大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2017年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)
全5問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・一様収束)。2016年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。
最終更新:
- このページで公開
- 解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき5問)
- 問題本文
- 非収録
阪大 数学 2017年度 院試 過去問の出題内容(全5問)
この5問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分積分・解析 | 二重積分と球・円柱の共通部分 | 体積積分の読み方 | あり |
| 第2問 | 線形代数 | 二次形式の最大値と固有値 | なぜ M になるか | あり |
| 第3問 | 微分積分・解析 | 漸化式と収束半径 | 生成関数での検算 | あり |
| 第4問 | 線形代数 | 行列空間のトレース双対 | 添字の向き / 非退化性の使い方 | あり |
| 第5問 | 微分積分・解析 | 対数二乗を含む広義積分 | 微分の正当化 | あり |
この年度の解説には典型ミス5件・検算3件が付いています。
2017年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は3問に6テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第2問 | 25大学・544問 | |
| 重積分と極座標 | 第1問 | 23大学・142問 | |
| 一様収束 | 第5問 | 14大学・63問 | |
| 二次形式 | 第2問 | 16大学・63問 | |
| ラグランジュの未定乗数法 | 第2問 | 12大学・33問 | |
| ベータ関数・ガンマ関数 | 第5問 | 12大学・23問 |
前年度(2016年度)との違い
- 大問数
- 2016年度 5問 → 2017年度 5問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル
- 2017年度で新しく出たテーマ
- 重積分と極座標・一様収束・二次形式・ラグランジュの未定乗数法・ベータ関数・ガンマ関数
第1問 — 二重積分と球・円柱の共通部分
方針
前半は特異点を含むように見えるが, 方向に先に積分すると一変数の対数積分に落ちる。 後半は円柱を と見直すと, 軸まわりの極座標で扱いやすい領域だと分かる。
円柱の 平面への射影
体積積分の読み方
球の内部では 方向の長さが である。これに極座標の面積要素 を掛ける。円柱は に依存しないので,まず射影領域を決め, その上に球の高さを載せるのが自然である。
検算
体積は に比例するはずである。得られた式 は次元が正しく,係数も正である。また円柱は球に内接するような太さなので, 球全体の体積 より十分小さい。
典型ミス
の範囲を のままにして, の領域でも と書くと符号が破綻する。先に を明示する。
解答
前半は, を固定して から積分する。被積分関数は であり, では の点は積分値に影響しないので, を得る。
後半は円柱を 平面に射影して考える。円柱条件は極座標 で となる。したがって ,すなわち の範囲で である。球の条件から,この に対する の長さは である。よって体積 は 内側の積分は である。したがって 整理して となる。
最終答
,
第2問 — 二次形式の最大値と固有値
方針
二次形式を行列で表すと,問題は「実対称行列のレイリー商の最大値は固有値になる」 という標準事実そのものである。答案では定理名だけで済ませず,最大点での未定乗数条件を 書くと減点されにくい。
なぜ になるか
未定乗数法で出る は単なる補助変数ではない。固有方程式 に 左から を掛け, を使うと となる。最大点であればこの値が最大値 である。
検算
対角行列の場合,二次形式は であり,単位球面上の最大値は である。これは対角行列の固有値の最大値 と一致するので,今回の結論と整合する。
典型ミス
最大値が存在することを言わずに未定乗数法を始めると,極値点の存在が抜ける。 また,二次形式の交差項 に対応する行列成分は であり, ではない。
第3問 — 漸化式と収束半径
方針
これはフィボナッチ型の線形漸化式である。特性方程式の2根が異なるため, 一般項は2つの指数列の線形結合で書ける。初期条件が なので係数がきれいに決まる。
生成関数での検算
生成関数を とすると,漸化式から となる。分母の零点は であり,原点に近い方の絶対値が である。これは上の収束半径と一致する。
典型ミス
は負であるが,収束半径を決めるのは絶対値である。 ただし なので,成長率では だけが支配的になる。
第4問 — 行列空間のトレース双対
方針
行列空間 とその双対空間は,トレースのペアリングで同一視できる。 前半はこの同一視を標準基底で書き下したもの,後半は「すべての交換子を消す線形汎関数は トレースの定数倍」という事実である。
添字の向き
の成分は と転置向きに入る。これは となるためである。ここを と置くと,転置がずれてしまう。
非退化性の使い方
がすべての に対して成り立つなら, である。 これは抽象論を使わなくても, を代入して各成分 を取り出せば分かる。
典型ミス
巡回性は のように全体を回す性質であり, 途中の2因子だけを自由に交換できるわけではない。条件 から可換性を出すには, トレースの非退化性まで書く必要がある。
第5問 — 対数二乗を含む広義積分
方針
は, をパラメータで2回微分すると出てくる。 分母が なのでベータ関数 を使うのが最短である。
微分の正当化
を の近くに限れば, は 近傍でも無限遠でも可積分な関数で支配できる。したがって積分記号下の微分が正当化される。 答案では時間がなければ「近傍で一様収束するため」と短く書けばよい。
検算
置換 を行うと,積分は とも等しい。したがって重みは の周辺を中心に対称的に見え,値が正で有限になることが 確認できる。得られた は正で,広義積分として自然な大きさである。
典型ミス
を計算するとき, と を混同しやすい。 必ず を使う。ここで が入り, と打ち消し合う。
阪大 数学 院試 過去問の収録21年度
階数と連立一次方程式の整合条件 / 2つの放物線上の点の距離 / 二点境界条件付き線形常微分方程式
楕円体と円柱条件の共通部分 / 二変数関数の極値判定 / 単調列と指数型列
主値積分 / 二次曲線上の積の極値 / 冪級数の収束半径
一次微分方程式 / 4次元球の体積 / 導関数の極限と微分可能性
三角関数の定積分 / 定数係数線形微分方程式 / 凸関数の導関数の極限
有理関数の広義積分 / 二変数関数の極値 / 正則行列の開性と行列冪の極限
パラメータ付き有理型積分 / 偏導関数が消える関数 / 行列の冪と作用素ノルム
三角置換と周期積分 / 行列の核と階数1行列 / 制約付き極値
2017年度(このページ・全5問)
二重積分と球・円柱の共通部分 / 二次形式の最大値と固有値 / 漸化式と収束半径
2016年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
円盤上の積分と差分商 / 数列空間と線形漸化式 / 留数定理によるフーリエ型積分
2015年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
重積分と広義積分 / 階段型行列の行列式 / Rodrigues型多項式と直交性
2014年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
変数変換とベータ積分 / 多項式の零点と三角格子 / 直交行列のCayley変換
2013年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
多項式空間上の線形変換 / 積分剰余と凸性 / 巡回行列の固有値
2012年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
積分の変数変換 / 実数連立方程式 / 指数型母関数と3周期列
2011年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
積分評価 / 線形部分空間 / 正則関数と調和共役
2010年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
広義積分と留数計算 / 行列の核の次元 / 複素数列の周期性
2009年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
制約付き最大化 / 歪対称行列と非対角化性 / 単位円上の留数計算
2008年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
球と円柱の共通部分の体積 / 同伴行列の固有多項式と対角化 / 有界正則関数の係数評価
2007年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
左右から近づく微分商 / 楕円体の体積 / 留数による有理関数積分
2006年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
漸化式と階乗正規化 / 二変数関数の極値 / 単位円上の留数計算
2005年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
可積分条件と無限遠での極限 / 極座標でのラプラシアン / フーリエ型積分と留数