東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学) 2023年度 院試 解答例・解説
東京科学大学 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学) 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全12問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 冪零行列
冪零性を使い切る
により、 の3次以上の項はすべて消える。線形独立性も逆行列も、この打ち切りを使うと 低次の係数比較だけで処理できる。
固有値の見方
で が冪零なら、 は「単位行列に冪零を足した行列」であり、固有値はすべて1になる。 固有ベクトルに を作用させる証明が最も短い。
第2問 — Simpson公式
補助関数の狙い
は、積分値とSimpson近似値の差を表す関数である。 における0次から4次までの微分が消えるように係数 が選ばれている。
3次式で厳密な理由
Simpson公式は3次多項式まで完全に積分する。剰余が で表され、3次式ではそれが0になるためである。
第3問 — 漸近記法
と は全てを二分しない
比 が振動する場合、上に有界でもなく、任意定数を最終的に超えるわけでもない。 そのため (2) のような二分法は成り立たない。
同時成立は不可能
は最終的な上界を与え、 は任意の定数倍を最終的に超えることを要求する。 同じ定数を使うとただちに矛盾する。
第4問 — 対称群
共役類はサイクル型
対称群では共役類を数える問題は、整数の分割を数える問題に帰着する。 では の分割が5個なので共役類も5個である。
偶置換の判定
-サイクルの符号は である。 5サイクルと3サイクルは偶置換、互換は奇置換、二つの互換の積は偶置換である。
第5問 — 閉包の性質
閉包は有限和と相性がよい
有限個の閉集合の和集合は閉なので、 が成り立つ。 無限和では閉性が壊れるため、(3) は一般には成り立たない。
開球の閉包と閉球
通常のユークリッド空間では一致することが多いが、一般の距離空間では一致しない。 離散距離はその標準的な反例である。
第6問 — 熱核
熱核の微分
時間微分と空間二階微分で同じ係数 が出る。ここを明示すれば熱方程式の核であることが分かる。
初期値への収束
熱核は で原点に集中する確率密度である。連続性で原点近くを押さえ、有界性で遠方のガウス尾部を押さえる。
第7問 — 分数ナップサック
価値密度順の貪欲解
これは分数ナップサック問題である。 が降順に並んでいるため、容量が尽きるまで順に入れ、 最後の一つだけを分数で入れる解が最適になる。
双対解で最適性を証明する
貪欲解を主問題側で示すだけでなく、同じ値を持つ双対実行可能解を構成することで、双対定理から最適性が確認できる。
第8問 — 一様分布と無限積
二進小区間
最初の 桁を固定することは、長さ の小区間を一つ選ぶことに等しい。 一様分布なので、その確率はそのまま区間の長さになる。
無限積への変換
上の一様分布を と表し、その二進展開を独立な符号列に直すと、 特性関数が独立性により余弦の積に分解される。
第9問 — ベータ型分布の最尤推定
対数尤度
なので である。最尤推定量の式では分母が負になるため、 は正である。
事象の変形
を積 の条件に直すと、マルコフの不等式を使える。 負のべき乗を取るため、条件 が積分可能性に対応する。
第10問 — 反転と言語複製
は正規
を反転して結合すると、中央の の個数が必ず偶数になる。 偶奇だけを覚えればよいのでDFAで認識できる。
の分解
を二回並べると になる。 これは と の連接として文法化できる。
第11問 — 二進GCD型アルゴリズム
二の因子を除く理由
奇数同士の差は偶数になる。最大公約数は奇数なので、差から2の因子を取り除いても最大公約数は変わらない。 これが二進GCD法の基本である。
長さの下限
和が毎回少なくとも半分になるため、長い列を作るには初期和が大きくなければならない。 長さ9では最終直前の和が少なくとも2なので、初期和は少なくとも256である。
第12問 — 比率付き乱数生成
配列方式の本質
配列中の出現回数を重みに一致させれば、一様な添字乱数を使って任意の整数比率を実現できる。
大きい共通単位をまとめる
と分けると、 の配列の各要素に重み を持たせられる。 これにより、元の重みの総和に比例する巨大な配列を作らずに済む。