大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2019年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)
全5問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・ベータ関数・ガンマ関数)。
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- 解説5問/全5問(4,056字)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき5問)
- 問題本文
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阪大 数学 2019年度 院試 過去問の出題内容(全5問)
この5問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分積分・解析 | パラメータ付き有理型積分 | 対数項の扱い | あり |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 偏導関数が消える関数 | 連結して比べる / 採点上の注意 | あり |
| 第3問 | 線形代数 | 行列の冪と作用素ノルム | ノルム最大化の標準形 | あり |
| 第4問 | 微分積分・解析 | ガウス積分を用いた極限 | 直感的な見方 | あり |
| 第5問 | 線形代数 | 有限次元実ベクトル空間上の対角化 | 最小多項式で見る / 採点上の注意 | あり |
この年度の解説には典型ミス5件・検算2件・採点上の注意2件が付いています。
2019年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第3・5問 | 25大学・544問 | |
| 重積分と極座標 | 第4問 | 23大学・142問 | |
| ベータ関数・ガンマ関数 | 第1問 | 12大学・23問 | |
| 直交対角化 | 第3問 | 14大学・23問 | |
| 偏微分可能性と連続性 | 第2問 | 9大学・12問 |
前年度(2018年度)との違い
- 大問数
- 2018年度 5問 → 2019年度 5問
- 2019年度で新しく出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・ベータ関数・ガンマ関数・直交対角化・偏微分可能性と連続性
第1問 — パラメータ付き有理型積分
方針
型では,まず によって を完全に外へ出す。 第2の積分は三角置換で即座に求まる。第1の積分は に分け, だけを含む無次元の積分を処理する。
対数項の扱い
をベータ関数の微分で求めてもよい。実際 とおくと である。 より, を使って となる。答案では部分積分を使う形にしておくと,特殊関数を避けられる。
検算
どちらの積分も 後に係数は になる。したがって答が に比例していない場合は,変数変換の か分母の の扱いを誤っている。
典型ミス
を のように扱う誤りが多い。必ず と分ける。また は0ではない。重み が で不変ではないためである。
第2問 — 偏導関数が消える関数
方針
偏導関数の問題に見えるが,本質は一変数の平均値の定理である。 を固定すれば だけの関数になるため,「導関数が恒等的に0なら定数」をそのまま使える。
連結して比べる
2変数の場合は,任意の点 を の2本の線分で原点へつなぐと考える。
水平方向では ,垂直方向では を使う。この2段階で全平面上の値が1点の値に一致する。
採点上の注意
「偏導関数が0だから定数」と一行で済ませると,どの定理をどの変数に適用したかが 曖昧になる。少なくとも固定した一変数関数を明示し,平均値の定理を使うことを書くと 答案として安定する。
典型ミス
偏微分可能性だけから一般の曲線に沿った微分を自由に使うのは危険である。本問では 水平線・垂直線だけを使えばよく,各線上では一変数関数として通常の微分可能性がある。
第3問 — 行列の冪と作用素ノルム
方針
冪 は直接掛け算を続けるより,特性多項式から周期性を見つけるのが速い。 本問では から が出るため,指数を3で割った余りだけを 見ればよい。
ノルム最大化の標準形
は Rayleigh 商である。 は実対称行列なので直交対角化でき,商の 最大値は最大固有値になる。これは特異値の二乗を求めている,と言い換えてもよい。
検算
である。求めた固有値の積は となり,この検算と一致する。
典型ミス
自身の固有値を使って最大値を求めてはいけない。 は正規行列ではないので, の最大伸長は の固有値の絶対値だけでは決まらない。
第4問 — ガウス積分を用いた極限
方針
前半の等式は,後半の重積分を1回積分するための道具である。内側の積分を に直すと,前半の公式を としてそのまま使える。
直感的な見方
であり,これは で へ近づく。つまり は大きな で傾き の一次関数のように 増える。そのため の極限も同じ値になる。
別解
ロピタルの定理を使うとさらに短い。 かつ で, ただし本問では前半で原始関数を示させているため,答案ではそれを利用する方が出題意図に 沿いやすい。
典型ミス
の置換で となり,前の係数 は消える。 ここで係数を残すと最終答案に不要な が残ってしまう。極限値が に依存しないことも重要な検算である。
第5問 — 有限次元実ベクトル空間上の対角化
方針
実ベクトル空間であることが重要である。 の実根は1だけなので, かつ実対角化可能なら,対角成分はすべて1に限られる。 複素数まで許すと3乗根が3つ現れるため,結論が変わる。
最小多項式で見る
一般論として,線形写像が対角化可能であることは,最小多項式が重根を持たない一次式の積に 分解することと対応する。 の場合は が相異なる実一次因子に分かれるため,必ず対角化可能である。答案ではこの一般論を使ってもよいが, 上のように と を作ると自己完結した証明になる。
採点上の注意
(1) では「固有値が1だけ」と書くだけでは不十分な場合がある。対角化可能という仮定により, 行列が固有値を対角成分にもつ対角行列になること,そして全対角成分が1なら単位行列になることまで 明示するとよい。
典型ミス
から常に とはいえない。 平面の 回転は3乗が恒等写像だが,実ベクトル空間上では対角化できない。 この例を思い出すと,(1) の「対角化可能なら」という条件の役割がはっきりする。
阪大 数学 院試 過去問の収録21年度
階数と連立一次方程式の整合条件 / 2つの放物線上の点の距離 / 二点境界条件付き線形常微分方程式
楕円体と円柱条件の共通部分 / 二変数関数の極値判定 / 単調列と指数型列
主値積分 / 二次曲線上の積の極値 / 冪級数の収束半径
一次微分方程式 / 4次元球の体積 / 導関数の極限と微分可能性
三角関数の定積分 / 定数係数線形微分方程式 / 凸関数の導関数の極限
有理関数の広義積分 / 二変数関数の極値 / 正則行列の開性と行列冪の極限
2019年度(このページ・全5問)
パラメータ付き有理型積分 / 偏導関数が消える関数 / 行列の冪と作用素ノルム
三角置換と周期積分 / 行列の核と階数1行列 / 制約付き極値
二重積分と球・円柱の共通部分 / 二次形式の最大値と固有値 / 漸化式と収束半径
2016年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
円盤上の積分と差分商 / 数列空間と線形漸化式 / 留数定理によるフーリエ型積分
2015年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
重積分と広義積分 / 階段型行列の行列式 / Rodrigues型多項式と直交性
2014年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
変数変換とベータ積分 / 多項式の零点と三角格子 / 直交行列のCayley変換
2013年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
多項式空間上の線形変換 / 積分剰余と凸性 / 巡回行列の固有値
2012年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
積分の変数変換 / 実数連立方程式 / 指数型母関数と3周期列
2011年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
積分評価 / 線形部分空間 / 正則関数と調和共役
2010年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
広義積分と留数計算 / 行列の核の次元 / 複素数列の周期性
2009年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
制約付き最大化 / 歪対称行列と非対角化性 / 単位円上の留数計算
2008年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
球と円柱の共通部分の体積 / 同伴行列の固有多項式と対角化 / 有界正則関数の係数評価
2007年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
左右から近づく微分商 / 楕円体の体積 / 留数による有理関数積分
2006年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
漸化式と階乗正規化 / 二変数関数の極値 / 単位円上の留数計算
2005年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
可積分条件と無限遠での極限 / 極座標でのラプラシアン / フーリエ型積分と留数