大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2023年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 主値積分
方針
実軸上の特異点は だけである。普通の広義積分として左右を別々に見ると が発散するが,主値では左右の同じ大きさの発散をまとめて引く。 そのため,部分分数分解で出る の項は最終的に寄与しない。
検算
被積分関数は無限遠で 程度なので,無限遠側の収束は問題ない。 値が負になるのは,特異点近傍の発散を主値で相殺した後,残る寄与が 二次因子側の偏角変化に対応するためである。符号は から確認できる。
典型ミス
左右の広義積分を別々に収束させようとすると発散してしまう。 この問題では必ず主値の定義に戻り, を同じ で扱うことが採点上の要点である。
第2問 — 二次曲線上の積の極値
方針
を含む二次形式は,和と差 で対角化できる。制約も目的関数も同時に簡単になるため,ラグランジュ未定乗数法より 場合分けの見通しがよい。
境目の扱い
では曲線が二本の直線になり,閉じた曲線ではなくなる。 このため最大値は残るが,負方向にはいくらでも小さくできる。正の を一括して 楕円と見なすと,この境目を落としやすい。
採点上の注意
最大値・最小値の「候補値」だけでなく,その値が実際に達成されるかを確認する必要がある。 特に では下に有界でないことを一行で示すと,最小値が存在しない理由が明確になる。
第3問 — 冪級数の収束半径
中心となる考え方
冪級数では,ある点で絶対収束すればその内側では絶対収束する。 また,ある点で単に収束していれば,その内側では係数列を等比級数で押さえられる。 これは収束半径の基本性質そのものである。
境界では何が起こるか
の境界上では,位相因子が変わるだけで収束性が変わることがある。 反例では, で交代級数として収束していたものが, に移すと 符号の交代が消え,調和級数になる。
採点上の注意
(2) では「級数が収束するから項が有界」という一段を明記するとよい。 ここを書けば が自然に出て,絶対収束まで一気に進められる。
第4問 — 直交対角化とFrobeniusノルム
方針
行列 が対称であることに気づけば,直交対角化がそのまま使える。 Frobeniusノルムは成分二乗和であり,トレース表示 に直すと,直交行列を左右から掛けても値が変わらないことが一行で示せる。
階数2の行列の作り方
対角化後に を見れば,固有値 の成分を に変えるだけで距離がちょうど になる。 元の座標に戻すと である。 これは最良近似を証明する問題ではなく,一つの例を作ればよい点に注意する。
採点上の注意
(2) で と が左右別々に掛かっているため,固有値ではなくトレースの巡回性を使うのが安全である。 また (3) では,行列を提示した後に階数と距離の両方を確認する必要がある。
第5問 — 極座標による最大値と可積分性
方針
分子 は極座標で になる。 最大値は角度方向を に合わせればよく,あとは一変数関数 の問題になる。可積分性では面積要素の が加わるため,無限遠で見るべき冪は である。
典型ミス
(1) では を「上に有界だから最大値あり」としてしまう誤りが多い。 上限 は無限遠で近づくだけで,有限の点では達成されない。
(2) では だけで十分条件を出すことはできるが,必要条件まで示すには 角度方向の絶対値積分が正の有限値であることを使う。したがって結論は単なる十分条件ではなく 必要十分条件になる。