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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2018年度 院試 過去問 解答例・解説(全18問)

全18問。微分積分・解析2問・情報1問・線形代数1問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・フーリエ変換)。2017年度と共通のテーマは線形空間・基底。

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解説18問と大問1問の途中式・最終答(全18問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき18問)
問題本文
非収録

東大 専門科目B 2018年度 院試 過去問の出題内容(全18問)

この18問の分野は微分積分・解析2問・情報1問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—位数pの持ち上げ見るべき元あり
第2問—交叉曲線の正則性採点上の注意あり
第3問—尖点環上の二次曲面幾何的な意味 / 最後の同型あり
第4問—円分体とクンマー拡大中間体の数え方あり
第5問線形代数単位球面上の行列式レベル最大値の見方 / 端点の扱いあり
第6問—四元数群作用の商空間分解の要点 / 商の扱いあり
第7問—平面ベクトル場と零点指数有界性の見方 / 零点の見方あり
第8問—共役軌道とKKS形式固有性の本質 / 積分計算あり
第9問微分積分・解析Lpの弱収束とノルム採点上の注意あり
第10問情報SchurアルゴリズムとBlaschke積Schur変換 / 有限Blaschke積あり
第11問—2つの部分空間の角と射影射影になる条件 / 角度評価あり
第12問—自由Schrodinger核微分の正当化あり
第13問—スペクトル半径と勾配型反復反復の本質 / 符号に注意あり
第14問微分積分・解析ガンマ分布による平滑化と分布収束タイト性あり
第15問—Rodrigues型多項式零点あり
第16問—年齢構造付き感染症モデル全量保存 / 閾値あり
第17問—q変形sl2表現単項式で見る / 4次元部分表現あり
第18問—有向グラフの不可避集合有限グラフの見方あり

この年度の解説には採点上の注意2件・典型ミス1件が付いています。

2018年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に6テーマが出ています。

前年度(2017年度)との違い

大問数
2017年度 18問 → 2018年度 18問
両年度に出たテーマ
線形空間・基底
2017年度のページを見る

第1問 — 位数pの持ち上げ

見るべき元

有限体上の位数 pp の元は,標数 pp 特有の単冪元である。半単純な固有値を 追うのではなく,Jordan ブロック I+NI+N を持ち上げたときの pp 乗を p2p^2 で計算するのが最短である。

典型ミス

p≥5p\ge5 と p=3p=3 で ∑i2\sum i^2 の挙動が異なる。特に p=3p=3 では ∑i=02i2=2\sum_{i=0}^{2}i^2=2 が残るため,例外的に補正項で pNpN を消せる。

位数pの持ち上げの途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 交叉曲線の正則性

方針

第1段階は完全交叉曲線の非特異性判定である。極大イデアルの m/m2\mathfrak m/\mathfrak m^2 は接空間の双対なので,接空間が1次元であることを ヤコビ行列の階数で判定する。

採点上の注意

第2段階では,商が0次元になっている。ここでは「解が重なる」ことではなく, x2=0x^2=0 または y2=0y^2=0 型の重根が出ることが冪零元の発生である。

交叉曲線の正則性の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 尖点環上の二次曲面

幾何的な意味

[数式] は尖点をもつ曲線の座標環である。原点以外では tt を復元できるので正規化と変わらない。設問(2)はこの「原点以外では 正規化が同型」という事実を局所環で書いたものである。

最後の同型

二次式 u2+uv+v2=1u^2+uv+v^2=1 は,複素数上では双曲線 (u−ωv)(u−ω2v)=1(u-\omega v)(u-\omega^2v)=1 になる。従って座標環は Laurent 多項式環である。

尖点環上の二次曲面の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 円分体とクンマー拡大

方針

αp=pζp\alpha^p=p\zeta^p から,[数式] は pp 乗根の一段だけを含む。 一方 [数式] は pp\sqrt[p]{p} と p2p^2 乗根を同時に含むため, 次数がさらに pp 倍になる。

中間体の数え方

最後は体を直接書き下すより,ガロア群の部分群を数える方が安全である。 位数 p−1p-1 の補群が pp 個ある,という点を押さえればよい。

円分体とクンマー拡大の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 単位球面上の行列式レベル

最大値の見方

xw−yzxw-yz は2次元ベクトル2本の符号付き面積である。したがって ∣det⁡(u,v)∣≤∣u∣∣v∣|\det(u,v)|\le |u||v| と ∣u∣2+∣v∣2=1 |u|^2+|v|^2=1 から,最大値が 1/21/2 であることがすぐ分かる。

端点の扱い

α=1/2\alpha=1/2 は正則値ではない。ここを正則値定理だけで処理すると誤りになる。 等号成立条件を別に調べ,実際には円周になることを確認する。

解答

F(x,y,z,w)=xw−yz F(x,y,z,w)=xw-yz を S3S^3 上の関数と見る。2つのベクトル u=(x,y),v=(z,w) u=(x,y),\qquad v=(z,w) を使うと ∣F∣=∣det⁡(u,v)∣≤∣u∣ ∣v∣≤∣u∣2+∣v∣22=12. |F|=|\det(u,v)|\le |u|\,|v| \le \frac{|u|^2+|v|^2}{2}=\frac12. 従って α>1/2\alpha>1/2 では Mα=∅M_\alpha=\varnothing であり,空集合は閉部分多様体である。

0<α<1/20<\alpha<1/2 のとき,FF の S3S^3 上の臨界点を調べる。 Lagrange 未定乗数法より (w,−z,−y,x)=λ(x,y,z,w) (w,-z,-y,x)=\lambda(x,y,z,w) である。これから λ2=1\lambda^2=1 で,臨界値は F=±12 F=\pm\frac12 だけである。従って 0<α<1/20<\alpha<1/2 は正則値であり, Mα=F−1(α) M_\alpha=F^{-1}(\alpha) は S3S^3 の閉部分多様体である。

α=1/2\alpha=1/2 の場合は等号成立条件から ∣u∣=∣v∣=12,v=(−y,x) |u|=|v|=\frac1{\sqrt2},\qquad v=(-y,x) でなければならない。従って M1/2={12(cos⁡θ,sin⁡θ,−sin⁡θ,cos⁡θ)∣θ∈R} M_{1/2}= \left\{\frac1{\sqrt2}(\cos\theta,\sin\theta,-\sin\theta,\cos\theta) \mid \theta\in\R\right\} であり,これは円周である。

最終答

α>1/2\alpha>1/2 では空集合,0<α<1/20<\alpha<1/2 では S3S^3 内の滑らかな閉曲面,α=1/2\alpha=1/2 では円周である。いずれも S3S^3 の閉部分多様体である。

第6問 — 四元数群作用の商空間

分解の要点

UU では2つの成分が交わらない。一方 VV は境界トーラスを共有する。 この違いを見落とすと,(1) と (2) のホモロジーを取り違える。

商の扱い

JJ が2成分を交換する場合,商は「一方の成分を安定化部分群で割る」と見ればよい。 これにより計算はトーラスと固体トーラスの標準的なホモロジーに落ちる。

四元数群作用の商空間の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 平面ベクトル場と零点指数

有界性の見方

線形部は回転を伴う拡大だが,三次項が大きい半径で内向きに働く。半径二乗の微分を 直接評価すると,解が無限遠へ逃げないことが一行で分かる。

零点の見方

コンパクト台の摂動は無限遠でのベクトル場の向きを変えない。従って零点の存在は 境界の回転数,すなわち平面ベクトル場の指数で決まる。ここで回転数が 11 で あることを書けば,Brouwerの次数の言葉を使っても同じ証明になる。

平面ベクトル場と零点指数の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 共役軌道とKKS形式

固有性の本質

跡零の2次行列では,行列式と反対称部分を固定すると残りの成分が有界になる。 この低次元の座標計算が固有性の中身である。

積分計算

Z=C(1)Z=C(1) の軌道は2枚の双曲面として表せる。pp はその高さ r=c−br=c-b を読む写像であり,∣r∣≤A|r|\le A で切ると2枚の円板になる。 KKS形式が da∧ds/1+a2+s2da\wedge ds/\sqrt{1+a^2+s^2} になるため,最後は極座標積分だけで 終わる。

共役軌道とKKS形式の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — Lpの弱収束とノルム

方針

前半は LpL^p と LqL^q の双対性そのもの。後半は Hilbert 空間の弱収束で, 「弱収束 + ノルム収束 = 強収束」と「極限は閉線形包に入る」を使う。

採点上の注意

p=2p=2 の内積計算では,弱収束を g=fg=f に適用する。ここで ⟨fn,f⟩→⟨f,f⟩\langle f_n,f\rangle\to\langle f,f\rangle と書けることが決定的である。

Lpの弱収束とノルムの途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — SchurアルゴリズムとBlaschke積

Schur変換

ϕa\phi_a で値 a=f(0)a=f(0) を 00 に移し,さらに zz で割る操作が Schurアルゴリズムである。Schwarzの補題がそのまま ∣T(f)∣≤1|T(f)|\le1 を与える。

有限Blaschke積

境界で絶対値 11 を保つ正則関数は,円板内の零点をBlaschke因子で取り除くと 零点のない内関数になる。境界絶対値が 11 なので,最大値原理により残りは定数に ならざるを得ない。

SchurアルゴリズムとBlaschke積の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 2つの部分空間の角と射影

射影になる条件

和 P1+P2P_1+P_2 が再び射影になるのは,2つの射影が互いに干渉しない場合だけである。 これは P1P2=P2P1=0P_1P_2=P_2P_1=0,つまり部分空間の直交性に対応する。

角度評価

cos⁡θ\cos\theta は2つの部分空間の内積の最大値を測る量である。最後の不等式は 実質的に 2ab≤a2+b22ab\le a^2+b^2 と角度の定義を組み合わせた評価である。

2つの部分空間の角と射影の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 自由Schrodinger核

方針

核は自由Schrodinger方程式の基本解である。ノルム保存と近似評価はどちらも Fourier変換のPlancherel定理で処理するのが最も短い。

微分の正当化

ϕ\phi が急減少であるため,核を何回 t,xt,x で微分しても積分可能な優関数が取れる。 この条件があるので,偏微分方程式は核の恒等式を積分するだけで証明できる。

自由Schrodinger核の途中式・最終答をPDFで見る

第13問 — スペクトル半径と勾配型反復

反復の本質

反復法は解そのものではなく誤差を見る。誤差は毎回 I−αAI-\alpha A を掛けられるため, 収束条件はこの行列のスペクトル半径が 11 未満であることに尽きる。

符号に注意

(i) の AA は負定値なので,収束する α\alpha は負である。正定値の場合の 0<α<2/λmax⁡0<\alpha<2/\lambda_{\max} をそのまま当てはめると符号を誤る。

スペクトル半径と勾配型反復の途中式・最終答をPDFで見る

第14問 — ガンマ分布による平滑化と分布収束

方針

SkS_k は平均 11 のガンマ分布で,kk を大きくすると 11 の近くに集中する。 したがって XnSkX_nS_k の分布収束が全ての kk で分かれば,最後に SkS_k を 11 に近づけて XnX_n の分布収束を取り出せる。

タイト性

分布収束を示すには,まず XnX_n が無限遠へ逃げないことが必要である。 SkS_k が高確率で 1/21/2 以上であることを使うと,XnSkX_nS_k のタイト性から XnX_n のタイト性が従う。

ガンマ分布による平滑化と分布収束の途中式・最終答をPDFで見る

第15問 — Rodrigues型多項式

方針

これは区間 [0,1][0,1] 上のLegendre多項式である。Rodrigues公式から直交性を出し, 標準Legendre多項式のノルムをモニック化の係数で割ればよい。

零点

直交多項式の零点が区間内で単純になる理由は,符号変化零点の個数が不足すると, 低次多項式を掛けて内積を正にできてしまうからである。

Rodrigues型多項式の途中式・最終答をPDFで見る

第16問 — 年齢構造付き感染症モデル

全量保存

このモデルでは,感受性・感染性・回復後年齢構造を合わせた総量が N′=b−μNN'=b-\mu N に従う。初期値が b/μb/\mu 上にあれば,その超平面から出ない。

閾値

R0R_0 は感染者が少ないときの増殖率の符号を決める。R0<1R_0<1 では I′/II'/I が負に抑えられ,R0>1R_0>1 では SS が疾病なし平衡に近づくと 感染者が再び増えるため,完全消滅は矛盾する。

年齢構造付き感染症モデルの途中式・最終答をPDFで見る

第17問 — q変形sl2表現

単項式で見る

qθiq^{\theta_i} は次数を読む作用素である。したがって交換関係は抽象的に扱うより, 単項式 xinx_i^n へ作用させて確認するのが最も確実である。

4次元部分表現

λi=1\lambda_i=1 では各変数ごとに ⟨1,xi⟩\langle1,x_i\rangle が2次元表現になる。 そのテンソル積が WW であり,3次元成分と1次元成分へ分解するため,中心元 CC はそこで対角化される。

q変形sl2表現の途中式・最終答をPDFで見る

第18問 — 有向グラフの不可避集合

有限グラフの見方

AF⁡\operatorname{AF} は「どの無限パスもいつか入る」という条件である。有限グラフでは, これは補集合に有向閉路がないことと同じである。

EG⁡\operatorname{EG} の意味

EG⁡(X)\operatorname{EG}(X) は,XX の中だけで無限に動ける頂点である。したがって 単に不可避な4点を選ぶだけでは足りず,選んだ点が XX 内の閉路へ到達できるように 追加頂点が必要になる。

有向グラフの不可避集合の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目B 院試 過去問の収録19年度

  • 2026年度(全18問)

    整行列の部分環と格子加群 / Kummer拡大と四元数群 / 上三角群と双対数環上の持ち上げ

  • 2025年度(全18問)

    有限推移群の derangement / 三次商環の単元群 / 自己テンソルで消える加群

  • 2024年度(全18問)

    冪零行列のSL共役類 / 曲線特異点とHom加群 / 切断された次数付き加群

  • 2022年度(全18問)

    行列成分の軌道 / 平方零イデアルによる拡大 / 多項式環の自由性

  • 2020年度(全18問)

    Galois閉包と中間体 / 二変数多項式環の極大イデアル / 特異点の随伴次数環

  • 2019年度(全18問)

    余次元1の部分環 / 三項式の既約性 / 対称関数体と中間体

  • 2018年度(このページ・全18問)

    位数pの持ち上げ / 交叉曲線の正則性 / 尖点環上の二次曲面

  • 2017年度(全18問)

    部分格子と有限アーベル群 / 2重可移作用 / 二次超曲面の特異点

  • 2016年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    巡回商をもつ群拡大 / 三直線の座標環と巡回作用 / 有理関数体のガロア閉包

  • 2015年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    有限p群の共役類と既約表現 / 数値半群環の conductor / BGG 型複体

  • 2014年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    Artin--Schreier拡大 / 実代数曲線の極大イデアル / ファイバーと接空間次元

  • 2013年度(全18問)解答・最終答まで全文公開

    有限体上の2次一般線形群 / 3本の直線の有限被覆 / Nakayamaの補題と単項曲線

  • 2012年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有理関数体の不変体

  • 2011年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有限可換群と巡回因子

  • 2010年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    有限環の分解と単数群

  • 2007年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    半直積の正規部分群

  • 2006年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    分解体と中間体

  • 2005年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    行列の位数

  • 2004年度(全1問)解答・最終答まで全文公開

    線形写像の階数