大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)
全5問。微分積分・解析3問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・二次形式)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。
最終更新:
収録21年度分の解答PDF:大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学(¥3,200・紙面見本あり)
- このページで公開
- 解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき5問)
- 問題本文
- 非収録
阪大 数学 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)
この5問の分野は微分積分・解析3問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分積分・解析 | 主値積分 | — | あり |
| 第2問 | — | 二次曲線上の積の極値 | 境目の扱い / 採点上の注意 | あり |
| 第3問 | 微分積分・解析 | 冪級数の収束半径 | 中心となる考え方 / 境界では何が起こるか | あり |
| 第4問 | — | 直交対角化とFrobeniusノルム | 階数2の行列の作り方 / 採点上の注意 | あり |
| 第5問 | 微分積分・解析 | 極座標による最大値と可積分性 | — | あり |
この年度の解説には採点上の注意3件・典型ミス2件・検算1件が付いています。
2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は2問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第4問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第4問 | 21大学・152問 | |
| 二次形式 | 第2問 | 16大学・63問 | |
| ラグランジュの未定乗数法 | 第2問 | 12大学・33問 | |
| 直交対角化 | 第4問 | 14大学・23問 |
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 5問 → 2023年度 5問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル
- 2023年度で新しく出たテーマ
- 線形空間・基底・二次形式・ラグランジュの未定乗数法・直交対角化
第1問 — 主値積分
方針
実軸上の特異点は だけである。普通の広義積分として左右を別々に見ると が発散するが,主値では左右の同じ大きさの発散をまとめて引く。 そのため,部分分数分解で出る の項は最終的に寄与しない。
検算
被積分関数は無限遠で 程度なので,無限遠側の収束は問題ない。 値が負になるのは,特異点近傍の発散を主値で相殺した後,残る寄与が 二次因子側の偏角変化に対応するためである。符号は から確認できる。
典型ミス
左右の広義積分を別々に収束させようとすると発散してしまう。 この問題では必ず主値の定義に戻り, を同じ で扱うことが採点上の要点である。
解答
部分分数分解から始める。 である。したがって, 上の原始関数の一つは である。
特異点 を左右対称に避ける主値を考えると, となる。ここで の対数発散は 同士で打ち消し合い,残りの連続な項は同じ値に近づく。
では である。また だから,
最終答
第2問 — 二次曲線上の積の極値
方針
を含む二次形式は,和と差 で対角化できる。制約も目的関数も同時に簡単になるため,ラグランジュ未定乗数法より 場合分けの見通しがよい。
境目の扱い
では曲線が二本の直線になり,閉じた曲線ではなくなる。 このため最大値は残るが,負方向にはいくらでも小さくできる。正の を一括して 楕円と見なすと,この境目を落としやすい。
採点上の注意
最大値・最小値の「候補値」だけでなく,その値が実際に達成されるかを確認する必要がある。 特に では下に有界でないことを一行で示すと,最小値が存在しない理由が明確になる。
第3問 — 冪級数の収束半径
中心となる考え方
冪級数では,ある点で絶対収束すればその内側では絶対収束する。 また,ある点で単に収束していれば,その内側では係数列を等比級数で押さえられる。 これは収束半径の基本性質そのものである。
境界では何が起こるか
の境界上では,位相因子が変わるだけで収束性が変わることがある。 反例では, で交代級数として収束していたものが, に移すと 符号の交代が消え,調和級数になる。
採点上の注意
(2) では「級数が収束するから項が有界」という一段を明記するとよい。 ここを書けば が自然に出て,絶対収束まで一気に進められる。
第4問 — 直交対角化とFrobeniusノルム
方針
行列 が対称であることに気づけば,直交対角化がそのまま使える。 Frobeniusノルムは成分二乗和であり,トレース表示 に直すと,直交行列を左右から掛けても値が変わらないことが一行で示せる。
階数2の行列の作り方
対角化後に を見れば,固有値 の成分を に変えるだけで距離がちょうど になる。 元の座標に戻すと である。 これは最良近似を証明する問題ではなく,一つの例を作ればよい点に注意する。
採点上の注意
(2) で と が左右別々に掛かっているため,固有値ではなくトレースの巡回性を使うのが安全である。 また (3) では,行列を提示した後に階数と距離の両方を確認する必要がある。
第5問 — 極座標による最大値と可積分性
方針
分子 は極座標で になる。 最大値は角度方向を に合わせればよく,あとは一変数関数 の問題になる。可積分性では面積要素の が加わるため,無限遠で見るべき冪は である。
典型ミス
(1) では を「上に有界だから最大値あり」としてしまう誤りが多い。 上限 は無限遠で近づくだけで,有限の点では達成されない。
(2) では だけで十分条件を出すことはできるが,必要条件まで示すには 角度方向の絶対値積分が正の有限値であることを使う。したがって結論は単なる十分条件ではなく 必要十分条件になる。
阪大 数学 院試 過去問の収録21年度
階数と連立一次方程式の整合条件 / 2つの放物線上の点の距離 / 二点境界条件付き線形常微分方程式
楕円体と円柱条件の共通部分 / 二変数関数の極値判定 / 単調列と指数型列
2023年度(このページ・全5問)
主値積分 / 二次曲線上の積の極値 / 冪級数の収束半径
一次微分方程式 / 4次元球の体積 / 導関数の極限と微分可能性
三角関数の定積分 / 定数係数線形微分方程式 / 凸関数の導関数の極限
有理関数の広義積分 / 二変数関数の極値 / 正則行列の開性と行列冪の極限
パラメータ付き有理型積分 / 偏導関数が消える関数 / 行列の冪と作用素ノルム
三角置換と周期積分 / 行列の核と階数1行列 / 制約付き極値
二重積分と球・円柱の共通部分 / 二次形式の最大値と固有値 / 漸化式と収束半径
2016年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
円盤上の積分と差分商 / 数列空間と線形漸化式 / 留数定理によるフーリエ型積分
2015年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
重積分と広義積分 / 階段型行列の行列式 / Rodrigues型多項式と直交性
2014年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
変数変換とベータ積分 / 多項式の零点と三角格子 / 直交行列のCayley変換
2013年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
多項式空間上の線形変換 / 積分剰余と凸性 / 巡回行列の固有値
2012年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
積分の変数変換 / 実数連立方程式 / 指数型母関数と3周期列
2011年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
積分評価 / 線形部分空間 / 正則関数と調和共役
2010年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
広義積分と留数計算 / 行列の核の次元 / 複素数列の周期性
2009年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
制約付き最大化 / 歪対称行列と非対角化性 / 単位円上の留数計算
2008年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
球と円柱の共通部分の体積 / 同伴行列の固有多項式と対角化 / 有界正則関数の係数評価
2007年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
左右から近づく微分商 / 楕円体の体積 / 留数による有理関数積分
2006年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
漸化式と階乗正規化 / 二変数関数の極値 / 単位円上の留数計算
2005年度(全5問)解答・最終答まで全文公開
可積分条件と無限遠での極限 / 極座標でのラプラシアン / フーリエ型積分と留数