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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2006年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2006年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 漸化式と階乗正規化

方針

階乗が自然に出てくる漸化式では、まず n!n! で正規化する。 今回は正規化後に bn+1bn=1(n+1)! b_{n+1}-b_n=-\frac{1}{(n+1)!} という和を取るだけの形になるため、極限は指数関数の級数から直接読める。

収束判定で見るべき点

bnb_n00 以外の値に近づくなら、an=n!bna_n=n!b_n は階乗の速さで発散する。 したがって唯一注意すべきなのは bn0b_n\to0 となる初期値である。 この場合も ana_n は単に 00\cdot\infty 型と見るのではなく、級数の残りを n!n! 倍して評価する必要がある。

典型ミス

k=21k!=e2 \sum_{k=2}^{\infty}\frac{1}{k!}=e-2 であり、e1e-1 ではない。 k=0,1k=0,1 の二項を落とすため、初期値の条件は a1=e2a_1=e-2 になる。

2006年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

bn=an/n!b_n=a_n/n! とおく。与えられた漸化式を (n+1)!(n+1)! で割ると bn+1=an+1(n+1)!=(n+1)an1(n+1)!=bn1(n+1)! b_{n+1} = \frac{a_{n+1}}{(n+1)!} = \frac{(n+1)a_n-1}{(n+1)!} = b_n-\frac{1}{(n+1)!} である。したがって n2n\geq 2 では bn=b1k=2n1k!=a1k=2n1k!. b_n = b_1-\sum_{k=2}^{n}\frac{1}{k!} = a_1-\sum_{k=2}^{n}\frac{1}{k!}. よって limnbn=a1k=21k!=a1(e2)=a1+2e. \lim_{n\to\infty} b_n = a_1-\sum_{k=2}^{\infty}\frac{1}{k!} = a_1-(e-2) = a_1+2-e.

次に an=n!bna_n=n!b_n から収束性を調べる。L=a1+2eL=a_1+2-e とおく。 L0L\neq 0 のとき、十分大きい nn について bnb_nLL と同じ符号を持ち、例えば bnL/2|b_n|\geq |L|/2 となる。したがって an=n!bnL2n! |a_n|=n!|b_n|\geq \frac{|L|}{2}n!\longrightarrow \infty であり、{an}\{a_n\} は有限の値には収束しない。

一方、L=0L=0、すなわち a1=e2a_1=e-2 のときは bn=k=n+11k! b_n=\sum_{k=n+1}^{\infty}\frac{1}{k!} であるから an=n!k=n+11k!=j=0n!(n+1+j)!. a_n = n!\sum_{k=n+1}^{\infty}\frac{1}{k!} = \sum_{j=0}^{\infty} \frac{n!}{(n+1+j)!}. 各項は正で、さらに 0<an1n+1j=01(n+2)j=n+2(n+1)20 0<a_n \leq \frac{1}{n+1} \sum_{j=0}^{\infty}\frac{1}{(n+2)^j} = \frac{n+2}{(n+1)^2} \longrightarrow 0 となる。したがってこの場合に限り an0a_n\to 0 である。

最終答

limnbn=a1+2e. \lim_{n\to\infty} b_n=a_1+2-e. また、a1=e2a_1=e-2 のときだけ {an}\{a_n\} は収束し、その極限は 00 である。 a1>e2a_1>e-2 なら an+a_n\to+\inftya1<e2a_1<e-2 なら ana_n\to-\infty である。

2 — 二変数関数の極値

方針

偏微分で候補点を出し、極座標で値の範囲を一気に判定するのが最短である。 ヘッセ行列だけでも判定できるが、今回は大域的な最大値・最小値まで同時に分かる。

原点の扱い

原点は偏微分がともに 00 になるため候補には入る。 しかし周囲に正の値も負の値も現れるので、極値点ではない。 停留点をすべて極値点とみなす誤りは、この問題で特に起こりやすい。

検算

r2er2r^2e^{-r^2}r=1r=1 で最大になる。 さらに cos2θ\cos2\theta の符号から、xx 軸上では正、yy 軸上では負になる。 したがって極大点と極小点の位置は、関数の符号の構造とも一致している。

2006年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

対象の関数を f(x,y)=(x2y2)e(x2+y2) f(x,y)=(x^2-y^2)e^{-(x^2+y^2)} と書く。偏微分すると fx=2x{1x2+y2}e(x2+y2),fy=2y{1+x2y2}e(x2+y2). f_x = 2x\{1-x^2+y^2\}e^{-(x^2+y^2)}, \qquad f_y = -2y\{1+x^2-y^2\}e^{-(x^2+y^2)}. 指数因子は常に正なので、停留点は x(1x2+y2)=0,y(1+x2y2)=0 x(1-x^2+y^2)=0, \qquad y(1+x^2-y^2)=0 を満たす点である。

x=0x=0 とすると y(1y2)=0y(1-y^2)=0 であり、(0,0),(0,1),(0,1)(0,0),(0,1),(0,-1) を得る。 y=0y=0 とすると x(1x2)=0x(1-x^2)=0 であり、(0,0),(1,0),(1,0)(0,0),(1,0),(-1,0) を得る。 また x,yx,y がともに 00 でない場合には 1x2+y2=0,1+x2y2=0 1-x^2+y^2=0,\qquad 1+x^2-y^2=0 を同時に満たす必要があるが、両式を足すと 2=02=0 となり不可能である。 したがって停留点は (0,0),(±1,0),(0,±1) (0,0),\quad (\pm 1,0),\quad (0,\pm 1) で尽くされる。

極値判定には極座標表示が見通しやすい。x=rcosθ, y=rsinθx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta とすると f(x,y)=r2er2cos2θ. f(x,y) = r^2e^{-r^2}\cos 2\theta. ここで r2er2e1 r^2e^{-r^2}\leq e^{-1} であり、等号は r=1r=1 のときに限る。したがって f(x,y)e1 f(x,y)\leq e^{-1} で、等号は r=1, cos2θ=1r=1,\ \cos2\theta=1、すなわち (x,y)=(±1,0)(x,y)=(\pm1,0) のときに成立する。 同様に f(x,y)e1 f(x,y)\geq -e^{-1} で、等号は r=1, cos2θ=1r=1,\ \cos2\theta=-1、すなわち (x,y)=(0,±1)(x,y)=(0,\pm1) のときに成立する。

原点では xx 軸方向で f(x,0)=x2ex2>0f(x,0)=x^2e^{-x^2}>0yy 軸方向で f(0,y)=y2ey2<0f(0,y)=-y^2e^{-y^2}<0 となるので、極大でも極小でもない。

最終答

極大点は (1,0),(1,0)(1,0),(-1,0) で、極大値は e1e^{-1}。 極小点は (0,1),(0,1)(0,1),(0,-1) で、極小値は e1-e^{-1}。 原点は停留点だが極値点ではない。

3 — 単位円上の留数計算

方針

eiθe^{i\theta} を含む 00 から 2π2\pi までの積分は、z=eiθz=e^{i\theta} によって単位円周上の複素積分に変換する。 このとき dθ=dz/(iz)d\theta=dz/(iz) が必ず一つ余分な z1z^{-1} を生むため、留数の次数を一つ間違えないことが重要である。

係数として見る

実は 02πm=cmeimθdθ=2πc0 \int_0^{2\pi}\sum_{m=-\infty}^{\infty}c_m e^{im\theta}\,d\theta = 2\pi c_0 という「定数項を取り出す」計算と同じである。 第一の積分では定数項が 11、第二の積分では e2eiθe^{2e^{i\theta}}eiθe^{i\theta} の係数が 22 なので、それぞれ 2π2\pi4π4\pi になる。

典型ミス

第二の積分で eiθe^{-i\theta} を見落とすと、第一の積分と同じ値にしてしまう。 置換後には z1z^{-1} がもとの被積分関数から一つ、dθd\theta からもう一つ出るので、z2z^{-2} の留数計算になる。

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z=eiθz=e^{i\theta} とおくと、z=1|z|=1 を正向きに一周し、 dθ=dziz d\theta=\frac{dz}{iz} である。

まず I1=02πeeiθdθ I_1=\int_0^{2\pi} e^{e^{i\theta}}\,d\theta については I1=z=1ezizdz=1i2πiResz=0ezz=2π. I_1 = \oint_{|z|=1}\frac{e^z}{iz}\,dz = \frac{1}{i}\,2\pi i\,\operatorname*{Res}_{z=0}\frac{e^z}{z} = 2\pi. ここで ez/ze^z/zz=0z=0 における留数は、eze^z の定数項 11 である。

次に I2=02πe2eiθiθdθ I_2=\int_0^{2\pi} e^{2e^{i\theta}-i\theta}\,d\theta を考える。eiθ=z1e^{-i\theta}=z^{-1} なので I2=z=1e2zzdziz=1iz=1e2zz2dz. I_2 = \oint_{|z|=1} \frac{e^{2z}}{z}\frac{dz}{iz} = \frac{1}{i}\oint_{|z|=1}\frac{e^{2z}}{z^2}\,dz. したがって必要な留数は e2ze^{2z}z1z^1 の係数であり、 e2z=1+2z+(2z)22!+ e^{2z}=1+2z+\frac{(2z)^2}{2!}+\cdots から Resz=0e2zz2=2. \operatorname*{Res}_{z=0}\frac{e^{2z}}{z^2}=2. よって I2=1i2πi2=4π. I_2 = \frac{1}{i}\,2\pi i\cdot 2 = 4\pi.

最終答

02πeeiθdθ=2π,02πe2eiθiθdθ=4π. \int_0^{2\pi} e^{e^{i\theta}}\,d\theta=2\pi, \qquad \int_0^{2\pi} e^{2e^{i\theta}-i\theta}\,d\theta=4\pi.

4 — 対称行列と半正定値

方針

この問題の中心は「対称行列の二次形式は固有値で判定できる」という事実である。 AA の最大固有値が 88 なので、aEAaE-A を半正定値にするには aa をその最大固有値以上にする必要がある。

等号成立の意味

半正定値行列 BB について xtBx=0x^tBx=0 となるのは、xxBB の核に入る場合である。 今回 B=aEAB=aE-A なので、a=8a=8 の境界では最大固有値に対応する方向だけが残る。

典型ミス

aEAaE-A の半正定値条件を、AA の最小固有値だけで判定してしまう誤りがある。 必要なのは aλj(A)0 a-\lambda_j(A)\geq 0 がすべての固有値について成り立つことであり、結局 aa は最大固有値以上でなければならない。

2006年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

行列 A=(027202720) A= \begin{pmatrix} 0&2&7\\ 2&0&2\\ 7&2&0 \end{pmatrix} は実対称行列である。第 11 成分と第 33 成分を入れ替えても形が変わらないので、 x1=x3の部分空間とx1=x3, x2=0 x_1=x_3 \quad\text{の部分空間と}\quad x_1=-x_3,\ x_2=0 に分けると計算が軽くなる。

まず A(101)=(707)=7(101) A \begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}-7\\0\\7\end{pmatrix} = -7 \begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix} であるから、7-7 は固有値である。

次に x=(u,v,u)tx=(u,v,u)^t とおくと Ax=(7u+2v,4u,7u+2v)t. Ax=(7u+2v,\,4u,\,7u+2v)^t. したがって (u,v)(u,v) に関する固有方程式は (7240)(uv)=λ(uv) \begin{pmatrix} 7&2\\ 4&0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix}u\\v\end{pmatrix} = \lambda \begin{pmatrix}u\\v\end{pmatrix} であり、 det(7λ24λ)=λ27λ8=(λ8)(λ+1). \det \begin{pmatrix} 7-\lambda&2\\ 4&-\lambda \end{pmatrix} = \lambda^2-7\lambda-8 = (\lambda-8)(\lambda+1). よって残りの固有値は 8,18,-1 である。

実対称行列は直交対角化できる。したがって二次形式 xt(aEA)x x^t(aE-A)x がすべての xx に対して 00 以上であることは、aEAaE-A の固有値 a8,a+1,a+7 a-8,\qquad a+1,\qquad a+7 がすべて 00 以上であることと同値である。最も強い条件は a8 a\geq 8 である。

最後に等号成立の xx を求める。a>8a>8 なら aEAaE-A は正定値なので、 xt(aEA)x=0 x^t(aE-A)x=0 を満たすのは x=0x=0 のみである。

a=8a=8 のときは、8EA8E-A の核は AA の固有値 88 に属する固有空間である。 上の計算から、λ=8\lambda=8 では 8u=7u+2v,8v=4u 8u=7u+2v,\qquad 8v=4u なので u=2vu=2v と取れる。したがって固有空間は span{(212)} \operatorname{span} \left\{ \begin{pmatrix}2\\1\\2\end{pmatrix} \right\} である。

最終答

固有値は 8, 1, 7. 8,\ -1,\ -7. 不等式がすべての xR3x\in\mathbb{R}^3 に対して成り立つための条件は a8. a\geq 8. 等号成立の xx は、a>8a>8 なら x=0x=0 のみ、a=8a=8 なら x=t(2,1,2)t(tR) x=t(2,1,2)^t\qquad (t\in\mathbb{R}) である。

5 — 三重対角行列式

方針

三重対角行列の行列式は、端から余因子展開して二項漸化式に落とすのが基本である。 この型は離散的な二階差分方程式と同じ構造を持つため、初期値を二つ押さえれば全体が決まる。

不等式の見方

x=1x=1 は特性方程式が重解になる境界で、値は n+1n+1 という一次式になる。 x>1x>1 では x+1=2coshtx+1=2\cosh t と書け、解は双曲線関数で表される。 sinh\sinh は正方向に凸に増えるため、sinh((n+1)t)\sinh((n+1)t)(n+1)sinht(n+1)\sinh t より大きくなる。

典型ミス

漸化式の符号を取り違えると、f2(1)=3f_2(1)=3 と合わない。 小さい nn で検算すれば、符号の誤りはすぐに発見できる。

2006年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

対角成分が 1+x1+x、隣り合う上下の成分が 11 である nn 次三重対角行列の行列式を fn(x)f_n(x) とする。 便宜上 f0(x)=1f_0(x)=1 とおくと、 f1(x)=1+x,f2(x)=(1+x)21 f_1(x)=1+x, \qquad f_2(x)=(1+x)^2-1 である。

n3n\geq 3 について、最後の行または最後の列に沿って余因子展開すると fn(x)=(1+x)fn1(x)fn2(x) f_n(x) = (1+x)f_{n-1}(x)-f_{n-2}(x) を得る。第二項の符号が負になるのは、最後の隣接成分を一つ使うと残る小行列式が fn2f_{n-2} になり、三重対角行列の標準的な二項漸化式になるためである。

次に gn=fn(1)g_n=f_n(1) とおく。上の漸化式から gn=2gn1gn2,g0=1,g1=2 g_n=2g_{n-1}-g_{n-2}, \qquad g_0=1,\quad g_1=2 である。差を取ると gngn1=gn1gn2 g_n-g_{n-1}=g_{n-1}-g_{n-2} なので、差は常に 11 である。したがって fn(1)=gn=n+1. f_n(1)=g_n=n+1.

最後に x>1x>1 の場合を調べる。x+1>2x+1>2 なので、ある t>0t>0 を用いて x+1=2cosht x+1=2\cosh t と書ける。このとき漸化式と初期値から fn(x)=sinh((n+1)t)sinht f_n(x)=\frac{\sinh((n+1)t)}{\sinh t} であることが分かる。実際、右辺を FnF_n とおくと Fn=2coshtFn1Fn2 F_n=2\cosh t\,F_{n-1}-F_{n-2} を満たし、F0=1, F1=2cosht=x+1F_0=1,\ F_1=2\cosh t=x+1 である。

ここで H(t)=sinh((n+1)t)(n+1)sinht H(t)=\sinh((n+1)t)-(n+1)\sinh t とおくと、H(0)=0H(0)=0 であり、 H(t)=(n+1){cosh((n+1)t)cosht}>0(t>0, n1) H'(t)=(n+1)\{\cosh((n+1)t)-\cosh t\}>0 \qquad (t>0,\ n\geq 1) である。よって t>0t>0 では H(t)>0H(t)>0、すなわち sinh((n+1)t)>(n+1)sinht. \sinh((n+1)t)>(n+1)\sinh t. したがって fn(x)=sinh((n+1)t)sinht>n+1 f_n(x)=\frac{\sinh((n+1)t)}{\sinh t}>n+1 である。

最終答

fn(x)=(1+x)fn1(x)fn2(x)(n3). f_n(x)=(1+x)f_{n-1}(x)-f_{n-2}(x)\qquad(n\geq 3). また fn(1)=n+1. f_n(1)=n+1. さらに x>1x>1 なら fn(x)>n+1 f_n(x)>n+1 である。

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