院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2016年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2016年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 巡回商をもつ群拡大

持ち上げの取り方

商の生成元の持ち上げ tt は一意でないが,tn=amt^n=a^mmmnn を法としてしか意味を持たない。Smith標準形に直すと, アーベルな場合の不変量は gcd(n,m)\gcd(n,m) だけである。

非可換な場合

Aut(Z)\operatorname{Aut}(\mathbb Z) の非自明元は反転だけである。 したがって非可換な拡大は,商の位数が偶数のときに限って現れる。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

正規部分群を N=aZN=\langle a\rangle\simeq\mathbb Z とし, G/NG/N の生成元の持ち上げを tGt\in G とる。共役作用により tat1=aε,ε{1,1} t a t^{-1}=a^\varepsilon,\qquad \varepsilon\in\{1,-1\} と書ける。これは準同型 Z/nZAut(Z)={±1}\mathbb Z/n\mathbb Z\to \operatorname{Aut}(\mathbb Z)=\{\pm1\} で決まるので,nn が奇数なら ε=1\varepsilon=1 である。したがって a,ta,t は可換で,この場合 GG はアーベル群である。

(2)

ε=1\varepsilon=1 の場合は G=a,t[a,t]=1, tn=am G=\langle a,t\mid [a,t]=1,\ t^n=a^m\rangle と書ける。持ち上げを tarta^r に替えると mmm+nrm+nr に替わるので, 群の同型類は d=gcd(n,m)d=\gcd(n,m) で決まり, GZZ/dZ(dn) G\simeq \mathbb Z\oplus \mathbb Z/d\mathbb Z \qquad (d\mid n) である。

ε=1\varepsilon=-1 の場合は nn が偶数でなければならない。このとき tn=amt^n=a^mtt で共役すると am=ama^m=a^{-m} となり, aa は無限位数だから m=0m=0 である。従って Ga,ttn=1, tat1=a1ZZ/nZ G\simeq \langle a,t\mid t^n=1,\ tat^{-1}=a^{-1}\rangle \simeq \mathbb Z\rtimes \mathbb Z/n\mathbb Z であり,商の生成元は Z\mathbb Z に反転で作用する。

最終答

n が奇数なら G はアーベル群. n\text{ が奇数なら }G\text{ はアーベル群}. 一般には GZZ/dZ (dn) \boxed{G\simeq \mathbb Z\oplus\mathbb Z/d\mathbb Z\ (d\mid n)} または,nn 偶数のときだけ GZZ/nZ,1Z/nZ が aa1 で作用 \boxed{G\simeq \mathbb Z\rtimes\mathbb Z/n\mathbb Z,\quad 1\in\mathbb Z/n\mathbb Z\text{ が }a\mapsto a^{-1}\text{ で作用}} が起こる。

2 — 三直線の座標環と巡回作用

幾何で見る

AA は三本の直線の和集合の座標環である。自己同型はその三本を巡回させるだけなので, 不変関数は「一本の直線上の多項式を三本に同じ規則で貼る」ものになる。

貼り合わせ条件

交点で値が一致しないと座標環の元にならない。この条件が p(0)=p(1)p(0)=p(1) であり, 有限余次元性はこの一つの線形条件から従う。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

以下 x=Xˉ, y=Yˉ, z=1xyx=\bar X,\ y=\bar Y,\ z=1-x-y とおく。このとき AC[x,y,z]/(x+y+z1, xyz) A\simeq \mathbb C[x,y,z]/(x+y+z-1,\ xyz) であり,φ\varphixy,yz,zx x\mapsto y,\qquad y\mapsto z,\qquad z\mapsto x という三つの成分の巡回置換である。

(1)

最小素イデアルは (x),(y),(z) (x),\qquad (y),\qquad (z) である。さらに各成分はアフィン直線なので,閉点に対応する素イデアルは (x,yc),(y,xc),(z,xc)(cC) (x,y-c),\qquad (y,x-c),\qquad (z,x-c) \qquad (c\in\mathbb C) で尽くされる。ただし交点では同じ極大イデアルが重複して表れる。

(2)

元の表示に戻すと z=1XYz=1-X-Y であり, XY,YXY+1=z X\mapsto Y,\qquad Y\mapsto -X-Y+1=z x,y,zx,y,z の巡回置換である。従って関係式 xyz=0xyz=0 を保つ。 逆写像も巡回置換の逆で与えられるので,条件を満たす自己同型は存在し, x,yx,y が環 AA を生成するため一意である。

(3)

不変部分環 B=AφB=A^{\langle\varphi\rangle} を,成分 x=0x=0 へ制限する。 この成分では y=t, z=1ty=t,\ z=1-t と書ける。制限写像 ψ:BC[t] \psi:B\longrightarrow \mathbb C[t] は単射で,像は ψ(B)={p(t)C[t]p(0)=p(1)} \psi(B)=\{p(t)\in\mathbb C[t]\mid p(0)=p(1)\} である。実際,三つの直線上の値は巡回対称性で一つの多項式 p(t)p(t) から決まり, 三つの交点で貼り合わさる条件が p(0)=p(1)p(0)=p(1) である。 従って C[t]/ψ(B)\mathbb C[t]/\psi(B) は一次元である。

最終答

SpecA={(x),(y),(z)}{(x,yc),(y,xc),(z,xc)cC} \operatorname{Spec}A=\{(x),(y),(z)\}\cup \{(x,y-c),(y,x-c),(z,x-c)\mid c\in\mathbb C\} であり, ψ(B)={p(t)C[t]p(0)=p(1)},dimCC[t]/ψ(B)=1. \psi(B)=\{p(t)\in\mathbb C[t]\mid p(0)=p(1)\},\qquad \dim_{\mathbb C}\mathbb C[t]/\psi(B)=1.

3 — 有理関数体のガロア閉包

分解体の見方

X4X4=sX^4-X^{-4}=sXX について八次方程式 X8sX41=0 X^8-sX^4-1=0 を与える。根は XX の四倍と逆数型の四倍からなるため, 四乗根と複素共役を同時に追う必要がある。

位数8の元

単に XζX1X\mapsto \zeta X^{-1} とするだけでは二乗して恒等に戻る。 複素共役も同時に作用させることで σ2(X)=iX\sigma^2(X)=-iX となり, 八回で初めて元に戻る。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

s=X4X4s=X^4-X^{-4} とおく。u=X4u=X^4 とすれば u2su1=0 u^2-su-1=0 である。従ってまず uuF=R(s)F=\mathbb R(s) 上二次であり, XXuu の四乗根である。分解体には iiζ=exp(πi/4)\zeta=\exp(\pi i/4) を含めれば十分なので, L=C(X) L=\mathbb C(X) と見てよい。

C(s)C(X)\mathbb C(s)\subset\mathbb C(X) の次数は有理写像 XX4X4 X\longmapsto X^4-X^{-4} の次数であり 88 である。さらに定数体の拡大 C/R\mathbb C/\mathbb R が二次なので [L:F]=16. [L:F]=16.

(2)

σ\sigmaσ(i)=i,σ(X)=ζX1 \sigma(i)=-i,\qquad \sigma(X)=\zeta X^{-1} で定めると, (ζX1)4(ζX1)4=X4+X4=s (\zeta X^{-1})^4-(\zeta X^{-1})^{-4} =-X^{-4}+X^4=s であるから σGal(L/F)\sigma\in\operatorname{Gal}(L/F) である。また σ2(X)=ζ1(ζX1)1=ζ2X=iX \sigma^2(X)=\zeta^{-1}(\zeta X^{-1})^{-1}=\zeta^{-2}X=-iX となるので,σ\sigma は位数 88 をもつ。

(3)

四次部分拡大は,位数 44 の部分群の固定体として得る。実用上は R(X4),R(i(X4+X4)),R(X2+X2),R(i(X2X2)) \mathbb R(X^4),\quad \mathbb R(i(X^4+X^{-4})),\quad \mathbb R(X^2+X^{-2}),\quad \mathbb R(i(X^2-X^{-2})) およびこれらを σ\sigma の作用で移したものとして列挙できる。 いずれも FF 上四次であり,対応する部分群を調べると重複を除いて全てである。

最終答

[L:F]=16,Gal(L/F) は位数 8 の元をもつ. [L:F]=16,\qquad \operatorname{Gal}(L/F)\text{ は位数 }8\text{ の元をもつ}. 四次部分拡大は位数 44 の部分群の固定体であり,上の四種類とその共役で尽くされる。

4 — sl2型の重み分解

重みを先に見る

微分作用素を単項式に直接作用させると,HH は対角化される。 この問題は重み分解を見つければ,残りは標準的な sl2\mathfrak{sl}_2 計算になる。

係数の検算

n=1n=1 では EFv=Hv=(2m2p)vEFv=Hv=(2m-2p)v となる。これが an(p)a_n^{(p)} の積公式の初項と一致するかを確認すると符号を間違えにくい。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

単項式 xiyjzkwx^iy^jz^kw^\ell では i+j=m,k+=m,p=i+k i+j=m,\qquad k+\ell=m,\qquad p=i+k である。計算すると H=EFFE=yy+wwxxzz. H=EF-FE =y\frac{\partial}{\partial y}+w\frac{\partial}{\partial w} -x\frac{\partial}{\partial x}-z\frac{\partial}{\partial z}. 従って WpW_p 上の固有値は (j+)(i+k)=2m2p (j+\ell)-(i+k)=2m-2p である。

i+k=pi+k=p を満たす組 (i,k)(i,k) の個数は dimWp={p+1,0pm,2mp+1,mp2m. \dim W_p= \begin{cases} p+1,&0\le p\le m,\\ 2m-p+1,&m\le p\le 2m. \end{cases} よって固有値 2m2p2m-2p の重複度はこの値である。

(2)

また F=xy+zwF=x\partial_y+z\partial_wi+ki+k を一つ増やすので F(Wp)Wp+1. F(W_p)\subset W_{p+1}.

(3)

さらに E,F,HE,F,H[H,E]=2E,[H,F]=2F,[E,F]=H [H,E]=2E,\qquad [H,F]=-2F,\qquad [E,F]=H を満たす。従って vWpkerEv\in W_p\cap\ker E は最高重みベクトルで, λ=2m2p\lambda=2m-2p とおくと EnFnv=n!λ(λ1)(λn+1)v. E^nF^n v =n!\lambda(\lambda-1)\cdots(\lambda-n+1)v. すなわち an(p)=n!r=0n1(2m2pr). a_n^{(p)} =n!\prod_{r=0}^{n-1}(2m-2p-r).

(4)

最後に 0p<m0\le p<m では WpW_p から始まる既約成分が WpWp+1W2mp W_p\to W_{p+1}\to\cdots\to W_{2m-p} を張るので,F2m2p:WpW2mpF^{2m-2p}:W_p\to W_{2m-p} は単射である。 両辺の次元は同じ p+1p+1 だから全単射である。

最終答

固有値 2m2p の重複度={p+1,0pm,2mp+1,mp2m \boxed{\text{固有値 }2m-2p\text{ の重複度}= \begin{cases} p+1,&0\le p\le m,\\ 2m-p+1,&m\le p\le 2m \end{cases}} an(p)=n!r=0n1(2m2pr) \boxed{a_n^{(p)}=n!\prod_{r=0}^{n-1}(2m-2p-r)} かつ 0p<m0\le p<mF2m2p:WpW2mpF^{2m-2p}:W_p\to W_{2m-p} は全単射である。

5 — 射影二次曲面と無限遠平面

二次曲面の滑らかさ

射影二次超曲面では,対応する二次形式の退化性だけを調べればよい。 偏微分を四つ書いても同じ判定になる。

交わりは横断的ではない

k<1|k|<1 のとき交わりは一点だが,接空間は一致している。 集合としての交わりが一点であることと,横断的に交わることは別である。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

XX は二次形式 x0x3x122kx1x2x22 x_0x_3-x_1^2-2kx_1x_2-x_2^2 の零点である。この二次形式が非退化であることと,射影二次曲面が滑らかであることは同値である。 (x1,x2)(x_1,x_2) 部分の行列は (1kk1) \begin{pmatrix}1&k\\ k&1\end{pmatrix} なので,退化するのは k=±1k=\pm1 のときに限る。従って X が滑らかk±1. X\text{ が滑らか}\Longleftrightarrow k\ne\pm1.

(2)

YY 上では x0=0x_0=0 であり,交わりは x12+2kx1x2+x22=0 x_1^2+2kx_1x_2+x_2^2=0 で与えられる。k2<1k^2<1 なら実解は x1=x2=0x_1=x_2=0 のみで, XY={(0:0:0:1)} X\cap Y=\{(0:0:0:1)\} となるから相対位相で 00 次元多様体である。 一方 k2>1k^2>1 なら二本の実射影直線の和になり,交点で局所的に直線の交差となるため 位相多様体ではない。

従って (1)(1) の条件のもとで XYX\cap Y が位相多様体となるのは k<1 |k|<1 である。

(3)

このとき点 p=(0:0:0:1)p=(0:0:0:1) の近傍で x3=1x_3=1 とおくと, x0=x12+2kx1x2+x22. x_0=x_1^2+2kx_1x_2+x_2^2. よって TpX={dx0=0}T_pX=\{dx_0=0\} であり,YYx0=0x_0=0 だから TpY={dx0=0}. T_pY=\{dx_0=0\}. 従って dim(TpXTpY)=2. \dim(T_pX\cap T_pY)=2.

最終答

X が滑らかk±1,XY が位相多様体k<1. X\text{ が滑らか}\Longleftrightarrow k\ne\pm1,\qquad X\cap Y\text{ が位相多様体}\Longleftrightarrow |k|<1. その場合,唯一の交点で dim(TpXTpY)=2. \boxed{\dim(T_pX\cap T_pY)=2}.

6 — 複素二次超曲面の変形収縮

実部と虚部に分ける

zj2=1\sum z_j^2=1 はエルミートノルムではなく二次形式である。 実部と虚部に分けると,実部が虚部より一つ分だけ長いことが分かる。

なぜ切断が作れるか

S3S^3 にはいたるところ消えない接ベクトル場がある。 その方向へ少し虚部を足し,実部を補正すれば XSX\setminus S に入ったまま π\pi の右逆が得られる。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

zj=aj+ibjz_j=a_j+ib_j と書く。条件 zj2=1\sum z_j^2=1aj2bj2=1,ajbj=0 \sum a_j^2-\sum b_j^2=1,\qquad \sum a_jb_j=0 と同値である。B=bj2B=\sum b_j^2 とすれば aj2=1+B\sum a_j^2=1+B だから, π(z)=a1+BS \pi(z)=\frac{a}{\sqrt{1+B}}\in S である。

変形 Ht(z)=a+itb1+(1t2)B(0t1) H_t(z)= \frac{a+itb}{\sqrt{1+(1-t^2)B}} \qquad (0\le t\le1) を考える。分子の二乗和は (1+B)t2B=1+(1t2)B (1+B)-t^2B=1+(1-t^2)B なので Ht(z)XH_t(z)\in X である。H1=idXH_1=\operatorname{id}_XH0=πH_0=\pi と自然な包含 SXS\hookrightarrow X の合成であるから, π\pi はホモトピー同値である。

(2)

次に S3S^3 上の非零接ベクトル場 J(x1,x2,x3,x4)=(x2,x1,x4,x3) J(x_1,x_2,x_3,x_4)=(-x_2,x_1,-x_4,x_3) を用いる。任意の ε>0\varepsilon>0 に対し f(s)=1+ε2s+iεJ(s) f(s)=\sqrt{1+\varepsilon^2}\,s+i\varepsilon J(s) とおけば,fj(s)2=1\sum f_j(s)^2=1,かつ f(s)Sf(s)\notin S である。また π(f(s))=s\pi(f(s))=s である。

最終答

π:XS はホモトピー同値写像. \pi:X\to S\text{ はホモトピー同値写像}. さらに f(s)=1+ε2s+iεJ(s) f(s)=\sqrt{1+\varepsilon^2}\,s+i\varepsilon J(s) により πf=idS\pi\circ f=\operatorname{id}_S となる f:SXSf:S\to X\setminus S が存在する。

7 — 三次元平坦多様体のホモロジー

写像トーラスとして見る

C×R\mathbb C\times\mathbb R を先に格子で割ると (C/Λ)×R(\mathbb C/\Lambda)\times\mathbb R になり,残る操作は 高さ xx+1x\mapsto x+1 とトーラス自己同型の同一視である。

ねじれの出所

det(AI)=3\det(A-I)=3 が一次ホモロジーの三 torsion を生む。 ここを単に Z3\mathbb Z^3 としてしまうのが典型的な誤りである。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

Λ=Z+ZξC\Lambda=\mathbb Z+\mathbb Z\xi\subset\mathbb C とおくと, t1,t2t_1,t_2 は各高さでトーラス C/Λ\mathbb C/\Lambda を作る。 α\alpha は高さを一つ進めると同時に,トーラスに zωz,ω=1+3i2 z\longmapsto \omega z,\qquad \omega=\frac{-1+\sqrt3 i}{2} を作用させる。これは格子を保つので,商はトーラス自己同型の写像トーラスである。 従ってコンパクトな三次元 CC^\infty 多様体になる。

(2)

基底 1,ξ1,\xiω\omega の作用を表すと A=(1110) A= \begin{pmatrix} -1&-1\\ 1&0 \end{pmatrix} である。写像トーラスの一次ホモロジーは H1(M;Z)Zcoker(AI). H_1(M;\mathbb Z)\simeq \mathbb Z\oplus \operatorname{coker}(A-I). ここで AI=(2111),det(AI)=3 A-I= \begin{pmatrix} -2&-1\\ 1&-1 \end{pmatrix}, \qquad \det(A-I)=3 なので coker(AI)Z/3Z\operatorname{coker}(A-I)\simeq \mathbb Z/3\mathbb Z である。 また AA は向きを保つので H2H_2 には底の円方向に対応する自由部分が残り, 標準的なWang完全列から H0Z,H1ZZ/3Z,H2Z,H3Z H_0\simeq\mathbb Z,\quad H_1\simeq\mathbb Z\oplus\mathbb Z/3\mathbb Z,\quad H_2\simeq\mathbb Z,\quad H_3\simeq\mathbb Z を得る。

最終答

Hk(M;Z){Z,k=0,ZZ/3Z,k=1,Z,k=2,Z,k=3,0,otherwise. \boxed{ H_k(M;\mathbb Z)\simeq \begin{cases} \mathbb Z,&k=0,\\ \mathbb Z\oplus\mathbb Z/3\mathbb Z,&k=1,\\ \mathbb Z,&k=2,\\ \mathbb Z,&k=3,\\ 0,&\text{otherwise}. \end{cases}}

8 — 光円錐上の不変一形式

座標で一度計算する

抽象的に不変性を追うより,まず円錐を (r,θ)(r,\theta) で書くと一形式が rdθ-r\,d\theta まで簡単になる。

完全性の判定

閉形式でも,円周方向の周期が残ると完全ではない。 dθd\theta は局所的には微分だが,円周全体では一価のポテンシャルを持たない。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

MM は二次形式 x2+y2z2x^2+y^2-z^2 の零錐から原点を除いたものである。 Q=2(x,y,z)\nabla Q=2(x,y,-z)MM 上で消えないので,MMCC^\infty 多様体である。また SO(2,1)SO(2,1) は同じ符号の成分上で推移的に作用し, 二つの成分も群の元で移り合うため,MM 全体に推移的に作用する。

成分 z>0z>0x=rcosθ,y=rsinθ,z=r x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta,\qquad z=r とおくと,問題の一形式は計算により

(2)

α=rdθ \alpha=-r\,d\theta となる。これは座標表示の特異性を除けば滑らかに延長でき,別の成分でも同様である。

(3)

この表示は円錐の半径方向と角度方向だけに依存するので, ローレンツ変換による作用で不変である。

(4)

さらに x2+y2+z2=2r2x^2+y^2+z^2=2r^2 だから β=(x2+y2+z2)α=2r2+1dθ. \beta_\ell=(x^2+y^2+z^2)^\ell\alpha =-2^\ell r^{2\ell+1}\,d\theta. 従って dβ=2(2+1)r2drdθ. d\beta_\ell=-2^\ell(2\ell+1)r^{2\ell}\,dr\wedge d\theta. よって閉形式となるための条件は 2+1=0,=12 2\ell+1=0,\qquad \ell=-\frac12 である。このとき β1/2\beta_{-1/2} は定数倍の dθd\theta であり, 各円周の一周積分が 00 でないため完全形式ではない。

最終答

β が閉形式=12. \boxed{\beta_\ell\text{ が閉形式}\Longleftrightarrow \ell=-\frac12.} この場合も β\beta_\ell は完全形式ではない。

9 — Schwarz--Christoffel 型微分方程式

角度と冪

απ\alpha\pi の頂点へ写す正則写像は,局所的に zαz^\alpha 型になる。 この冪の指数が,対数微分の留数として現れる。

全留数の確認

有理型関数として球面へ延長した後は,有限の極の留数だけで式が決まる。 無限遠点を別に計算しなくても,球面上の全留数が零であることが検算になる。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

頂点 w0w_0 に対応する点は z=0z=0 である。角が α0π\alpha_0\pi なので, 局所的には f(z)w0=zα0φ(z) f(z)-w_0=z^{\alpha_0}\varphi(z) と書ける。ただし φ\varphi は円板で正則で φ(0)0\varphi(0)\ne0 である。 これは境界の折れ角を反映した標準的な局所表示である。

(2)

F=logfF=\log f' とおく。三角形の辺上では接線方向が一定で,頂点でだけ角度が跳ぶ。 Schwarz反射を各辺に適用すると,FF' はリーマン球面上の有理型関数に延長する。 特異点は 0,1,0,1,\infty に限られ,z=0z=0 では f(z)=zα01{α0φ(z)+zφ(z)} f'(z)=z^{\alpha_0-1}\{\alpha_0\varphi(z)+z\varphi'(z)\} だから FF' の留数は α01\alpha_0-1 である。同様に z=1z=1 での留数は α11\alpha_1-1 である。無限遠点での留数は全留数の和が 00 になることで決まる。

(3)

従って F(z)=α01z+α11z1. F'(z)=\frac{\alpha_0-1}{z}+\frac{\alpha_1-1}{z-1}. すなわち f(z)f(z)=α01z+α11z1. \frac{f''(z)}{f'(z)} =\frac{\alpha_0-1}{z}+\frac{\alpha_1-1}{z-1}.

最終答

f(z)w0=zα0φ(z),φ(0)0, f(z)-w_0=z^{\alpha_0}\varphi(z),\qquad \varphi(0)\ne0, かつ f(z)=(α01z+α11z1)f(z). \boxed{ f''(z)= \left( \frac{\alpha_0-1}{z}+\frac{\alpha_1-1}{z-1} \right)f'(z)}.

10 — 最大値原理とHopfの補題

バリア関数

指数関数型の vv は,ラプラシアンの符号を bρ1b\rho-1 で制御できるため, 環状領域の境界に合わせやすい。

符号の向き

Δ(uv)<0\Delta(u-v)<0 なので uvu-v は下に凸ではなく,上調和的に振る舞う。 内部最小がないことと,境界での法線微分の向きを混同しないことが重要である。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

ρ=x2+(yr)2\rho=x^2+(y-r)^2 とおく。領域 AA では r24<ρ<r2 \frac{r^2}{4}<\rho<r^2 である。関数 v(x,y)=a{ebρebr2} v(x,y)=a\{e^{-b\rho}-e^{-br^2}\} について Δv=4abebρ(bρ1). \Delta v=4ab e^{-b\rho}(b\rho-1). 従って b>4/r2b>4/r^2 とすれば AA 上で Δv>0\Delta v>0 である。 外側境界では v=0v=0,内側境界では vv は正の定数である。 内側境界上の uu は正の最小値を持つので,a>0a>0 を十分小さく取れば uvon A u\ge v\quad\text{on }\partial A となる。

(2)

w=uvw=u-v とおくと Δw=ΔuΔv<0 \Delta w=\Delta u-\Delta v<0 である。もし wwAA 内で極小値を持てば,その点で Δw0\Delta w\ge0 となって矛盾する。従って ww は内部に極小点を持たない。

(3)

境界点 (0,0)(0,0) では w(0,0)=0w(0,0)=0 で,近傍内では w0w\ge0 である。 外側円の内向き法線は yy 正方向なので,Hopfの補題から wy(0,0)>0. \frac{\partial w}{\partial y}(0,0)>0. また vy(0,0)=2abrebr2>0 \frac{\partial v}{\partial y}(0,0)=2abr e^{-br^2}>0 である。よって uy(0,0)=wy(0,0)+vy(0,0)>0. \frac{\partial u}{\partial y}(0,0) =\frac{\partial w}{\partial y}(0,0)+\frac{\partial v}{\partial y}(0,0)>0.

最終答

適当な a,b>0a,b>0Δv>0\Delta v>0 かつ A\partial Auvu\ge v とできる。 このとき uvu-v は内部極小を持たず, uy(0,0)>0 \boxed{\frac{\partial u}{\partial y}(0,0)>0} が従う。

11 — 積分の一様可積分性

収束定理の使い分け

(1)(1) は可積分関数の尾部が消えるという基本事実で,単調収束定理そのもの。 (2)(2) では点wise収束だけでなく積分値の収束を併用し, 切断関数 min(fn,K)\min(f_n,K) に有界収束定理を使う。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

f0f\ge0 が可積分なので,単調収束定理より {fK}fdμ0(K) \int_{\{f\ge K\}} f\,d\mu\downarrow 0 \qquad (K\to\infty) である。

(2)

K>0K>0 に対し fn1{fnK}2(fnmin{fn,K/2}) f_n\mathbf 1_{\{f_n\ge K\}} \le 2\left(f_n-\min\{f_n,K/2\}\right) が成り立つ。仮定より fndμfdμ\int f_n\,d\mu\to\int f\,d\mu であり, また μ(X)<\mu(X)<\infty だから有界収束定理により Xmin{fn,K/2}dμXmin{f,K/2}dμ. \int_X \min\{f_n,K/2\}\,d\mu \to \int_X \min\{f,K/2\}\,d\mu. 従って lim supn{fnK}fndμ2X(fmin{f,K/2})dμ. \limsup_{n\to\infty}\int_{\{f_n\ge K\}}f_n\,d\mu \le 2\int_X\left(f-\min\{f,K/2\}\right)d\mu. 右辺は (1)(1) により KK\to\infty00 に収束する。

最終答

limK{fK}fdμ=0, \lim_{K\to\infty}\int_{\{f\ge K\}}f\,d\mu=0, かつ limKsupn1{fnK}fndμ=0. \boxed{ \lim_{K\to\infty}\sup_{n\ge1} \int_{\{f_n\ge K\}}f_n\,d\mu=0}.

12 — L infinityの特異汎関数

双対空間の大きさ

(L1)=L(L^1)^*=L^\infty はよく使うが,(L)(L^\infty)^*L1L^1 よりずっと大きい。点評価を延長した汎関数はその典型例である。

矛盾の作り方

連続関数で原点だけを細く見る近似を取ると,点評価は常に 11 だが, L1L^1 密度による積分は小区間の絶対連続性で 00 に落ちる。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

BC(R)BC(\mathbb R) 上の汎関数 Λ(φ)=φ(0) \Lambda(\varphi)=\varphi(0) は上限ノルムに関して有界で,Λ=1\|\Lambda\|=1 である。 BC(R)BC(\mathbb R) は自然に L(R)L^\infty(\mathbb R) の部分空間と見なせるので, Hahn--Banachの定理により Λ\Lambdaf(L(R)) f\in (L^\infty(\mathbb R))^* へ同じノルムで延長できる。この ff は任意の φBC(R)\varphi\in BC(\mathbb R) に対して f(φ)=φ(0) f(\varphi)=\varphi(0) を満たす。

(2)

次に,もしある vL1(R)v\in L^1(\mathbb R) が存在して f(u)=Ru(x)v(x)dx(uL(R)) f(u)=\int_{\mathbb R}u(x)v(x)\,dx \qquad (u\in L^\infty(\mathbb R)) と表せたとする。特に連続有界関数 φ\varphi について φ(0)=Rφ(x)v(x)dx \varphi(0)=\int_{\mathbb R}\varphi(x)v(x)\,dx である。

そこで 0φn10\le\varphi_n\le1φn(0)=1\varphi_n(0)=1suppφn(1/n,1/n)\operatorname{supp}\varphi_n\subset(-1/n,1/n) となる連続関数を取ると, 1=φn(0)=φnvdx. 1=\varphi_n(0)=\int \varphi_n v\,dx. しかし vL1v\in L^1 だから絶対連続性により右辺は nn\to\infty00 に収束する。 矛盾である。

最終答

Hahn--Banachにより評価汎関数の延長 f(L)f\in(L^\infty)^* が存在する。 この ffL1L^1 関数による積分表示を持たない。

13 — 合流型超幾何方程式への帰着

最初の置換

原点の特性指数は ±λ\pm\lambda であり,境界条件から xλx^\lambda を選ぶ。 無限遠では ±x\pm x の指数が出るので,減衰する exe^{-x} を先に取り除く。

量子化条件

合流型超幾何関数が多項式で止まる条件が,ここでの固有値条件である。 この条件がないと,無限遠での減衰と原点での正則性を同時に満たせない。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

方程式を x2y+xy+(axx2λ2)y=0 x^2y''+xy'+(ax-x^2-\lambda^2)y=0 と書き直す。境界条件から x=0x=0 では xλx^\lambda 型, x=x=\infty では exe^{-x} 型を選ぶべきなので y=xλexu(x) y=x^\lambda e^{-x}u(x) とおく。代入して整理すると xu+(2λ+12x)u+(a2λ1)u=0. xu''+(2\lambda+1-2x)u'+(a-2\lambda-1)u=0. さらに t=2xt=2x とおくと tutt+(2λ+1t)ut+a2λ12u=0. t u_{tt}+(2\lambda+1-t)u_t+\frac{a-2\lambda-1}{2}u=0. これは Laguerre 方程式である。

無限遠で増大する解を避けるには,級数が多項式で止まる必要がある。 従って a2λ12=NZ0. \frac{a-2\lambda-1}{2}=N\in\mathbb Z_{\ge0}. このとき uu は一般化 Laguerre 多項式になり, y=xλexLN(2λ)(2x) y=x^\lambda e^{-x}L_N^{(2\lambda)}(2x) は両端で要求された境界条件を満たす非零解である。 逆にこの整数条件がないと,独立解の一方は原点で許されず, 原点で許される解は無限遠で指数的に増大する成分を持つ。

最終答

a=2λ+1+2N(N=0,1,2,) \boxed{a=2\lambda+1+2N\quad(N=0,1,2,\ldots)} が必要十分条件である。

14 — ランダム添字付きPoisson列

独立ではない点

UjU_j は同じ YkY_k を共有し得るので,無条件には独立ではない。 しかし YY 全体で条件付けると,ランダム性は XjX_j だけになり独立平均として扱える。

極限の意味

極限は単なる定数 λ\lambda ではなく,環境 YY に依存する pkYk\sum p_kY_k である。この違いがこの問題の要点である。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

Poisson分布はすべての次数のモーメントを持つので, E[Ykp]<(p=1,2,) E[Y_k^p]<\infty\qquad (p=1,2,\ldots) である。さらに XjX_jYkY_k たちと独立であり,

(2)

Uj=YXj U_j=Y_{X_j} は Poisson 分布の同じ族からランダムに一つ選んだものである。従って E[Ujp]=k=0P(Xj=k)E[Ykp]=E[Y0p]<. E[U_j^p] =\sum_{k=0}^\infty P(X_j=k)E[Y_k^p] =E[Y_0^p]<\infty.

(3)

特に E[Uj]=λ. E[U_j]=\lambda.

(4)

条件付きに見ると分かりやすい。Y=(Y0,Y1,)Y=(Y_0,Y_1,\ldots) を固定すると, U0,U1,U_0,U_1,\ldotsXjX_j の独立性により独立同分布で,条件付き平均は S=E[U0Y]=k=0pkYk,pk=eλλkk!. S_\infty =E[U_0\mid Y] =\sum_{k=0}^\infty p_kY_k,\qquad p_k=e^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}. この級数は L2L^2 で収束する。条件付き分散は有限なので E[SnS2Y]=1nVar(U0Y) E\left[|S_n-S_\infty|^2\mid Y\right] =\frac{1}{n}\operatorname{Var}(U_0\mid Y) となり,両辺の期待値を取れば E[SnS2]0. E[|S_n-S_\infty|^2]\to0.

(5)

四次モーメントについても条件付き独立性と Poisson 分布の四次モーメントの有限性から {Sn4}\{S_n^4\} は一様可積分で,SnSS_n\to S_\inftyL4L^4 でも成り立つ。 従って limnE[Sn4]=E[S4] \lim_{n\to\infty}E[S_n^4]=E[S_\infty^4] が存在する。

最終答

E[Ykp]<,E[Ujp]<,E[Uj]=λ. E[Y_k^p]<\infty,\qquad E[U_j^p]<\infty,\qquad E[U_j]=\lambda. S=k=0eλλkk!Yk \boxed{S_\infty=\sum_{k=0}^\infty e^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!}Y_k} に対して SnSS_n\to S_\infty in L2L^2。また limnE[Sn4] は存在し E[S4] に等しい. \boxed{\lim_{n\to\infty}E[S_n^4]\text{ は存在し }E[S_\infty^4]\text{ に等しい}.}

15 — 正の積分作用素の不動点

下解と上解

まず小さい正関数 gg を作り,Lgg\mathcal Lg\ge g とする。 その上で有界な閉凸集合に作用素を閉じ込めるのが存在証明の流れである。

一意性の核心

非線形性 1et1-e^{-t} は正で厳密に劣線形である。 (4)(4) の不等式により,二つの正の不動点を定数倍で比較すると上限を少し改善できる。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

関数 1ett \frac{1-e^{-t}}{t} t0t\downarrow011 に収束する。従って任意の 0<ε<10<\varepsilon<1 に対し, 十分小さい x>0x^*>0 を取れば 0tx1et(1ε)t 0\le t\le x^*\quad\Longrightarrow\quad 1-e^{-t}\ge(1-\varepsilon)t が成り立つ。これを t=f(x)t=f(x) に適用すればよい。

(2)

(1ε)R>1(1-\varepsilon)R>1 とし,g=ck1g=c k_1 とおく。 c>0c>0 を十分小さく取れば 0<gx0<g\le x^* である。すると (Lg)(x)(1ε)01k(x,y)g(y)dy(1ε)ck1(x)01k1(y)k2(y)dy>(ck1)(x)=g(x). (\mathcal Lg)(x) \ge (1-\varepsilon)\int_0^1 k(x,y)g(y)\,dy \ge (1-\varepsilon)c k_1(x)\int_0^1k_1(y)k_2(y)\,dy >(ck_1)(x)=g(x).

(3)

閉凸集合 C={fΩgfx} C=\{f\in\Omega\mid g\le f\le x^*\} を考える。上の不等式と 1ett1-e^{-t}\le t から,ccxx^* を調整すれば L(C)C\mathcal L(C)\subset C とできる。また L(C)\mathcal L(C) は同程度連続かつ有界である。 Arzela--AscoliとSchauderの不動点定理により,L\mathcal LCC に非自明な不動点を持つ。

(4)

0<θ<10<\theta<1 なら 1eθt>θ(1et) 1-e^{-\theta t}>\theta(1-e^{-t}) である。これは h(t)=1eθtθ(1et) h(t)=1-e^{-\theta t}-\theta(1-e^{-t}) とおくと h(0)=0h(0)=0h(t)=θ(eθtet)>0 h'(t)=\theta(e^{-\theta t}-e^{-t})>0 であることから従う。

(5)

f1,f2f_1,f_2 を非自明な不動点とする。強正性から両者は正である。 S={μRf1(x)μf2(x) x} S=\{\mu\in\mathbb R\mid f_1(x)\ge \mu f_2(x)\ \forall x\} は上に有界で,上限 θ\theta を持つ。正性から θ>0\theta>0 である。 もし 0<θ<10<\theta<1 なら (4)(4) により L(θf2)>θL(f2)=θf2 \mathcal L(\theta f_2)>\theta \mathcal L(f_2)=\theta f_2 となり,f1=Lf1L(θf2)f_1=\mathcal Lf_1\ge \mathcal L(\theta f_2) から f1(θ+δ)f2f_1\ge(\theta+\delta)f_2 が従って上限性に矛盾する。従って θ1\theta\ge1。 同じ議論を f1,f2f_1,f_2 を入れ替えて行うと f1=f2f_1=f_2 である。

最終答

L\mathcal L は非自明な不動点を持ち,その非自明な不動点は高々一つである。

16 — 作用素ノルムと散逸型一次方程式

スペクトル半径が出る理由

AAA^*A は非負エルミート行列なので,二次形式の最大値は最大固有値で与えられる。 作用素ノルムの二乗を見ればよい。また θ1/2\theta\ge1/2 は,分子側の虚部係数 1θ1-\theta が分母側の虚部係数 θ\theta 以下になる条件である。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

任意の x0x\ne0 に対し Ax2=(AAx,x)ρ(AA)x2 \|Ax\|^2=(A^*Ax,x)\le \rho(A^*A)\|x\|^2 である。ここで AAA^*A はエルミート非負行列なのでユニタリ対角化できる。 最大固有値に対応する単位固有ベクトル xx を取れば等号が成り立つ。従って supx0Axx=ρ(AA). \sup_{x\ne0}\frac{\|Ax\|}{\|x\|} =\sqrt{\rho(A^*A)}.

(2)

方程式は (1τI+iθM)u=(1τIi(1θ)M)a \left(\frac1\tau I+i\theta M\right)u =\left(\frac1\tau I-i(1-\theta)M\right)a である。MM は正定値実対称だから固有値 mj>0m_j>0 を持つ直交行列で対角化できる。 各固有方向では係数 τ1+iθmj\tau^{-1}+i\theta m_j は零でないので,解は一意に存在する。

同じ基底で見ると,解作用素の各固有方向の倍率は τ1i(1θ)mjτ1+iθmj. \frac{\tau^{-1}-i(1-\theta)m_j}{\tau^{-1}+i\theta m_j}. θ1/2\theta\ge1/2 なら τ1i(1θ)mjτ1+iθmj \left|\tau^{-1}-i(1-\theta)m_j\right| \le \left|\tau^{-1}+i\theta m_j\right| である。従って解作用素のノルムは 11 以下であり, ua. \|u\|\le\|a\|.

最終答

supx0Axx=ρ(AA) \boxed{\sup_{x\ne0}\frac{\|Ax\|}{\|x\|}=\sqrt{\rho(A^*A)}} であり,方程式は一意解を持つ。さらに 12θ1\frac12\le\theta\le1 なら ua. \boxed{\|u\|\le\|a\|}.

17 — 有向格子グラフの到達集合

AFの読み替え

有限グラフで「どの無限パスもいつか XX に入る」とは, XX を避け続ける有向閉路が存在しないということである。

EGが入る場合

EG(X)EG(X)XX のうち,XX 内だけを通る無限パスに乗れる点である。 単に閉路を切る集合を選ぶだけでは足りず,選んだ点が選択集合の中で次の頂点へ進める ようにする必要がある。この条件を落とすと,(2)(2) の値を小さく誤りやすい。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

有限有向グラフでは,AF(X)=QAF(X)=Q であることは, QXQ\setminus X の誘導部分グラフに有向閉路が存在しないことと同値である。 したがって (1)(1) は有向閉路をすべて切る最小頂点集合の問題である。

このグラフは各 2×22\times2 小正方形に向き付き4閉路を含む。互いに頂点を共有しない 九個の4閉路を選べるので,少なくとも9点が必要である。一方,例えば X1={(1,0),(1,2),(1,4),(2,0),(3,2),(3,4),(4,0),(4,4),(5,3)} \begin{aligned} X_1=\{&(1,0),(1,2),(1,4),(2,0),(3,2),\\ &(3,4),(4,0),(4,4),(5,3)\} \end{aligned} を除くと,残りのグラフには有向閉路がない。従って (1)(1) の最小値は 99 である。

(2)

有限グラフでは,qEG(X)q\in EG(X) であることは,XX の中だけを通って 有向閉路に到達できることと同値である。従って Y=EG(X)Y=EG(X) とおくと, 求める条件は AF(Y)=Q,Y の各頂点が Y 内の少なくとも1本の出辺を持つ AF(Y)=Q,\qquad \text{\(Y\) の各頂点が \(Y\) 内の少なくとも1本の出辺を持つ} と読み替えられる。

この2条件を満たす YY は少なくとも13点を持つ。下界は,左下隅が (i,j)(i,j), ij(mod2)i\equiv j\pmod2 である13個の基本4閉路をすべて切る条件と, 各選択頂点が選択集合内へ出る条件を,列ごとの6ビット状態で順に調べれば得られる。 局所的には各基本4閉路の4頂点の少なくとも1つを選び,選ばれた頂点 (i,j)(i,j) について上の向き規則で許される出先の少なくとも1つも選ばれていなければならない。 この有限な場合分けの最小値が13である。

実際,次の13点集合を取る: Y0={(0,2),(1,1),(1,2),(1,3),(1,4),(2,1),(2,4),(3,1),(3,3),(3,4),(4,1),(4,3),(4,4)}. \begin{aligned} Y_0=\{&(0,2),(1,1),(1,2),(1,3),(1,4),(2,1),(2,4),\\ &(3,1),(3,3),(3,4),(4,1),(4,3),(4,4)\}. \end{aligned} Y0Y_0 の各頂点からは Y0Y_0 内の出辺を少なくとも1本選べるので EG(Y0)=Y0EG(Y_0)=Y_0 である。また,補集合は (0,1),(2,3),(0,0),(2,2),(1,0),(3,2),(2,0),(4,2),(3,0),(4,0),(5,0),(5,1),(5,2),(5,3),(5,4),(5,5),(4,5),(3,5),(2,5),(1,5),(0,5),(0,4),(0,3) \begin{gathered} (0,1),(2,3),(0,0),(2,2),(1,0),(3,2),(2,0),(4,2),\\ (3,0),(4,0),(5,0),(5,1),(5,2),(5,3),(5,4),(5,5),\\ (4,5),(3,5),(2,5),(1,5),(0,5),(0,4),(0,3) \end{gathered} の順に並べると,補集合内のすべての有向辺が左から右へ進む。よって補集合は非循環で, AF(EG(Y0))=AF(Y0)=Q AF(EG(Y_0))=AF(Y_0)=Q である。従って (2)(2) の最小値は 1313 である。

最終答

min{XAF(X)=Q}=9,min{XAF(EG(X))=Q}=13. \boxed{\min\{|X|\mid AF(X)=Q\}=9},\qquad \boxed{\min\{|X|\mid AF(EG(X))=Q\}=13}.

18 — 対数型Fourier平均

畳み込みはFourier乗数

核が指数関数の和で書かれているため,TnT_n は各 Fourier モードを独立に 定数倍する作用素である。余分な積分計算は不要である。

二回微分可能性の役割

Fourier係数の減衰により級数操作が正当化しやすい。ただし定数性の結論だけなら, 非零の一つの Fourier係数を取り出す評価で十分に矛盾が出る。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

KnK_n は Fourier 乗数 mn,k={1,k=0,log(k+n)1log(k+n),1kn,0,k>n m_{n,k}= \begin{cases} 1,&k=0,\\ \dfrac{\log(|k|+n)-1}{\log(|k|+n)},&1\le |k|\le n,\\ 0,&|k|>n \end{cases} を持つ。したがって f(x)=cosNxf(x)=\cos NxnNn\ge N なら Tnf=mn,Nf,Tnff=1log(N+n)f. T_nf=m_{n,N}f,\qquad T_nf-f=-\frac{1}{\log(N+n)}f. cosNx=1\|\cos Nx\|=1 だから (logn)Tnff=lognlog(N+n)1. (\log n)\|T_nf-f\| =\frac{\log n}{\log(N+n)}\to1.

(2)

次に ff22 回連続微分可能で周期 2π2\pi を持つとする。 Fourier係数を f^(k)\hat f(k) と書く。もし ff が定数でなければ, ある N1N\ge1f^(N)0\hat f(N)\ne0 または f^(N)0\hat f(-N)\ne0 である。 Fourier係数を取り出す汎関数のノルムは 11 以下なので, Tnff1mn,Nf^(N)=f^(N)log(N+n) \|T_nf-f\| \ge |1-m_{n,N}|\,|\hat f(N)| =\frac{|\hat f(N)|}{\log(N+n)} nNn\ge N で成り立つ。従って lim infn(logn)Tnfff^(N)>0. \liminf_{n\to\infty}(\log n)\|T_nf-f\| \ge |\hat f(N)|>0. これは仮定に反する。よって非零の Fourier 係数は存在せず,ff は定数である。

最終答

limn(logn)Tn(cosNx)cosNx=1 \boxed{\lim_{n\to\infty}(\log n)\|T_n(\cos Nx)-\cos Nx\|=1} であり, (logn)Tnff0 (\log n)\|T_nf-f\|\to0 なら ff は定数関数である。

東京大学 専門科目B — 他の年度