大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2017年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2017年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 二重積分と球・円柱の共通部分
方針
前半は特異点を含むように見えるが, 方向に先に積分すると一変数の対数積分に落ちる。 後半は円柱を と見直すと, 軸まわりの極座標で扱いやすい領域だと分かる。
円柱の 平面への射影
体積積分の読み方
球の内部では 方向の長さが である。これに極座標の面積要素 を掛ける。円柱は に依存しないので,まず射影領域を決め, その上に球の高さを載せるのが自然である。
検算
体積は に比例するはずである。得られた式 は次元が正しく,係数も正である。また円柱は球に内接するような太さなので, 球全体の体積 より十分小さい。
典型ミス
の範囲を のままにして, の領域でも と書くと符号が破綻する。先に を明示する。
第2問 — 二次形式の最大値と固有値
方針
二次形式を行列で表すと,問題は「実対称行列のレイリー商の最大値は固有値になる」 という標準事実そのものである。答案では定理名だけで済ませず,最大点での未定乗数条件を 書くと減点されにくい。
なぜ になるか
未定乗数法で出る は単なる補助変数ではない。固有方程式 に 左から を掛け, を使うと となる。最大点であればこの値が最大値 である。
検算
対角行列の場合,二次形式は であり,単位球面上の最大値は である。これは対角行列の固有値の最大値 と一致するので,今回の結論と整合する。
典型ミス
最大値が存在することを言わずに未定乗数法を始めると,極値点の存在が抜ける。 また,二次形式の交差項 に対応する行列成分は であり, ではない。
第3問 — 漸化式と収束半径
方針
これはフィボナッチ型の線形漸化式である。特性方程式の2根が異なるため, 一般項は2つの指数列の線形結合で書ける。初期条件が なので係数がきれいに決まる。
生成関数での検算
生成関数を とすると,漸化式から となる。分母の零点は であり,原点に近い方の絶対値が である。これは上の収束半径と一致する。
典型ミス
は負であるが,収束半径を決めるのは絶対値である。 ただし なので,成長率では だけが支配的になる。
第4問 — 行列空間のトレース双対
方針
行列空間 とその双対空間は,トレースのペアリングで同一視できる。 前半はこの同一視を標準基底で書き下したもの,後半は「すべての交換子を消す線形汎関数は トレースの定数倍」という事実である。
添字の向き
の成分は と転置向きに入る。これは となるためである。ここを と置くと,転置がずれてしまう。
非退化性の使い方
がすべての に対して成り立つなら, である。 これは抽象論を使わなくても, を代入して各成分 を取り出せば分かる。
典型ミス
巡回性は のように全体を回す性質であり, 途中の2因子だけを自由に交換できるわけではない。条件 から可換性を出すには, トレースの非退化性まで書く必要がある。
第5問 — 対数二乗を含む広義積分
方針
は, をパラメータで2回微分すると出てくる。 分母が なのでベータ関数 を使うのが最短である。
微分の正当化
を の近くに限れば, は 近傍でも無限遠でも可積分な関数で支配できる。したがって積分記号下の微分が正当化される。 答案では時間がなければ「近傍で一様収束するため」と短く書けばよい。
検算
置換 を行うと,積分は とも等しい。したがって重みは の周辺を中心に対称的に見え,値が正で有限になることが 確認できる。得られた は正で,広義積分として自然な大きさである。
典型ミス
を計算するとき, と を混同しやすい。 必ず を使う。ここで が入り, と打ち消し合う。