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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2011年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2011年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 積分評価

方針

第1の積分は a+bcosθa+b\cos\theta 型の基本形である。半角正接置換を使うと,三角関数の周期積分が 有理関数の実軸積分に落ちる。第2の積分は二次形式を対角化してから極座標にするのが最短である。

検算

第2の積分は正の被積分関数なので,答も正でなければならない。また R2(1+r2)2dudv=π\int_{\mathbb R^2}(1+r^2)^{-2}\,du\,dv=\pi で,変数変換のヤコビアンが 1/21/2 であるため π/2\pi/2 になる。ヤコビアンを落とすと π\pi になってしまう。

採点上の注意

二次形式の交差項をそのまま扱うと計算が重くなる。平方完成で (xy)2+4y2(x-y)^2+4y^2 としてから,線形変換の行列式まで明記するのが安全である。

2011年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

  1. 標準公式 02πdθa+bcosθ=2πa2b2(a>b) \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{a+b\cos\theta} =\frac{2\pi}{\sqrt{a^2-b^2}}\qquad (a>|b|) を用いると,ここでは a=5, b=3a=5,\ b=3 なので 02πdθ5+3cosθ=2π259=π2. \int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{5+3\cos\theta} =\frac{2\pi}{\sqrt{25-9}} =\frac{\pi}{2}. 公式を使わずに確認するなら,t=tan(θ/2)t=\tan(\theta/2) とおく。すると cosθ=1t21+t2,dθ=2dt1+t2. \cos\theta=\frac{1-t^2}{1+t^2},\qquad d\theta=\frac{2\,dt}{1+t^2}. [0,2π][0,2\pi] の積分は実軸上の積分に変わり, 2dt5(1+t2)+3(1t2)=dt4+t2=π2. \int_{-\infty}^{\infty} \frac{2\,dt}{5(1+t^2)+3(1-t^2)} =\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dt}{4+t^2} =\frac{\pi}{2}.
  2. 二次形式を平方完成する。 x22xy+5y2=(xy)2+4y2. x^2-2xy+5y^2=(x-y)^2+4y^2. そこで u=xy,v=2y u=x-y,\qquad v=2y とおくと, x=u+v2,y=v2,(x,y)(u,v)=12. x=u+\frac{v}{2},\qquad y=\frac{v}{2},\qquad \left|\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}\right|=\frac12. したがって I=12R2dudv(1+u2+v2)2=1202π0r(1+r2)2drdϕ. \begin{aligned} I &=\frac12\int_{\mathbb R^2}\frac{du\,dv}{(1+u^2+v^2)^2} \\ &=\frac12\int_0^{2\pi}\int_0^\infty \frac{r}{(1+r^2)^2}\,dr\,d\phi. \end{aligned} ここで s=1+r2s=1+r^2 とすれば 0r(1+r2)2dr=121s2ds=12. \int_0^\infty\frac{r}{(1+r^2)^2}\,dr =\frac12\int_1^\infty s^{-2}\,ds =\frac12. よって I=122π12=π2. I=\frac12\cdot 2\pi\cdot\frac12=\frac{\pi}{2}.

最終答

(1) π2,(2) π2. \text{(1)}\ \frac{\pi}{2},\qquad \text{(2)}\ \frac{\pi}{2}.

2 — 線形部分空間

方針

VVWW はどちらも核空間なので,階数と零化空間の次元を使う。 VWV\cap W は「両方の条件を同時に満たす」ことだから,AABB を縦に並べた行列の核である。

検算

交わりの2つの基底候補を AABB に代入すると,どちらも零ベクトルになる。 また2つのベクトルは第5成分を見るだけで一次独立と分かる。

採点上の注意

dim(V+W)\dim(V+W)VVWW の単なる和 3+33+3 ではない。重複して数えた VWV\cap W の次元を必ず引く。ここで交わりの基底を出しているので,次元公式まで自然につながる。

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行列 A=(3211011011) A=\begin{pmatrix} 3&2&1&1&0\\ 1&1&0&1&-1 \end{pmatrix} の2行は一次独立である。したがって rankA=2,dimV=52=3. \operatorname{rank}A=2,\qquad \dim V=5-2=3.

次に VWV\cap WAx=0,Bx=0 Ax=0,\qquad Bx=0 を同時に満たすベクトル全体である。拡大ではない係数行列 C=(32110110112111112126) C=\begin{pmatrix} 3&2&1&1&0\\ 1&1&0&1&-1\\ 2&1&1&1&-1\\ 1&2&-1&-2&6 \end{pmatrix} を行基本変形すると C(10100011010001200000). C\sim \begin{pmatrix} 1&0&1&0&0\\ 0&1&-1&0&1\\ 0&0&0&1&-2\\ 0&0&0&0&0 \end{pmatrix}. よって x=(x1,,x5)Tx=(x_1,\ldots,x_5)^T と書けば x1=x3,x2=x3x5,x4=2x5. x_1=-x_3,\qquad x_2=x_3-x_5,\qquad x_4=2x_5. 自由変数を s=x3, t=x5s=x_3,\ t=x_5 とすると x=s(11100)+t(01021). x=s\begin{pmatrix}-1\\1\\1\\0\\0\end{pmatrix} +t\begin{pmatrix}0\\-1\\0\\2\\1\end{pmatrix}. したがって {(11100),(01021)} \left\{ \begin{pmatrix}-1\\1\\1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\-1\\0\\2\\1\end{pmatrix} \right\} VWV\cap W の基底の1組である。

最後に BB の2行も一次独立なので dimW=3\dim W=3 である。次元公式より dim(V+W)=dimV+dimWdim(VW)=3+32=4. \dim(V+W)=\dim V+\dim W-\dim(V\cap W) =3+3-2=4.

最終答

dimV=3,B(VW)={(1,1,1,0,0)T, (0,1,0,2,1)T},dim(V+W)=4. \dim V=3,\qquad \mathcal B(V\cap W)= \left\{ (-1,1,1,0,0)^T,\ (0,-1,0,2,1)^T \right\},\qquad \dim(V+W)=4.

3 — 正則関数と調和共役

方針

正則性から,複素微分を実方向と虚方向のどちらで計算しても同じ値になる。 この「2通りの差商の一致」を実部・虚部で比べるのが Cauchy--Riemann の最も基本的な証明である。

関数の見方

第2項の実部は Re1z=Rexiyx2+y2=xx2+y2 \operatorname{Re}\frac{1}{z} =\operatorname{Re}\frac{x-iy}{x^2+y^2} =\frac{x}{x^2+y^2} である。したがって答は実は Im1z=yx2+y2 \operatorname{Im}\frac1z=-\frac{y}{x^2+y^2} と予想できる。計算による導出は,この予想が定数差を除いて正しいことを確認している。

採点上の注意

vxv_x だけから vv を決めると,積分定数が yy の関数として残る。 その後に vyv_y の式へ代入し,その関数が定数であることまで確認する必要がある。

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  1. z0=x+iyz_0=x+iy とし,正則性から複素微分 f(z0)=limh0f(z0+h)f(z0)h f'(z_0)=\lim_{h\to 0}\frac{f(z_0+h)-f(z_0)}{h} は近づけ方によらず存在する。 まず実方向 hRh\in\mathbb R から近づけると f(z0)=ux(x,y)+ivx(x,y). f'(z_0)=u_x(x,y)+i v_x(x,y). 一方,虚方向 h=ik, kRh=ik,\ k\in\mathbb R から近づけると f(z0)=limk0u(x,y+k)u(x,y)+i{v(x,y+k)v(x,y)}ik=vy(x,y)iuy(x,y). \begin{aligned} f'(z_0) &=\lim_{k\to0} \frac{u(x,y+k)-u(x,y)+i\{v(x,y+k)-v(x,y)\}}{ik} \\ &=v_y(x,y)-i u_y(x,y). \end{aligned} 両者の実部と虚部を比較して ux=vy,uy=vx u_x=v_y,\qquad u_y=-v_x を得る。
  2. u(x,y)=xx2+y2 u(x,y)=\frac{x}{x^2+y^2} とおく。偏微分は ux=y2x2(x2+y2)2,uy=2xy(x2+y2)2. u_x=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2},\qquad u_y=-\frac{2xy}{(x^2+y^2)^2}. Cauchy--Riemann の式より vx=uy=2xy(x2+y2)2,vy=ux=y2x2(x2+y2)2. v_x=-u_y=\frac{2xy}{(x^2+y^2)^2},\qquad v_y=u_x=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}. まず vxv_xxx で積分すると v(x,y)=yx2+y2+ϕ(y) v(x,y)=-\frac{y}{x^2+y^2}+\phi(y) と書ける。これを yy で微分すると vy=y2x2(x2+y2)2+ϕ(y). v_y=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}+\phi'(y). したがって ϕ(y)=0\phi'(y)=0 であり,ϕ\phi は定数である。

最終答

v(x,y)=yx2+y2+C(CR). v(x,y)=-\frac{y}{x^2+y^2}+C\qquad (C\in\mathbb R).

4 — 逆行列の非負性

方針

仮定は「像が非負ベクトルなら,元も非負ベクトル」という順序保存の逆向き条件である。 正則性は核が零であることから示し,逆行列の各列は Ax=ejAx=e_j の解として取り出す。

検算

もし A1A^{-1} のある列に負の成分があれば,その列を xx として Ax=ej0Ax=e_j\ge0 なのに x0x\ge0 が成り立たず,仮定に反する。標準基底を使うのは,逆行列の列を1本ずつ調べるためである。

採点上の注意

Ax=0Ax=0 から x0x\ge0 だけを得ても,まだ x=0x=0 とは言えない。 x-x も同じ核に入ることを使って x0-x\ge0 を出すのが正則性の決め手である。

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仮定は Ax0x0 Ax\ge 0 \quad\Longrightarrow\quad x\ge 0 である。ここで不等号は成分ごとの不等号を表す。

  1. Ax=0Ax=0 とする。このとき Ax=00Ax=0\ge0 だから,仮定より x0 x\ge0 である。また A(x)=00A(-x)=0\ge0 でもあるので,同じ仮定から x0 -x\ge0 を得る。よって各成分について xi0x_i\ge0 かつ xi0x_i\le0 であり,x=0x=0 である。 したがって kerA={0}\ker A=\{0\} である。有限次元の正方行列なので,AA は正則である。
  2. eje_j を第 jj 成分だけが1で他が0の標準基底ベクトルとする。 x=A1ej x=A^{-1}e_j とおけば Ax=ej0 Ax=e_j\ge0 である。仮定より x0x\ge0 である。 ところが A1ejA^{-1}e_jA1A^{-1} の第 jj 列そのものである。任意の jj について この列ベクトルの全成分が非負だから,A1A^{-1} のすべての成分は非負である。

最終答

A は正則であり,(A1)ij0(1i,jn). A\ \text{は正則であり,}\quad (A^{-1})_{ij}\ge0\quad (1\le i,j\le n).

5 — 条件付き確率

方針

これは検査精度と事前確率を混同しないための Bayes の定理の問題である。 感染率が非常に低いので,偽陽性率が小さくても陽性者の中に未感染者が多く混ざり得る。

検算

r=6r=6 では偽陽性率 10610^{-6} が感染率と同程度であり,陽性者の感染確率は高くても およそ半分程度にしかならない。r=7r=7 にすると偽陽性率が感染率の10分の1になり, 感染者由来の陽性が全陽性の9割を超える。

採点上の注意

感度 110r1-10^{-r} をそのまま P(D+)P(D\mid +) としてはいけない。 求めたいのは「陽性という結果を見た後の感染確率」であり,事前確率 10610^{-6} を必ず掛けて比較する。

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感染している事象を DD,陽性反応が出る事象を ++ とする。感染率は P(D)=106,P(Dc)=1106 P(D)=10^{-6},\qquad P(D^c)=1-10^{-6} であり,試薬の性質から P(+D)=110r,P(+Dc)=10r. P(+\mid D)=1-10^{-r},\qquad P(+\mid D^c)=10^{-r}.

  1. Bayes の定理より P(Dc+)=P(+Dc)P(Dc)P(+D)P(D)+P(+Dc)P(Dc)=(1106)10r106(110r)+(1106)10r. \begin{aligned} P(D^c\mid +) &= \frac{P(+\mid D^c)P(D^c)} {P(+\mid D)P(D)+P(+\mid D^c)P(D^c)} \\ &= \frac{(1-10^{-6})10^{-r}} {10^{-6}(1-10^{-r})+(1-10^{-6})10^{-r}}. \end{aligned}
  2. 陽性反応が出たとき実際に感染している確率は P(D+)=106(110r)106(110r)+(1106)10r. P(D\mid +) = \frac{10^{-6}(1-10^{-r})} {10^{-6}(1-10^{-r})+(1-10^{-6})10^{-r}}. これが 0.90.9 を超える条件を解く。p=106p=10^{-6}, q=10rq=10^{-r} と書けば p(1q)p(1q)+(1p)q>0.9. \frac{p(1-q)}{p(1-q)+(1-p)q}>0.9. 分母は正なので p(1q)>9(1p)q. p(1-q)>9(1-p)q. すなわち p>q{p+9(1p)}=q(98p). p>q\{p+9(1-p)\}=q(9-8p). よって 10r<10698106. 10^{-r}<\frac{10^{-6}}{9-8\cdot10^{-6}}. 右辺は約 1.11×1071.11\times10^{-7} である。したがって 107<10698106,106>10698106 10^{-7}<\frac{10^{-6}}{9-8\cdot10^{-6}},\qquad 10^{-6}>\frac{10^{-6}}{9-8\cdot10^{-6}} なので,条件を満たす最小の自然数は r=7 r=7 である。

最終答

(1) (1106)10r106(110r)+(1106)10r,(2) r=7. \text{(1)}\ \frac{(1-10^{-6})10^{-r}} {10^{-6}(1-10^{-r})+(1-10^{-6})10^{-r}}, \qquad \text{(2)}\ r=7.

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