大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2006年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)
全5問。線形代数2問・微分積分・解析1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・留数定理・正定値行列)。2005年度と共通のテーマは留数定理。
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- 解説5問・解答5問・最終答5問(全5問)
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阪大 数学 2006年度 院試 過去問の出題内容(全5問)
この5問の分野は線形代数2問・微分積分・解析1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 漸化式と階乗正規化 | 収束判定で見るべき点 | あり |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 二変数関数の極値 | 原点の扱い | あり |
| 第3問 | — | 単位円上の留数計算 | 係数として見る | あり |
| 第4問 | 線形代数 | 対称行列と半正定値 | 等号成立の意味 | あり |
| 第5問 | 線形代数 | 三重対角行列式 | 不等式の見方 | あり |
この年度の解説には典型ミス4件・検算1件が付いています。
2006年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は2問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第4問 | 25大学・544問 | |
| 留数定理 | 第3問 | 18大学・126問 | |
| 正定値行列 | 第4問 | 17大学・70問 | |
| 二次形式 | 第4問 | 16大学・63問 | |
| 直交対角化 | 第4問 | 14大学・23問 |
前年度(2005年度)との違い
- 大問数
- 2005年度 5問 → 2006年度 5問
- 両年度に出たテーマ
- 留数定理
- 2006年度で新しく出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・正定値行列・二次形式・直交対角化
第1問 — 漸化式と階乗正規化
方針
階乗が自然に出てくる漸化式では、まず で正規化する。 今回は正規化後に という和を取るだけの形になるため、極限は指数関数の級数から直接読める。
収束判定で見るべき点
が 以外の値に近づくなら、 は階乗の速さで発散する。 したがって唯一注意すべきなのは となる初期値である。 この場合も は単に 型と見るのではなく、級数の残りを 倍して評価する必要がある。
典型ミス
であり、 ではない。 の二項を落とすため、初期値の条件は になる。
解答
とおく。与えられた漸化式を で割ると である。したがって では よって
次に から収束性を調べる。 とおく。 のとき、十分大きい について は と同じ符号を持ち、例えば となる。したがって であり、 は有限の値には収束しない。
一方、、すなわち のときは であるから 各項は正で、さらに となる。したがってこの場合に限り である。
最終答
また、 のときだけ は収束し、その極限は である。 なら 、 なら である。
第2問 — 二変数関数の極値
方針
偏微分で候補点を出し、極座標で値の範囲を一気に判定するのが最短である。 ヘッセ行列だけでも判定できるが、今回は大域的な最大値・最小値まで同時に分かる。
原点の扱い
原点は偏微分がともに になるため候補には入る。 しかし周囲に正の値も負の値も現れるので、極値点ではない。 停留点をすべて極値点とみなす誤りは、この問題で特に起こりやすい。
検算
は で最大になる。 さらに の符号から、 軸上では正、 軸上では負になる。 したがって極大点と極小点の位置は、関数の符号の構造とも一致している。
解答
対象の関数を と書く。偏微分すると 指数因子は常に正なので、停留点は を満たす点である。
とすると であり、 を得る。 とすると であり、 を得る。 また がともに でない場合には を同時に満たす必要があるが、両式を足すと となり不可能である。 したがって停留点は で尽くされる。
極値判定には極座標表示が見通しやすい。 とすると ここで であり、等号は のときに限る。したがって で、等号は 、すなわち のときに成立する。 同様に で、等号は 、すなわち のときに成立する。
原点では 軸方向で 、 軸方向で となるので、極大でも極小でもない。
最終答
極大点は で、極大値は 。 極小点は で、極小値は 。 原点は停留点だが極値点ではない。
第3問 — 単位円上の留数計算
方針
を含む から までの積分は、 によって単位円周上の複素積分に変換する。 このとき が必ず一つ余分な を生むため、留数の次数を一つ間違えないことが重要である。
係数として見る
実は という「定数項を取り出す」計算と同じである。 第一の積分では定数項が 、第二の積分では の の係数が なので、それぞれ と になる。
典型ミス
第二の積分で を見落とすと、第一の積分と同じ値にしてしまう。 置換後には がもとの被積分関数から一つ、 からもう一つ出るので、 の留数計算になる。
解答
とおくと、 を正向きに一周し、 である。
まず については ここで の における留数は、 の定数項 である。
次に を考える。 なので したがって必要な留数は の の係数であり、 から よって
最終答
第4問 — 対称行列と半正定値
方針
この問題の中心は「対称行列の二次形式は固有値で判定できる」という事実である。 の最大固有値が なので、 を半正定値にするには をその最大固有値以上にする必要がある。
等号成立の意味
半正定値行列 について となるのは、 が の核に入る場合である。 今回 なので、 の境界では最大固有値に対応する方向だけが残る。
典型ミス
の半正定値条件を、 の最小固有値だけで判定してしまう誤りがある。 必要なのは がすべての固有値について成り立つことであり、結局 は最大固有値以上でなければならない。
解答
行列 は実対称行列である。第 成分と第 成分を入れ替えても形が変わらないので、 に分けると計算が軽くなる。
まず であるから、 は固有値である。
次に とおくと したがって に関する固有方程式は であり、 よって残りの固有値は である。
実対称行列は直交対角化できる。したがって二次形式 がすべての に対して 以上であることは、 の固有値 がすべて 以上であることと同値である。最も強い条件は である。
最後に等号成立の を求める。 なら は正定値なので、 を満たすのは のみである。
のときは、 の核は の固有値 に属する固有空間である。 上の計算から、 では なので と取れる。したがって固有空間は である。
最終答
固有値は 不等式がすべての に対して成り立つための条件は 等号成立の は、 なら のみ、 なら である。
第5問 — 三重対角行列式
方針
三重対角行列の行列式は、端から余因子展開して二項漸化式に落とすのが基本である。 この型は離散的な二階差分方程式と同じ構造を持つため、初期値を二つ押さえれば全体が決まる。
不等式の見方
は特性方程式が重解になる境界で、値は という一次式になる。 では と書け、解は双曲線関数で表される。 は正方向に凸に増えるため、 は より大きくなる。
典型ミス
漸化式の符号を取り違えると、 と合わない。 小さい で検算すれば、符号の誤りはすぐに発見できる。
解答
対角成分が 、隣り合う上下の成分が である 次三重対角行列の行列式を とする。 便宜上 とおくと、 である。
について、最後の行または最後の列に沿って余因子展開すると を得る。第二項の符号が負になるのは、最後の隣接成分を一つ使うと残る小行列式が になり、三重対角行列の標準的な二項漸化式になるためである。
次に とおく。上の漸化式から である。差を取ると なので、差は常に である。したがって
最後に の場合を調べる。 なので、ある を用いて と書ける。このとき漸化式と初期値から であることが分かる。実際、右辺を とおくと を満たし、 である。
ここで とおくと、 であり、 である。よって では 、すなわち したがって である。
最終答
また さらに なら である。
阪大 数学 院試 過去問の収録21年度
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