大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2011年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2011年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 積分評価
方針
第1の積分は 型の基本形である。半角正接置換を使うと,三角関数の周期積分が 有理関数の実軸積分に落ちる。第2の積分は二次形式を対角化してから極座標にするのが最短である。
検算
第2の積分は正の被積分関数なので,答も正でなければならない。また で,変数変換のヤコビアンが であるため になる。ヤコビアンを落とすと になってしまう。
採点上の注意
二次形式の交差項をそのまま扱うと計算が重くなる。平方完成で としてから,線形変換の行列式まで明記するのが安全である。
2011年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています
- 標準公式 を用いると,ここでは なので 公式を使わずに確認するなら, とおく。すると の積分は実軸上の積分に変わり,
- 二次形式を平方完成する。 そこで とおくと, したがって ここで とすれば よって
最終答
第2問 — 線形部分空間
方針
と はどちらも核空間なので,階数と零化空間の次元を使う。 は「両方の条件を同時に満たす」ことだから, と を縦に並べた行列の核である。
検算
交わりの2つの基底候補を と に代入すると,どちらも零ベクトルになる。 また2つのベクトルは第5成分を見るだけで一次独立と分かる。
採点上の注意
は と の単なる和 ではない。重複して数えた の次元を必ず引く。ここで交わりの基底を出しているので,次元公式まで自然につながる。
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行列 の2行は一次独立である。したがって
次に は を同時に満たすベクトル全体である。拡大ではない係数行列 を行基本変形すると よって と書けば 自由変数を とすると したがって は の基底の1組である。
最後に の2行も一次独立なので である。次元公式より
最終答
第3問 — 正則関数と調和共役
方針
正則性から,複素微分を実方向と虚方向のどちらで計算しても同じ値になる。 この「2通りの差商の一致」を実部・虚部で比べるのが Cauchy--Riemann の最も基本的な証明である。
関数の見方
第2項の実部は である。したがって答は実は と予想できる。計算による導出は,この予想が定数差を除いて正しいことを確認している。
採点上の注意
だけから を決めると,積分定数が の関数として残る。 その後に の式へ代入し,その関数が定数であることまで確認する必要がある。
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- とし,正則性から複素微分 は近づけ方によらず存在する。 まず実方向 から近づけると 一方,虚方向 から近づけると 両者の実部と虚部を比較して を得る。
- とおく。偏微分は Cauchy--Riemann の式より まず を で積分すると と書ける。これを で微分すると したがって であり, は定数である。
最終答
第4問 — 逆行列の非負性
方針
仮定は「像が非負ベクトルなら,元も非負ベクトル」という順序保存の逆向き条件である。 正則性は核が零であることから示し,逆行列の各列は の解として取り出す。
検算
もし のある列に負の成分があれば,その列を として なのに が成り立たず,仮定に反する。標準基底を使うのは,逆行列の列を1本ずつ調べるためである。
採点上の注意
から だけを得ても,まだ とは言えない。 も同じ核に入ることを使って を出すのが正則性の決め手である。
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仮定は である。ここで不等号は成分ごとの不等号を表す。
- とする。このとき だから,仮定より である。また でもあるので,同じ仮定から を得る。よって各成分について かつ であり, である。 したがって である。有限次元の正方行列なので, は正則である。
- を第 成分だけが1で他が0の標準基底ベクトルとする。 とおけば である。仮定より である。 ところが は の第 列そのものである。任意の について この列ベクトルの全成分が非負だから, のすべての成分は非負である。
最終答
第5問 — 条件付き確率
方針
これは検査精度と事前確率を混同しないための Bayes の定理の問題である。 感染率が非常に低いので,偽陽性率が小さくても陽性者の中に未感染者が多く混ざり得る。
検算
では偽陽性率 が感染率と同程度であり,陽性者の感染確率は高くても およそ半分程度にしかならない。 にすると偽陽性率が感染率の10分の1になり, 感染者由来の陽性が全陽性の9割を超える。
採点上の注意
感度 をそのまま としてはいけない。 求めたいのは「陽性という結果を見た後の感染確率」であり,事前確率 を必ず掛けて比較する。
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感染している事象を ,陽性反応が出る事象を とする。感染率は であり,試薬の性質から
- Bayes の定理より
- 陽性反応が出たとき実際に感染している確率は これが を超える条件を解く。, と書けば 分母は正なので すなわち よって 右辺は約 である。したがって なので,条件を満たす最小の自然数は である。
最終答