大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2012年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2012年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 積分の変数変換
方針
どちらも積分そのものを力ずくで評価するのではなく,領域を先に読む。第1の積分は が現れるので極座標に移すと対数が だけになる。第2の積分は という三角領域で,積分順序を入れ替えると内側の積分が長さ になる。
検算
を使っている。ここで なので であり,さらに と角度積分 が掛かって になる。係数 を落とすと になってしまう。
採点上の注意
第2の積分では,入れ替え後の の長さが であることを書くとよい。 を直接求めようとすると初等関数では進まないので,ここが出題の狙いである。
2012年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
- 第1象限の単位円板なので,極座標 を用いると, であり, したがって
- とおく。積分領域は であるから,順序を入れ替えると となる。よって
最終答
第2問 — 実数連立方程式
方針
未知数が4つあるので,まず をパラメータとして固定する。すると残りは同次線形方程式であり, 非自明解が出るのは係数行列の行列式が になるときだけである。
重根の扱い
なので, は重根である。ただし重根だからといって 解空間が必ず2次元とは限らない。実際には行列を代入して階数を見る必要があり,今回は で階数 , で階数 になる。
採点上の注意
は任意の で解である。行列式が消える場合だけを書いて終えると, この1次元族を落とすことになる。最後は解集合を和集合として明示しておくと,重複があっても誤解されにくい。
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固定した に対して, に関する同次一次方程式と見る。係数行列は である。行列式を計算すると
したがって, では だけが可能である。この場合, は任意の実数でよい。
のときは であり,条件は だけに落ちる。よって とおけば
のときは 第2行から ,第3行から なので したがって
最終答
第3問 — 指数型母関数と3周期列
方針
この問題は通常の母関数ではなく,階乗で割った指数型母関数である。指数型母関数では, 3回微分すると添字がちょうど へ移るため,微分方程式と周期条件がそのまま対応する。
収束の確認
周期列は有界である。したがって指数型母関数は指数関数 で押さえられ,任意の実数で絶対収束する。 この有界性を書かずに形式計算だけで済ませると,収束を問う部分の説明が不足する。
検算
得られた式で を代入すると である。また となり,最初の3項の係数と一致する。
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- と書くと,項別微分により 微分方程式 と係数比較から である。よって は周期 をもつ。
- 逆に とする。このとき は有界であるから,ある に対して とできる。任意の について であり,冪級数は全実数で収束する。さらに項別に3回微分でき,
- ここでは であり,以後はこの3つが繰り返される。したがって は を満たす解である。 特性方程式 より,実数値解は と書ける。初期条件から よって したがって
最終答
第4問 — 2次行列の交換子
方針
中心は交換子 の性質である。交換子は常にトレース なので,2次行列ではCayley--Hamiltonの定理により まで一気に落ちる。したがって,最後は が かどうかを共通固有ベクトルの有無に結びつければよい。
上三角化の意味
共通固有ベクトルがあるとき,そのベクトルを基底の1本目に取ると両方の行列が上三角になる。 上三角行列同士の交換子は対角成分が消えるので,2次では必ず平方零になる。
採点上の注意
(3)では「共通固有ベクトルがない」という仮定を使う場所を明確にする必要がある。対角化可能な場合は ,Jordan型の場合は がその具体的な使い所である。
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以下, とおく。
- 2次行列のCayley--Hamiltonの定理より なら したがって とおけばよい。
- が共通の固有ベクトルをもつとする。その固有ベクトルを第1基底ベクトルに含む基底を取れば, と上三角に書ける。すると も上三角であり,対角成分はどちらも である。よって の形になり,
- まず である。したがって,(1)を に適用すれば あとは,共通固有ベクトルをもたない場合に であることを,指定された2つの場合に分けて示す。 (a) が対角化可能な場合。 もし がスカラー行列なら, の任意の固有ベクトルが の固有ベクトルでもあるので, 共通固有ベクトルをもたない仮定に反する。よって異なる固有値 をもち,ある基底で と書ける。このとき もし なら第2基底ベクトルが,もし なら第1基底ベクトルが,共通固有ベクトルになる。 したがって仮定の下では である。ゆえに であり,右辺の係数は でない。 (b) が対角化可能でない場合。 複素数体上では,ある基底で と書ける。スカラー部分は交換子に寄与しないので, として を計算する。 の固有方向は第1基底ベクトルの張る直線だけである。もし なら もこの直線を保ち, 共通固有ベクトルをもつ。したがって仮定の下では である。よって であり,この係数は でない。
最終答
共通固有ベクトルがない場合は となり,対角化可能な場合は , 非対角化の場合は と書ける。
第5問 — 留数計算による対数二乗積分
方針
対数の二乗を得るため, を上半平面で積分する。 負の実軸に回り込むと となり,この差が と定数項を同時に生む。
消える積分の確認
に を入れると となるので である。この一行により,実軸部分の虚部を気にせず実部だけで を決定できる。
別解による検算
パラメータ積分 を2回微分して とおくと,同じく を得る。留数計算で符号を迷ったときのよい検算になる。
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求める積分を とおく。上半平面で を考える。ただし の分枝を用いる。
半径 と の上半円環の境界で積分し, とする。 大円弧と小円弧の寄与はそれぞれ なので消える。
正の実軸上では ,負の実軸上では である。したがって実軸部分の和は ここで である。これは とおくと積分値が自分自身の負になるためである。また
上半平面内の極は だけであり, よって留数定理より 以上から したがって
最終答