大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2022年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 一次微分方程式
方針
という条件は,積分因子を と書くために効いている。 一次線形方程式 では,積分因子 を掛けて に直すのが最も安全である。
検算
得られた解を左辺へ代入する。 だから 任意定数の項は必ず打ち消える。ここまで確認すると,符号ミスを発見しやすい。
典型ミス
としてよいのは だからである。 区間条件を無視して まで書いても最終形は同じになるが, 試験答案では問題の定義域に合わせて を積分因子に選ぶと簡潔である。
第2問 — 4次元球の体積
方針
4変数の積分だが,領域が だけで決まるため,回転対称性を使うのが自然である。2次元なら円板の面積, 3次元なら球の体積,この問題はその4次元版である。
検算
次元だけ見ても答は に比例するはずである。 のとき4次元単位球の体積が であることは, に を代入しても一致する。
典型ミス
3次元球の体積公式 をそのまま使ってはいけない。 また,4次元極座標のヤコビアンは単に ではなく, 角度部分の面積 と合わせて になる。
第3問 — 導関数の極限と微分可能性
方針
第1の主張では,導関数の極限から元の関数の微分可能性を出したい。 この形は平均値の定理が最短である。差商 を と の間の導関数値に置き換えられるため,導関数の極限をそのまま使える。
なぜ第2は失敗するか
で微分可能であることは,差商の極限が存在することだけを意味する。 周辺点での導関数 が落ち着くことまでは要求していない。 反例では,関数値そのものは で抑えられているので差商は となり収束する。 一方,微分すると高周波振動の項から が現れ,導関数は振動し続ける。
採点上の注意
反例を出すときは, を別々に確認する必要がある。反例の式だけを書いて終えると,どの仮定を満たしているかが不明確になりやすい。
第4問 — rank関数の連続性
方針
rank は整数値関数である。したがって連続であるためには,その点の近くで値が一定になる必要がある。 最大rankの点では,非零な最大小行列式が近傍で非零のまま残るので値が固定される。 最大でないrankの点では,ゼロ特異値の方向へ小さい成分を足すだけでrankを上げられる。
検算
行列で考えると,rank関数は である。最大rankである非零点では局所的に値が のままだが, では任意に近い非零点があるため不連続になる。一般の場合も同じ現象である。
典型ミス
「rank は小さい摂動で下がらない」とだけ書くと不十分である。 低rank点では小さい摂動で rank が上がる可能性があり,これが不連続性の本質である。 最大rankの場合だけ,上がる余地がないため連続になる。
第5問 — 2次行列の指数関数
方針
行列指数では,対角化できる場合は固有値で計算し,対角化できない場合は 「スカラー行列 冪零行列」に分けるのが基本である。 今回の (1) は典型的な Jordan ブロックで, なので指数級数は で止まる。
(2) の見方
目標行列は固有値 を重複して持つが,単位行列ではない。 そこで を見ると,それが2乗でゼロになる冪零行列であることが分かる。 冪零行列 に対しては であるから,対数を難しく考えずに と取ればよい。
検算
なので 採点ではこの一行の検算を書いておくと,求めた行列が本当に条件を満たすことが明確になる。
典型ミス
行列指数は成分ごとに指数を取る操作ではない。 例えば (1) の右上成分は ではなく,Jordan ブロックの冪零成分から出る である。