東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全18問)
全18問。微分積分・解析4問・位相・幾何1問・量子力学1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・ヒルベルト空間・最尤推定)。2024年度と共通のテーマは最尤推定。
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- 解説18問と大問1問の途中式・最終答(全18問)
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- 途中式と最終答(最終答つき18問)
- 問題本文
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東大 専門科目B 2025年度 院試 過去問の出題内容(全18問)
この18問の分野は微分積分・解析4問・位相・幾何1問・量子力学1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 有限推移群の derangement | 固定点をもたない元を数える | あり |
| 第2問 | — | 三次商環の単元群 | +4X では実成分と複素成分が出る | あり |
| 第3問 | — | 自己テンソルで消える加群 | 有限生成と任意加群の差 | あり |
| 第4問 | — | 二つの4次根号拡大の合成体 | 合成体のガロア群を先に固定する | あり |
| 第5問 | 位相・幾何 | Stiefel多様体上の高さ関数 | v を球面上の点として見る | あり |
| 第6問 | — | 平面領域の内在距離を保つ写像 | 内在距離は局所的には通常の距離 | あり |
| 第7問 | — | 射影空間内の二つの射影3空間の和 | 条件は二つの射影3空間の和を表す | あり |
| 第8問 | 微分積分・解析 | 小球面上の微分形式積分の漸近 | Stokesで球面積分を球体積分へ移す | あり |
| 第9問 | 微分積分・解析 | 切断関数列による L^1 判定 | 逆向きは「遠方で符号を拾う」 | あり |
| 第10問 | 微分積分・解析 | 単葉正則関数の面積と凸性 | 凸性は解析的判定で半径縮小に安定 | あり |
| 第11問 | 微分積分・解析 | \sqrt{1-t} の作用素級数とシフト | 係数は指数減衰ではなく | あり |
| 第12問 | — | 周期KdV型方程式の保存量 | 右辺は三階微分 | あり |
| 第13問 | — | 幾何分布で止めた独立和 | 同じ を共有している | あり |
| 第14問 | — | 逆ガンマ型分布の最尤推定 | 指数部は | あり |
| 第15問 | — | 周期差分スキームのFourier安定性 | 各Fourierモードは2階漸化式 | あり |
| 第16問 | — | q-差分作用素と対称多項式 | — | あり |
| 第17問 | 量子力学 | 二準位量子系の期待値 | この内積ではPauli行列を正規化しない | あり |
| 第18問 | — | 正則言語の挿入商 | — | あり |
2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第11・17問 | 25大学・544問 | |
| ヒルベルト空間 | 第5・17問 | 12大学・33問 | |
| 最尤推定 | 第14問 | 8大学・28問 | |
| オートマトン理論 | 第18問 | 11大学・21問 | |
| 中心極限定理 | 第14問 | 5大学・14問 |
前年度(2024年度)との違い
- 大問数
- 2024年度 18問 → 2025年度 18問
- 両年度に出たテーマ
- 最尤推定
- 2025年度で新しく出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・ヒルベルト空間・オートマトン理論・中心極限定理
第1問 — 有限推移群の derangement
固定点をもたない元を数える
(1) は Burnside の補題の基本形である。(2) は「推移置換群には少なくとも の割合で derangement がある」という評価で,(3) の 作用が 等号例になる。
解答
(1) 集合 を二通りに数える。 を固定すると寄与は であるから 一方, を固定すると寄与は安定化群 の位数であり,推移性より である。したがって よって
(2) これは推移置換群に対する Cameron--Cohen の評価 そのものである。念のため,本問で使う形を確認する。点 の安定化群を とおくと,固定点をもつ元全体は である。したがって はこの共役部分群の和集合の補集合である。 有限群の真部分群 に対して,共役部分群の和集合は高々 個の元しか含まない。これは Jordan の derangement 定理の標準形であり, 共役作用で得られる置換表示に Burnside の補題を適用して示せる。ここで であるから となり, を得る。
(3) とし, を自然に に作用させる。 この作用は推移的である。
の元は,恒等元 個,3-cycle 個,double transposition 個である。 自然な4点作用では,3-cycle は動かさない1点をもつが,double transposition は 固定点をもたない。したがって であり, である。
最終答
(1) 。(2) 。(3) の4点自然作用で等号が成り立つ。
第2問 — 三次商環の単元群
では実成分と複素成分が出る
この問題では ではなく を扱う。実数上では になり,整数係数の情報は の mod 条件と の偶奇条件として残る。
第3問 — 自己テンソルで消える加群
有限生成と任意加群の差
有限生成なら局所化と Nakayama で直ちに示せる。任意加群まで許すと, 零次元 Noether すなわち Artin であることが必要になり,逆向きでは が反例を作る。
第4問 — 二つの4次根号拡大の合成体
合成体のガロア群を先に固定する
側は巡回4次, 側は を加えることで二面体的になる。共通部分が であることを 押さえると,位数16の群から中間体を機械的に読める。
第5問 — Stiefel多様体上の高さ関数
を球面上の点として見る
この問題の流れは,本質的には球面 上の高さ関数 の勾配流である。 フレーム は と一緒に最小回転で運ばれる。
第6問 — 平面領域の内在距離を保つ写像
内在距離は局所的には通常の距離
開集合内で十分近い二点は線分で結べるので,内在距離は局所的にユークリッド距離と一致する。 そこから局所的な合同変換を得て,連結性で一つに貼り合わせる。
第7問 — 射影空間内の二つの射影3空間の和
条件は二つの射影3空間の和を表す
は -成分か -成分のどちらかが全て0という条件である。 交わりは -成分だけが残る なので,Mayer--Vietoris が直接使える。
第8問 — 小球面上の微分形式積分の漸近
Stokesで球面積分を球体積分へ移す
単なる面積スケーリングではなく, を使う点が重要である。 を掛けたときは, の偶奇で最初の非零項の次数が変わる。
第9問 — 切断関数列による L^1 判定
逆向きは「遠方で符号を拾う」
単なる標準的な切断関数では条件 (ii) の強さを使い切れない。 全ての に対して成り立つことを使い,遠方で を拾う関数列を作る。
第10問 — 単葉正則関数の面積と凸性
凸性は解析的判定で半径縮小に安定
面積は の積分で出る。凸性は を使うと, による縮小で直ちに保たれる。
第11問 — \sqrt{1-t} の作用素級数とシフト
係数は指数減衰ではなく
の特異点は にあるため,係数は幾何級数的には減らない。 ただし で十分総和可能である。シフトの部分は の固有値1に近い 近似固有ベクトルを使う。
第12問 — 周期KdV型方程式の保存量
右辺は三階微分
この方程式は粘性項 ではなく分散項 をもつ。 そのため ノルムと が保存量になる。
第13問 — 幾何分布で止めた独立和
同じ を共有している
どうしは が独立でも独立ではない。共分散は二つのランダムな初期区間の 重なり,すなわち の期待値で決まる。
第14問 — 逆ガンマ型分布の最尤推定
指数部は
と変換すると通常のガンマ分布になる。これにより最尤推定量の期待値と 漸近分布は標本平均の問題に帰着する。
第15問 — 周期差分スキームのFourier安定性
各Fourierモードは2階漸化式
差分方程式を Fourier モードに分解すると,安定性は特性根の絶対値を見るだけになる。 は全てのモードで を保証する条件である。
第16問 — q-差分作用素と対称多項式
を母関数として使う
-シフトで無限積の先頭因子が消えるため,方程式系は自然に解ける。 最後の固有多項式はこの母関数の 係数である。
第17問 — 二準位量子系の期待値
この内積ではPauli行列を正規化しない
内積に係数 が入っているため,Pauli 行列そのものが正規直交基底になる。 時間発展 は Bloch ベクトルを -平面で回転させる。
第18問 — 正則言語の挿入商
が非正則でも,状態間関係は有限
全体を認識する必要はない。元の有限オートマトン上で, の語がどの状態から どの状態へ移せるかという有限関係だけを使えばよい。
東大 専門科目B 院試 過去問の収録19年度
整行列の部分環と格子加群 / Kummer拡大と四元数群 / 上三角群と双対数環上の持ち上げ
2025年度(このページ・全18問)
有限推移群の derangement / 三次商環の単元群 / 自己テンソルで消える加群
冪零行列のSL共役類 / 曲線特異点とHom加群 / 切断された次数付き加群
行列成分の軌道 / 平方零イデアルによる拡大 / 多項式環の自由性
Galois閉包と中間体 / 二変数多項式環の極大イデアル / 特異点の随伴次数環
余次元1の部分環 / 三項式の既約性 / 対称関数体と中間体
位数pの持ち上げ / 交叉曲線の正則性 / 尖点環上の二次曲面
部分格子と有限アーベル群 / 2重可移作用 / 二次超曲面の特異点
2016年度(全18問)解答・最終答まで全文公開
巡回商をもつ群拡大 / 三直線の座標環と巡回作用 / 有理関数体のガロア閉包
2015年度(全18問)解答・最終答まで全文公開
有限p群の共役類と既約表現 / 数値半群環の conductor / BGG 型複体
2014年度(全18問)解答・最終答まで全文公開
Artin--Schreier拡大 / 実代数曲線の極大イデアル / ファイバーと接空間次元
2013年度(全18問)解答・最終答まで全文公開
有限体上の2次一般線形群 / 3本の直線の有限被覆 / Nakayamaの補題と単項曲線
2012年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
有理関数体の不変体
2011年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
有限可換群と巡回因子
2010年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
有限環の分解と単数群
2007年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
半直積の正規部分群
2006年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
分解体と中間体
2005年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
行列の位数
2004年度(全1問)解答・最終答まで全文公開
線形写像の階数