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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2019年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・ベータ関数・ガンマ関数)。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

阪大 数学 2019年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析パラメータ付き有理型積分対数項の扱いあり
第2問微分積分・解析偏導関数が消える関数連結して比べる / 採点上の注意あり
第3問線形代数行列の冪と作用素ノルムノルム最大化の標準形あり
第4問微分積分・解析ガウス積分を用いた極限直感的な見方あり
第5問線形代数有限次元実ベクトル空間上の対角化最小多項式で見る / 採点上の注意あり

この年度の解説には典型ミス5件・検算2件・採点上の注意2件が付いています。

2019年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に5テーマが出ています。

前年度(2018年度)との違い

大問数
2018年度 5問 → 2019年度 5問
2018年度のページを見る

第1問 — パラメータ付き有理型積分

方針

(x2+a2)2(x^2+a^2)^2 型では,まず x=atx=at によって aa を完全に外へ出す。 第2の積分は三角置換で即座に求まる。第1の積分は log⁡(at)=log⁡a+log⁡t\log(at)=\log a+\log t に分け,log⁡t\log t だけを含む無次元の積分を処理する。

対数項の扱い

K=∫0∞log⁡t(1+t2)2 dt K=\int_0^\infty \frac{\log t}{(1+t^2)^2}\,dt をベータ関数の微分で求めてもよい。実際 F(s)=∫0∞ts−1(1+t2)2 dt=12B(s2,2−s2) F(s)=\int_0^\infty \frac{t^{s-1}}{(1+t^2)^2}\,dt = \frac12 B\left(\frac{s}{2},2-\frac{s}{2}\right) とおくと K=F′(1)K=F'(1) である。 F′(s)F(s)=12ψ(s2)−12ψ(2−s2) \frac{F'(s)}{F(s)} = \frac12\psi\left(\frac{s}{2}\right) -\frac12\psi\left(2-\frac{s}{2}\right) より,ψ(3/2)=ψ(1/2)+2\psi(3/2)=\psi(1/2)+2 を使って K=F(1)⋅(−1)=−π4 K=F(1)\cdot(-1)=-\frac{\pi}{4} となる。答案では部分積分を使う形にしておくと,特殊関数を避けられる。

検算

どちらの積分も x=atx=at 後に係数は a−3a^{-3} になる。したがって答が a−3a^{-3} に比例していない場合は,変数変換の dx=a dtdx=a\,dt か分母の a4a^4 の扱いを誤っている。

典型ミス

log⁡(at)\log(at) を log⁡a log⁡t\log a\,\log t のように扱う誤りが多い。必ず log⁡(at)=log⁡a+log⁡t\log(at)=\log a+\log t と分ける。また ∫0∞log⁡t/(1+t2)2 dt\int_0^\infty \log t/(1+t^2)^2\,dt は0ではない。重み (1+t2)−2(1+t^2)^{-2} が t↔1/tt\leftrightarrow1/t で不変ではないためである。

解答

まず J(a)=∫0∞1(x2+a2)2 dx J(a)=\int_{0}^{\infty}\frac{1}{(x^2+a^2)^2}\,dx を求める。変数変換 x=atx=at により J(a)=1a3∫0∞1(1+t2)2 dt. J(a)=\frac{1}{a^3}\int_0^\infty \frac{1}{(1+t^2)^2}\,dt . ここで t=tan⁡θt=\tan\theta とおくと ∫0∞1(1+t2)2 dt=∫0π/2cos⁡2θ dθ=π4. \int_0^\infty \frac{1}{(1+t^2)^2}\,dt = \int_0^{\pi/2}\cos^2\theta\,d\theta = \frac{\pi}{4}. したがって J(a)=π4a3. J(a)=\frac{\pi}{4a^3}.

次に I(a)=∫0∞log⁡x(x2+a2)2 dx I(a)=\int_0^\infty\frac{\log x}{(x^2+a^2)^2}\,dx を求める。同じく x=atx=at とおくと I(a)=1a3∫0∞log⁡a+log⁡t(1+t2)2 dt=1a3{π4log⁡a+∫0∞log⁡t(1+t2)2 dt}. I(a)=\frac{1}{a^3} \int_0^\infty \frac{\log a+\log t}{(1+t^2)^2}\,dt = \frac{1}{a^3} \left\{ \frac{\pi}{4}\log a+ \int_0^\infty \frac{\log t}{(1+t^2)^2}\,dt \right\}. 残る積分を K=∫0∞log⁡t(1+t2)2 dt K=\int_0^\infty \frac{\log t}{(1+t^2)^2}\,dt とおく。再び t=tan⁡θt=\tan\theta とすれば K=∫0π/2log⁡(tan⁡θ)cos⁡2θ dθ. K=\int_0^{\pi/2} \log(\tan\theta)\cos^2\theta\,d\theta . また,t=1/ut=1/u とおくと K=∫∞0−log⁡u(1+u−2)2(−duu2)=−∫0∞u2log⁡u(1+u2)2 du. K = \int_\infty^0 \frac{-\log u}{(1+u^{-2})^2}\left(-\frac{du}{u^2}\right) = -\int_0^\infty \frac{u^2\log u}{(1+u^2)^2}\,du . よって 2K=∫0∞(1−t2)log⁡t(1+t2)2 dt. 2K = \int_0^\infty \frac{(1-t^2)\log t}{(1+t^2)^2}\,dt . 右辺は ∫0∞log⁡t d(t1+t2) \int_0^\infty \log t\,d\left(\frac{t}{1+t^2}\right) である。部分積分を用いると境界項は [log⁡t t1+t2]0∞=0 \left[\log t\,\frac{t}{1+t^2}\right]_{0}^{\infty}=0 であり, 2K=−∫0∞11+t2 dt=−π2. 2K = -\int_0^\infty \frac{1}{1+t^2}\,dt = -\frac{\pi}{2}. したがって K=−π/4K=-\pi/4 である。

以上より I(a)=π4a3(log⁡a−1),J(a)=π4a3. I(a) = \frac{\pi}{4a^3}(\log a-1),\qquad J(a) = \frac{\pi}{4a^3}.

最終答

∫0∞log⁡x(x2+a2)2 dx=π4a3(log⁡a−1)\displaystyle \int_0^\infty\frac{\log x}{(x^2+a^2)^2}\,dx=\frac{\pi}{4a^3}(\log a-1), ∫0∞1(x2+a2)2 dx=π4a3\displaystyle \int_0^\infty\frac{1}{(x^2+a^2)^2}\,dx=\frac{\pi}{4a^3}

第2問 — 偏導関数が消える関数

方針

偏導関数の問題に見えるが,本質は一変数の平均値の定理である。y=by=b を固定すれば xx だけの関数になるため,「導関数が恒等的に0なら定数」をそのまま使える。

連結して比べる

2変数の場合は,任意の点 (x,y)(x,y) を (x,y)⟶(0,y)⟶(0,0) (x,y)\longrightarrow (0,y)\longrightarrow (0,0) の2本の線分で原点へつなぐと考える。

水平方向では ∂f/∂x=0\partial f/\partial x=0,垂直方向では ∂f/∂y=0\partial f/\partial y=0 を使う。この2段階で全平面上の値が1点の値に一致する。

採点上の注意

「偏導関数が0だから定数」と一行で済ませると,どの定理をどの変数に適用したかが 曖昧になる。少なくとも固定した一変数関数を明示し,平均値の定理を使うことを書くと 答案として安定する。

典型ミス

偏微分可能性だけから一般の曲線に沿った微分を自由に使うのは危険である。本問では 水平線・垂直線だけを使えばよく,各線上では一変数関数として通常の微分可能性がある。

偏導関数が消える関数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 行列の冪と作用素ノルム

方針

冪 A7A^7 は直接掛け算を続けるより,特性多項式から周期性を見つけるのが速い。 本問では A2+A+I=OA^2+A+I=O から A3=IA^3=I が出るため,指数を3で割った余りだけを 見ればよい。

ノルム最大化の標準形

∣Av∣2∣v∣2=vTATAvvTv \frac{|Av|^2}{|v|^2} = \frac{v^{\mathsf T}A^{\mathsf T}Av}{v^{\mathsf T}v} は Rayleigh 商である。ATAA^{\mathsf T}A は実対称行列なので直交対角化でき,商の 最大値は最大固有値になる。これは特異値の二乗を求めている,と言い換えてもよい。

検算

det⁡(ATA)=det⁡(A)2=1\det(A^{\mathsf T}A)=\det(A)^2=1 である。求めた固有値の積は 15+2212⋅15−2212=1 \frac{15+\sqrt{221}}{2}\cdot\frac{15-\sqrt{221}}{2}=1 となり,この検算と一致する。

典型ミス

AA 自身の固有値を使って最大値を求めてはいけない。AA は正規行列ではないので, ∣Av∣|Av| の最大伸長は AA の固有値の絶対値だけでは決まらない。

行列の冪と作用素ノルムの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ガウス積分を用いた極限

方針

前半の等式は,後半の重積分を1回積分するための道具である。内側の積分を ∫0x/σe−η2 dη\int_0^{x/\sigma}e^{-\eta^2}\,d\eta に直すと,前半の公式を a=1/σa=1/\sigma としてそのまま使える。

直感的な見方

I′(z)=∫0z1σe−y2/σ2 dy I'(z)=\int_0^z\frac1\sigma e^{-y^2/\sigma^2}\,dy であり,これは z→∞z\to\infty で ∫0∞e−η2 dη \int_0^\infty e^{-\eta^2}\,d\eta へ近づく。つまり I(z)I(z) は大きな zz で傾き π/2\sqrt{\pi}/2 の一次関数のように 増える。そのため I(z)/zI(z)/z の極限も同じ値になる。

別解

ロピタルの定理を使うとさらに短い。I(z)→∞I(z)\to\infty かつ z→∞z\to\infty で, lim⁡z→∞I(z)z=lim⁡z→∞I′(z)=∫0∞e−η2 dη=π2. \lim_{z\to\infty}\frac{I(z)}{z} = \lim_{z\to\infty}I'(z) = \int_0^\infty e^{-\eta^2}\,d\eta = \frac{\sqrt{\pi}}{2}. ただし本問では前半で原始関数を示させているため,答案ではそれを利用する方が出題意図に 沿いやすい。

典型ミス

y=σηy=\sigma\eta の置換で dy=σdηdy=\sigma d\eta となり,前の係数 1/σ1/\sigma は消える。 ここで係数を残すと最終答案に不要な σ\sigma が残ってしまう。極限値が σ\sigma に依存しないことも重要な検算である。

ガウス積分を用いた極限の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 有限次元実ベクトル空間上の対角化

方針

実ベクトル空間であることが重要である。x3−1x^3-1 の実根は1だけなので, f3=id⁡f^3=\operatorname{id} かつ実対角化可能なら,対角成分はすべて1に限られる。 複素数まで許すと3乗根が3つ現れるため,結論が変わる。

最小多項式で見る

一般論として,線形写像が対角化可能であることは,最小多項式が重根を持たない一次式の積に 分解することと対応する。f2=id⁡f^2=\operatorname{id} の場合は x2−1=(x−1)(x+1) x^2-1=(x-1)(x+1) が相異なる実一次因子に分かれるため,必ず対角化可能である。答案ではこの一般論を使ってもよいが, 上のように v+v_+ と v−v_- を作ると自己完結した証明になる。

採点上の注意

(1) では「固有値が1だけ」と書くだけでは不十分な場合がある。対角化可能という仮定により, 行列が固有値を対角成分にもつ対角行列になること,そして全対角成分が1なら単位行列になることまで 明示するとよい。

典型ミス

f3=id⁡f^3=\operatorname{id} から常に f=id⁡f=\operatorname{id} とはいえない。 平面の 120∘120^\circ 回転は3乗が恒等写像だが,実ベクトル空間上では対角化できない。 この例を思い出すと,(1) の「対角化可能なら」という条件の役割がはっきりする。

有限次元実ベクトル空間上の対角化の途中式・最終答をPDFで見る

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