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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2005年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2005年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 可積分条件と無限遠での極限

方針

ff' の絶対可積分性は「遠方での変化量の総和が有限」という意味である。 そのため xx を十分大きくした後では、どの二点の値を比べても差が小さくなり、極限の存在が従う。 極限値が 00 であることは、ff 自身の絶対可積分性を使って最後に判定する。

採点上の注意

存在だけを示して終わると不十分である。 fL1f'\in L^1 からは定数関数に近づく可能性までしか排除できない。 その定数が 00 以外であると、無限に長い区間で f|f| が正の下限を持ってしまい、0f(x)dx<\int_0^\infty |f(x)|\,dx<\infty と両立しない、という二段構えで書く必要がある。

典型ミス

ff が可積分だから点ごとに 00 へ行く」と直接主張してはいけない。 一般の可積分関数は尖った山を遠方に置けるので、点ごとの極限が存在するとは限らない。 本問では ff' の可積分性が山の総変動を抑えるため、初めて極限の存在まで言える。

2005年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

仮定から ff'[0,)[0,\infty) 上で絶対可積分である。 任意の s<ts<t について微積分の基本定理より f(t)f(s)=stf(x)dx f(t)-f(s)=\int_s^t f'(x)\,dx であるから、 f(t)f(s)stf(x)dx. |f(t)-f(s)| \leq \int_s^t |f'(x)|\,dx. fL1([0,))f'\in L^1([0,\infty)) なので、任意の ε>0\varepsilon>0 に対して R>0R>0 を十分大きく取れば Rf(x)dx<ε \int_R^\infty |f'(x)|\,dx<\varepsilon となる。したがって s,tRs,t\geq R なら f(t)f(s)<ε |f(t)-f(s)|<\varepsilon であり、f(x)f(x)xx\to\infty で Cauchy 条件を満たす。 実数の完備性により、ある実数 LL が存在して limxf(x)=L \lim_{x\to\infty} f(x)=L となる。

次に L=0L=0 を示す。 もし L0L\neq 0 なら、R1>0R_1>0 を十分大きく取ることで xR1f(x)L2 x\geq R_1 \quad\Longrightarrow\quad |f(x)|\geq \frac{|L|}{2} とできる。すると R1Tf(x)dxL2(TR1) \int_{R_1}^{T}|f(x)|\,dx \geq \frac{|L|}{2}(T-R_1) であり、TT\to\infty とすると右辺は無限大に発散する。 これは fL1([0,))f\in L^1([0,\infty)) に反する。 よって L=0L=0 である。

最終答

limxf(x)は存在し、その値は0. \lim_{x\to\infty} f(x) \quad\text{は存在し、その値は}\quad 0.

2 — 極座標でのラプラシアン

方針

極座標のラプラシアンは暗記で済ませず、gr,gθg_r,g_\theta を順に微分して交差項が打ち消されることを示すと安全である。 特に gθθg_{\theta\theta} には、単位ベクトルの向きが変わることに由来する r(fxcosθ+fysinθ)-r(f_x\cos\theta+f_y\sin\theta) が現れる。 これが 1rgr\frac{1}{r}g_r と相殺して式が整う。

典型ミス

最後の項を 1rgθθ\frac{1}{r}g_{\theta\theta} としてしまう誤りが多い。 θ\theta 方向の実際の長さは半径 rr 倍されるため、二階微分には 1/r21/r^2 が付く。 また、r=0r=0 では極座標表示そのものが特異なので、証明は r>0r>0 で行う。

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x=rcosθ, y=rsinθx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta とおく。 偏微分を簡潔に書くため、fx,fy,fxx,fxy,fyyf_x,f_y,f_{xx},f_{xy},f_{yy} はすべて (x,y)=(rcosθ,rsinθ)(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta) で評価されているものとする。

まず rr に関する微分は gr=fxcosθ+fysinθ g_r=f_x\cos\theta+f_y\sin\theta である。さらにもう一度微分すると grr=fxxcos2θ+2fxysinθcosθ+fyysin2θ. g_{rr} = f_{xx}\cos^2\theta +2f_{xy}\sin\theta\cos\theta +f_{yy}\sin^2\theta.

次に θ\theta に関する微分を計算する。 gθ=rfxsinθ+rfycosθ g_\theta = -r f_x\sin\theta+r f_y\cos\theta であるから、 gθθ=r2fxxsin2θ2r2fxysinθcosθ+r2fyycos2θrfxcosθrfysinθ. \begin{aligned} g_{\theta\theta} &= r^2 f_{xx}\sin^2\theta -2r^2 f_{xy}\sin\theta\cos\theta +r^2 f_{yy}\cos^2\theta \\ &\qquad -r f_x\cos\theta-r f_y\sin\theta. \end{aligned} したがって 1r2gθθ+1rgr=fxxsin2θ2fxysinθcosθ+fyycos2θ. \begin{aligned} \frac{1}{r^2}g_{\theta\theta}+\frac{1}{r}g_r &= f_{xx}\sin^2\theta -2f_{xy}\sin\theta\cos\theta +f_{yy}\cos^2\theta. \end{aligned} これを grrg_{rr} と足すと交差項が消え、 grr+1rgr+1r2gθθ=fxx(cos2θ+sin2θ)+fyy(sin2θ+cos2θ)=fxx+fyy. \begin{aligned} g_{rr}+\frac{1}{r}g_r+\frac{1}{r^2}g_{\theta\theta} &= f_{xx}(\cos^2\theta+\sin^2\theta) +f_{yy}(\sin^2\theta+\cos^2\theta) \\ &= f_{xx}+f_{yy}. \end{aligned} よって、r>0r>02fx2+2fy2=2gr2+1rgr+1r22gθ2 \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} +\frac{\partial^2 f}{\partial y^2} = \frac{\partial^2 g}{\partial r^2} +\frac{1}{r}\frac{\partial g}{\partial r} +\frac{1}{r^2}\frac{\partial^2 g}{\partial\theta^2} が成り立つ。

最終答

Δf=grr+1rgr+1r2gθθ(r>0). \Delta f = g_{rr}+\frac{1}{r}g_r+\frac{1}{r^2}g_{\theta\theta} \qquad (r>0).

3 — フーリエ型積分と留数

方針

eitze^{itz} の大きさは z=x+iyz=x+iy と書くと eitz=ety |e^{itz}|=e^{-t y} である。 したがって t>0t>0 では y>0y>0 の上半平面、t<0t<0 では y<0y<0 の下半平面で指数関数が減衰する。 閉じる半平面を tt の符号で変えるのが、この積分の核心である。

符号の確認

下半平面で閉じるときは向きが時計回りになるため、2πi-2\pi i が掛かる。 留数そのものにも 2i-2i が分母に出るので、二つの負号が消えて πet\pi e^t になる。 ここで符号を落とすと、実数値で正になるべき積分と矛盾する。

検算

t=0t=0 では π\pit|t|\to\infty では 00 に近づく。 最終式 πet\pi e^{-|t|} は偶関数であり、元の積分でも虚部が奇関数として打ち消されるので、対称性とも合っている。

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計算する積分を I(t)=eitxx2+1dx I(t)=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{itx}}{x^2+1}\,dx とおく。

まず t=0t=0 のときは I(0)=dxx2+1=[arctanx]=π. I(0)=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^2+1} = \bigl[\arctan x\bigr]_{-\infty}^{\infty} = \pi.

t>0t>0 のとき、上半平面の半円で閉じた経路を用いる。 被積分関数 eitzz2+1=eitz(zi)(z+i) \frac{e^{itz}}{z^2+1} = \frac{e^{itz}}{(z-i)(z+i)} は上半平面内に単純極 z=iz=i を持ち、その留数は Resz=ieitzz2+1=eiti2i=et2i. \operatorname*{Res}_{z=i} \frac{e^{itz}}{z^2+1} = \frac{e^{it i}}{2i} = \frac{e^{-t}}{2i}. 上半円弧上では z=x+iyz=x+iy に対して eitz=ety|e^{itz}|=e^{-ty} となり、弧積分は半径を無限大にすると消える。 よって留数定理から I(t)=2πiet2i=πet(t>0). I(t)=2\pi i\cdot \frac{e^{-t}}{2i} = \pi e^{-t} \qquad (t>0).

t<0t<0 のときは下半平面で閉じる。 下半平面内の極は z=iz=-i であり、 Resz=ieitzz2+1=eit(i)2i=et2i. \operatorname*{Res}_{z=-i} \frac{e^{itz}}{z^2+1} = \frac{e^{it(-i)}}{-2i} = -\frac{e^t}{2i}. 下半平面の閉曲線は時計回りなので、留数定理の符号は負になる。 したがって I(t)=2πi(et2i)=πet(t<0). I(t) = -2\pi i\left(-\frac{e^t}{2i}\right) = \pi e^t \qquad (t<0).

最終答

I(t)={π,t=0,πet,t>0,πet,t<0,すなわちI(t)=πet. I(t)= \begin{cases} \pi, & t=0,\\ \pi e^{-t}, & t>0,\\ \pi e^t, & t<0, \end{cases} \qquad \text{すなわち}\quad I(t)=\pi e^{-|t|}.

4 — 全成分1の摂動行列式

方針

この行列は「対角行列に、全成分が 11 の rank one 行列を足したもの」と見ると一気に計算できる。 全成分を書き下して余因子展開を繰り返すより、構造を見抜く方が計算量もミスも少ない。

多項式としての延長

行列式補題を使う途中では ai0a_i\neq 0 を仮定したが、最終式は多項式である。 非零の点全体で一致する二つの多項式は恒等的に一致するため、ai=0a_i=0 を含む場合も同じ答えになる。 この一言を入れておくと、除算を使った証明の穴を塞げる。

有界性の判定

D(1,2,,n)/n!D(1,2,\ldots,n)/n!1+Hn1+H_n であり、HnH_n は非常にゆっくりだが発散する。 「増加が遅い」ことと「有界である」ことは別であるため、対数下界などで明確に発散を示すのがよい。

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(i) 対角成分が ai+1a_i+1、非対角成分が 11 である行列は diag(a1,,an)+11T \operatorname{diag}(a_1,\ldots,a_n)+\mathbf{1}\mathbf{1}^{\mathsf T} と書ける。ただし 1=(1,,1)T\mathbf{1}=(1,\ldots,1)^{\mathsf T} である。

まず a1,,ana_1,\ldots,a_n がすべて 00 でない場合を考える。 行列式補題 det(A+uvT)=detA(1+vTA1u) \det(A+uv^{\mathsf T}) = \det A\,(1+v^{\mathsf T}A^{-1}u) A=diag(a1,,an)A=\operatorname{diag}(a_1,\ldots,a_n)u=v=1u=v=\mathbf{1} に適用すると、 D(a1,,an)=i=1nai(1+i=1n1ai)=i=1nai+i=1n1jnjiaj. \begin{aligned} D(a_1,\ldots,a_n) &= \prod_{i=1}^n a_i \left(1+\sum_{i=1}^n\frac{1}{a_i}\right)\\ &= \prod_{i=1}^n a_i +\sum_{i=1}^n \prod_{\substack{1\leq j\leq n\\ j\neq i}} a_j. \end{aligned} 両辺は a1,,ana_1,\ldots,a_n の多項式であり、ai0a_i\neq 0 の範囲で一致している。 よって多項式として恒等的に一致し、いずれかの aia_i00 の場合にも同じ式が成り立つ。

(ii) (i) の結果に ai=ia_i=i を代入すると D(1,2,,n)=n!(1+i=1n1i). D(1,2,\ldots,n) = n!\left(1+\sum_{i=1}^n\frac{1}{i}\right). したがって D(1,2,,n)n!=1+i=1n1i=1+Hn \frac{D(1,2,\ldots,n)}{n!} = 1+\sum_{i=1}^n\frac{1}{i} = 1+H_n である。調和数 HnH_n は発散する。 実際、 Hn=i=1n1i1n+1dxx=log(n+1) H_n = \sum_{i=1}^n\frac{1}{i} \geq \int_1^{n+1}\frac{dx}{x} = \log(n+1) であり、nn\to\infty とともに無限大へ発散する。 よってこの集合は有界でない。

最終答

D(a1,,an)=i=1nai+i=1njiaj. D(a_1,\ldots,a_n) = \prod_{i=1}^n a_i +\sum_{i=1}^n \prod_{j\neq i}a_j. また D(1,2,,n)n!=1+Hn \frac{D(1,2,\ldots,n)}{n!}=1+H_n であるから、集合は有界でない。

5 — 行ランクと列ランク

方針

行ランクは「行の張る空間」、列ランクは「列の張る空間」と定義が違うため、同じ操作で保存される理由も少し違う。 行ランクは行空間そのものが変わらないことから、列ランクは左から掛ける正則行列が列空間を線形同型で移すことから従う。

採点上の注意

(i) で「行基本変形だから列ランクも明らか」と書くのは危険である。 行操作は列ベクトルの各成分を混ぜる操作なので、列空間そのものは一般には同じではない。 ただし正則線形変換で移されるため、次元は保存される。 この区別を書けるかが証明問題では重要である。

別解

最大階数の小行列式を用いて、行ランクと列ランクがともに最大の非零小行列式のサイズに等しいことを示す方法もある。 ただし本問では行基本変形の性質を問う流れなので、階段形に落とす証明の方が自然である。

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(i) まず行ランクについて考える。 行基本変形の三種類、すなわち 行の定数倍、二行の入れ換え、ある行への別の行の定数倍の加算は、いずれも行ベクトルたちが張る部分空間を変えない。 実際、各操作は逆操作を持つので、変形後の各行は変形前の行の線形結合であり、逆に変形前の各行も変形後の行の線形結合で表せる。 したがって行空間の次元、すなわち行ランクは保存される。

次に列ランクを考える。 行基本変形全体は、ある正則な mm 次行列 EE を左から掛けることに等しい。 つまり B=EA B=EA と書ける。 AA の列ベクトルを a1,,ana_1,\ldots,a_n とすると、BB の列ベクトルは Ea1,,Ean Ea_1,\ldots,Ea_n である。正則行列 EE が定める写像 RmRm,vEv \mathbb{R}^m\longrightarrow \mathbb{R}^m,\qquad v\longmapsto Ev は線形同型であるから、部分空間の次元を保つ。 よって dimspan(a1,,an)=dimspan(Ea1,,Ean) \dim\operatorname{span}(a_1,\ldots,a_n) = \dim\operatorname{span}(Ea_1,\ldots,Ea_n) となり、列ランクも保存される。

(ii) AA に行基本変形を施して、簡約行階段形 RR にする。 (i) により、AARR は同じ行ランク、同じ列ランクを持つ。 したがって RR について行ランクと列ランクが等しいことを示せば十分である。

RR の非零行の本数を rr とする。 簡約行階段形では、非零行は互いに一次独立であるから、行ランクは rr である。 また、各非零行には先頭の 11、すなわちピボットが一つずつあり、ピボット列は rr 本ある。 簡約行階段形ではピボット列は互いに異なる標準基底ベクトルの形をしているため一次独立である。 一方、非ピボット列は、ピボット行に現れる成分を係数としてピボット列の線形結合で表される。 よって列空間は rr 本のピボット列で張られ、列ランクも rr である。

以上より 行ランク(A)=列ランク(A) \text{行ランク}(A)=\text{列ランク}(A) が成り立つ。

最終答

行基本変形では行ランクも列ランクも保存される。 さらに行階段形に帰着すると、どちらのランクもピボットの個数に等しい。 したがって任意の実行列 AA について rowrankA=colrankA \operatorname{rowrank}A=\operatorname{colrank}A である。

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