院試hub

大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。微分積分・解析3問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・二次形式)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

最終更新:

収録21年度分の解答PDF:大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学(¥3,200・紙面見本あり)

このページで公開
解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

阪大 数学 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は微分積分・解析3問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析主値積分—あり
第2問—二次曲線上の積の極値境目の扱い / 採点上の注意あり
第3問微分積分・解析冪級数の収束半径中心となる考え方 / 境界では何が起こるかあり
第4問—直交対角化とFrobeniusノルム階数2の行列の作り方 / 採点上の注意あり
第5問微分積分・解析極座標による最大値と可積分性—あり

この年度の解説には採点上の注意3件・典型ミス2件・検算1件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に5テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2022年度のページを見る

第1問 — 主値積分

方針

実軸上の特異点は x=1x=1 だけである。普通の広義積分として左右を別々に見ると log⁡∣x−1∣\log|x-1| が発散するが,主値では左右の同じ大きさの発散をまとめて引く。 そのため,部分分数分解で出る 13log⁡∣x−1∣ \frac{1}{3}\log|x-1| の項は最終的に寄与しない。

検算

被積分関数は無限遠で 1/x31/x^3 程度なので,無限遠側の収束は問題ない。 値が負になるのは,特異点近傍の発散を主値で相殺した後,残る寄与が 二次因子側の偏角変化に対応するためである。符号は −13Δarctan⁡2x+13 -\frac{1}{\sqrt3}\Delta\arctan\frac{2x+1}{\sqrt3} から確認できる。

典型ミス

左右の広義積分を別々に収束させようとすると発散してしまう。 この問題では必ず主値の定義に戻り, ∫−∞1−ε+∫1+ε∞ \int_{-\infty}^{1-\varepsilon}+\int_{1+\varepsilon}^{\infty} を同じ ε\varepsilon で扱うことが採点上の要点である。

解答

部分分数分解から始める。 1x3−1=131x−1−x+23(x2+x+1) \frac{1}{x^3-1} =\frac{1}{3}\frac{1}{x-1} -\frac{x+2}{3(x^2+x+1)} である。したがって,x≠1x\ne 1 上の原始関数の一つは F(x)=13log⁡∣x−1∣−16log⁡(x2+x+1)−13arctan⁡2x+13 F(x)= \frac{1}{3}\log|x-1| -\frac{1}{6}\log(x^2+x+1) -\frac{1}{\sqrt3}\arctan\frac{2x+1}{\sqrt3} である。

特異点 x=1x=1 を左右対称に避ける主値を考えると, p.v.⁡∫−∞∞dxx3−1=lim⁡R→∞ε↓0(∫−R1−εdxx3−1+∫1+εRdxx3−1)=lim⁡R→∞{F(R)−F(−R)} \begin{aligned} \operatorname{p.v.}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^3-1} &=\lim_{\substack{R\to\infty\\ \varepsilon\downarrow 0}} \left( \int_{-R}^{1-\varepsilon}\frac{dx}{x^3-1} +\int_{1+\varepsilon}^{R}\frac{dx}{x^3-1} \right)\\ &=\lim_{R\to\infty}\{F(R)-F(-R)\} \end{aligned} となる。ここで F(1−ε)−F(1+ε)F(1-\varepsilon)-F(1+\varepsilon) の対数発散は log⁡ε\log\varepsilon 同士で打ち消し合い,残りの連続な項は同じ値に近づく。

∣x∣→∞|x|\to\infty では 13log⁡∣x−1∣−16log⁡(x2+x+1)→0 \frac{1}{3}\log|x-1|-\frac{1}{6}\log(x^2+x+1)\to 0 である。また arctan⁡2x+13→{π/2,x→+∞,−π/2,x→−∞ \arctan\frac{2x+1}{\sqrt3}\to \begin{cases} \pi/2, & x\to+\infty,\\ -\pi/2, & x\to-\infty \end{cases} だから, p.v.⁡∫−∞∞dxx3−1=−13(π2−(−π2))=−π3. \operatorname{p.v.}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^3-1} =-\frac{1}{\sqrt3}\left(\frac{\pi}{2}-\left(-\frac{\pi}{2}\right)\right) =-\frac{\pi}{\sqrt3}.

最終答

−π3\displaystyle -\frac{\pi}{\sqrt3}

第2問 — 二次曲線上の積の極値

方針

xyxy を含む二次形式は,和と差 u=x+y,v=x−y u=x+y,\qquad v=x-y で対角化できる。制約も目的関数も同時に簡単になるため,ラグランジュ未定乗数法より 場合分けの見通しがよい。

境目の扱い

a=1a=1 では曲線が二本の直線になり,閉じた曲線ではなくなる。 このため最大値は残るが,負方向にはいくらでも小さくできる。正の aa を一括して 楕円と見なすと,この境目を落としやすい。

採点上の注意

最大値・最小値の「候補値」だけでなく,その値が実際に達成されるかを確認する必要がある。 特に a≥1a\ge 1 では下に有界でないことを一行で示すと,最小値が存在しない理由が明確になる。

二次曲線上の積の極値の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 冪級数の収束半径

中心となる考え方

冪級数では,ある点で絶対収束すればその内側では絶対収束する。 また,ある点で単に収束していれば,その内側では係数列を等比級数で押さえられる。 これは収束半径の基本性質そのものである。

境界では何が起こるか

∣z∣=∣z0∣|z|=|z_0| の境界上では,位相因子が変わるだけで収束性が変わることがある。 反例では,z0=1z_0=1 で交代級数として収束していたものが,z=−1z=-1 に移すと 符号の交代が消え,調和級数になる。

採点上の注意

(2) では「級数が収束するから項が有界」という一段を明記するとよい。 ここを書けば ∣anzn∣≤M∣zz0∣n |a_nz^n|\le M\left|\frac{z}{z_0}\right|^n が自然に出て,絶対収束まで一気に進められる。

冪級数の収束半径の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 直交対角化とFrobeniusノルム

方針

行列 SS が対称であることに気づけば,直交対角化がそのまま使える。 Frobeniusノルムは成分二乗和であり,トレース表示 ∥A∥2=tr⁡(ATA) \|A\|^2=\operatorname{tr}(A^{\mathsf T}A) に直すと,直交行列を左右から掛けても値が変わらないことが一行で示せる。

階数2の行列の作り方

対角化後に diag⁡(2,1,−2) \operatorname{diag}(2,1,-2) を見れば,固有値 11 の成分を 00 に変えるだけで距離がちょうど 11 になる。 元の座標に戻すと X=S−q2q2TX=S-q_2q_2^{\mathsf T} である。 これは最良近似を証明する問題ではなく,一つの例を作ればよい点に注意する。

採点上の注意

(2) で UU と VV が左右別々に掛かっているため,固有値ではなくトレースの巡回性を使うのが安全である。 また (3) では,行列を提示した後に階数と距離の両方を確認する必要がある。

直交対角化とFrobeniusノルムの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 極座標による最大値と可積分性

方針

分子 x2−y2x^2-y^2 は極座標で r2cos⁡2θr^2\cos2\theta になる。 最大値は角度方向を cos⁡2θ=1\cos2\theta=1 に合わせればよく,あとは一変数関数 r21+r2m \frac{r^2}{1+r^{2m}} の問題になる。可積分性では面積要素の rr が加わるため,無限遠で見るべき冪は r3−2mr^{3-2m} である。

典型ミス

(1) では m=1m=1 を「上に有界だから最大値あり」としてしまう誤りが多い。 上限 11 は無限遠で近づくだけで,有限の点では達成されない。

(2) では ∣x2−y2∣≤r2|x^2-y^2|\le r^2 だけで十分条件を出すことはできるが,必要条件まで示すには 角度方向の絶対値積分が正の有限値であることを使う。したがって結論は単なる十分条件ではなく 必要十分条件になる。

極座標による最大値と可積分性の途中式・最終答をPDFで見る

阪大 数学 院試 過去問の収録21年度

  • 2025年度(全5問)

    階数と連立一次方程式の整合条件 / 2つの放物線上の点の距離 / 二点境界条件付き線形常微分方程式

  • 2024年度(全5問)

    楕円体と円柱条件の共通部分 / 二変数関数の極値判定 / 単調列と指数型列

  • 2023年度(このページ・全5問)

    主値積分 / 二次曲線上の積の極値 / 冪級数の収束半径

  • 2022年度(全5問)

    一次微分方程式 / 4次元球の体積 / 導関数の極限と微分可能性

  • 2021年度(全5問)

    三角関数の定積分 / 定数係数線形微分方程式 / 凸関数の導関数の極限

  • 2020年度(全5問)

    有理関数の広義積分 / 二変数関数の極値 / 正則行列の開性と行列冪の極限

  • 2019年度(全5問)

    パラメータ付き有理型積分 / 偏導関数が消える関数 / 行列の冪と作用素ノルム

  • 2018年度(全5問)

    三角置換と周期積分 / 行列の核と階数1行列 / 制約付き極値

  • 2017年度(全5問)

    二重積分と球・円柱の共通部分 / 二次形式の最大値と固有値 / 漸化式と収束半径

  • 2016年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    円盤上の積分と差分商 / 数列空間と線形漸化式 / 留数定理によるフーリエ型積分

  • 2015年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    重積分と広義積分 / 階段型行列の行列式 / Rodrigues型多項式と直交性

  • 2014年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    変数変換とベータ積分 / 多項式の零点と三角格子 / 直交行列のCayley変換

  • 2013年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    多項式空間上の線形変換 / 積分剰余と凸性 / 巡回行列の固有値

  • 2012年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    積分の変数変換 / 実数連立方程式 / 指数型母関数と3周期列

  • 2011年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    積分評価 / 線形部分空間 / 正則関数と調和共役

  • 2010年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    広義積分と留数計算 / 行列の核の次元 / 複素数列の周期性

  • 2009年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    制約付き最大化 / 歪対称行列と非対角化性 / 単位円上の留数計算

  • 2008年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    球と円柱の共通部分の体積 / 同伴行列の固有多項式と対角化 / 有界正則関数の係数評価

  • 2007年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    左右から近づく微分商 / 楕円体の体積 / 留数による有理関数積分

  • 2006年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    漸化式と階乗正規化 / 二変数関数の極値 / 単位円上の留数計算

  • 2005年度(全5問)解答・最終答まで全文公開

    可積分条件と無限遠での極限 / 極座標でのラプラシアン / フーリエ型積分と留数