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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2012年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2012年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 積分の変数変換

方針

どちらも積分そのものを力ずくで評価するのではなく,領域を先に読む。第1の積分は x2+y2x^2+y^2 が現れるので極座標に移すと対数が 2logr2\log r だけになる。第2の積分は yxy\le x という三角領域で,積分順序を入れ替えると内側の積分が長さ xx になる。

検算

01rmlogrdr=1/(m+1)2\int_0^1 r^m\log r\,dr=-1/(m+1)^2 を使っている。ここで m=3m=3 なので 1/16-1/16 であり,さらに log(r2)=2logr\log(r^2)=2\log r と角度積分 1/21/2 が掛かって 1/16-1/16 になる。係数 22 を落とすと 1/32-1/32 になってしまう。

採点上の注意

第2の積分では,入れ替え後の yy の長さが xx であることを書くとよい。 cos(x2)dx\int\cos(x^2)\,dx を直接求めようとすると初等関数では進まないので,ここが出題の狙いである。

2012年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

  1. 第1象限の単位円板なので,極座標 x=rcosθ,y=rsinθ x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta を用いると,0r1, 0θπ/20\le r\le 1,\ 0\le \theta\le \pi/2 であり, xylog(x2+y2)dxdy=r2cosθsinθ2logrrdrdθ. xy\log(x^2+y^2)\,dx\,dy =r^2\cos\theta\sin\theta\cdot 2\log r\cdot r\,dr\,d\theta. したがって I1=(0π/2cosθsinθdθ)(012r3logrdr)=122[1(3+1)2]=116. \begin{aligned} I_1 &=\left(\int_0^{\pi/2}\cos\theta\sin\theta\,d\theta\right) \left(\int_0^1 2r^3\log r\,dr\right) \\ &=\frac12\cdot 2\left[-\frac{1}{(3+1)^2}\right] =-\frac1{16}. \end{aligned}
  2. a=π2 a=\sqrt{\frac{\pi}{2}} とおく。積分領域は 0ya,yxa 0\le y\le a,\qquad y\le x\le a であるから,順序を入れ替えると 0xa,0yx 0\le x\le a,\qquad 0\le y\le x となる。よって I2=0a0xcos(x2)dydx=0axcos(x2)dx=12[sin(x2)]0a=12sinπ2=12. \begin{aligned} I_2 &=\int_0^a\int_0^x \cos(x^2)\,dy\,dx =\int_0^a x\cos(x^2)\,dx \\ &=\frac12\left[\sin(x^2)\right]_{0}^{a} =\frac12\sin\frac{\pi}{2} =\frac12. \end{aligned}

最終答

I1=116,I2=12. I_1=-\frac1{16},\qquad I_2=\frac12.

2 — 実数連立方程式

方針

未知数が4つあるので,まず ww をパラメータとして固定する。すると残りは同次線形方程式であり, 非自明解が出るのは係数行列の行列式が 00 になるときだけである。

重根の扱い

detM(w)=(w2)2(w+4)\det M(w)=(w-2)^2(w+4) なので,w=2w=2 は重根である。ただし重根だからといって 解空間が必ず2次元とは限らない。実際には行列を代入して階数を見る必要があり,今回は w=2w=2 で階数 11w=4w=-4 で階数 22 になる。

採点上の注意

x=y=z=0x=y=z=0 は任意の ww で解である。行列式が消える場合だけを書いて終えると, この1次元族を落とすことになる。最後は解集合を和集合として明示しておくと,重複があっても誤解されにくい。

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固定した ww に対して,x,y,zx,y,z に関する同次一次方程式と見る。係数行列は M(w)=(w1212w+2212w1) M(w)= \begin{pmatrix} w-1 & 2 & 1\\ 2 & w+2 & 2\\ 1 & 2 & w-1 \end{pmatrix} である。行列式を計算すると detM(w)=(w1)2(w+2)8(w1)+8(w+2)=w312w+16=(w2)2(w+4). \begin{aligned} \det M(w) &=(w-1)^2(w+2)-8(w-1)+8-(w+2)\\ &=w^3-12w+16 =(w-2)^2(w+4). \end{aligned}

したがって,w2,4w\ne 2,-4 では x=y=z=0 x=y=z=0 だけが可能である。この場合,ww は任意の実数でよい。

w=2w=2 のときは M(2)=(121242121) M(2)= \begin{pmatrix} 1&2&1\\ 2&4&2\\ 1&2&1 \end{pmatrix} であり,条件は x+2y+z=0 x+2y+z=0 だけに落ちる。よって y=s, z=ty=s,\ z=t とおけば (x,y,z,w)=(2st,s,t,2)(s,tR). (x,y,z,w)=(-2s-t,s,t,2)\qquad (s,t\in\mathbb R).

w=4w=-4 のときは M(4)=(521222125). M(-4)= \begin{pmatrix} -5&2&1\\ 2&-2&2\\ 1&2&-5 \end{pmatrix}. 第2行から y=x+zy=x+z,第3行から x+2y5z=0x+2y-5z=0 なので x=z,y=2x. x=z,\qquad y=2x. したがって (x,y,z,w)=(t,2t,t,4)(tR). (x,y,z,w)=(t,2t,t,-4)\qquad (t\in\mathbb R).

最終答

{(0,0,0,w)wR}{(2st,s,t,2)s,tR}{(t,2t,t,4)tR}. \{(0,0,0,w)\mid w\in\mathbb R\} \cup \{(-2s-t,s,t,2)\mid s,t\in\mathbb R\} \cup \{(t,2t,t,-4)\mid t\in\mathbb R\}.

3 — 指数型母関数と3周期列

方針

この問題は通常の母関数ではなく,階乗で割った指数型母関数である。指数型母関数では, 3回微分すると添字がちょうど n+3n+3 へ移るため,微分方程式と周期条件がそのまま対応する。

収束の確認

周期列は有界である。したがって指数型母関数は指数関数 exe^{|x|} で押さえられ,任意の実数で絶対収束する。 この有界性を書かずに形式計算だけで済ませると,収束を問う部分の説明が不足する。

検算

得られた式で x=0x=0 を代入すると f(0)=1/31/3=0f(0)=1/3-1/3=0 である。また f(0)=13+1616=13,f(0)=13+16+16=23 f'(0)=\frac13+\frac16-\frac16=\frac13,\qquad f''(0)=\frac13+\frac16+\frac16=\frac23 となり,最初の3項の係数と一致する。

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  1. f(x)=n=0ann!xn f(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{a_n}{n!}x^n と書くと,項別微分により f(x)=n=0an+3n!xn. f'''(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{a_{n+3}}{n!}x^n. 微分方程式 f=ff'''=f と係数比較から an+3=an(n0) a_{n+3}=a_n\qquad (n\ge 0) である。よって {an}\{a_n\} は周期 33 をもつ。
  2. 逆に an+3=ana_{n+3}=a_n とする。このとき {an}\{a_n\} は有界であるから,ある M>0M>0 に対して anM(n0) |a_n|\le M\qquad(n\ge 0) とできる。任意の xRx\in\mathbb R について n=0ann!xnMn=0xnn!=Mex \sum_{n=0}^{\infty}\left|\frac{a_n}{n!}x^n\right| \le M\sum_{n=0}^{\infty}\frac{|x|^n}{n!} =Me^{|x|} であり,冪級数は全実数で収束する。さらに項別に3回微分でき, f(x)=n=0an+3n!xn=n=0ann!xn=f(x). f'''(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{a_{n+3}}{n!}x^n =\sum_{n=0}^{\infty}\frac{a_n}{n!}x^n =f(x).
  3. ここでは a0=0,a1=13,a2=23 a_0=0,\qquad a_1=\frac13,\qquad a_2=\frac23 であり,以後はこの3つが繰り返される。したがって fff=f,f(0)=0,f(0)=13,f(0)=23 f'''=f,\qquad f(0)=0,\quad f'(0)=\frac13,\quad f''(0)=\frac23 を満たす解である。 特性方程式 r3=1r^3=1 より,実数値解は f(x)=Aex+ex/2(Bcos3x2+Csin3x2) f(x)=Ae^x+e^{-x/2}\left(B\cos\frac{\sqrt3 x}{2} +C\sin\frac{\sqrt3 x}{2}\right) と書ける。初期条件から A+B=0, A+B=0, 32A+32C=13,32A32C=23. \frac32 A+\frac{\sqrt3}{2}C=\frac13,\qquad \frac32 A-\frac{\sqrt3}{2}C=\frac23. よって A=13,B=13,C=133. A=\frac13,\qquad B=-\frac13,\qquad C=-\frac{1}{3\sqrt3}. したがって f(x)=13ex13ex/2cos3x2133ex/2sin3x2. f(x)=\frac13 e^x-\frac13 e^{-x/2}\cos\frac{\sqrt3 x}{2} -\frac{1}{3\sqrt3}e^{-x/2}\sin\frac{\sqrt3 x}{2}.

最終答

an+3=an,f(x)=13ex13ex/2cos3x2133ex/2sin3x2. a_{n+3}=a_n,\qquad f(x)=\frac13 e^x-\frac13 e^{-x/2}\cos\frac{\sqrt3 x}{2} -\frac{1}{3\sqrt3}e^{-x/2}\sin\frac{\sqrt3 x}{2}.

4 — 2次行列の交換子

方針

中心は交換子 C=ABBA C=AB-BA の性質である。交換子は常にトレース 00 なので,2次行列ではCayley--Hamiltonの定理により C2=(detC)I C^2=-(\det C)I まで一気に落ちる。したがって,最後は detC\det C00 かどうかを共通固有ベクトルの有無に結びつければよい。

上三角化の意味

共通固有ベクトルがあるとき,そのベクトルを基底の1本目に取ると両方の行列が上三角になる。 上三角行列同士の交換子は対角成分が消えるので,2次では必ず平方零になる。

採点上の注意

(3)では「共通固有ベクトルがない」という仮定を使う場所を明確にする必要がある。対角化可能な場合は q,r0q,r\ne0,Jordan型の場合は r0r\ne0 がその具体的な使い所である。

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以下,C=ABBAC=AB-BA とおく。

  1. 2次行列のCayley--Hamiltonの定理より A2(trA)A+(detA)I=O. A^2-(\operatorname{tr}A)A+(\det A)I=O. trA=0\operatorname{tr}A=0 なら A2=(detA)I. A^2=-(\det A)I. したがって λ=detA\lambda=-\det A とおけばよい。
  2. A,BA,B が共通の固有ベクトルをもつとする。その固有ベクトルを第1基底ベクトルに含む基底を取れば, A=(αa0β),B=(γb0δ) A=\begin{pmatrix}\alpha&a\\0&\beta\end{pmatrix}, \qquad B=\begin{pmatrix}\gamma&b\\0&\delta\end{pmatrix} と上三角に書ける。すると C=ABBA C=AB-BA も上三角であり,対角成分はどちらも 00 である。よって C=(0c00) C=\begin{pmatrix}0&c\\0&0\end{pmatrix} の形になり, C2=O. C^2=O.
  3. まず tr(ABBA)=0\operatorname{tr}(AB-BA)=0 である。したがって,(1)を CC に適用すれば C2=(detC)I. C^2=-(\det C)I. あとは,共通固有ベクトルをもたない場合に detC0\det C\ne0 であることを,指定された2つの場合に分けて示す。 (a) AA が対角化可能な場合。 もし AA がスカラー行列なら,BB の任意の固有ベクトルが AA の固有ベクトルでもあるので, 共通固有ベクトルをもたない仮定に反する。よって異なる固有値 αβ\alpha\ne\beta をもち,ある基底で A=(α00β),B=(pqrs) A=\begin{pmatrix}\alpha&0\\0&\beta\end{pmatrix},\qquad B=\begin{pmatrix}p&q\\ r&s\end{pmatrix} と書ける。このとき C=(0(αβ)q(βα)r0). C= \begin{pmatrix} 0&(\alpha-\beta)q\\ (\beta-\alpha)r&0 \end{pmatrix}. もし q=0q=0 なら第2基底ベクトルが,もし r=0r=0 なら第1基底ベクトルが,共通固有ベクトルになる。 したがって仮定の下では q0, r0q\ne0,\ r\ne0 である。ゆえに C2=(αβ)2qrI C^2=-(\alpha-\beta)^2qr\,I であり,右辺の係数は 00 でない。 (b) AA が対角化可能でない場合。 複素数体上では,ある基底で A=αI+(0100) A=\alpha I+ \begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix} と書ける。スカラー部分は交換子に寄与しないので, N=(0100),B=(pqrs) N=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix},\qquad B=\begin{pmatrix}p&q\\ r&s\end{pmatrix} として C=NBBNC=NB-BN を計算する。 C=(rsp0r). C= \begin{pmatrix} r&s-p\\ 0&-r \end{pmatrix}. AA の固有方向は第1基底ベクトルの張る直線だけである。もし r=0r=0 なら BB もこの直線を保ち, 共通固有ベクトルをもつ。したがって仮定の下では r0r\ne0 である。よって C2=r2I C^2=r^2 I であり,この係数は 00 でない。

最終答

trA=0A2=(detA)I,共通固有ベクトルあり(ABBA)2=O. \operatorname{tr}A=0\Rightarrow A^2=-(\det A)I,\qquad \text{共通固有ベクトルあり}\Rightarrow (AB-BA)^2=O. 共通固有ベクトルがない場合は (ABBA)2=λI (AB-BA)^2=\lambda I となり,対角化可能な場合は λ=(αβ)2qr0\lambda=-(\alpha-\beta)^2qr\ne0, 非対角化の場合は λ=r20\lambda=r^2\ne0 と書ける。

5 — 留数計算による対数二乗積分

方針

対数の二乗を得るため,Log2z/(z2+1)\operatorname{Log}^2 z/(z^2+1) を上半平面で積分する。 負の実軸に回り込むと Log(x)=logx+iπ\operatorname{Log}(-x)=\log x+i\pi となり,この差が (logx)2(\log x)^2 と定数項を同時に生む。

消える積分の確認

J=0logxx2+1dx J=\int_0^\infty\frac{\log x}{x^2+1}\,dx x=1/tx=1/t を入れると J=0logtt2+1dt=J J=\int_0^\infty \frac{-\log t}{t^2+1}\,dt=-J となるので J=0J=0 である。この一行により,実軸部分の虚部を気にせず実部だけで II を決定できる。

別解による検算

パラメータ積分 G(a)=0xa11+x2dx=π2cscπa2(0<a<2) G(a)=\int_0^\infty\frac{x^{a-1}}{1+x^2}\,dx =\frac{\pi}{2}\csc\frac{\pi a}{2}\qquad(0<a<2) を2回微分して a=1a=1 とおくと,同じく G(1)=π38 G''(1)=\frac{\pi^3}{8} を得る。留数計算で符号を迷ったときのよい検算になる。

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求める積分を I=0(logx)2x2+1dx I=\int_0^\infty \frac{(\log x)^2}{x^2+1}\,dx とおく。上半平面で F(z)=Log2zz2+1 F(z)=\frac{\operatorname{Log}^2 z}{z^2+1} を考える。ただし 0<argz<π0<\arg z<\pi の分枝を用いる。

半径 ε\varepsilonRR の上半円環の境界で積分し,ε0, R\varepsilon\to0,\ R\to\infty とする。 大円弧と小円弧の寄与はそれぞれ O ⁣((logR)2R),O ⁣(ε(logε)2) O\!\left(\frac{(\log R)^2}{R}\right),\qquad O\!\left(\varepsilon(\log \varepsilon)^2\right) なので消える。

正の実軸上では Logx=logx\operatorname{Log}x=\log x,負の実軸上では Log(x)=logx+iπ(x>0) \operatorname{Log}(-x)=\log x+i\pi \qquad (x>0) である。したがって実軸部分の和は 0(logx)2+(logx+iπ)2x2+1dx=2I+2iπ0logxx2+1dxπ20dxx2+1. \begin{aligned} \int_0^\infty \frac{(\log x)^2+(\log x+i\pi)^2}{x^2+1}\,dx &= 2I+2i\pi\int_0^\infty\frac{\log x}{x^2+1}\,dx -\pi^2\int_0^\infty\frac{dx}{x^2+1}. \end{aligned} ここで 0logxx2+1dx=0 \int_0^\infty\frac{\log x}{x^2+1}\,dx=0 である。これは x=1/tx=1/t とおくと積分値が自分自身の負になるためである。また 0dxx2+1=π2. \int_0^\infty\frac{dx}{x^2+1}=\frac{\pi}{2}.

上半平面内の極は z=iz=i だけであり, Resz=iF(z)=Log2i2i=(iπ/2)22i. \operatorname{Res}_{z=i}F(z) =\frac{\operatorname{Log}^2 i}{2i} =\frac{(i\pi/2)^2}{2i}. よって留数定理より 2πiResz=iF(z)=π(iπ2)2=π34. 2\pi i\,\operatorname{Res}_{z=i}F(z) =\pi\left(\frac{i\pi}{2}\right)^2 =-\frac{\pi^3}{4}. 以上から 2Iπ2π2=π34. 2I-\pi^2\cdot\frac{\pi}{2} =-\frac{\pi^3}{4}. したがって I=π38. I=\frac{\pi^3}{8}.

最終答

0(logx)2x2+1dx=π38. \int_0^\infty \frac{(\log x)^2}{x^2+1}\,dx=\frac{\pi^3}{8}.

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