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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2015年度 院試 解答例・解説

大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 数学 2015年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

1 — 重積分と広義積分

方針

第1積分は放物面と xyxy 平面にはさまれた立体上の積分である。 zz について先に積分すれば,円板上の多項式積分に落ちる。 角度方向に依存する部分と半径方向に依存する部分を分離できるのが 極座標の利点である。

底面は単位円板になる

典型ミス

(1)(1) で角度積分を先に見ると,2x2y22x^2-y^2 は平均して 零にはならない。円周上では x2x^2y2y^2 の平均は同じなので, 2x2y22x^2-y^2 の平均は x2x^2 1個分だけ残る。

広義積分の確認

(2)(2)α<0\alpha<0 のため x=yx=y で被積分関数が発散する。 ただし変数変換後は uαu^\alpha の積分であり, α>1\alpha>-1 だから収束する。この収束条件を書いておくと, 単なる形式計算ではないことが明確になる。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)(1) ではまず zz について積分する。底面は単位円板であり, 01x2y2z(2x2y2)dz=12(1x2y2)2(2x2y2) \int_0^{1-x^2-y^2} z(2x^2-y^2)\,dz = \frac12(1-x^2-y^2)^2(2x^2-y^2) である。極座標 x=rcosθ, y=rsinθx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta を用いると 2x2y2=r2(2cos2θsin2θ) 2x^2-y^2 = r^2(2\cos^2\theta-\sin^2\theta) なので, I1=120102π(1r2)2r2(2cos2θsin2θ)rdθdr=12(02π(2cos2θsin2θ)dθ)(01r3(1r2)2dr). \begin{aligned} I_1 &= \frac12 \int_0^1\int_0^{2\pi} (1-r^2)^2r^2(2\cos^2\theta-\sin^2\theta)r\,d\theta\,dr \\ &= \frac12 \left(\int_0^{2\pi}(2\cos^2\theta-\sin^2\theta)\,d\theta\right) \left(\int_0^1 r^3(1-r^2)^2\,dr\right). \end{aligned} 角度方向は 2ππ=π2\pi-\pi=\pi である。また 01r3(1r2)2dr=01(r32r5+r7)dr=1413+18=124. \int_0^1 r^3(1-r^2)^2\,dr = \int_0^1(r^3-2r^5+r^7)\,dr = \frac14-\frac13+\frac18 = \frac1{24}. したがって I1=π48. I_1=\frac{\pi}{48}.

(2)(2) では u=xy, v=yu=x-y,\ v=y とおく。ヤコビアンは 11 で,領域は u0,v0,u+v1 u\ge 0,\quad v\ge 0,\quad u+v\le 1 に移る。よって I2=0101uuαdvdu=01(1u)uαdu. I_2 = \int_0^1\int_0^{1-u}u^\alpha\,dv\,du = \int_0^1(1-u)u^\alpha\,du. 1<α<0-1<\alpha<0 なので u=0u=0 で広義積分は収束し, I2=01uαdu01uα+1du=1α+11α+2=1(α+1)(α+2). I_2 = \int_0^1 u^\alpha\,du-\int_0^1u^{\alpha+1}\,du = \frac1{\alpha+1}-\frac1{\alpha+2} = \frac1{(\alpha+1)(\alpha+2)}.

最終答

I1=π48,I2=1(α+1)(α+2)\displaystyle I_1=\frac{\pi}{48},\qquad I_2=\frac1{(\alpha+1)(\alpha+2)}.

2 — 階段型行列の行列式

方針

この行列は行方向より列方向の差を取ると形が見える。隣り合う列の差を 取ると,上側に連続した 00 が現れ,行列式は下三角行列の対角積に 帰着する。

対角成分=1, b1x1,,bn1xn1\text{対角成分}=1,\ b_1-x_1,\dots,b_{n-1}-x_{n-1}

列変形の順序

CjCjCj1C_j\leftarrow C_j-C_{j-1} を右から左へ行えば,まだ使っていない 左隣の列を壊さずに済む。左から右へ機械的に進めると,すでに変形した 列を引いてしまい,意図した差分にならない。

検算

n=2n=2 では 11x1b1=b1x1 \begin{vmatrix}1&1\\ x_1&b_1\end{vmatrix}=b_1-x_1 であり,公式と一致する。小さい次数で符号を確認してから一般化すると, 符号ミスを避けやすい。

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列ベクトルを C1,,CnC_1,\dots,C_n と書く。列基本変形として CjCjCj1(j=n,n1,,2) C_j\leftarrow C_j-C_{j-1}\qquad (j=n,n-1,\dots,2) を行う。これは行列式を変えない。変形後の第1行は (1,0,,0) (1,0,\dots,0) である。

また,j2j\ge 2 に対して新しい第 jj 列は,第1行から第 (j1)(j-1) 行までが 00,第 jj 行が bj1xj1 b_{j-1}-x_{j-1} となる。第 jj 行より下には xjxj1x_j-x_{j-1} 型の成分が残るが, これは対角成分より下にしか現れない。

したがって,第1行・第1列を除いた (n1)(n-1) 次行列は下三角行列で, その対角成分は b1x1, b2x2, , bn1xn1 b_1-x_1,\ b_2-x_2,\ \dots,\ b_{n-1}-x_{n-1} である。よって detAn=k=1n1(bkxk). \det A_n = \prod_{k=1}^{n-1}(b_k-x_k).

最終答

detAn=k=1n1(bkxk)\displaystyle \det A_n=\prod_{k=1}^{n-1}(b_k-x_k).

3 — Rodrigues型多項式と直交性

方針

これは Legendre 多項式の Rodrigues 公式と同じ構造である。 標準的な Legendre 多項式 PnP_n とは ϕn(x)=2nn!Pn(x) \phi_n(x)=2^n n! P_n(x) の関係にあるため,直交性もノルムも標準公式から見通せる。 答案では標準公式を丸暗記で使うより,部分積分で導く方が安全である。

境界項が消える理由

部分積分を繰り返すとき,端点で (x21)n(x^2-1)^n00 から n1n-1 階までの導関数が消えることが 重要である。ここを書かないと,直交性の証明としては不十分になる。

採点上の注意

ノルム計算では (2n)!(2n)!(2n+1)!(2n+1)! の約分で (2n+1)(2n+1) が分母に残る。最後の係数 22n+12^{2n+1} も,変数変換 x=2t1x=2t-1dx=2dtdx=2dt を忘れると 半分ずれる。

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Φn(x)=(x21)n\Phi_n(x)=(x^2-1)^n とおくと,ϕn=Φn(n)\phi_n=\Phi_n^{(n)} である。 Φn\Phi_nx=±1x=\pm1nn 重零点を持つため, Φn,Φn,,Φn(n1)\Phi_n,\Phi_n',\dots,\Phi_n^{(n-1)} は両端で消える。

(1)(1) n>m0n>m\ge0 とする。部分積分を nn 回行うと,境界項はすべて 消え, 11ϕn(x)ϕm(x)dx=(1)n11(x21)ndndxnϕm(x)dx. \int_{-1}^1 \phi_n(x)\phi_m(x)\,dx = (-1)^n\int_{-1}^1 (x^2-1)^n \frac{d^n}{dx^n}\phi_m(x)\,dx. ϕm\phi_m は高々 mm 次の多項式であり,n>mn>m だから dndxnϕm(x)=0\frac{d^n}{dx^n}\phi_m(x)=0 である。したがって 11ϕn(x)ϕm(x)dx=0. \int_{-1}^1 \phi_n(x)\phi_m(x)\,dx=0.

(2)(2) 同様に,Φn\Phi_n を用いて 11ϕn(x)2dx=11{Φn(n)(x)}2dx=(1)n11Φn(x)Φn(2n)(x)dx. \begin{aligned} \int_{-1}^1 |\phi_n(x)|^2\,dx &= \int_{-1}^1\{\Phi_n^{(n)}(x)\}^2\,dx \\ &= (-1)^n\int_{-1}^1 \Phi_n(x)\Phi_n^{(2n)}(x)\,dx. \end{aligned} Φn(x)\Phi_n(x) の最高次項は x2nx^{2n} なので Φn(2n)(x)=(2n)!\Phi_n^{(2n)}(x)=(2n)! である。よって 11ϕn(x)2dx=(2n)!11(1x2)ndx. \int_{-1}^1 |\phi_n(x)|^2\,dx = (2n)!\int_{-1}^1(1-x^2)^n\,dx. ここで x=2t1x=2t-1 とおくと 11(1x2)ndx=24n01tn(1t)ndt=22n+1B(n+1,n+1). \begin{aligned} \int_{-1}^1(1-x^2)^n\,dx &= 2\cdot 4^n\int_0^1 t^n(1-t)^n\,dt \\ &= 2^{2n+1}B(n+1,n+1). \end{aligned} 与えられた Beta 関数の値を使えば 11(1x2)ndx=22n+1(n!)2(2n+1)!. \int_{-1}^1(1-x^2)^n\,dx = 2^{2n+1}\frac{(n!)^2}{(2n+1)!}. したがって 11ϕn(x)2dx=(2n)!22n+1(n!)2(2n+1)!=22n+1(n!)22n+1. \int_{-1}^1|\phi_n(x)|^2\,dx = (2n)!\,2^{2n+1}\frac{(n!)^2}{(2n+1)!} = \frac{2^{2n+1}(n!)^2}{2n+1}.

最終答

11ϕnϕmdx=0 (n>m0),11ϕn2dx=22n+1(n!)22n+1\displaystyle \int_{-1}^1\phi_n\phi_m\,dx=0\ (n>m\ge0),\qquad \int_{-1}^1|\phi_n|^2\,dx=\frac{2^{2n+1}(n!)^2}{2n+1}.

4 — 像空間と多項式消滅条件

方針

像空間の交わりを扱う問題では,積 PQPQ の像が ImP\operatorname{Im}PImQ\operatorname{Im}Q の両方に入ることを 使う。ただしこれは P,QP,Q が可換なときにきれいに働く。 ここでは AA の多項式だけが出ているので可換性は自動的に成り立つ。

第2問の注意点

A2(AE)2=OA^2(A-E)^2=O から A2y=0A^2y=0(AE)2y=0(A-E)^2y=0 が分かっても, ただちに y=0y=0 とは言えない。t2t^2(t1)2(t-1)^2 が互いに素で あること,すなわち上の恒等式を使って yy 自身をそれらの線形結合で 表す必要がある。

検算

(1)(1) の条件 A2=AA^2=A は射影行列の条件である。 射影では空間が 11 固有空間と 00 固有空間に分かれ, ImA\operatorname{Im}AIm(AE)\operatorname{Im}(A-E) が交わらない, という幾何的な見方と一致する。

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(1)(1) まず A(AE)=A2A=(AE)A A(A-E)=A^2-A=(A-E)A であるから,A(AE)xA(A-E)x は任意の xx について ImA\operatorname{Im}A にも Im(AE)\operatorname{Im}(A-E) にも属する。 したがって ImAIm(AE)={0} \operatorname{Im}A\cap\operatorname{Im}(A-E)=\{0\} ならば A(AE)x=0A(A-E)x=0 がすべての xx で成り立ち, A(AE)=OA(A-E)=O である。

逆に A(AE)=OA(A-E)=O とする。このとき A2=AA^2=A である。 yImAIm(AE)y\in\operatorname{Im}A\cap\operatorname{Im}(A-E) とすると, y=Au=(AE)vy=Au=(A-E)v と書ける。yImAy\in\operatorname{Im}AA2=AA^2=A から Ay=yAy=y であり,yIm(AE)y\in\operatorname{Im}(A-E)A(AE)=OA(A-E)=O から Ay=0Ay=0 である。よって y=0y=0 となる。

(2)(2) 多項式 t2t^2(t1)2(t-1)^2 は互いに素であり, (2t+3)t2+(2t+1)(t1)2=1 (-2t+3)t^2+(2t+1)(t-1)^2=1 が成り立つことを用いる。

まず A2(AE)2=(AE)2A2 A^2(A-E)^2=(A-E)^2A^2 であるから,A2(AE)2xA^2(A-E)^2xImA2\operatorname{Im}A^2Im(AE)2\operatorname{Im}(A-E)^2 の両方に 属する。従って,交わりが {0}\{0\} ならば A2(AE)2=O A^2(A-E)^2=O である。

逆に A2(AE)2=OA^2(A-E)^2=O とする。 yImA2Im(AE)2 y\in \operatorname{Im}A^2\cap\operatorname{Im}(A-E)^2 を取る。すると y=A2u=(AE)2vy=A^2u=(A-E)^2v と書ける。可換性より (AE)2y=(AE)2A2u=0,A2y=A2(AE)2v=0. (A-E)^2y=(A-E)^2A^2u=0,\qquad A^2y=A^2(A-E)^2v=0. 上の Bezout 型恒等式に AA を代入して yy に作用させると y=(2A+3E)A2y+(2A+E)(AE)2y=0. y=(-2A+3E)A^2y+(2A+E)(A-E)^2y=0. よって交わりは {0}\{0\} である。

最終答

それぞれの像の交わりが零空間であることと,対応する多項式 A(AE)A(A-E)A2(AE)2A^2(A-E)^2 が零行列になることは同値である。

5 — コーシーの積分定理と実積分

方針

実積分は奇関数部分と偶関数部分に分けるのが第一手である。 x3/(x4+1)x^3/(x^4+1) は左右対称な区間では打ち消し合う。 残りは有名な dx1+x4 \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4} で,留数定理を使うと短く評価できる。

上半円内の2つの極だけが寄与する

注意すべき極限

x3/(x4+1)x^3/(x^4+1) は無限遠で 1/x1/x のように振る舞うため, 片側ずつの広義積分は収束しない。ここで求めているのは [R,R][-R,R] 上の対称極限であり,そのため奇関数部分を 00 とできる。 この区別を書いておくと答案が厳密になる。

採点上の注意

留数の和の符号を誤ると答えが負になりやすい。実積分は正の関数 1/(x4+1)1/(x^4+1) の積分なので,最後の値は必ず正でなければならない。

2015年度は公開から時間が経過しているため、解答・最終答まで全文公開しています

(1)(1) 代表的には次のように述べればよい。 単連結領域 D 上で正則な関数 f と,D 内の閉曲線 C に対して,Cf(z)dz=0. \text{単連結領域 }D\text{ 上で正則な関数 }f\text{ と,}D\text{ 内の閉曲線 }C \text{ に対して,}\quad \int_C f(z)\,dz=0. より一般には,閉曲線とその内部を含む領域で ff が正則なら, その閉曲線に沿う積分は 00 である。

(2)(2) まず x3+1x4+1=x3x4+1+1x4+1 \frac{x^3+1}{x^4+1} = \frac{x^3}{x^4+1}+\frac1{x^4+1} と分ける。第1項は奇関数なので,任意の R>0R>0 について RRx3x4+1dx=0. \int_{-R}^{R}\frac{x^3}{x^4+1}\,dx=0. したがって求める極限は dxx4+1 \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^4+1} である。

上半円の半径 RR の経路を用いて f(z)=1z4+1 f(z)=\frac1{z^4+1} を積分する。上半平面の極は α=eiπ/4,β=e3iπ/4 \alpha=e^{i\pi/4},\qquad \beta=e^{3i\pi/4} であり,いずれも単純極である。留数は Resz=ζ1z4+1=14ζ3 \operatorname*{Res}_{z=\zeta}\frac1{z^4+1} = \frac1{4\zeta^3} だから, Resz=αf+Resz=βf=14(e3πi/4+e9πi/4)=14(e3πi/4+eπi/4)=i24. \begin{aligned} \operatorname*{Res}_{z=\alpha}f+ \operatorname*{Res}_{z=\beta}f &= \frac14\left(e^{-3\pi i/4}+e^{-9\pi i/4}\right) \\ &= \frac14\left(e^{-3\pi i/4}+e^{-\pi i/4}\right) = -\frac{i\sqrt2}{4}. \end{aligned} 半円弧上の積分は RR\to\infty00 に近づくので,留数定理より dxx4+1=2πi(i24)=π2. \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^4+1} = 2\pi i\left(-\frac{i\sqrt2}{4}\right) = \frac{\pi}{\sqrt2}. 以上より limRRRx3+1x4+1dx=π2. \lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}\frac{x^3+1}{x^4+1}\,dx = \frac{\pi}{\sqrt2}.

最終答

コーシーの積分定理は,正則関数の閉曲線積分が零になるという定理である。また,指定された対称極限は π2\displaystyle \frac{\pi}{\sqrt2}.

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