東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学) 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全12問)
全12問。情報1問・線形代数1問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・群論・環論・波動関数)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・群論・環論・波動関数。
最終更新:
収録5年度分の解答PDF:東京科学大学 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学)(¥2,880・紙面見本あり)
- このページで公開
- 解説12問と大問1問の途中式・最終答(全12問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき12問)
- 問題本文
- 非収録
東京科学大 専門科目(数理・計算科学) 2023年度 院試 過去問の出題内容(全12問)
この12問の分野は情報1問・線形代数1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | 冪零行列 | 冪零性を使い切る / 固有値の見方 | あり |
| 第2問 | — | Simpson公式 | 補助関数の狙い / 3次式で厳密な理由 | あり |
| 第3問 | — | 漸近記法 | 同時成立は不可能 | あり |
| 第4問 | — | 対称群 | 共役類はサイクル型 / 偶置換の判定 | あり |
| 第5問 | — | 閉包の性質 | 閉包は有限和と相性がよい / 開球の閉包と閉球 | あり |
| 第6問 | — | 熱核 | 熱核の微分 / 初期値への収束 | あり |
| 第7問 | — | 分数ナップサック | 価値密度順の貪欲解 / 双対解で最適性を証明する | あり |
| 第8問 | — | 一様分布と無限積 | 二進小区間 / 無限積への変換 | あり |
| 第9問 | — | ベータ型分布の最尤推定 | 対数尤度 / 事象の変形 | あり |
| 第10問 | — | 反転と言語複製 | ) は正規 / ) の分解 | あり |
| 第11問 | 情報 | 二進GCD型アルゴリズム | 二の因子を除く理由 / 長さの下限 | あり |
| 第12問 | — | 比率付き乱数生成 | 配列方式の本質 / 大きい共通単位をまとめる | あり |
2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は6問に6テーマが出ています。
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 12問 → 2023年度 12問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・群論・環論・波動関数・最尤推定
第1問 — 冪零行列
冪零性を使い切る
により、 の3次以上の項はすべて消える。線形独立性も逆行列も、この打ち切りを使うと 低次の係数比較だけで処理できる。
固有値の見方
で が冪零なら、 は「単位行列に冪零を足した行列」であり、固有値はすべて1になる。 固有ベクトルに を作用させる証明が最も短い。
解答
直接計算すると である。
次に の線形独立性を示す。 とする。両辺に右から を掛けると、 より である。仮定 から 。次に に右から を掛けると となるので 。最後に より である。 したがって は線形独立である。
とおく。 と書けば、 から である。 もし となる非零ベクトル があれば、 である。 なので である。よって の固有値はすべて である。
逆行列を とおくと である。これが になるためには であり、 である。したがって
最終答
は線形独立である。 の固有値はすべて 。また
第2問 — Simpson公式
補助関数の狙い
は、積分値とSimpson近似値の差を表す関数である。 における0次から4次までの微分が消えるように係数 が選ばれている。
3次式で厳密な理由
Simpson公式は3次多項式まで完全に積分する。剰余が で表され、3次式ではそれが0になるためである。
第3問 — 漸近記法
と は全てを二分しない
比 が振動する場合、上に有界でもなく、任意定数を最終的に超えるわけでもない。 そのため (2) のような二分法は成り立たない。
同時成立は不可能
は最終的な上界を与え、 は任意の定数倍を最終的に超えることを要求する。 同じ定数を使うとただちに矛盾する。
第4問 — 対称群
共役類はサイクル型
対称群では共役類を数える問題は、整数の分割を数える問題に帰着する。 では の分割が5個なので共役類も5個である。
偶置換の判定
-サイクルの符号は である。 5サイクルと3サイクルは偶置換、互換は奇置換、二つの互換の積は偶置換である。
第5問 — 閉包の性質
閉包は有限和と相性がよい
有限個の閉集合の和集合は閉なので、 が成り立つ。 無限和では閉性が壊れるため、(3) は一般には成り立たない。
開球の閉包と閉球
通常のユークリッド空間では一致することが多いが、一般の距離空間では一致しない。 離散距離はその標準的な反例である。
第6問 — 熱核
熱核の微分
時間微分と空間二階微分で同じ係数 が出る。ここを明示すれば熱方程式の核であることが分かる。
初期値への収束
熱核は で原点に集中する確率密度である。連続性で原点近くを押さえ、有界性で遠方のガウス尾部を押さえる。
第7問 — 分数ナップサック
価値密度順の貪欲解
これは分数ナップサック問題である。 が降順に並んでいるため、容量が尽きるまで順に入れ、 最後の一つだけを分数で入れる解が最適になる。
双対解で最適性を証明する
貪欲解を主問題側で示すだけでなく、同じ値を持つ双対実行可能解を構成することで、双対定理から最適性が確認できる。
第8問 — 一様分布と無限積
二進小区間
最初の 桁を固定することは、長さ の小区間を一つ選ぶことに等しい。 一様分布なので、その確率はそのまま区間の長さになる。
無限積への変換
上の一様分布を と表し、その二進展開を独立な符号列に直すと、 特性関数が独立性により余弦の積に分解される。
第9問 — ベータ型分布の最尤推定
対数尤度
なので である。最尤推定量の式では分母が負になるため、 は正である。
事象の変形
を積 の条件に直すと、マルコフの不等式を使える。 負のべき乗を取るため、条件 が積分可能性に対応する。
第10問 — 反転と言語複製
は正規
を反転して結合すると、中央の の個数が必ず偶数になる。 偶奇だけを覚えればよいのでDFAで認識できる。
の分解
を二回並べると になる。 これは と の連接として文法化できる。
第11問 — 二進GCD型アルゴリズム
二の因子を除く理由
奇数同士の差は偶数になる。最大公約数は奇数なので、差から2の因子を取り除いても最大公約数は変わらない。 これが二進GCD法の基本である。
長さの下限
和が毎回少なくとも半分になるため、長い列を作るには初期和が大きくなければならない。 長さ9では最終直前の和が少なくとも2なので、初期和は少なくとも256である。
第12問 — 比率付き乱数生成
配列方式の本質
配列中の出現回数を重みに一致させれば、一様な添字乱数を使って任意の整数比率を実現できる。
大きい共通単位をまとめる
と分けると、 の配列の各要素に重み を持たせられる。 これにより、元の重みの総和に比例する巨大な配列を作らずに済む。
東京科学大 専門科目(数理・計算科学) 院試 過去問の収録5年度
対称行列のべき / 級数と積分判定 / ソートの実行追跡
核と固有値 / 三次曲線と極値 / 論理和標準形
固有分解と階数 / 変数変換と広義積分 / 決定可能性と還元
2023年度(このページ・全12問)
冪零行列 / Simpson公式 / 漸近記法
交代行列の固有値 / 偏微分の恒等式 / 充足可能性