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九州大学 院試 過去問 解答例

九大 システム情報科学府 電気電子工学専攻 専門科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。電磁気学・回路3問・制御工学1問・物性物理1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・伝達関数・静電場)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・伝達関数・静電場。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

九大 専門科目 2024年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は電磁気学・回路3問・制御工学1問・物性物理1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路電気回路確認 / 典型的なミスあり
第2問電磁気学・回路電子回路オールパスであることの確認 / 入力インピーダンスの注意あり
第3問制御工学—極配置の制約 / 図から伝達関数を読むあり
第4問電磁気学・回路電磁気学外部相互作用の扱い / 接続後の見通しあり
第5問物性物理半導体デバイスグラフ問題の採点ポイント / 抵抗率の比較あり

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に8テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 5問
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第1問 — 電気回路

方針

問1は並列回路なので,インピーダンスを直接合成するよりアドミタンスを足す方が速い。フェーザの基準を正弦波に取れば,電流の時間波形は得られた電流フェーザの偏角をそのまま sin⁡\sin の位相進みに移せる。

確認

ZZ の大きさは 1/4 Ω1/4\,\Omega であり,電圧振幅が 1 V1\,{\mathrm V} なら全電流振幅は 4 A4\,{\mathrm A} になる。全アドミタンスの虚部が正なので,回路全体は容量性に見え,電流が電圧より進む。i(t)i(t) の位相 +π/3+\pi/3 はこの性質と整合している。

典型的なミス

i1i_1 は全電流ではなく,左端の 1 Ω1\,\Omega 枝を分岐した後の右側電流である。したがって Y1Y_1 には左端の 1 Ω1\,\Omega 枝を含めない。また,コンデンサのインピーダンスを jωCj\omega C としてしまうと符号が反転し,位相が逆になる。

最大電力条件の使い方

問2では,ZGZ_G を変えて負荷側から見たテブナンインピーダンスを調整する。負荷が複素インピーダンスの交流回路では,最大電力条件は Zout=ZL∗Z_{\mathrm out}=Z_L^\ast である。Zout=ZLZ_{\mathrm out}=Z_L としてしまう誤りが多いので,共役を取る点を答案に明記するとよい。

過渡応答の見通し

問3では,スイッチ投入前後で変化できない量はコンデンサ電圧である。投入直後の抵抗電流は変化してよい。t>0t>0 の回路をコンデンサから見たテブナン等価回路に直すと,一次遅れとして一行で解ける。図の i(t)i(t) は右側の R4R_4--コンデンサ枝へ流れ込む電流なので,求めたコンデンサ電流と同じである。

解答

問1

角周波数は ω=2\omega=2 である。各枝のインピーダンスを ZR=1,ZLR=1+jωL=1+j,ZRC=1+1jωC=1−j,ZC=1jω3=−j23 Z_R=1,\quad Z_{LR}=1+j\omega L=1+j,\quad Z_{RC}=1+\frac{1}{j\omega C}=1-j,\quad Z_C=\frac{1}{j\omega \sqrt{3}}=-\frac{j}{2\sqrt{3}} とおく。したがって端子から見た全アドミタンスは Y=11+11+j+11−j+1−j/(23)=2+j23. Y=\frac{1}{1}+\frac{1}{1+j}+\frac{1}{1-j}+\frac{1}{-j/(2\sqrt{3})} =2+j2\sqrt{3}. よって端子間インピーダンスは Z=1Y=1−j38=14∠(−π3) Ω. Z=\frac{1}{Y} =\frac{1-j\sqrt{3}}{8} =\frac{1}{4}\angle\left(-\frac{\pi}{3}\right)\ \Omega . 電圧 e(t)=sin⁡2te(t)=\sin 2t を振幅フェーザ E=1∠0E=1\angle 0 として扱うと, I=YE=(2+j23)=4∠π3. I=YE=(2+j2\sqrt{3})=4\angle\frac{\pi}{3}. したがって i(t)=4sin⁡(2t+π3) A. i(t)=4\sin\left(2t+\frac{\pi}{3}\right)\ {\mathrm A}. また,図の i1(t)i_1(t) は左端の 1 Ω1\,\Omega 枝を除いた右側三枝の電流であるから Y1=11+j+11−j+j23=1+j23. Y_1=\frac{1}{1+j}+\frac{1}{1-j}+j2\sqrt{3}=1+j2\sqrt{3}. ゆえに ∣I1I∣=∣Y1∣∣Y∣=1+124=134. \left|\frac{I_1}{I}\right| =\frac{|Y_1|}{|Y|} =\frac{\sqrt{1+12}}{4} =\frac{\sqrt{13}}{4}.

問2

破線内の二端子対網では,左右の節点間にインピーダンス 11,左節点と基準点間に jj,右節点と基準点間に −j-j が入っている。よってアドミタンス行列は Y2=(1+1/j−1−11+1/(−j))=(1−j−1−11+j). Y_2= \begin{pmatrix} 1+1/j & -1\\ -1 & 1+1/(-j) \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1-j & -1\\ -1 & 1+j \end{pmatrix}. det⁡Y2=1\det Y_2=1 であるから Z2=Y2−1=(1+j111−j). Z_2=Y_2^{-1} = \begin{pmatrix} 1+j & 1\\ 1 & 1-j \end{pmatrix}. これは Z1Z_1 と直列に接続された二端子対網として足し合わせられるので Z0=Z1+Z2=(2+2j772−2j). Z_0=Z_1+Z_2 = \begin{pmatrix} 2+2j & \sqrt{7}\\ \sqrt{7} & 2-2j \end{pmatrix}.

この二端子対網の ZZ パラメータを zijz_{ij} と書く。電流源を零にすると理想電流源は開放となり,1--1' 端子には ZGZ_G だけが接続される。したがって V1=−ZGI1,V1=z11I1+z12I2 V_1=-Z_G I_1,\qquad V_1=z_{11}I_1+z_{12}I_2 より I1=−z12z11+ZGI2. I_1=-\frac{z_{12}}{z_{11}+Z_G}I_2. 出力インピーダンスは Zout=V2I2=z22−z21z12z11+ZG=2−2j−7ZG+2+2j. Z_{\mathrm out} =\frac{V_2}{I_2} =z_{22}-\frac{z_{21}z_{12}}{z_{11}+Z_G} =2-2j-\frac{7}{Z_G+2+2j}. 負荷 ZL=1+j2Z_L=1+j2 に最大電力を与えるには,左側のテブナンインピーダンスが ZL∗=1−j2Z_L^\ast=1-j2 となればよい。したがって 2−2j−7ZG+2+2j=1−j2 2-2j-\frac{7}{Z_G+2+2j}=1-j2 から ZG=5−2j. Z_G=5-2j.

問3

スイッチを閉じる前は定常状態なので,コンデンサ枝には直流電流が流れない。このとき R1,R2,R3R_1,R_2,R_3 の直列分圧により,コンデンサ上端の電位は vC(0−)=ER3R1+R2+R3=531+2+3=52 V. v_C(0-)=E\frac{R_3}{R_1+R_2+R_3} =5\frac{3}{1+2+3} =\frac{5}{2}\ {\mathrm V}. コンデンサ電圧は瞬時に変化できないので q(0)=CvC(0+)=2⋅52=5 C. q(0)=Cv_C(0+)=2\cdot\frac{5}{2}=5\ {\mathrm C}.

t>0t>0 ではスイッチにより R1R_1 が短絡される。コンデンサから左側を見たテブナン電圧とテブナン抵抗は Vth=ER3R2+R3=532+3=3 V, V_{\mathrm th}=E\frac{R_3}{R_2+R_3}=5\frac{3}{2+3}=3\ {\mathrm V}, Rth=R4+(R2∥R3)=4+2⋅32+3=265 Ω. R_{\mathrm th}=R_4+(R_2\parallel R_3) =4+\frac{2\cdot 3}{2+3} =\frac{26}{5}\ \Omega . 時定数は τ=RthC=525. \tau=R_{\mathrm th}C=\frac{52}{5}. よって vC(t)=3+(52−3)e−t/τ=3−12e−5t/52. v_C(t)=3+\left(\frac{5}{2}-3\right)e^{-t/\tau} =3-\frac{1}{2}e^{-5t/52}. コンデンサ枝電流は iC(t)=CdvCdt=552e−5t/52. i_C(t)=C\frac{dv_C}{dt}=\frac{5}{52}e^{-5t/52}. 図の矢印 i(t)i(t) は R4R_4 とコンデンサの直列枝へ流れ込む電流を表すので, i(t)=iC(t)=552e−5t/52 A. i(t)=i_C(t)=\frac{5}{52}e^{-5t/52}\ {\mathrm A}.

最終答

問1: Z=(1−j3)/8 ΩZ=(1-j\sqrt{3})/8\ \Omega, i(t)=4sin⁡(2t+π/3) Ai(t)=4\sin(2t+\pi/3)\ {\mathrm A}, ∣I1/I∣=13/4|I_1/I|=\sqrt{13}/4。 問2: Y2=(1−j−1−11+j)Y_2=\begin{pmatrix}1-j&-1\\-1&1+j\end{pmatrix}, Z0=(2+2j772−2j)Z_0=\begin{pmatrix}2+2j&\sqrt7\\\sqrt7&2-2j\end{pmatrix}, Zout=2−2j−7/(ZG+2+2j)Z_{\mathrm out}=2-2j-7/(Z_G+2+2j), ZG=5−2jZ_G=5-2j。 問3: q(0)=5 Cq(0)=5\,{\mathrm C}, i(t)=552e−5t/52 Ai(t)=\frac{5}{52}e^{-5t/52}\,{\mathrm A}。

第2問 — 電子回路

方針

問1の回路は,一見すると反転増幅回路に見えるが,非反転入力にも周波数依存の電圧が入る。理想 OP アンプでは V−=V+V_-=V_+ なので,まず非反転入力側の一次遅れを求め,その電位を反転入力側の KCL に代入するのが最短である。

オールパスであることの確認

G(s)=(1−sτ)/(1+sτ)G(s)=(1-s\tau)/(1+s\tau) は一次オールパスである。大きさは常に 11,位相だけが 0∘0^\circ から −180∘-180^\circ へ変化する。大きさのボード線図に傾きを描いてしまうと,この回路の本質を外す。

入力インピーダンスの注意

入力電流は上側 R1R_1 の電流だけではない。入力端子からは R1R_1 と R2R_2 の二枝に電流が流れる。理想 OP アンプの入力端子には電流が流れないが,それは V−V_- と V+V_+ へ入る電流が零という意味であり,外部抵抗に流れる電流が零という意味ではない。

発振条件

問2では,A 部の非反転増幅と B 部の周波数選択減衰を分けるとよい。LC 並列共振では LL と CC のサセプタンスが相殺され,B 部は単なる抵抗分圧になる。この周波数でループ位相が 0∘0^\circ となり,ループ利得の大きさが 11 になるように抵抗比を選ぶ。

試験での書き方

発振器の振幅条件は,厳密な線形回路だけでは定常振幅を決められない。答案では「発振開始は ∣T∣>1|T|>1,定常状態では振幅制御により ∣T∣=1|T|=1」と書くと,線形解析と実際の発振の違いを区別できていることが伝わる。

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第3問 — 制御工学

方針

問1は PI 制御器が入った単位負帰還系である。開ループ,閉ループ,安定判別,定常偏差の順に進めると式が再利用できる。二次系なので Routh 表を大きく書く必要はなく,分母係数がすべて正であることを示せば十分である。

極配置の制約

KpK_p と TiT_i は二つのパラメータなので一見すべての二次極を置けそうに見える。しかし ss の係数にはプラントの 1/T1/T が下限として残る。ここを見落として「二つの係数を自由に選べる」と結論すると誤りになる。

図から伝達関数を読む

問2では,ステップ応答から DC ゲイン,正弦応答から ∣G(j2)∣|G(j2)| と ∠G(j2)\angle G(j2) を読む。図では入力最大の後に出力最小が現れており、角周波数 22 では π/2\pi/2 遅れと読める。位相は時間遅れなので負の符号を付ける。

グラフ読み取りの扱い

図から読み取る問題では,どの量を読んだかを明記することが重要である。ここでは出力振幅を 2.52.5,位相を −π/2-\pi/2 と読んでいる。すると G(j2)G(j2) の分母実部が 0 になるため、係数が簡潔に決まる。

可制御性の見方

問3は可制御行列を直接計算してもよいが,AA が一つの固有値 −1-1 を重複して持つため PBH 判別が短い。左固有空間が二次元あるので,どの BB を選んでも BB に直交する左固有ベクトルが残る。この構造を一文で説明できると答案が締まる。

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第4問 — 電磁気学

方針

問1はガウスの法則で誘導電荷を順に決める。中性の導体球殻では,内面電荷と外面電荷の和が零であり,導体内部の電場が零になるように内面電荷が決まる。半径 bb は途中計算には現れるが,内部エネルギーでは aa から cc までの寄与にまとめると消える。

外部相互作用の扱い

d≫a,b,cd\gg a,b,c なので,各導体系の外部電場は中心にある点電荷で近似できる。最外球殻の電位に相手側の Q/dQ/d が加わるのはこのためである。エネルギーを「各導体系の自己エネルギー」として答える場合は Qi2/(8πε0a)Q_i^2/(8\pi\varepsilon_0a),二つを合わせた全エネルギーでは相互作用項も加える,という区別を答案に残すと誤読を避けられる。

接続後の見通し

導線でつながるのは最外球殻だけである。内側の空洞にある電場は,半径 aa の球殻に与えた電荷によって決まり,外側球殻同士を接続しても変わらない。変わるのは外面電荷の分配だけである。

誘導起電力

問2はファラデーの法則を面積変化で使う。磁場の向きは xx 方向,コイル面は yzyz 面なので,磁束は BB と磁場中に入っている面積の積でよい。境界を横切るときだけ面積が変化し,完全に入っているときや完全に出ているときは誘導起電力が零になる。

エネルギーチェック

一定速度で引き抜く場合,外力の仕事とジュール熱が一致する。これは符号や力の大きさを確認する強いチェックである。重力落下では同じ磁気力が速度比例抵抗として働き,終端速度 mgR/(B2a2)mgR/(B^2a^2) に近づく一次遅れになる。

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第5問 — 半導体デバイス

方針

問1は,キャリア濃度と移動度を別々に考える。キャリア濃度は凍結領域,外因性領域,真性領域の三つに分かれる。移動度は低温側の不純物散乱と高温側の格子振動散乱の競合で山型になる。

グラフ問題の採点ポイント

グラフでは正確な曲線形状より,相対関係が重要である。A と C の濃度図では,C の中温台地が A より上,C の真性領域への移行がより高温側,C の真性領域の傾きが大きい,という三点を落とさない。移動度図では,B のピークが低く,ピーク温度が高い側にずれることを示す。

抵抗率の比較

T>TBT>T_B の中温領域では,移動度差よりキャリア濃度差が支配的である。A と B の電子濃度は 100100 倍違うため,A の抵抗率が大きい。高温真性領域まで進むと議論が変わるが,設問は「中温領域の高温側」と限定している。

少数キャリア電流

正孔電流は質量作用則で少数キャリア濃度を出してから,Ip=qpμpEAI_p=q p\mu_pEA で計算する。総抵抗を求めるときは電子伝導が圧倒的に大きいが,正孔電流を問われている箇所では電子電流を混ぜない。

MOS しきい値

MOSFET のしきい値電圧は フラットバンド補正+表面電位+酸化膜電圧 \text{フラットバンド補正}+\text{表面電位}+\text{酸化膜電圧} に分けると迷いにくい。p 型基板の反転条件では表面ポテンシャルが 2ϕB2\phi_B になり,空乏層電荷による酸化膜電圧が最後の平方根項として加わる。

符号の注意

電子反転層の電荷は符号付きでは負である。一方,設問が「キャリア密度」を尋ねる場合は正の面密度 nsn_s で答えるのが自然である。答案では QinvQ_{\mathrm inv} と nsn_s を分けて書くと,符号ミスと見なされにくい。

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