポイント

複素積分では、どの極が輪郭内部にあるか、各留数、円弧の寄与が消える理由を最低限書く。 問10では原点を避ける小半円の向きが時計回りであるため −iπ-i\pi が出る。この符号を書かずに 結論だけ出すと、主値積分の導出としては弱い答案になる。

解答

第I問は5問選択形式であるが、確認用に10問すべてを解く。

  1. 回転後の座標をあらためて (x,y)(x,y) と書く。回転前の座標を (X,Y)(X,Y) とすると、 反時計回りに θ=π/6\theta=\pi/6 回転した後は (xy)=(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ)(XY). \begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta&-\sin\theta\\ \sin\theta&\cos\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix}X\\Y\end{pmatrix}. したがって X=xcos⁡θ+ysin⁡θ,Y=−xsin⁡θ+ycos⁡θ. X=x\cos\theta+y\sin\theta,\qquad Y=-x\sin\theta+y\cos\theta . 回転前に Y=X2Y=X^2 であったから −x2+3 y2=(3 x+y2)2. -\frac{x}{2}+\frac{\sqrt3\,y}{2} =\left(\frac{\sqrt3\,x+y}{2}\right)^2 . すなわち (3 x+y)2+2x−23 y=0. (\sqrt3\,x+y)^2+2x-2\sqrt3\,y=0 .
  2. A=(1a+b003b000ab) A= \begin{pmatrix} 1&a+b&0\\ 0&3b&0\\ 0&0&ab \end{pmatrix} は上三角行列である。A2=IA^2=I なら対角成分から 12=1,(3b)2=1,(ab)2=1 1^2=1,\qquad (3b)^2=1,\qquad (ab)^2=1 である。b<0b<0 より b=−1/3b=-1/3、また a>0a>0 より ab=−1,a=3. ab=-1,\qquad a=3 . このとき (1,2)(1,2) 成分は (a+b)(1+3b) (a+b)(1+3b) であり、b=−1/3b=-1/3 なので確かに 00 になる。よって a=3,b=−13. a=3,\qquad b=-\frac13 .
  3. A=(101010101) A= \begin{pmatrix} 1&0&1\\ 0&1&0\\ 1&0&1 \end{pmatrix} では、yy 成分の方向 (0,1,0)T(0,1,0)^T は固有値 11 をもつ。残りの xx-zz 平面では (1111) \begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix} を考えればよいので、固有値は 2,02,0 である。したがって固有値は 0,1,2. 0,\quad 1,\quad 2 .
  4. 特性方程式は λ2−10λ+25=(λ−5)2=0 \lambda^2-10\lambda+25=(\lambda-5)^2=0 であるから y(x)=(C1+C2x)e5x. y(x)=(C_1+C_2x)e^{5x}. y(0)=0y(0)=0 より C1=0C_1=0。さらに y′(x)=C2(1+5x)e5x y'(x)=C_2(1+5x)e^{5x} なので、y′(0)=10y'(0)=10 から C2=10C_2=10。したがって y(x)=10xe5x. y(x)=10xe^{5x}.
  5. 斉次方程式の解は yh=C1cos⁡2x+C2sin⁡2x. y_h=C_1\cos 2x+C_2\sin 2x . 右辺が sin⁡x\sin x なので、特殊解を yp=Asin⁡xy_p=A\sin x とおくと yp′′+4yp=(−A+4A)sin⁡x=3Asin⁡x. y_p''+4y_p=(-A+4A)\sin x=3A\sin x . よって A=1/3A=1/3。一般解は y(x)=C1cos⁡2x+C2sin⁡2x+13sin⁡x. y(x)=C_1\cos 2x+C_2\sin 2x+\frac13\sin x .
  6. z=x+iyz=x+iy とおくと ez=ex(cos⁡y+isin⁡y)=10i. e^z=e^x(\cos y+i\sin y)=10i . 絶対値から ex=10e^x=10、偏角から y=π2+2πn(n∈Z) y=\frac{\pi}{2}+2\pi n\qquad(n\in\mathbb{Z}) である。したがって z=ln⁡10+i(π2+2πn)(n∈Z). z=\ln 10+i\left(\frac{\pi}{2}+2\pi n\right)\qquad(n\in\mathbb{Z}).
  7. 定義に従うと F(ω)=12π∫−∞∞e−a∣x∣e−iωx dx. F(\omega)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-a|x|}e^{-i\omega x}\,dx . 偶関数性を用いれば虚部は消え、 ∫−∞∞e−a∣x∣e−iωx dx=2∫0∞e−axcos⁡ωx dx=2aa2+ω2. \int_{-\infty}^{\infty}e^{-a|x|}e^{-i\omega x}\,dx =2\int_0^\infty e^{-ax}\cos\omega x\,dx =\frac{2a}{a^2+\omega^2}. したがって F(ω)=2πaa2+ω2(a>0). F(\omega)=\sqrt{\frac{2}{\pi}}\frac{a}{a^2+\omega^2}\qquad(a>0).
  8. r=(x,y,z)\boldsymbol{r}=(x,y,z)、r=∣r∣r=|\boldsymbol{r}| とする。r≠0r\ne0 で ∇⋅(rrn)=3r−n+r⋅∇r−n=3r−n−nr−n=(3−n)r−n. \nabla\cdot\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r^n}\right) =3r^{-n}+\boldsymbol{r}\cdot\nabla r^{-n} =3r^{-n}-nr^{-n} =(3-n)r^{-n}. よって ∇⋅(rr3+rr5)=0−2r5=−2r5. \nabla\cdot\left(\frac{\boldsymbol{r}}{r^3} +\frac{\boldsymbol{r}}{r^5}\right) =0-\frac{2}{r^5} =-\frac{2}{r^5}.
  9. 上半平面の半円を用いる。被積分関数 f(z)=z2z4+1 f(z)=\frac{z^2}{z^4+1} の上半平面内の極は z1=eiπ/4,z2=ei3π/4. z_1=e^{i\pi/4},\qquad z_2=e^{i3\pi/4}. どちらも単純極であり、 Res⁡z=zjf(z)=zj24zj3=14zj. \operatorname*{Res}_{z=z_j}f(z) =\frac{z_j^2}{4z_j^3} =\frac{1}{4z_j}. したがって留数の和は 14(e−iπ/4+e−i3π/4)=−i22. \frac14\left(e^{-i\pi/4}+e^{-i3\pi/4}\right) =-\frac{i}{2\sqrt2}. 円弧部分の寄与は半径を無限大に送ると 00 なので、留数定理から ∫−∞∞x2x4+1 dx=2πi(−i22)=π2. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{x^2}{x^4+1}\,dx =2\pi i\left(-\frac{i}{2\sqrt2}\right) =\frac{\pi}{\sqrt2}.
  10. 上半平面の大半円と、原点を避ける小半円からなる輪郭で f(z)=eizz f(z)=\frac{e^{iz}}{z} を考える。原点は小半円で避けるので、輪郭内部に極はない。大半円の寄与は Jordan の評価で 00 に収束する。一方、原点まわりの小半円は上半平面を時計回りに 回るため ∫小半円eizz dz⟶−iπ. \int_{\text{小半円}}\frac{e^{iz}}{z}\,dz\longrightarrow -i\pi . ゆえに PV⁡∫−∞∞eixx dx=iπ. \operatorname{PV}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{ix}}{x}\,dx=i\pi . 虚部を取ると 2∫0∞sin⁡xx dx=π, 2\int_0^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx=\pi, したがって ∫0∞sin⁡xx dx=π2. \int_0^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx=\frac{\pi}{2}.

最終答

第I問は5問選択形式である。上では全10問を解いた。主な結果は a=3, b=−1/3a=3,\ b=-1/3、固有値 0,1,20,1,2、y=10xe5xy=10xe^{5x}、 F(ω)=2/π a/(a2+ω2)F(\omega)=\sqrt{2/\pi}\,a/(a^2+\omega^2)、 ∫−∞∞x2/(x4+1) dx=π/2\int_{-\infty}^{\infty}x^2/(x^4+1)\,dx=\pi/\sqrt2、 ∫0∞(sin⁡x)/x dx=π/2\int_0^\infty(\sin x)/x\,dx=\pi/2 である。

第2問 — 力学

方針

[A] は定義に沿った慣性モーメントの積分と、固定点まわりのトルクで処理する。 [B] は小角近似により、質点の水平変位を lθil\theta_i とみなすことが核心である。 ばねの伸びは自然長からの差なので、一次の範囲では l(θ2−θ1)l(\theta_2-\theta_1) だけを残せばよい。

連成振動の見方

同位相モードでは質点間距離が変わらないため、ばねは働かない。したがって単振り子と同じ ωg\omega_g が出る。逆位相モードではばねが伸び縮みし、各質点に対して有効な復元力が増える。 その結果、ωg2\omega_g^2 に 2ωK22\omega_K^2 が加わる。

典型ミス

ラグランジアンのばね項の符号を正にしてしまう誤りが多い。ラグランジアンは T−VT-V なので、 ばねポテンシャルは必ず負号で入る。また、問5の外力項は力そのものではなく、一般化力 Qθ=F ∂x/∂θ≃FlQ_\theta=F\,\partial x/\partial\theta\simeq Fl であるため、方程式を ml2ml^2 で割ると F0/(ml)F_0/(ml) になる。

検算

ばね定数を K=0K=0 とすると、二つの固有角振動数はいずれも ωg\omega_g に一致する。 また、問5で γ=0\gamma=0、F0=0F_0=0 とすれば、問2の運動方程式に戻る。これらの極限は符号と係数の 良い検算になる。

力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学

方針

[A] は交換関係を代数的に処理する問題である。[p^,f(x^)][\hat p,f(\hat x)] 型は −iℏf′(x^)-i\hbar f'(\hat x) と覚えてもよいが、答案では積の交換子公式で一段示すと安全である。 [B] はデルタ関数ポテンシャルの標準問題で、原点以外で指数関数解を作り、原点での導関数の 不連続条件で κ\kappa を決める。

不連続条件の意味

波動関数そのものは有限なポテンシャル井戸の極限として連続に保たれる。一方、デルタ関数は 幅をゼロにして面積を保ったポテンシャルなので、二階微分の積分に有限の寄与が残り、 一階微分が跳ぶ。この跳びの符号が束縛エネルギーの符号を決める。

典型ミス

κ=−2mE/ℏ\kappa=\sqrt{-2mE}/\hbar を正に取らず、発散する指数関数を残すと束縛状態ではない。 また、p^2\hat p^2 の期待値を計算するとき、ψ′′\psi'' には原点の特異性が含まれるため、 部分積分して ℏ2∫∣ψ′∣2dx\hbar^2\int|\psi'|^2dx とする方が安全である。

検算

得られたエネルギーは V0V_0 が大きいほど低くなり、V0→0V_0\to0 で 00 に近づく。 これは引力デルタポテンシャルの束縛状態として自然である。不確定性積 ℏ/2\hbar/\sqrt2 は Heisenberg の下限 ℏ/2\hbar/2 より大きく、矛盾しない。

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第4問 — 電磁気学

方針

[A] は平行板コンデンサー、長いソレノイド、理想 LCLC 回路の標準公式を導く問題である。 問4では点が極板半径より外側にあるため、細い導線を囲む Ampere 経路として扱えばよい。 [B] の前半は同軸線路の円筒対称性から、Ampere の法則と Gauss の法則を円周・円筒面に適用する。

伝搬波の係数

時間因子が e−i2πfte^{-i2\pi ft} なので、時間微分は −i2πf-i2\pi f を掛ける操作になる。 この符号を Faraday の法則の負号と合わせると ∇×E=i2πfB\nabla\times\boldsymbol{E}=i2\pi f\boldsymbol{B} となる。ここで符号を落とすと α\alpha、β\beta の式が不自然になるので注意する。

TEM モードの意味

最後の問で示す ∇⊥⋅E⊥=∇⊥×E⊥=0\nabla_\perp\cdot\boldsymbol{E}_\perp=\nabla_\perp\times\boldsymbol{E}_\perp=0 は、横断面内で電場が静電場のように振る舞うことを意味する。同軸線路の TEM 波では、 横断面の場の形は静電・静磁場の解と同じで、時間と zz 方向には共通の位相因子だけが掛かる。

検算

γ=f2μ0ϵ0\gamma=f^2\mu_0\epsilon_0 は 1/length21/\text{length}^2 の次元をもつ。 実際、真空中の波数は k=2πfμ0ϵ0k=2\pi f\sqrt{\mu_0\epsilon_0} なので k2=4π2γk^2=4\pi^2\gamma であり、波動方程式の係数と一致する。

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第5問 — 熱統計力学

方針

独立な部分系・独立な振動子では、分配関数が積になる。自由エネルギーは対数を取るため和になる。 調和振動子の古典分配関数は位相空間の Gaussian 積分、量子分配関数は等比級数として計算する。

古典と量子の接続

古典結果に ℏ\hbar が現れるのは、位相空間セルを hh で割って無次元化しているためである。 高温では量子準位間隔 ℏω\hbar\omega が熱エネルギー kBTk_BT より十分小さく、等間隔準位の和が 連続的な位相空間積分に近づく。そのためエントロピーと熱容量が古典極限に一致する。

典型ミス

量子分配関数で零点エネルギー 3ℏω/23\hbar\omega/2 を落とすと、エントロピーや熱容量は高温では 同じでも、内部エネルギーと低温極限の見通しがずれる。また、古典系で N!N! を割るか迷うことが あるが、ここでは空間中を入れ替えられる同種気体ではなく、NN 個の振動子が指定されているため 問題の分配関数に従って N!N! は入れない。

検算

量子熱容量 Cq=3NkB(x/2sinh⁡(x/2))2 C_{\mathrm{q}}=3Nk_B\left(\frac{x/2}{\sinh(x/2)}\right)^2 は高温で 3NkB3Nk_B、低温で 00 に近づく。これは Dulong--Petit 型の高温極限と、 励起が凍結する低温極限の両方を満たしている。

熱統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

筑波大 物理 院試 過去問の収録3年度