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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全18問)

全18問。微分積分・解析4問・位相・幾何1問・確率・統計1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・一様収束・群論・環論)。2019年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・一様収束。

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解説18問/全18問(3,549字)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき18問)
問題本文
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東大 専門科目B 2020年度 院試 過去問の出題内容(全18問)

この18問の分野は微分積分・解析4問・位相・幾何1問・確率・統計1問・代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—Galois閉包と中間体採点上の注意あり
第2問代数二変数多項式環の極大イデアル—あり
第3問—特異点の随伴次数環採点上の注意あり
第4問—対称群の群環と中心採点上の注意あり
第5問微分積分・解析ベクトル場の第一積分—あり
第6問—二次元可換Lie群の格子商採点上の注意あり
第7問—標準シンプレクティック形式採点上の注意あり
第8問—正三角形配置空間のホモロジー採点上の注意あり
第9問微分積分・解析積分の絶対連続性とVitali型収束採点上の注意あり
第10問—留数定理と余接型展開採点上の注意あり
第11問微分積分・解析フーリエ変換核の極限採点上の注意あり
第12問—閉部分空間の角度採点上の注意あり
第13問微分方程式二次元線型微分方程式と錐不変性採点上の注意あり
第14問—離散ラプラシアンの安定性採点上の注意あり
第15問—Hermite型多項式採点上の注意あり
第16問微分積分・解析球面ラプラシアンの固有関数採点上の注意あり
第17問位相・幾何極限計算可能集合とコンパクト性採点上の注意あり
第18問確率・統計確率漸化式と標本平均採点上の注意あり

この年度の解説には採点上の注意16件・典型ミス2件が付いています。

2020年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は8問に5テーマが出ています。

前年度(2019年度)との違い

大問数
2019年度 18問 → 2020年度 18問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・一様収束
2020年度で新しく出たテーマ
群論・環論・留数定理・フーリエ変換
2019年度のページを見る

第1問 — Galois閉包と中間体

方針

SS の符号を変えたときに TT の共役が FF の中に残らない点が重要である。 そこで U2=v(1−S)U^2=v(1-S) を加えると,全ての共役が同じ体の中に入る。

採点上の注意

F/KF/K の次数だけを数えると 88 で止まりやすいが,Galois閉包ではさらに S↦−SS\mapsto -S で現れる平方根を加える必要がある。複素共役の分も忘れない。

Galois閉包と中間体の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 二変数多項式環の極大イデアル

方針

剰余体が基礎環上代数的になることを使い,一つずつ変数を消していく。 体上では K[X]K[X] とその剰余体上の一変数多項式環がPIDであることが決定的である。

典型ミス

Z[X,Y]\mathbb{Z}[X,Y] では,まず標数を決める素数 pp が必要である。 体上の議論をそのまま使うだけでは,この pp の分を落としてしまう。

二変数多項式環の極大イデアルの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 特異点の随伴次数環

方針

随伴次数環では,元の関係式の「最低次の同次部分」が支配的になる。 今回の曲線では Y3−X4−X3Y^3-X^4-X^3 の最低次部分が Y3−X3Y^3-X^3 である。

採点上の注意

X4X^4 の項を随伴次数環の関係に残してはいけない。II-進次数で見ると X4X^4 は Y3−X3Y^3-X^3 より高次であり,初期形式には現れない。

特異点の随伴次数環の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 対称群の群環と中心

方針

有限次元代数では,素イデアルは単純加群・半単純商と結びつけて数える。 標数 33 では S3S_3 の3サイクル部分が冪零方向を作るため,中心のべき零根基を 明示してから商を取る。

採点上の注意

F3[S3]\mathbb{F}_3[S_3] は半単純ではない。標数が群の位数を割っているため, 通常の複素表現の直和分解をそのまま使うと誤る。

対称群の群環と中心の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ベクトル場の第一積分

方針

第一積分は流れの軌道空間上の関数である。α>0\alpha>0 では全ての非零軌道が 単位円周を一度だけ横切るため,WαW_\alpha は円周上の関数と同じになる。

典型ミス

α<0\alpha<0 でも原点へ全方向から近づくわけではない。片方の方向は膨張するので, 原点での連続性だけでは定数性を強制できない。

ベクトル場の第一積分の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 二次元可換Lie群の格子商

方針

この群は一見行列群だが,t=log⁡x, u=y/xt=\log x,\ u=y/x によってただの R2\mathbb{R}^2 の加法群になる。格子も同時に Z2\mathbb{Z}^2 になるので, 商は標準トーラスである。

採点上の注意

yy そのものではなく u=y/xu=y/x を使う点が重要である。xx のスケールと上三角成分の せん断成分を分けると,群構造が加法に直る。

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第7問 — 標準シンプレクティック形式

方針

閉1形式が R4\mathbb{R}^4 上で完全になることと,Cartanの公式を使う。 シンプレクティック形式が非退化であるため,iZω=0i_Z\omega=0 から Z=0Z=0 が従う。

採点上の注意

iXω=dfi_X\omega=df の符号を間違えやすい。標準形では X=∑(ai∂xi+bi∂yi)X=\sum(a_i\partial_{x_i}+b_i\partial_{y_i}) に対し iXω=∑(ai dyi−bi dxi)i_X\omega=\sum(a_i\,dy_i-b_i\,dx_i) である。

標準シンプレクティック形式の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 正三角形配置空間のホモロジー

方針

三点の条件は「向き付き正三角形」を表している。基準正三角形を一つ選べば, 全ての配置は空間回転で得られるので,まず X≃SO(3)X\simeq SO(3) と見る。

採点上の注意

循環置換で割ると,SO(3)SO(3) の基本群由来の 22 と,循環置換由来の 33 が合わさり, 一次ホモロジーは Z/6Z\mathbb{Z}/6\mathbb{Z} になる。

正三角形配置空間のホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 積分の絶対連続性とVitali型収束

方針

最後はVitali収束定理の典型的な証明である。大きい集合上ではEgorovの定理で 一様収束にし,小さい例外集合上では一様可積分性で抑える。

採点上の注意

点ごとの収束だけでは L1L^1 収束は出ない。例外集合で質量が集中しないことを保証する 一様可積分性が必要である。

積分の絶対連続性とVitali型収束の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 留数定理と余接型展開

方針

π/tan⁡πz\pi/\tan\pi z は整数に単純極を持ち,留数がすべて 11 である。 整数上の和を留数計算へ変換する標準的な核である。

採点上の注意

単に ∑1/(z−n)\sum 1/(z-n) と書くと収束しない。1/n1/n を加えて正則化し, 対称和として収束を確保する必要がある。

留数定理と余接型展開の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — フーリエ変換核の極限

方針

e−ε∣x∣e^{-\varepsilon|x|} のフーリエ変換を先に計算し,xx 倍は周波数側の微分に移す。 極限ではPoisson核の微分がデルタ関数の微分に近づいている。

採点上の注意

核は奇関数なので,極限は g(0)g(0) ではなく g′(0)g'(0) に作用する。 符号は d/dyd/dy と ii の位置で決まるため,最後に部分積分で確認すると安全である。

フーリエ変換核の極限の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 閉部分空間の角度

方針

XX と YY の角度は各2次元平面 span⁡{e2n,e2n+1}\operatorname{span}\{e_{2n},e_{2n+1}\} の中で独立に決まる。内積評価を一括して行うだけでよい。

採点上の注意

sup⁡cos⁡θn<1\sup\cos\theta_n<1 は,二つの部分空間の角度が一様に正であることを意味する。 この一様性がないと,有限次元ごとの和は閉でも,無限次元の和が閉とは限らない。

閉部分空間の角度の途中式・最終答をPDFで見る

第13問 — 二次元線型微分方程式と錐不変性

方針

定係数の場合は跡が 00 の2次行列なので,固有値の符号だけで有界性を判定できる。 非定係数の場合は,錐 η1>∣η2∣\eta_1>|\eta_2| の境界でベクトル場が内向きであることを見る。

採点上の注意

固有値が 00 の場合に注意する。行列が非零冪零なら etA=I+tAe^{tA}=I+tA となり, 全初期値について有界とはならない。

二次元線型微分方程式と錐不変性の途中式・最終答をPDFで見る

第14問 — 離散ラプラシアンの安定性

方針

差分方程式を離散ラプラシアンの固有モードに分解する。安定性条件は, 全てのモードの増幅率が高々 1+aτ1+a\tau であることを保証している。

採点上の注意

最大固有値は 4(N+1)24(N+1)^2 未満である。ここを粗く見積もり,仮定の 2τ(N+1)22\tau(N+1)^2 との関係を正しく使う。

離散ラプラシアンの安定性の途中式・最終答をPDFで見る

第15問 — Hermite型多項式

方針

作用素 x−12d/dxx-\frac12 d/dx はHermite多項式の生成作用素である。 母関数を先に求めると,直交性以外の設問はほぼ係数比較で処理できる。

採点上の注意

pnp_n は標準的な HnH_n そのものではなく 2−nHn2^{-n}H_n である。 この倍率を落とすと,直交積分とCauchy積分の係数がずれる。

Hermite型多項式の途中式・最終答をPDFで見る

第16問 — 球面ラプラシアンの固有関数

方針

変数 w=cos⁡θw=\cos\theta で軸対称部分をLegendre方程式にし,ϕ\phi 方向を eimϕe^{im\phi} で分離する。これが球面調和関数の標準的な導出である。

採点上の注意

ラプラシアンの符号規約に注意する。ここで与えられた表示では, 固有値は −ℓ(ℓ+1)-\ell(\ell+1) として現れる。

球面ラプラシアンの固有関数の途中式・最終答をPDFで見る

第17問 — 極限計算可能集合とコンパクト性

方針

第1問は「左端の無限枝」を停止問題で選ぶ議論である。 第2問は命題論理のコンパクト性を,計算可能木の無限枝として実現する。

採点上の注意

真理値割当そのものが計算可能であるとは限らない。無限に伸びるかどうかの判定には 一般に停止問題相当の情報が必要で,結論は極限計算可能に留まる。

極限計算可能集合とコンパクト性の途中式・最終答をPDFで見る

第18問 — 確率漸化式と標本平均

方針

平均は一次漸化式で閉じる。共分散は条件付き期待値 E[Xn∣Xm]E[X_n\mid X_m] を使うと一行で指数減衰が出る。

採点上の注意

MnM_n の分散評価では独立性を仮定してはいけない。XnX_n 同士は独立ではないが, 共分散が幾何級数的に減衰するため,平均の分散は O(1/n)O(1/n) になる。

確率漸化式と標本平均の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目B 院試 過去問の収録19年度

  • 2026年度(全18問)

    整行列の部分環と格子加群 / Kummer拡大と四元数群 / 上三角群と双対数環上の持ち上げ

  • 2025年度(全18問)

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  • 2024年度(全18問)

    冪零行列のSL共役類 / 曲線特異点とHom加群 / 切断された次数付き加群

  • 2022年度(全18問)

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  • 2020年度(このページ・全18問)

    Galois閉包と中間体 / 二変数多項式環の極大イデアル / 特異点の随伴次数環

  • 2019年度(全18問)

    余次元1の部分環 / 三項式の既約性 / 対称関数体と中間体

  • 2018年度(全18問)

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  • 2017年度(全18問)

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  • 2016年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

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  • 2015年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    有限p群の共役類と既約表現 / 数値半群環の conductor / BGG 型複体

  • 2014年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

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  • 2013年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

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  • 2012年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有理関数体の不変体

  • 2011年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有限可換群と巡回因子

  • 2010年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有限環の分解と単数群

  • 2007年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    半直積の正規部分群

  • 2006年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    分解体と中間体

  • 2005年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    行列の位数

  • 2004年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    線形写像の階数