東京大学 院試 過去問 解答例
東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2018年度 院試 解答例・解説
東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2018年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 位数pの持ち上げ
見るべき元
有限体上の位数 の元は,標数 特有の単冪元である。半単純な固有値を 追うのではなく,Jordan ブロック を持ち上げたときの 乗を で計算するのが最短である。
典型ミス
と で の挙動が異なる。特に では が残るため,例外的に補正項で を消せる。
第2問 — 交叉曲線の正則性
方針
第1段階は完全交叉曲線の非特異性判定である。極大イデアルの は接空間の双対なので,接空間が1次元であることを ヤコビ行列の階数で判定する。
採点上の注意
第2段階では,商が0次元になっている。ここでは「解が重なる」ことではなく, または 型の重根が出ることが冪零元の発生である。
第3問 — 尖点環上の二次曲面
幾何的な意味
[数式] は尖点をもつ曲線の座標環である。原点以外では を復元できるので正規化と変わらない。設問(2)はこの「原点以外では 正規化が同型」という事実を局所環で書いたものである。
最後の同型
二次式 は,複素数上では双曲線 になる。従って座標環は Laurent 多項式環である。
第4問 — 円分体とクンマー拡大
方針
から,[数式] は 乗根の一段だけを含む。 一方 [数式] は と 乗根を同時に含むため, 次数がさらに 倍になる。
中間体の数え方
最後は体を直接書き下すより,ガロア群の部分群を数える方が安全である。 位数 の補群が 個ある,という点を押さえればよい。
第5問 — 単位球面上の行列式レベル
最大値の見方
は2次元ベクトル2本の符号付き面積である。したがって と から,最大値が であることがすぐ分かる。
端点の扱い
は正則値ではない。ここを正則値定理だけで処理すると誤りになる。 等号成立条件を別に調べ,実際には円周になることを確認する。
第6問 — 四元数群作用の商空間
分解の要点
では2つの成分が交わらない。一方 は境界トーラスを共有する。 この違いを見落とすと,(1) と (2) のホモロジーを取り違える。
商の扱い
が2成分を交換する場合,商は「一方の成分を安定化部分群で割る」と見ればよい。 これにより計算はトーラスと固体トーラスの標準的なホモロジーに落ちる。
第7問 — 平面ベクトル場と零点指数
有界性の見方
線形部は回転を伴う拡大だが,三次項が大きい半径で内向きに働く。半径二乗の微分を 直接評価すると,解が無限遠へ逃げないことが一行で分かる。
零点の見方
コンパクト台の摂動は無限遠でのベクトル場の向きを変えない。従って零点の存在は 境界の回転数,すなわち平面ベクトル場の指数で決まる。ここで回転数が で あることを書けば,Brouwerの次数の言葉を使っても同じ証明になる。
第8問 — 共役軌道とKKS形式
固有性の本質
跡零の2次行列では,行列式と反対称部分を固定すると残りの成分が有界になる。 この低次元の座標計算が固有性の中身である。
積分計算
の軌道は2枚の双曲面として表せる。 はその高さ を読む写像であり, で切ると2枚の円板になる。 KKS形式が になるため,最後は極座標積分だけで 終わる。
第9問 — Lpの弱収束とノルム
方針
前半は と の双対性そのもの。後半は Hilbert 空間の弱収束で, 「弱収束 + ノルム収束 = 強収束」と「極限は閉線形包に入る」を使う。
採点上の注意
の内積計算では,弱収束を に適用する。ここで と書けることが決定的である。
第10問 — SchurアルゴリズムとBlaschke積
Schur変換
で値 を に移し,さらに で割る操作が Schurアルゴリズムである。Schwarzの補題がそのまま を与える。
有限Blaschke積
境界で絶対値 を保つ正則関数は,円板内の零点をBlaschke因子で取り除くと 零点のない内関数になる。境界絶対値が なので,最大値原理により残りは定数に ならざるを得ない。
第11問 — 2つの部分空間の角と射影
射影になる条件
和 が再び射影になるのは,2つの射影が互いに干渉しない場合だけである。 これは ,つまり部分空間の直交性に対応する。
角度評価
は2つの部分空間の内積の最大値を測る量である。最後の不等式は 実質的に と角度の定義を組み合わせた評価である。
第12問 — 自由Schrodinger核
方針
核は自由Schrodinger方程式の基本解である。ノルム保存と近似評価はどちらも Fourier変換のPlancherel定理で処理するのが最も短い。
微分の正当化
が急減少であるため,核を何回 で微分しても積分可能な優関数が取れる。 この条件があるので,偏微分方程式は核の恒等式を積分するだけで証明できる。
第13問 — スペクトル半径と勾配型反復
反復の本質
反復法は解そのものではなく誤差を見る。誤差は毎回 を掛けられるため, 収束条件はこの行列のスペクトル半径が 未満であることに尽きる。
符号に注意
(i) の は負定値なので,収束する は負である。正定値の場合の をそのまま当てはめると符号を誤る。
第14問 — ガンマ分布による平滑化と分布収束
方針
は平均 のガンマ分布で, を大きくすると の近くに集中する。 したがって の分布収束が全ての で分かれば,最後に を に近づけて の分布収束を取り出せる。
タイト性
分布収束を示すには,まず が無限遠へ逃げないことが必要である。 が高確率で 以上であることを使うと, のタイト性から のタイト性が従う。
第15問 — Rodrigues型多項式
方針
これは区間 上のLegendre多項式である。Rodrigues公式から直交性を出し, 標準Legendre多項式のノルムをモニック化の係数で割ればよい。
零点
直交多項式の零点が区間内で単純になる理由は,符号変化零点の個数が不足すると, 低次多項式を掛けて内積を正にできてしまうからである。
第16問 — 年齢構造付き感染症モデル
全量保存
このモデルでは,感受性・感染性・回復後年齢構造を合わせた総量が に従う。初期値が 上にあれば,その超平面から出ない。
閾値
は感染者が少ないときの増殖率の符号を決める。 では が負に抑えられ, では が疾病なし平衡に近づくと 感染者が再び増えるため,完全消滅は矛盾する。
第17問 — q変形sl2表現
単項式で見る
は次数を読む作用素である。したがって交換関係は抽象的に扱うより, 単項式 へ作用させて確認するのが最も確実である。
4次元部分表現
では各変数ごとに が2次元表現になる。 そのテンソル積が であり,3次元成分と1次元成分へ分解するため,中心元 はそこで対角化される。
第18問 — 有向グラフの不可避集合
有限グラフの見方
は「どの無限パスもいつか入る」という条件である。有限グラフでは, これは補集合に有向閉路がないことと同じである。
の意味
は, の中だけで無限に動ける頂点である。したがって 単に不可避な4点を選ぶだけでは足りず,選んだ点が 内の閉路へ到達できるように 追加頂点が必要になる。