院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2015年度 院試 解答例・解説

東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2015年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全18問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 有限p群の共役類と既約表現

共役類は二段階に分ける

半直積 VCpV\rtimes C_p では,VV の中の共役類は作用の軌道で数える。 bjb^j を含む成分では,VV による共役で Im(1Tj)\operatorname{Im}(1-T^j) だけ動かせるので,座標和が唯一の不変量になる。

表現の数の検算

既約表現の個数は共役類数に等しい。一次元表現 p2p^2 個と 次元 pp の表現 pp11p^{p-1}-1 個を足すと p2+pp11 p^2+p^{p-1}-1 で,共役類数と一致する。さらに二乗和は p212+(pp11)p2=pp+1=G p^2\cdot 1^2+(p^{p-1}-1)p^2=p^{p+1}=|G| となり,次元の取り違えがないことも確認できる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

Fp\mathbb F_p 上の加法群 V=(Z/pZ)p V=(\mathbb Z/p\mathbb Z)^p を,対角成分がすべて pp 乗根である対角行列の群と同一視する。 行列 bb は座標を巡回的に入れ替えるので, G=Vb,G=pp+1 G=V\rtimes \langle b\rangle,\qquad |G|=p^{p+1} である。以下,TTbbVV への作用,すなわち座標の巡回置換と書く。

まず VV 内の元の共役類は TT-軌道である。Burnside の補題より #(V/T)=1p{pp+(p1)p}=pp1+p1. \#(V/T)=\frac{1}{p}\{p^p+(p-1)p\}=p^{p-1}+p-1. 次に j0j\ne0 とし,vbjvb^j 型の元を考える。wVw\in V による共役で w(vbj)w1=(v+(1Tj)w)bj w(vb^j)w^{-1}=(v+(1-T^j)w)b^j となる。j0j\ne0 では Im(1Tj)\operatorname{Im}(1-T^j)ivi=0\sum_i v_i=0 で定まる余次元 11 の部分空間であるから, 不変量は座標和 iviFp\sum_i v_i\in\mathbb F_p だけである。 また TT はこの和を変えない。したがって各 j=1,,p1j=1,\dots,p-1 について pp 個の共役類があり, k(G)=pp1+p1+p(p1)=pp1+p21. k(G)=p^{p-1}+p-1+p(p-1)=p^{p-1}+p^2-1.

(2)

一次元表現はアーベル化で決まる。交換子により VV(T1)V(T-1)V で割られ,これは余次元 11 である。よって GabZ/pZZ/pZ G_{\mathrm{ab}}\simeq \mathbb Z/p\mathbb Z\oplus \mathbb Z/p\mathbb Z であり,GC×G\to\mathbb C^\times の準同型は p2p^2 個である。

(3)

最後に,既約表現の次元を見る。正規アーベル部分群 VV の双対 V^\widehat Vb\langle b\rangle が作用する。固定される指標は 全座標に同じ指数を持つ pp 個で,それぞれは商 b\langle b\ranglepp 個の指標で延長されるので,これが p2p^2 個の一次元表現である。 それ以外の指標の軌道はすべて長さ pp であり,誘導表現は既約で次元 pp である。 軌道数は pppp=pp11. \frac{p^p-p}{p}=p^{p-1}-1.

最終答

k(G)=pp1+p21,#Hom(G,C×)=p2. \boxed{k(G)=p^{p-1}+p^2-1},\qquad \boxed{\#\operatorname{Hom}(G,\mathbb C^\times)=p^2}. 一次元でない既約表現は pp11 個で,すべて次元 p \boxed{p^{p-1}-1\text{ 個で,すべて次元 }p} である。

2 — 数値半群環の conductor

半群で考える

この種の問題では,環の元を多項式として追うよりも,指数半群 4,10,13\langle 4,10,13\rangle を見る方が速い。conductor は 「それ以上のすべての指数が半群に入る」最小の整数である。

最小性の確認

t20,t21,t22,t23t^{20},t^{21},t^{22},t^{23} は,RR の正次数元を掛けて互いに作ることができない。 ここを書かないと,生成系を出しただけで最小生成系の証明にはならない。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

S=k[t],R=k[t4,t10,t13] S=k[t],\qquad R=k[t^4,t^{10},t^{13}] とおく。I={xKxSR}I=\{x\in K\mid xS\subset R\} は conductor である。 1S1\in S だから xSRxS\subset R なら xRx\in R である。 また rRr\in R なら (rx)S=r(xS)rRR (rx)S=r(xS)\subset rR\subset R なので IIRR-イデアルである。さらに sSs\in S に対して (sx)S=x(sS)xSR (sx)S=x(sS)\subset xS\subset R であるから,IISS-イデアルでもある。

(2)

次に RR に現れる指数の半群を H=4,10,13 H=\langle 4,10,13\rangle とする。直接調べると 20,21,22,23H 20,21,22,23\in H であり,以後の整数は 44 を加えることで順に HH に入る。 一方 19H19\notin H であるから,conductor は 2020 である。 したがって SS-イデアルとして I=t20S I=t^{20}S であり,RR-イデアルとしては I=(t20,t21,t22,t23)R I=(t^{20},t^{21},t^{22},t^{23})_R である。

この 4 つは最小である。実際,たとえば t20t^{20} を他の生成元から作るには 指数を 21,22,2321,22,23 から HH の元だけ下げる必要があるが,正の元を引くと HH の指数にならない。同様に 21,22,2321,22,23 も,正の HH の元を引くと 2020 未満または HH の外に出る。

最終答

I=(t20,t21,t22,t23)R \boxed{I=(t^{20},t^{21},t^{22},t^{23})_R} が最小個数の生成系である。最小生成元数は 4\boxed{4}

3 — BGG 型複体

可換性と反可換性の打ち消し

d2=0d^2=0 は,xix_i が可換,eie_i が反可換という二つの性質がちょうど打ち消し合うことから出る。 添字を入れ替えた二項を対にして消すのが最も見通しのよい書き方である。

完全性の使い方

有限生成次数付き加群では下に最小次数がある。そこに f(1)=mf(1)=m 型のサイクルを置くと, 前の項がないため境界になれない。この一手がこの設問の要点である。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

S=k[x1,,xn]S=k[x_1,\dots,x_n]EEeiej+ejei=0e_i e_j+e_j e_i=0 で定まる外積代数とする。 fR(M)p=Homk(E,Mp)f\in R(M)^p=\operatorname{Hom}_k(E,M_p) に対し (df)(e)=i=1nxif(eie) (df)(e)=\sum_{i=1}^n x_i f(e_i e) と定められている。

まず dd は右 EE-加群の準同型である。右作用は (fu)(e)=f(ue)(f\cdot u)(e)=f(ue) で与えられるので, d(fu)(e)=ixif(ueie) d(f\cdot u)(e)=\sum_i x_i f(ue_i e) である。外積代数の符号を次数に合わせて入れると,これは (df)u(df)\cdot u と一致する。次数については, eie_i の次数が 1-1xix_i の次数が 11 であるため, eie_i による次数の変化と xix_i による次数の変化が打ち消し合う。

次に d2=0d^2=0 を示す。任意の eEe\in E について d2f(e)=i,jxjxif(eieje). d^2f(e)=\sum_{i,j}x_jx_i f(e_i e_j e). xixj=xjxix_i x_j=x_jx_i であり,eiej=ejeie_i e_j=-e_j e_i であるから, (i,j)(i,j)(j,i)(j,i) の項は打ち消し合う。また ei2=0e_i^2=0 なので対角項は消える。 従って d2=0d^2=0 である。

(2)

複体 R(M)R(M) が完全なら M=0M=0 であることを示す。 M0M\ne0 と仮定し,Mq0M_q\ne0 となる最小の次数 qq を取る。 非零元 mMqm\in M_q に対し,fHomk(E,Mq)f\in\operatorname{Hom}_k(E,M_q)f(1)=m,f(E<0)=0 f(1)=m,\qquad f(E_{<0})=0 で定める。このとき df=0df=0 である。実際,eiee_i e は外積代数の正の長さの部分に入るので, 上の定義から f(eie)=0f(e_i e)=0 となる。一方,最小性より R(M)q1=0R(M)^{q-1}=0 であるから,この非零サイクルは境界になれない。完全性に反する。 よって M=0M=0 である。

(3)

最後に次数付き準同型 h:MMh:M\to M' を考える。 R(h)p:Homk(E,Mp)Homk(E,Mp),fhpf R(h)^p:\operatorname{Hom}_k(E,M_p)\to \operatorname{Hom}_k(E,M'_p), \qquad f\mapsto h_p\circ f とおくと, d(hpf)(e)=ixihp(f(eie))=ihp+1(xif(eie))=hp+1(df(e)). d(h_p\circ f)(e)=\sum_i x_i h_p(f(e_i e)) =\sum_i h_{p+1}(x_i f(e_i e)) =h_{p+1}(df(e)). ここで hhSS-加群準同型であることを使った。従って R(h)R(h) は複体の準同型である。

最終答

R(M) は次数付き右 E-加群の複体である \boxed{R(M)\text{ は次数付き右 }E\text{-加群の複体である}} かつ,完全なら M=0. \boxed{M=0}. また次数付き SS-加群準同型 h:MMh:M\to M'R(h):R(M)R(M) \boxed{R(h):R(M)\to R(M')} を誘導する。

4 — 偶六次式の分解体

偶多項式は三次式と平方根に分ける

まず y=x2y=x^2 と置いて三次式の分解体を作り,その後で各根の平方根を加える。 この二段階に分けると,ガロワ群が (Z/2)3S3(\mathbb Z/2)^3\rtimes S_3 と見える。

ガロワ部分拡大の判定

中間体が KK 上ガロワであることは,対応する部分群が正規であることと同値である。 次数だけでなく,安定部分群が正規かどうかまで確認するのが採点上の分かれ目になる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

F(x)=x6Sx4+Tx2U F(x)=x^6-Sx^4+Tx^2-U とおき,y=x2y=x^2 と置換する。すると f(y)=y3Sy2+TyU f(y)=y^3-Sy^2+Ty-U が現れる。ff の根を α1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3 とし, xi2=αix_i^2=\alpha_i と選ぶと,FF の根は ±x1,±x2,±x3 \pm x_1,\quad \pm x_2,\quad \pm x_3 である。

S,T,US,T,U は独立変数なので,三次式 ff のガロワ群は一般に S3S_3 である。 さらに α1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3 の平方根を独立に付け加えるため, Gal(L/K)(Z/2Z)3S3 \operatorname{Gal}(L/K)\simeq (\mathbb Z/2\mathbb Z)^3\rtimes S_3 となる。従って [L:K]=236=48. [L:K]=2^3\cdot 6=48.

(2)

次数 66KK-上ガロワ部分拡大は,ガロワ群の指数 66 の正規部分群に対応する。 上の半直積で,符号を変える正規部分群 N=(Z/2Z)3 N=(\mathbb Z/2\mathbb Z)^3 を割ると S3S_3 が得られる。これは唯一の正規 Sylow 22-部分群なので, 次数 66 のガロワ部分拡大は三次式 f(y)f(y) の分解体だけである。 三次式の判別式を Δ\Delta と書けば,この体は K(α1,Δ) K(\alpha_1,\sqrt{\Delta}) で,単一生成元としては α1+Δ\alpha_1+\sqrt{\Delta} を取ればよい。

(3)

最後に A=(XY)(YZ)(ZX) A=(X-Y)(Y-Z)(Z-X) を考える。ガロワ群は,x1,x2,x3x_1,x_2,x_3 の置換と各 xix_i の符号変化で作用する。 一般位置で AA の共役は (±xπ(1)xπ(2))(±xπ(2)xπ(3))(±xπ(3)xπ(1)) (\pm x_{\pi(1)}\mp x_{\pi(2)}) (\pm x_{\pi(2)}\mp x_{\pi(3)}) (\pm x_{\pi(3)}\mp x_{\pi(1)}) の形をとる。符号全体を同時に変える操作と巡回置換を考慮すると, 相異なる値は 88 個である。従って [M:K]=8. [M:K]=8. このとき安定部分群の位数は 48/8=648/8=6 であるが,これは半直積の中で正規部分群ではない。 したがって M/KM/K はガロワ拡大ではない。

最終答

[L:K]=48. \boxed{[L:K]=48}. 次数 66 のガロワ部分拡大は K(α1,α2,α3)=K(α1,Δ) \boxed{K(\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3)=K(\alpha_1,\sqrt{\Delta})} のみで,たとえば α1+Δ\alpha_1+\sqrt{\Delta} で生成できる。 また [M:K]=8,M/K はガロワ拡大ではない. \boxed{[M:K]=8,\qquad M/K\text{ はガロワ拡大ではない}}.

5 — 動径方向の微分形式

まず rdrr\,dr に直す

xdx+ydy+zdz=rdrx\,dx+y\,dy+z\,dz=r\,dr に気づくと,閉性も完全性も一変数の計算になる。

調和性が係数を固定する

三次元の動径調和関数は定数項と 1/r1/r の線形結合である。 その微分が r2drr^{-2}dr 型になるため,もとの係数は r3r^{-3} 型に限られる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

r=x2+y2+z2 r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} とおくと xdx+ydy+zdz=rdr x\,dx+y\,dy+z\,dz=r\,dr である。したがって ω=f(x,y,z)(xdx+ydy+zdz)=h(r)rdr. \omega=f(x,y,z)(x\,dx+y\,dy+z\,dz)=h(r)r\,dr. これは rr だけの関数を係数にもつ drdr の形なので, dω=d(h(r)r)dr=0 d\omega=d(h(r)r)\wedge dr=0 である。よって ω\omega は閉形式である。

(2)

さらに G(r)=r0rsh(s)ds G(r)=\int_{r_0}^{r}s h(s)\,ds と定めれば,g(x,y,z)=G(r)g(x,y,z)=G(r)XX 上の滑らかな関数で, dg=G(r)dr=h(r)rdr=ω dg=G'(r)\,dr=h(r)r\,dr=\omega となる。従って ω\omega は完全形式である。

(3)

最後に ω=dφ\omega=d\varphi かつ Δφ=0\Delta\varphi=0 とする。 dφd\varphi が動径方向であるから φ\varphi は球面方向に一定で, φ=Φ(r)\varphi=\Phi(r) と書ける。三次元での動径関数のラプラシアンは Δφ=Φ(r)+2rΦ(r) \Delta\varphi=\Phi''(r)+\frac{2}{r}\Phi'(r) である。これが 00 なので (r2Φ(r))=0,Φ(r)=Cr2. (r^2\Phi'(r))'=0,\qquad \Phi'(r)=\frac{C}{r^2}. 一方 dφ=Φ(r)dr=f(x,y,z)rdr d\varphi=\Phi'(r)\,dr=f(x,y,z)r\,dr であるから f(x,y,z)=Cr3=C(x2+y2+z2)3/2. f(x,y,z)=\frac{C}{r^3} =\frac{C}{(x^2+y^2+z^2)^{3/2}}.

最終答

ω は閉形式かつ完全形式 \boxed{\omega\text{ は閉形式かつ完全形式}} であり,ω=dφ\omega=d\varphiΔφ=0\Delta\varphi=0 の場合は f(x,y,z)=C(x2+y2+z2)3/2(CR) \boxed{f(x,y,z)=\dfrac{C}{(x^2+y^2+z^2)^{3/2}}\quad(C\in\mathbb R)} である。

6 — トーラス束のホモロジー

mapping torus は Wang 列

貼り合わせ写像の H1H_1 への作用を行列で書けば,ホモロジー計算は AIA-I の核と余核の計算に帰着する。

切断の否定は H2H_2 で見る

H1H_1 だけを見ると右逆がありそうに見えるが,二次ホモロジーでは π\pi_* が零になる。ここがこの設問の落とし穴である。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

T2=S1×S1T^2=S^1\times S^1 の基本一次元サイクルを u,vu,v とする。 貼り合わせ写像は加法座標で (u,v)(u,2u+v) (u,v)\longmapsto (u,2u+v) に対応する。したがって H1(T2;Z)Z2H_1(T^2;\mathbb Z)\simeq\mathbb Z^2 上の作用は A=(1021) A=\begin{pmatrix}1&0\\2&1\end{pmatrix} である。

XX はこの自己同相の mapping torus であるから,Wang 完全列を用いる。 AI=(0020) A-I=\begin{pmatrix}0&0\\2&0\end{pmatrix} なので coker(AI)ZZ/2Z,ker(AI)Z. \operatorname{coker}(A-I)\simeq \mathbb Z\oplus \mathbb Z/2\mathbb Z,\qquad \ker(A-I)\simeq \mathbb Z. また H2(T2)H_2(T^2) への作用は detA=1\det A=1 により恒等である。 従って H0(X;Z)Z, H_0(X;\mathbb Z)\simeq \mathbb Z, H1(X;Z)coker(AI:H1H1)H0(T2)Z2Z/2Z, H_1(X;\mathbb Z)\simeq \operatorname{coker}(A-I:H_1\to H_1)\oplus H_0(T^2) \simeq \mathbb Z^2\oplus\mathbb Z/2\mathbb Z, H2(X;Z)coker(AI:H2H2)ker(AI:H1H1)Z2, H_2(X;\mathbb Z)\simeq \operatorname{coker}(A-I:H_2\to H_2)\oplus \ker(A-I:H_1\to H_1) \simeq \mathbb Z^2, H3(X;Z)ker(AI:H2H2)Z. H_3(X;\mathbb Z)\simeq \ker(A-I:H_2\to H_2)\simeq\mathbb Z. それより高次は 00 である。

(2)

次に,π:XT2\pi:X\to T^2 に連続切断 ss が存在すると仮定する。 このとき πs=idT2 \pi\circ s=\operatorname{id}_{T^2} だから,二次ホモロジーでも πs=idH2(T2) \pi_*\circ s_*=\operatorname{id}_{H_2(T^2)} でなければならない。

しかし H2(X)H_2(X) の二つの生成元は,貼り合わせ前の繊維 T2T^2 の基本類と, ker(AI)\ker(A-I) から来る vv-方向と時間方向のトーラスで表せる。 π\pi は前者を一次元方向へつぶし,後者も T2T^2 の一つの円方向にしか写さない。 従って π:H2(X;Z)H2(T2;Z) \pi_*:H_2(X;\mathbb Z)\to H_2(T^2;\mathbb Z) は零写像である。これは πs=id\pi_*\circ s_*=\operatorname{id} と矛盾する。

最終答

H0Z,H1Z2Z/2Z,H2Z2,H3Z \boxed{ H_0\simeq\mathbb Z,\quad H_1\simeq\mathbb Z^2\oplus\mathbb Z/2\mathbb Z,\quad H_2\simeq\mathbb Z^2,\quad H_3\simeq\mathbb Z } であり,高次ホモロジーは 00。また πs=idT2 を満たす連続写像 s は存在しない. \boxed{\pi\circ s=\operatorname{id}_{T^2}\text{ を満たす連続写像 }s\text{ は存在しない}}.

7 — トーラス上の勾配型評価

補助関数 LL

周期軌道を否定する主役は LL である。L0L\ne0 では logL\log|L| が単調に減るため, 同じ点へ戻ることができない。

L=0L=0 の確認

L=0L=0 の集合は不変だが,そこでは一次元の流れになり,端点の不動点へ向かうだけである。 単調性の議論では,零集合を別に確認する必要がある。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

u=2πxπ,v=2πyπ u=2\pi x-\pi,\qquad v=2\pi y-\pi とおく。すると F1=cosu(asinusinv),F2=cosv(sinu+asinv), F_1=\cos u(a\sin u-\sin v),\qquad F_2=\cos v(\sin u+a\sin v), L=cosucosv L=\cos u\cos v である。

F=0F=0 を解く。もし cosu0,cosv0\cos u\ne0,\cos v\ne0 なら sinv=asinu,sinu=asinv \sin v=a\sin u,\qquad \sin u=-a\sin v であり,0<a<10<a<1 だから sinu=sinv=0\sin u=\sin v=0 である。 従って (x,y){0,12}×{0,12}. (x,y)\in\{0,\tfrac12\}\times\{0,\tfrac12\}. 一方 cosu=0\cos u=0 かつ cosv=0\cos v=0 でも F=0F=0 となるので, (x,y){14,34}×{14,34}. (x,y)\in\{\tfrac14,\tfrac34\}\times\{\tfrac14,\tfrac34\}. 片方だけ cos\cos00 の場合は sin=1|\sin|=10<a<10<a<1 が矛盾する。

(2)

微分を調べる。u,vu,v 座標でのヤコビ行列は (sinu(asinusinv)+acos2ucosucosvcosucosvsinv(sinu+asinv)+acos2v) \begin{pmatrix} -\sin u(a\sin u-\sin v)+a\cos^2u & -\cos u\cos v\\ \cos u\cos v &-\sin v(\sin u+a\sin v)+a\cos^2v \end{pmatrix} であり,x,yx,y 座標では全体に 2π2\pi が掛かる。 sinu=sinv=0\sin u=\sin v=0 の四点では 2π(aεεa)(ε=cosucosv=±1) 2\pi\begin{pmatrix}a&-\varepsilon\\ \varepsilon&a\end{pmatrix} \qquad(\varepsilon=\cos u\cos v=\pm1) となるので,固有値は 2π(a±iε)2\pi(a\pm i\varepsilon) で実数ではない。 一方 cosu=cosv=0\cos u=\cos v=0 の四点では行列は対角行列になり,固有値は実数である。

(3)

最後に ddtL(φt(x,y))t=0=dL(F) \frac{d}{dt}L(\varphi_t(x,y))\bigg|_{t=0}=dL(F) を計算する。 Lx=2πsinucosv,Ly=2πcosusinv \frac{\partial L}{\partial x}=-2\pi\sin u\cos v,\qquad \frac{\partial L}{\partial y}=-2\pi\cos u\sin v だから dL(F)=2πacosucosv(sin2u+sin2v)=2πaL(sin2u+sin2v). dL(F) =-2\pi a\cos u\cos v(\sin^2u+\sin^2v) =-2\pi aL(\sin^2u+\sin^2v).

(4)

周期軌道が L0L\ne0 の領域にあれば,logL\log|L| が真に減少して周期性に反する。 L=0L=0 上では不変な円弧に分かれるが,端点は不動点で,端点以外の軌道は閉じない。 従って不動点以外の周期軌道は存在しない。

最終答

不動点は {0,12}2{14,34}2 \boxed{\{0,\tfrac12\}^2\cup\{\tfrac14,\tfrac34\}^2} である。このうち微分が非実固有値を持つのは {0,12}2 \boxed{\{0,\tfrac12\}^2} の四点である。また ddtL(φt(x,y))t=0=2πaL(x,y)(sin2u+sin2v) \boxed{\left.\frac{d}{dt}L(\varphi_t(x,y))\right|_{t=0} =-2\pi aL(x,y)(\sin^2u+\sin^2v)} であり,不動点以外の周期軌道は存在しない。

8 — 球面上の Crofton 公式

係数は 44

PPP-P は同じ大円を表すが,積分は S2S^2 全体で行う。 そのため射影平面上の Crofton 公式より係数が一つ大きく見える。

Fenchel の不等式

最後の結論は接ベクトル曲線に球面の半球面定理を適用するだけで出る。 閉曲線であることは T(s)ds=0\int T(s)\,ds=0 として使われる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

PS2P\in S^2 に対し,GP={QS2PQ=0}G_P=\{Q\in S^2\mid P\cdot Q=0\} と書く。 長さ π\ell\le\pi の大円劣弧 σ\sigma を,回転により赤道上の {(cost,sint,0)0t} \{(\cos t,\sin t,0)\mid 0\le t\le \ell\} としてよい。この劣弧と交わる GPG_P は,PP の経度が [π/2,π/2][-\pi/2,\ell-\pi/2] または [π/2,+π/2][\pi/2,\ell+\pi/2] に入ることと同値である。 球面の面積要素を経度 λ\lambda と高さ zz で書くと dλdzd\lambda\,dz であるから, Area(R)=2(2)=4. \operatorname{Area}(R)=2\cdot(2\ell)=4\ell.

(2)

有限個の大円劣弧をつないだ閉曲線 α\alpha については,各弧に上の等式を適用し, 交点数を重複度込みで足し合わせれば S2#(GPα)dP=4Length(α) \int_{S^2}\#(G_P\cap\alpha)\,dP=4\,\operatorname{Length}(\alpha) を得る。有限個の頂点を通る PP は測度零なので,そこでの曖昧さは積分に影響しない。

(3)

次に,閉 C1C^1 曲線 γ\gamma の長さが 2π2\pi 以下であるとする。 もし γ\gamma を含む閉半球面が存在しないなら,ほとんどすべての PP について GPG_Pγ\gamma と交わる。閉曲線との交点数はほとんど至る所偶数だから, #(GPγ)2 \#(G_P\cap\gamma)\ge2 である。従って Crofton 公式より 4Length(γ)=S2#(GPγ)dP2Area(S2)=8π. 4\,\operatorname{Length}(\gamma) =\int_{S^2}\#(G_P\cap\gamma)\,dP \ge 2\operatorname{Area}(S^2)=8\pi. よって長さが 2π2\pi 未満なら矛盾する。等号の場合も,等号成立条件から γ\gamma は大円を一周する場合に限られ,これは閉半球面に含まれる。 したがって長さ 2π2\pi 以下の閉曲線はある閉半球面に含まれる。

(4)

最後に空間曲線 Γ(s)\Gamma(s) を弧長でパラメータ付ける。 接ベクトル写像 T(s)=Γ(s)S2 T(s)=\Gamma'(s)\in S^2 は閉曲線で,その長さは Length(T)=T(s)ds=κ(s)ds \operatorname{Length}(T)=\int |T'(s)|\,ds=\int \kappa(s)\,ds である。もし κds<2π\int\kappa ds<2\pi なら,前段により TT はある開半球に含まれる。 するとある単位ベクトル aa が存在して aT(s)>0a\cdot T(s)>0 となるが, 0=a(Γ(L)Γ(0))=0LaT(s)ds 0=a\cdot(\Gamma(L)-\Gamma(0))=\int_0^L a\cdot T(s)\,ds に反する。従って κ(s)ds2π. \int\kappa(s)\,ds\ge2\pi.

最終答

大円劣弧 σ\sigma について Area(R)=4Length(σ). \boxed{\operatorname{Area}(R)=4\,\operatorname{Length}(\sigma)}. また閉曲線 α\alpha について S2#(GPα)dP=4Length(α). \boxed{\int_{S^2}\#(G_P\cap\alpha)\,dP=4\,\operatorname{Length}(\alpha)}. これにより,長さ 2π2\pi 以下の閉球面曲線は閉半球面に含まれ,空間閉曲線は κds2π \boxed{\int\kappa\,ds\ge2\pi} を満たす。

9 — 切断 Hilbert 変換核

固定 a,ba,b と一様評価は別

固定 a,ba,b では L1L^1-核として Young の不等式を使えばよい。 一様評価では fa,b1=2log(b/a)\|f_{a,b}\|_1=2\log(b/a) が発散し得るため,フーリエ側で評価する。

本質は FF の有界性

切断の両端 a,ba,bF(bξ)F(aξ)F(b\xi)-F(a\xi) として現れる。 FF が有界なら,切断幅に依存しない L2L^2 作用素ノルム評価が得られる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

固定した 0<a<b0<a<b について fa,b(x)=1x1{a<x<b} f_{a,b}(x)=\frac1x\mathbf 1_{\{a<|x|<b\}} である。これは L1(R)L^1(\mathbb R) に属し, fa,b1=2abdxx=2logba. \|f_{a,b}\|_1=2\int_a^b\frac{dx}{x}=2\log\frac ba. Young の不等式より,g21\|g\|_2\le1 なら fa,bg2fa,b1g22logba. \|f_{a,b}*g\|_2\le \|f_{a,b}\|_1\|g\|_2 \le 2\log\frac ba. 従って固定した a,ba,b では上限は有限である。

(2)

フーリエ変換を f^(ξ)=f(x)eiξxdx \widehat f(\xi)=\int_{-\infty}^{\infty}f(x)e^{-i\xi x}\,dx とする。偶奇性より余弦部分は消え, f^a,b(ξ)=2iabsin(ξx)xdx=2i{F(bξ)F(aξ)}, \widehat f_{a,b}(\xi) =-2i\int_a^b\frac{\sin(\xi x)}{x}\,dx =-2i\{F(b\xi)-F(a\xi)\}, ただし F(ξ)=0ξsinηηdη F(\xi)=\int_0^\xi\frac{\sin\eta}{\eta}\,d\eta である。

(3)

limξF(ξ)=π/2\lim_{\xi\to\infty}F(\xi)=\pi/2 が与えられているので,FF は実軸上有界である。 従って sup0<a<bsupξRf^a,b(ξ)4supξRF(ξ)<. \sup_{0<a<b}\sup_{\xi\in\mathbb R} |\widehat f_{a,b}(\xi)| \le 4\sup_{\xi\in\mathbb R}|F(\xi)|<\infty. Plancherel の定理から fa,bg2Cf^a,bg2 \|f_{a,b}*g\|_2 \le C\|\widehat f_{a,b}\|_\infty\|g\|_2 であり,右辺は a,b,ga,b,g によらず有界である。

最終答

supg21fa,bg2< \boxed{\sup_{\|g\|_2\le1}\|f_{a,b}*g\|_2<\infty} であり, f^a,b(ξ)=2i{F(bξ)F(aξ)}. \boxed{\widehat f_{a,b}(\xi)=-2i\{F(b\xi)-F(a\xi)\}}. さらに sup0<a<bsupg21fa,bg2< \boxed{\sup_{0<a<b}\sup_{\|g\|_2\le1}\|f_{a,b}*g\|_2<\infty} である。

10 — Lp調和関数空間の閉性

分布微分は極限と相性がよい

調和性は u,Δϕ=0\langle u,\Delta\phi\rangle=0 という線形条件なので, LpL^p 収束からそのまま極限へ渡せる。

弱閉性

弱収束で直接試験関数を使うには双対指数の扱いが必要になる。 ここでは「閉線形部分空間は弱閉」という関数解析の基本事実を使うのが簡潔である。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

Ap={uLp(D)Δu=0 in D(D)} A^p=\{u\in L^p(D)\mid \Delta u=0\text{ in }\mathcal D'(D)\} とおく。

ujApu_j\in A^pLp(D)L^p(D)uu に強収束するとする。 任意の試験関数 ϕCc(D)\phi\in C_c^\infty(D) について Δu,ϕ=u,Δϕ=limjuj,Δϕ=limjΔuj,ϕ=0 \langle \Delta u,\phi\rangle=\langle u,\Delta\phi\rangle =\lim_{j\to\infty}\langle u_j,\Delta\phi\rangle =\lim_{j\to\infty}\langle \Delta u_j,\phi\rangle=0 である。従って uApu\in A^p である。

弱収束の場合も同じ結論である。実際,ApA^p は線形部分空間であり,いま示したように ノルム閉である。ノルム閉な線形部分空間は Hahn--Banach の分離定理により弱閉である。 したがって ujuu_j\rightharpoonup u なら uApu\in A^p である。

(2)

単位円板での例を作る。複素座標 zz を用い, u(z)=Re1+z1z=1z21z2 u(z)=\operatorname{Re}\frac{1+z}{1-z} =\frac{1-|z|^2}{|1-z|^2} とおく。これは円板内で正の調和関数である。境界点 11 の近くで, 法線方向の距離を s=1rs=1-r,接線方向を θ\theta と書けば u(reiθ)ss2+θ2. u(re^{i\theta})\asymp \frac{s}{s^2+\theta^2}. 従って updA \int u^p \,dA p<2p<2 で収束し,p2p\ge2 で発散する。特に uA1u\in A^1 だが uA2u\notin A^2 である。

最終答

強収束でも弱収束でも極限は Ap に属する \boxed{A^p\text{ に属する}} である。単位円板では u(z)=Re1+z1z \boxed{u(z)=\operatorname{Re}\frac{1+z}{1-z}} A1A^1 に属し A2A^2 に属さない例である。

11 — 平方根型の距離空間

三角不等式の核心

\sqrt{\cdot} は劣加法的である。 通常の LpL^p ノルムではないが,fg\sqrt{|f-g|} を積分する距離としては十分である。

完備性は部分列で示す

可積分量の総和が有限になる部分列を選ぶと,ほとんど至る所の Cauchy 性が出る。 その後 Fatou の補題で距離収束へ戻すのが標準的な流れである。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

X={f:ΩR | f は可測, Ωfdμ<} X=\left\{f:\Omega\to\mathbb R\ \middle|\ f\text{ は可測},\ \int_\Omega\sqrt{|f|}\,d\mu<\infty\right\} を,ほとんど至る所等しい関数を同一視して考える。 ρ(f,g)=Ωfgdμ \rho(f,g)=\int_\Omega\sqrt{|f-g|}\,d\mu と定める。

非負性と対称性は明らかである。また ρ(f,g)=0\rho(f,g)=0 なら fg=0\sqrt{|f-g|}=0 がほとんど至る所成り立つので f=gf=g である。 三角不等式は fhfg+gh |f-h|\le |f-g|+|g-h| と,s,t0s,t\ge0 に対する s+ts+t \sqrt{s+t}\le\sqrt s+\sqrt t から従う。従って ρ\rho は距離である。

(2)

完備性を示す。(fn)(f_n)ρ\rho-Cauchy 列とする。 部分列を取り直して k=1ρ(fnk+1,fnk)< \sum_{k=1}^{\infty}\rho(f_{n_{k+1}},f_{n_k})<\infty としてよい。すると k=1fnk+1fnk \sum_{k=1}^{\infty}\sqrt{|f_{n_{k+1}}-f_{n_k}|} L1L^1 関数として有限であり,従ってほとんど至る所有限である。 よって fnk(x)f_{n_k}(x) はほとんど至る所で実数の Cauchy 列となり,極限を f(x)f(x) と書く。

Fatou の補題より ρ(fnk,f)lim infρ(fnk,fn) \rho(f_{n_k},f) \le \liminf_{\ell\to\infty}\rho(f_{n_k},f_{n_\ell}) である。右辺は kk\to\infty00 になるので, fnkff_{n_k}\to f in ρ\rho である。また fffnk+fnk \sqrt{|f|} \le \sqrt{|f-f_{n_k}|}+\sqrt{|f_{n_k}|} から fXf\in X である。元の列全体も Cauchy 性により ff へ収束する。

最終答

ρ(f,g)=Ωfgdμ \boxed{\rho(f,g)=\int_\Omega\sqrt{|f-g|}\,d\mu} XX 上の距離であり, (X,ρ) は完備距離空間 \boxed{(X,\rho)\text{ は完備距離空間}} である。

12 — 単葉関数の平方根変換

零点を確認する

平方根を取るには,対象の正則関数が零点を持たないことが必要である。 単葉性により ff の零点が 00 だけであることを先に使う。

単葉性の最後の分岐

F(z1)2=F(z2)2F(z_1)^2=F(z_2)^2 だけでは z1=±z2z_1=\pm z_2 までしか言えない。 FF が奇関数であることにより,負号の場合も z=0z=0 へ押し込められる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

まず a<1|a|<1 とし g(z)=z(1az)2 g(z)=\frac{z}{(1-az)^2} を考える。g(0)=0, g(0)=1g(0)=0,\ g'(0)=1 は明らかである。 また z1(1az1)2=z2(1az2)2 \frac{z_1}{(1-az_1)^2}=\frac{z_2}{(1-az_2)^2} とすると,整理して (z1z2)(1a2z1z2)=0 (z_1-z_2)(1-a^2z_1z_2)=0 を得る。円板内では a2z1z2<1|a^2z_1z_2|<1 だから z1=z2z_1=z_2 である。 従って gSg\in S である。

さらに g(z2)=z2(1az2)2=(z1az2)2 g(z^2)=\frac{z^2}{(1-az^2)^2} =\left(\frac{z}{1-az^2}\right)^2 であるから G(z)=z1az2 G(z)=\frac{z}{1-az^2} とおけばよい。同様に z11az12=z21az22 \frac{z_1}{1-az_1^2}=\frac{z_2}{1-az_2^2} から (z1z2)(1+az1z2)=0 (z_1-z_2)(1+az_1z_2)=0 が従い,az1z2<1|az_1z_2|<1 より GG は単葉である。 また G(0)=0, G(0)=1G(0)=0,\ G'(0)=1 なので GSG\in S である。

(2)

一般の fSf\in S については,ff が単葉で f(0)=0f(0)=0 だから, 円板内で ff の零点は 00 だけである。従って f(z2)z2 \frac{f(z^2)}{z^2} は円板上で零点を持たず,z=0z=0 で値 11 を持つ正則関数である。 円板は単連結なので,h(0)=1h(0)=1 となる正則平方根 hh が存在する。 F(z)=zh(z) F(z)=z h(z) とおけば F(z)2=f(z2),F(0)=0,F(0)=1 F(z)^2=f(z^2),\qquad F(0)=0,\qquad F'(0)=1 である。

単葉性を確認する。F(z1)=F(z2)F(z_1)=F(z_2) なら f(z12)=f(z22) f(z_1^2)=f(z_2^2) であり,ff の単葉性より z12=z22z_1^2=z_2^2 である。 z1=z2z_1=z_2 ならよい。z1=z2z_1=-z_2 の場合,hhz2z^2 の関数として取れるので FF は奇関数であり,F(z1)=F(z1)=F(z1)F(z_1)=F(-z_1)=-F(z_1) となる。 従って F(z1)=0F(z_1)=0,すなわち z1=0z_1=0 で,結局 z1=z2z_1=z_2 である。

最終答

g(z)=z(1az)2S \boxed{g(z)=\frac{z}{(1-az)^2}\in S} であり, G(z)=z1az2S,g(z2)=G(z)2. \boxed{G(z)=\frac{z}{1-az^2}\in S,\qquad g(z^2)=G(z)^2}. 一般に任意の fSf\in S に対し, F(z)=zf(z2)z2S,f(z2)=F(z)2 \boxed{F(z)=z\sqrt{\frac{f(z^2)}{z^2}}\in S,\qquad f(z^2)=F(z)^2} が成り立つ。ただし平方根は 00 で値 11 を持つ枝を取る。

13 — 行列分解反復法

反復の本体は N1PN^{-1}P

定常反復法では,誤差が e(k+1)=N1Pe(k)e^{(k+1)}=N^{-1}Pe^{(k)} を満たす。 したがって収束判定はスペクトル半径の評価に帰着する。

正定値性との対応

N+NA>0N+N^*-A>0 は,反復行列の固有値と AA の正定値性を結びつけるための仮定である。 この仮定なしに同じ結論は一般には成立しない。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

A=NP,B=N1P A=N-P,\qquad B=N^{-1}P とおく。反復は x(k+1)=Bx(k)+N1b x^{(k+1)}=Bx^{(k)}+N^{-1}b である。任意の初期値から解へ収束することは ρ(B)<1 \rho(B)<1 と同値である。

ここで H=N+NA=N+P H=N+N^*-A=N^*+P は正定値である。Bx=λxBx=\lambda x とすると, Ax=(1λ)Nx Ax=(1-\lambda)Nx であり,a=xAxa=x^*Axh=xHxh=x^*Hx とおけば h=1λ21λ2a h=\frac{1-|\lambda|^2}{|1-\lambda|^2}a が成り立つ。従って AA が正定値なら a>0a>0h>0h>0 より λ<1|\lambda|<1 である。

逆に ρ(B)<1\rho(B)<1 とする。恒等式 ABAB=(IB)H(IB) A-B^*AB=(I-B^*)H(I-B) が成り立つ。右辺は半正定値であり,さらに ρ(B)<1\rho(B)<1 なので A=j=0(B)j(IB)H(IB)Bj A=\sum_{j=0}^{\infty}(B^*)^j(I-B^*)H(I-B)B^j と表せる。HH が正定値で IBI-B は正則だから,各非零ベクトルに対して右辺は正である。 よって AA は正定値である。

(2)

具体例では A=(411142124). A=\begin{pmatrix} 4&-1&-1\\ -1&4&-2\\ -1&-2&4 \end{pmatrix}. 主座小行列式は 4,4114=15,detA=36 4,\qquad \begin{vmatrix}4&-1\\-1&4\end{vmatrix}=15,\qquad \det A=36 であり,AA は正定値である。従って解は一意である。実際に解くと (x1,x2,x3)=(196,174,5312). (x_1,x_2,x_3)=\left(\frac{19}{6},\frac{17}{4},\frac{53}{12}\right).

与えられた反復では N=(400140124),P=(011002000) N= \begin{pmatrix} 4&0&0\\ -1&4&0\\ -1&-2&4 \end{pmatrix}, \qquad P= \begin{pmatrix} 0&1&1\\ 0&0&2\\ 0&0&0 \end{pmatrix} であり,確かに A=NPA=N-P である。さらに N+NA=4I N+N^*-A=4I で正定値である。上で示した判定により,任意の初期値から解へ収束する。

最終答

一般論として,仮定 N+NA>0N+N^*-A>0 の下で反復が任意の初期値から収束する必要十分条件は A>0 \boxed{A>0} である。具体例の解は (x1,x2,x3)=(196,174,5312) \boxed{(x_1,x_2,x_3)=\left(\frac{19}{6},\frac{17}{4},\frac{53}{12}\right)} で,提示された反復は任意の初期値からこの解へ収束する。

14 — 一様乱数の積和と極限定理

積の期待値

独立性により E(X1Xk)=2kE(X_1\cdots X_k)=2^{-k} である。 非負項級数では期待値の和が有限なら,級数そのものもほとんど確実に有限である。

極限分布が混合正規になる理由

A2mA_{2m} は遠い過去の AcnA_{c_n} で近似できる。 その後の中心化和は AcnA_{c_n} と独立なので,極限ではランダム係数 AA_\infty を持つ正規分布になる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

Yk=j=1kXj Y_k=\prod_{j=1}^k X_j とおくと,An=k=1nYkA_n=\sum_{k=1}^nY_k である。 E[Yk]=2k E[Y_k]=2^{-k} だから E[k=1Yk]=k=12k=1. E\left[\sum_{k=1}^{\infty}Y_k\right]=\sum_{k=1}^{\infty}2^{-k}=1. 非負項級数の期待値が有限なので,kYk\sum_kY_k は概収束する。従って AnA_n は概収束する。 極限を AA_\infty と書く。

(2)

次に cnn1c_n\le n-1 とし, lim infnlogcnlogn>0 \liminf_{n\to\infty}\frac{\log c_n}{\log n}>0 とする。m>cnm>c_n なら A2mAcn=k=cn+12mYk A_{2m}-A_{c_n}=\sum_{k=c_n+1}^{2m}Y_k であるから E[A2mAcn]k=cn+12k=2cn. E[A_{2m}-A_{c_n}] \le \sum_{k=c_n+1}^{\infty}2^{-k}=2^{-c_n}. また Xm1212|X_m-\tfrac12|\le \tfrac12 なので E[1nm=cn+1n(A2mAcn)(Xm12)]n2n2cn0. E\left[ \left| \frac1{\sqrt n}\sum_{m=c_n+1}^{n}(A_{2m}-A_{c_n})(X_m-\tfrac12) \right| \right] \le \frac{n}{2\sqrt n}2^{-c_n}\to0. ここで cnc_n が正の冪程度以上に増えるため,n2cn0\sqrt n\,2^{-c_n}\to0 である。

(3)

最後に Un=1nm=1nA2m(Xm12) U_n=\frac1{\sqrt n}\sum_{m=1}^nA_{2m}(X_m-\tfrac12) を考える。上の評価を用いて,A2mA_{2m}AcnA_{c_n} に置き換えてよい。 初めの cnc_n 項は cn=o(n)c_n=o(n) となるように取れば寄与しない。従って UnAcn1nm=cn+1n(Xm12)0 U_n- A_{c_n}\frac1{\sqrt n}\sum_{m=c_n+1}^{n}(X_m-\tfrac12) \longrightarrow0 が確率収束で成り立つ。 AcnAA_{c_n}\to A_\infty は概収束し,後ろの和は AcnA_{c_n} と独立で,中心極限定理より 1nm=cn+1n(Xm12)N(0,112). \frac1{\sqrt n}\sum_{m=c_n+1}^{n}(X_m-\tfrac12) \Rightarrow N\left(0,\frac1{12}\right). 従って UnAZ U_n\Rightarrow A_\infty Z である。ただし ZN(0,1/12)Z\sim N(0,1/12)AA_\infty と独立に取る。

最終答

AnA=k=1j=1kXja.s. \boxed{A_n\to A_\infty=\sum_{k=1}^{\infty}\prod_{j=1}^kX_j\quad\text{a.s.}} また指定された切断誤差は L1L^100 に収束する。さらに UnAZ,ZN(0,1/12), ZA \boxed{U_n\Rightarrow A_\infty Z,\qquad Z\sim N(0,1/12),\ Z\perp A_\infty} である。

15 — q指数関数と五角形型恒等式

積表示

係数の分母が (1qk)\prod(1-q^k) であるため,通常の指数関数ではなく qq-指数関数の積表示を使う。零点 q,q2,q,q^2,\dots は積表示から即座に読める。

非可換では順序が重要

wv=qvww v=qv w の関係があるため,二項展開の係数は通常の二項係数ではなく qq-二項係数になる。最後の恒等式も,どの二つの項が qq-交換しているかを確認してから適用する。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

[q]n=k=1n(1qk) [q]_n=\prod_{k=1}^n(1-q^k) である。q>1q>1 とし,Euler の積表示を用いると L(z)=n=0zn[q]n=k=1(1zqk) L(z)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{z^n}{[q]_n} =\prod_{k=1}^{\infty}\left(1-\frac{z}{q^k}\right) である。従って L(q)=0 L(q)=0 である。

(2)

さらに k2k\ge2 でも積の中に 1qk/qk=01-q^k/q^k=0 が現れるので L(qk)=0 L(q^k)=0 である。

(3)

次に wv=qvww v=qv w とする。この関係の下では qq-二項定理により (v+w)n=k=0n[q]n[q]nk[q]kvnkwk (v+w)^n=\sum_{k=0}^n \frac{[q]_n}{[q]_{n-k}[q]_k}v^{n-k}w^k である。よって L(v+w)=n=0k=0nvnkwk[q]nk[q]k=L(v)L(w). L(v+w) =\sum_{n=0}^{\infty}\sum_{k=0}^n \frac{v^{n-k}w^k}{[q]_{n-k}[q]_k} =L(v)L(w).

(4)

さらに L(w)1L(w)^{-1} が存在するとする。 wv=qvww v=qv w から L(w)v=vL(qw)=v(1w)L(w) L(w)v=vL(qw)=v(1-w)L(w) である。従って L(w)vL(w)1=v(1w)=vvw. L(w)vL(w)^{-1}=v(1-w)=v-vw. この元と ww も同じ qq-交換関係を満たすので, L(L(w)vL(w)1+w)=L(L(w)vL(w)1)L(w)=L(w)L(v) L(L(w)vL(w)^{-1}+w) =L(L(w)vL(w)^{-1})L(w) =L(w)L(v) となる。これが (i) である。 上の共役計算を代入して L(w)L(v)=L(vvw+w) L(w)L(v)=L(v-vw+w) を得る。さらに vvvw-vwqq-交換し,vvwv-vwwwqq-交換するから L(vvw+w)=L(vvw)L(w)=L(v)L(vw)L(w). L(v-vw+w)=L(v-vw)L(w)=L(v)L(-vw)L(w).

最終答

L(q)=0,L(qk)=0 (k2) \boxed{L(q)=0,\qquad L(q^k)=0\ (k\ge2)} であり,wv=qvww v=qv w の下で L(v+w)=L(v)L(w). \boxed{L(v+w)=L(v)L(w)}. また L(L(w)vL(w)1+w)=L(w)L(v), \boxed{L(L(w)vL(w)^{-1}+w)=L(w)L(v)}, L(w)L(v)=L(vvw+w)=L(v)L(vw)L(w) \boxed{L(w)L(v)=L(v-vw+w)=L(v)L(-vw)L(w)} が成り立つ。

16 — 三成分感染モデルの相平面

境界の向き

単体 Ω\Omega の不変性は,境界でベクトル場が外へ向かないことを一つずつ確認すればよい。

保存量の使い所

xxzz の微分方程式では yy が消える。 このため,二変数だけの保存量が得られ,極限集合を Ω0\Omega_0 側へ押し込む議論に使える。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

まず x+y+z=0 x'+y'+z'=0 であるから,x+y+z=1x+y+z=1 は保存される。境界では x=0x=0,y=0y=0,z=0z=γy0 x=0\Rightarrow x'=0,\qquad y=0\Rightarrow y'=0,\qquad z=0\Rightarrow z'=\gamma y\ge0 なので,初期値が Ω\Omega にあれば解は Ω\Omega に留まる。 また Ω0\Omega_0 では x=0x=0 であり,x=0x'=0 だから Ω0\Omega_0 も不変である。

(2)

Ω0\Omega_0 上では z=1yz=1-y なので y=γy{σR0(1y)1} y'=\gamma y\{\sigma R_0(1-y)-1\} となる。これはロジスティック型である。従って σR01y(t)0, \sigma R_0\le1\Rightarrow y(t)\to0, σR0>1, y(0)0y(t)11σR0. \sigma R_0>1,\ y(0)\ne0\Rightarrow y(t)\to 1-\frac1{\sigma R_0}.

(3)

次に x(0)0x(0)\ne0 とし,軌道上で xxzz の関数と見る。 dxdz=βxyγyβσyz=R0x1σR0z. \frac{dx}{dz} =\frac{-\beta xy}{\gamma y-\beta\sigma yz} =-\frac{R_0x}{1-\sigma R_0z}. したがって dlogxdz=R01σR0z=1σddzlog(1σR0z) \frac{d\log x}{dz} =-\frac{R_0}{1-\sigma R_0z} =\frac1\sigma\frac{d}{dz}\log(1-\sigma R_0z) であり, x(1σR0z)1/σ \frac{x}{(1-\sigma R_0z)^{1/\sigma}} が保存量である。

(4)

一般の Ω\Omega 上で σR01\sigma R_0\le1 とする。 x(t)x(t) は単調非増加で極限を持つ。極限集合では上の保存則と不変性から Ω0\Omega_0 上の極限力学に帰着し,前段より y(t)0y(t)\to0 である。

(5)

最後に σR0>1, y(0)0, σ1\sigma R_0>1,\ y(0)\ne0,\ \sigma\le1 とする。 もし y(t)0y(t)\to0 なら,極限点は y=0y=0 上にある。しかしその近くでは yγy=R0(x+σz)1=R0(σ+(1σ)x)1σR01>0 \frac{y'}{\gamma y}=R_0(x+\sigma z)-1 =R_0(\sigma+(1-\sigma)x)-1 \ge \sigma R_0-1>0 となり,y=0y=0 へ近づくことに反する。従って極限集合は Ω0\Omega_0 上の正の平衡点であり, y(t)11σR0. y(t)\to 1-\frac1{\sigma R_0}.

最終答

Ω\OmegaΩ0\Omega_0 は正の時間で不変である。 Ω0\Omega_0 上では σR01y(t)0,σR0>1, y(0)0y(t)11σR0. \boxed{\sigma R_0\le1\Rightarrow y(t)\to0,\qquad \sigma R_0>1,\ y(0)\ne0\Rightarrow y(t)\to1-\frac1{\sigma R_0}}. また保存量は x(1σR0z)1/σ \boxed{\displaystyle \frac{x}{(1-\sigma R_0z)^{1/\sigma}}} である。一般の Ω\Omega 上でも σR01\sigma R_0\le1 なら y(t)0y(t)\to0σR0>1, y(0)0,σ1\sigma R_0>1,\ y(0)\ne0,\sigma\le1 なら y(t)11σR0 \boxed{y(t)\to1-\frac1{\sigma R_0}} である。

17 — 母関数と可積分な時間発展

母関数で一度に計算する

個々の ηn\eta_n を直接微分すると添字が煩雑になる。 η(z)\eta(z) の対数の Poisson 括弧を先に計算し,最後に係数比較するのが最短である。

有限積 ansatz の読み方

最後の設問は,行列積で作った τ±\tau_\pm が微分方程式を満たす条件を係数方程式として読む。 有限 Laurent 多項式なので,係数がすべて消えることが必要十分条件である。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

η(z)=exp(n1xnzn)exp(n1pnzn) \eta(z)=\exp\left(\sum_{n\ge1}x_nz^n\right) \exp\left(\sum_{n\ge1}p_nz^{-n}\right) と書く。対数微分を使うと {logη(z),logη(w)}=n1(znwnznwn). \{\log\eta(z),\log\eta(w)\} =\sum_{n\ge1}\left(z^{-n}w^n-z^nw^{-n}\right). 従って {η(z),η(w)}=η(z)η(w)n1(wnznznwn). \{\eta(z),\eta(w)\} =\eta(z)\eta(w) \sum_{n\ge1}\left(\frac{w^n}{z^n}-\frac{z^n}{w^n}\right). 両辺を zmwnz^{-m}w^{-n} の係数で比較すると,m>nm>n のとき {ηm,ηn}==1mnηmηn+ \{\eta_m,\eta_n\} =\sum_{\ell=1}^{m-n}\eta_{m-\ell}\eta_{n+\ell} を得る。

(2)

以下 H=η0,J=η1η1,K=η12η2+η2η12η2η0η2 H=\eta_0,\qquad J=\eta_{-1}\eta_1,\qquad K=\eta_{-1}^2\eta_2+\eta_{-2}\eta_1^2-\eta_{-2}\eta_0\eta_2 とする。上の係数公式を用い,Leibniz 則で計算すると, {H,ηr}={=1rηηr,r>0,=1rηηr+,r<0, \{H,\eta_r\}= \begin{cases} \sum_{\ell=1}^{r}\eta_\ell\eta_{r-\ell},&r>0,\\ -\sum_{\ell=1}^{-r}\eta_{-\ell}\eta_{r+\ell},&r<0, \end{cases} である。この式を JJKK に代入すると項が対になって消え, {H,J}=0,{H,K}=0 \{H,J\}=0,\qquad \{H,K\}=0 となる。

(3)

時間発展を dfdt={H,f} \frac{df}{dt}=\{H,f\} で定める。上の母関数表示から,τ+\tau_+τ\tau_- について dτdtτ+τdτ+dt+Hττ+=1 \frac{d\tau_-}{dt}\tau_+-\tau_-\frac{d\tau_+}{dt} +H\tau_-\tau_+=1 が従う。実際, η(z)=1τ+(z)τ(z) \eta(z)=\frac1{\tau_+(z)\tau_-(z)} であるため,{η(w),τ+(z)}τ(z)\{\eta(w),\tau_+(z)\}\tau_-(z){η(w),τ(z)}τ+(z)\{\eta(w),\tau_-(z)\}\tau_+(z)ww の Laurent 級数として展開し, w0w^0 の係数を取れば上式になる。

(4)

最後に有限積表示を考える。 Tm(z,t)=k=1m(1αkeωtzkβkeωtzk1)=(AmBmCmDm). T_m(z,t)= \prod_{k=1}^{m} \begin{pmatrix} 1&\alpha_k e^{\omega t}z^k\\ \beta_k e^{-\omega t}z^{-k}&1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}A_m&B_m\\ C_m&D_m\end{pmatrix}. τ=Am+Cm,τ+=Bm+Dm \tau_-=A_m+C_m,\qquad \tau_+=B_m+D_m と置く。この形が等高面 H=ωH=\omega 上で時間発展方程式を満たすための必要十分条件は, 有限 Laurent 多項式 Φ(z)=dτdtτ+τdτ+dt+ωττ+1 \Phi(z)= \frac{d\tau_-}{dt}\tau_+ -\tau_-\frac{d\tau_+}{dt} +\omega\tau_-\tau_+-1 が恒等的に 00 になることである。すなわち [zr]Φ(z)=0(mrm) \boxed{[z^r]\Phi(z)=0\quad(-m\le r\le m)} が,求める 2m+12m+1 個のパラメータに課される有限個の代数条件である。 この条件のうち z0z^0 係数は H=ωH=\omega を表し,残りの係数は 時間発展方程式そのものを表している。

最終答

{ηm,ηn}==1mnηmηn+(m>n) \boxed{\{\eta_m,\eta_n\} =\sum_{\ell=1}^{m-n}\eta_{m-\ell}\eta_{n+\ell}\quad(m>n)} である。これより {H,J}=0,{H,K}=0 \boxed{\{H,J\}=0,\qquad \{H,K\}=0} が従う。時間発展では dτdtτ+τdτ+dt+Hττ+=1 \boxed{ \frac{d\tau_-}{dt}\tau_+-\tau_-\frac{d\tau_+}{dt} +H\tau_-\tau_+=1 } が成り立つ。有限積による特殊解のパラメータ条件は [zr](dτdtτ+τdτ+dt+ωττ+1)=0 \boxed{[z^r]\left( \frac{d\tau_-}{dt}\tau_+ -\tau_-\frac{d\tau_+}{dt} +\omega\tau_-\tau_+-1 \right)=0} をすべての現れる次数 rr について満たすことである。

18 — 有限有向グラフの吸収集合

無限パスは閉路で判定する

有限グラフでは,無限パスは必ずどこかの有向閉路を無限回訪れる。 したがって AFAF の条件は,有向閉路をすべて打つ feedback vertex set の問題になる。

EGEG では内部に閉路が必要

XX に入っているだけでは EG(X)EG(X) には入らない。 XX の中だけを通って無限に進める,すなわち XX 内の有向閉路へ到達できることが必要である。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)

有限有向グラフでは, AF(X)=Q AF(X)=Q であることは,「XX がすべての有向閉路と交わる」ことと同値である。 実際,XX を避ける閉路があればその閉路を回り続ける無限パスがあり, 逆に XX を避ける無限パスは有限性によりどこかで閉路を含む。

まず下限を出す。各 nn について anan+1bnan a_n\to a_{n+1}\to b_n\to a_n は有向閉路である。また bncn+1bn+1bn b_n\to c_{n+1}\to b_{n+1}\to b_n も有向閉路である。XX に含まれる aa-型,bb-型,cc-型の頂点数を A,B,CA,B,C と書くと,これらの 5 個ずつの閉路をすべて打つために 2A+B5,2B+C5 2A+B\ge5,\qquad 2B+C\ge5 が必要である。また三つの 5 周期から A,B,C1A,B,C\ge1 も必要である。 これらから X=A+B+C5 |X|=A+B+C\ge5 が従う。

実際, X1={a0,a2,b1,b3,c0} X_1=\{a_0,a_2,b_1,b_3,c_0\} を取ると,すべての有向閉路が X1X_1 と交わる。従って min{XAF(X)=Q}=5. \min\{|X|\mid AF(X)=Q\}=5.

(2)

次に AF(EG(X))=QAF(EG(X))=Q を考える。 EG(X)EG(X)XX の中だけを通って無限に進める初期点の集合である。 有限グラフでは,これは「XX に含まれる有向閉路へ XX 内で到達できる頂点」の集合である。 したがって AF(EG(X))=QAF(EG(X))=Q なら,EG(X)EG(X) 自身がすべての有向閉路を打つ。 上の議論より EG(X)5|EG(X)|\ge5 である。

もし X=5|X|=5 なら X=EG(X)X=EG(X) でなければならない。 このとき上の不等式の等号の場合を調べると,(A,B,C)=(2,2,1)(A,B,C)=(2,2,1) または (1,3,1)(1,3,1) に限られる。しかしこのいずれの場合も,選ばれた 5 頂点だけで 全頂点が XX 内の閉路へ到達し,かつ全有向閉路を打つことはできない。 従って X6|X|\ge6 である。

一方 X2={a2,a3,b0,b2,b4,c0} X_2=\{a_2,a_3,b_0,b_2,b_4,c_0\} とおくと,誘導部分グラフ上で各頂点は有向閉路へ到達できるので EG(X2)=X2 EG(X_2)=X_2 である。また X2X_2 はすべての有向閉路と交わる。従って AF(EG(X2))=Q AF(EG(X_2))=Q であり,最小値は 66 である。

最終答

min{XAF(X)=Q}=5 \boxed{\min\{|X|\mid AF(X)=Q\}=5} であり,例えば {a0,a2,b1,b3,c0} \{a_0,a_2,b_1,b_3,c_0\} で達成される。また min{XAF(EG(X))=Q}=6 \boxed{\min\{|X|\mid AF(EG(X))=Q\}=6} であり,例えば {a2,a3,b0,b2,b4,c0} \{a_2,a_3,b_0,b_2,b_4,c_0\} で達成される。

東京大学 専門科目B — 他の年度