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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2016年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2016年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 円盤上の積分と差分商

方針

円板上で一次関数を積分する問題は,重心を使うと一行で処理できる。 ただし答案では極座標での確認も書けるようにしておくと,図形的な取り違えを防げる。

積分領域は中心が原点でない円板である

差分商の見方

hhkk が別々の速度で 00 に近づくため,単に h=kh=k と置いてはいけない。上の分解により,右差分商と左差分商の 重み付き平均として扱える。微分可能性から両方が同じ f(x)f'(x) に 近づくので,重みがどのように変わっても極限は変わらない。

採点上の注意

積分では円板の中心を (0,0)(0,0) と誤認すると答えが 00 になってしまう。 差分商では,h/(h+k)h/(h+k)k/(h+k)k/(h+k) がそれぞれ 00 から 11 の間にあり, 和が 11 であることを書くと,極限の議論が明確になる。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

前半の積分領域は x2+y2x(x12)2+y214 x^2+y^2\le x \quad\Longleftrightarrow\quad \left(x-\frac12\right)^2+y^2\le \frac14 である。中心 (1/2,0)(1/2,0),半径 1/21/2 の円板なので,重心の xx 座標は 1/21/2,面積は π/4\pi/4 である。したがって Dxdxdy=12π4=π8. \iint_D x\,dx\,dy = \frac12\cdot \frac{\pi}{4} = \frac{\pi}{8}.

同じ計算は極座標でも確認できる。x=rcosθx=r\cos\theta とすると 領域は π/2θπ/2, 0rcosθ-\pi/2\le\theta\le\pi/2,\ 0\le r\le \cos\theta であり, Dxdxdy=π/2π/20cosθ(rcosθ)rdrdθ=13π/2π/2cos4θdθ=π8. \iint_D x\,dx\,dy = \int_{-\pi/2}^{\pi/2}\int_0^{\cos\theta} (r\cos\theta)r\,dr\,d\theta = \frac13\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^4\theta\,d\theta = \frac{\pi}{8}.

後半は,h>0, k>0h>0,\ k>0 として差分商を分ける。 f(x+h)f(xk)h+k=hh+kf(x+h)f(x)h+kh+kf(x)f(xk)k. \frac{f(x+h)-f(x-k)}{h+k} = \frac{h}{h+k}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} + \frac{k}{h+k}\frac{f(x)-f(x-k)}{k}. ffxx で微分可能だから,任意の ε>0\varepsilon>0 に対して 十分小さい h,k>0h,k>0 では f(x+h)f(x)hf(x)<ε,f(x)f(xk)kf(x)<ε \left|\frac{f(x+h)-f(x)}{h}-f'(x)\right|<\varepsilon,\qquad \left|\frac{f(x)-f(x-k)}{k}-f'(x)\right|<\varepsilon が成り立つ。上の式はこの2つの差分商の凸結合であるため, f(x+h)f(xk)h+kf(x)hh+kε+kh+kε=ε. \left| \frac{f(x+h)-f(x-k)}{h+k}-f'(x) \right| \le \frac{h}{h+k}\varepsilon+\frac{k}{h+k}\varepsilon = \varepsilon . よって求める極限は f(x)f'(x) である。

最終答

Dxdxdy=π8\displaystyle \iint_D x\,dx\,dy=\frac{\pi}{8}。また,両側からの差分商の極限は f(x)f'(x) に等しい。

2 — 数列空間と線形漸化式

方針

数列全体の空間は,成分ごとの実数計算に帰着する。部分空間の確認では, 漸化式が「線形かつ同次」であることを使えばよい。基底は特性方程式の根から 候補を作るのが標準的である。

3つの基本解が初期値3個分の自由度を張る

次元の押さえ方

3階の漸化式では,a0,a1,a2a_0,a_1,a_2 を与えると以降の項が順に決まる。 このため解空間の次元は高々 33 である。3本の一次独立な解を見つければ, それだけで基底だと結論できる。

典型ミス

一次独立性は「見た目が違う」だけでは証明にならない。有限個の添字 n=0,1,2n=0,1,2 を取り出して,係数行列の行列式が非零であることを示すと 短く確実に書ける。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

まず VV は実数列全体であり,和とスカラー倍は成分ごとに定義されている。 零ベクトルは零数列,{an}\{a_n\} の加法逆元は {an}\{-a_n\} である。 結合法則,交換法則,分配法則などは各成分の実数演算に帰着するので, VV は実ベクトル空間である。

次に3つの数列の一次独立性を示す。実数 α,β,γ\alpha,\beta,\gammaα(1)n+β2n+γ3n=0(n=0,1,2,) \alpha(-1)^n+\beta 2^n+\gamma 3^n=0 \qquad(n=0,1,2,\ldots) を満たすとする。n=0,1,2n=0,1,2 を代入すると (111123149)(αβγ)=(000). \begin{pmatrix} 1&1&1\\ -1&2&3\\ 1&4&9 \end{pmatrix} \begin{pmatrix}\alpha\\ \beta\\ \gamma\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}. この係数行列の行列式は 111123149=120 \begin{vmatrix} 1&1&1\\ -1&2&3\\ 1&4&9 \end{vmatrix} =12\ne0 である。したがって α=β=γ=0\alpha=\beta=\gamma=0 となり,3つの数列は 一次独立である。

最後に,漸化式で定まる集合 WW を考える。2つの WW の元 {an},{bn}\{a_n\},\{b_n\} と実数 λ\lambda について, (an+3+bn+3)=2(an+2+bn+2)+(an+1+bn+1)2(an+bn), (a_{n+3}+b_{n+3}) = 2(a_{n+2}+b_{n+2})+(a_{n+1}+b_{n+1})-2(a_n+b_n), λan+3=2λan+2+λan+12λan \lambda a_{n+3} = 2\lambda a_{n+2}+\lambda a_{n+1}-2\lambda a_n が成り立つ。零数列も同じ漸化式を満たすため,WWVV の部分空間である。

特性方程式は r32r2r+2=0 r^3-2r^2-r+2=0 であり, r32r2r+2=(r+1)(r1)(r2) r^3-2r^2-r+2=(r+1)(r-1)(r-2) と因数分解できる。よって {(1)n}n=0,{1}n=0,{2n}n=0 \{(-1)^n\}_{n=0}^{\infty},\qquad \{1\}_{n=0}^{\infty},\qquad \{2^n\}_{n=0}^{\infty} はいずれも WW に属する。これらの n=0,1,2n=0,1,2 における値で作る行列式は 111112114=60 \begin{vmatrix} 1&1&1\\ -1&1&2\\ 1&1&4 \end{vmatrix} =6\ne0 だから一次独立である。

一方,漸化式を満たす数列は初期値 a0,a1,a2a_0,a_1,a_2 により一意に定まる。 したがって WW の次元は高々 33 である。上で WW に属する 一次独立な3本の数列を得たので,これらは WW の基底である。

最終答

WW の基底の一例は {(1)n}, {1}, {2n}\{(-1)^n\},\ \{1\},\ \{2^n\}

3 — 留数定理によるフーリエ型積分

方針

cosx\cos x を直接扱うより,eixe^{ix} の実部として計算する方が留数定理に乗せやすい。 eize^{iz} は上半平面で減衰するため,上半円を閉曲線に選ぶ。

上半平面で閉じると z=iz=i だけを囲む

弧の評価

答案では「Jordan の補題により」と書いてよいが,理由は z=Reiθz=Re^{i\theta} に対して eiz=eRsinθ |e^{iz}|=e^{-R\sin\theta} となるためである。分母はおよそ R2R^2,弧長はおよそ RR なので, 減衰を合わせると半円弧の寄与は消える。

採点上の注意

cosz\cos z をそのまま上半円で積分すると,cosz\cos z は指数的に増える成分を含む。 eize^{iz} を選び,最後に実部を取るのが安全である。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

複素関数 F(z)=eiz1+z2 F(z)=\frac{e^{iz}}{1+z^2} を考え,上半平面の半円輪郭で積分する。上半平面にある極は z=iz=i の単純極だけである。留数は Resz=iF(z)=limzi(zi)eiz(zi)(z+i)=eii2i=e12i. \operatorname*{Res}_{z=i}F(z) = \lim_{z\to i}\frac{(z-i)e^{iz}}{(z-i)(z+i)} = \frac{e^{i i}}{2i} = \frac{e^{-1}}{2i}. したがって留数定理より eix1+x2dx=2πie12i=πe. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{ix}}{1+x^2}\,dx = 2\pi i\cdot \frac{e^{-1}}{2i} = \frac{\pi}{e}. 上半円弧上の積分は Jordan の補題,または eiz=eImz|e^{iz}|=e^{-\operatorname{Im}z} と分母の二次増大により 00 へ収束する。

求める積分は上式の実部であるから, cosx1+x2dx=πe. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos x}{1+x^2}\,dx = \frac{\pi}{e}.

最終答

πe\displaystyle \frac{\pi}{e}

4 — 二変数多項式の極値

方針

この関数は xxyy が分離しているので,停留点の候補は一変数の条件を 2回使えば出る。閉領域上の絶対最大・最小では,x2,y2x^2,y^2 を新しい変数にすると 三角形領域の問題に変わる。

閉円板は (s,t)(s,t) 平面で三角形になる

検算

x4x2=(x21/2)21/4x^4-x^2=(x^2-1/2)^2-1/4 と平方完成できるので, f=(x212)2+(y212)2+12 f=\left(x^2-\frac12\right)^2+\left(y^2-\frac12\right)^2+\frac12 である。これにより全平面での最小値が 1/21/2 であることは直ちに確認できる。

典型ミス

停留点の値だけを調べて閉領域上の最大値を答えると,境界の値 1313 を落とす。 閉領域の最大・最小では「内部」と「境界」を必ず分ける。

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関数を f(x,y)=x4+y4x2y2+1 f(x,y)=x^4+y^4-x^2-y^2+1 とおく。偏微分は fx=4x32x=2x(2x21),fy=4y32y=2y(2y21) f_x=4x^3-2x=2x(2x^2-1),\qquad f_y=4y^3-2y=2y(2y^2-1) である。したがって停留点では x{0,±12},y{0,±12} x\in\left\{0,\pm\frac1{\sqrt2}\right\},\qquad y\in\left\{0,\pm\frac1{\sqrt2}\right\} となる。

Hessian は H=(12x220012y22) H= \begin{pmatrix} 12x^2-2&0\\ 0&12y^2-2 \end{pmatrix} である。(0,0)(0,0) では H=diag(2,2)H=\operatorname{diag}(-2,-2) なので局所最大で, f(0,0)=1. f(0,0)=1. また x2=y2=1/2x^2=y^2=1/2 の4点では H=diag(4,4)H=\operatorname{diag}(4,4) なので局所最小で, f=(1412)+(1412)+1=12. f=\left(\frac14-\frac12\right)+\left(\frac14-\frac12\right)+1 = \frac12. 一方,片方だけが 00,もう片方が ±1/2\pm1/\sqrt2 の点では Hessian が不定符号になり, 鞍点である。よって極大値は 11,極小値は 1/21/2 である。

次に閉円板 x2+y24x^2+y^2\le4 上の最大・最小を求める。 s=x2,t=y2 s=x^2,\qquad t=y^2 と置くと,条件は s0,t0,s+t4 s\ge0,\quad t\ge0,\quad s+t\le4 であり, f=s2+t2st+1 f=s^2+t^2-s-t+1 となる。この二変数関数の内部の停留点は 2s1=0,2t1=0 2s-1=0,\qquad 2t-1=0 から s=t=1/2s=t=1/2 であり,値は 1/21/2 である。

最大値は三角形領域の境界を見ればよい。辺 t=0t=0 では f=s2s+1(0s4) f=s^2-s+1\qquad(0\le s\le4) で,最大値は s=4s=4 のとき 1313 である。辺 s=0s=0 でも同様に最大値は t=4t=4 のとき 1313 である。辺 s+t=4s+t=4 では f=s2+(4s)24+1=2(s2)2+5 f=s^2+(4-s)^2-4+1 = 2(s-2)^2+5 であり,最大値は端点で 1313 である。

したがって閉円板上の最小値は 1/21/2,最大値は 1313 である。 最小値は x2=y2=1/2x^2=y^2=1/2 で,最大値は (x,y)=(±2,0),(0,±2) (x,y)=(\pm2,0),(0,\pm2) で達成される。

最終答

局所最大値は 11,局所最小値は 1/21/2。閉円板上では最大値 1313,最小値 1/21/2

5 — 固有ベクトルと対角化可能性

方針

前半は線形代数の基本定理だが,答案では「よく知られている」で済ませず, 一次関係に AA を作用させて項数を減らす議論を書くと確実である。 後半は特性多項式だけで終わらず,重複固有値の固有空間の次元まで確認する。

重複固有値の扱い

固有値がすべて相異なるなら,自動的に固有ベクトルが3本そろう。 今回は λ=2\lambda=2 が重複しているので,ここだけが判定の焦点である。 固有空間が2次元なら対角化可能だが,実際には1次元であるため失敗する。

重複固有値では幾何的重複度を確認する

典型ミス

(λ1)(λ2)2(\lambda-1)(\lambda-2)^2 と出た時点で「固有値があるから対角化可能」と 判断してはいけない。対角化可能性には,固有値の個数ではなく,固有ベクトルで 空間全体を張れるかが必要である。

2016年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

まず,相異なる固有値に属する固有ベクトルが一次独立であることを示す。 固有値 λ1,,λm\lambda_1,\ldots,\lambda_m が相異なり,それぞれに対応する 固有ベクトルを p1,,pmp_1,\ldots,p_m とする。もし c1p1++cmpm=0 c_1p_1+\cdots+c_mp_m=0 という非自明な一次関係があるなら,その中から項数が最小のものを取る。 項数を mm としてよい。両辺に AA を作用させると c1λ1p1++cmλmpm=0. c_1\lambda_1p_1+\cdots+c_m\lambda_mp_m=0. 一方,最初の関係式に λm\lambda_m を掛けると c1λmp1++cmλmpm=0. c_1\lambda_mp_1+\cdots+c_m\lambda_mp_m=0. これらを引くと c1(λ1λm)p1++cm1(λm1λm)pm1=0 c_1(\lambda_1-\lambda_m)p_1+\cdots+ c_{m-1}(\lambda_{m-1}-\lambda_m)p_{m-1}=0 を得る。固有値は相異なるため,少なくとも元の非零係数に対応する項は残る。 これはより少ない項数の一次関係であり,最小性に反する。したがって 最初から非自明な一次関係は存在せず,p1,,pmp_1,\ldots,p_m は一次独立である。

次に行列 A=(301010121) A= \begin{pmatrix} 3&0&-1\\ 0&1&0\\ 1&2&1 \end{pmatrix} を調べる。特性多項式は det(λIA)=λ3010λ1012λ1=(λ1){(λ3)(λ1)+1}. \det(\lambda I-A) = \begin{vmatrix} \lambda-3&0&1\\ 0&\lambda-1&0\\ -1&-2&\lambda-1 \end{vmatrix} = (\lambda-1)\{(\lambda-3)(\lambda-1)+1\}. したがって det(λIA)=(λ1)(λ24λ+4)=(λ1)(λ2)2. \det(\lambda I-A) = (\lambda-1)(\lambda^2-4\lambda+4) = (\lambda-1)(\lambda-2)^2. 固有値 22 の代数的重複度は 22 である。

λ=2\lambda=2 の固有空間を計算すると A2I=(101010121). A-2I= \begin{pmatrix} 1&0&-1\\ 0&-1&0\\ 1&2&-1 \end{pmatrix}. (A2I)v=0(A-2I)v=0 から z=x,y=0 z=x,\qquad y=0 となるので,固有空間は span{(101)} \operatorname{span} \left\{ \begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix} \right\} で1次元である。代数的重複度 22 に対して固有空間の次元が 11 しかないため, 固有ベクトルを3本そろえることはできない。よってこの行列は対角化可能でない。

最終答

相異なる固有値に属する固有ベクトルは一次独立。与えられた行列は対角化可能でない。

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